2026/01/20
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【プレスリリース】能登半島地震の発生源となった沿岸海底活断層 世界最長級の地震隆起を引き起こしたことを解明
本研究成果のポイント
概要
2024年1月1日に発生した能登半島地震(マグニチュード7.5)により、能登半島北部では顕著な地盤の隆起が観察されました。本研究は、この隆起が能登半島北岸に沿って並走する海底活断層の活動によって生じたことを、隆起海岸の地図化、隆起量の計測、および海底地形の分析を通じて明らかにしたものです。従来の津波・地震ハザード評価では十分に考慮されてこなかった沿岸域の海底活断層について、変動地形学的手法により具体的に示した点で、新たな視座を提供するものです。
掲載雑誌:Geomorphology、493巻、 110069
掲載日:15 January 2026(オンライン掲載日:30 October 2025)
また、本研究は広島大学から論文掲載料の助成を受けております。
著者:Hideaki Goto、 Tomoru Yamanaka、 Tomohiro Makita、 Yoshiya Iwasa、 Takuro Ogura、 Kyoko Kagohara、 Yasuhiro Kumahara、 Yasuhiro Suzuki、 Nobuhisa Matta、 Tatsuto Aoki、 Wataru Mori、 Kenta Haranishi、 Takashi Nakata
タイトル:Coast uplifted by nearby shore-parallel active submarine faults during the 2024 Mw 7.5 Noto Peninsula earthquake
掲載雑誌:Geomorphology、493巻、 110069
掲載日:15 January 2026(オンライン掲載日:30 October 2025)
背景
日本の沿岸部は、これまで繰り返し地震や津波の被害を受けてきました。強い揺れや津波に加え、地震に伴う海岸の隆起や沈降などの地形変化は、漁港・道路・護岸といった沿岸インフラや地域の生業に長期的な影響を及ぼします。そのため、こうした変化の発生メカニズムを解明することが重要です。
2024年1月1日に発生した能登半島地震(マグニチュード7.5)は、約120年間の観測史上、沿岸域で発生した最も大きな直下型地震でした。強い震動に加えて津波の発生や海岸環境の急激な変化など、多岐にわたる被害が報告されています。本地震は、沿岸活断層がもたらす地形変化や被害の多様性、そして半島地域が有する特有の災害脆弱性を示す代表的な事例といえます。
日本列島は長い海岸線をもち、沿岸域に人口や社会基盤が集中しています。能登半島と同様の環境をもつ地域は全国に多数存在します。したがって、今回の地震から得られた地形学的・測地学的・地理学的な新知見は、今後の沿岸域における災害想定や防災・減災政策の検討に直接的に役立つことが期待されます。
研究成果の内容
〈研究方法〉
広島大学大学院人間社会科学研究科の後藤秀昭教授を中心に、博士課程前期の牧田智大氏、千葉県立中央博物館の山中蛍研究員、福岡教育大学教育学部の岩佐佳哉講師、兵庫教育大学大学院学校教育研究科の小倉拓郎准教授、山口大学教育学部社会科教育講座の楮原京子准教授、岡山大学学術研究院教育学域(社会科教育)の松多信尚教授、金沢大学人間社会研究域地域創造学系の青木賢人准教授らで構成される研究チームは、2024年1月1日の能登半島地震の発生直後から、空中写真を用いて隆起海岸の詳細な地図化を行いました。あわせて、現地での観察や記録、隆起量の精密な計測を実施しました。さらに、海底地形データや地層探査記録を解析し、沿岸近傍に分布する海底活断層の位置と形状を明らかにしました。
〈主な成果〉
地震に伴い、能登半島の北岸では明瞭な地盤の隆起が確認されました。一方で、七尾湾や富山湾では隆起は認められませんでした。隆起によって新たに陸化した面積は約4.4平方キロメートル、隆起域の延長は約100キロメートルに及びます。陸化面積は、1804年に日本海で発生した象潟(きさかた)地震(図1)と同程度ですが、その延長は世界最長級であることが明らかになりました。
海岸線に沿って510地点で隆起量を計測した結果、隆起量は0.1〜5.2メートルで場所により異なりました(図2)。大きな隆起は北西端の猿山岬付近および北岸の鞍崎周辺で観測され、両側に向かって隆起量が減少する「山形」の分布を示しました。
さらに、海底地形データおよび地層探査データの解析から、隆起をもたらした活断層が海岸線にほぼ平行して連続的に延びていることが明らかとなりました(図2)。隆起量が特に大きかった場所は、断層線に近接する陸域に集中しており(図2,3)、南に傾斜した逆断層の活動によって隆起量分布が説明できることが確認されました。これらの特徴から、今回の地震は能登半島で過去数十万年間に繰り返し発生してきた地震の再来であることが示唆されます。
〈成果の優位性・社会/暮らしへの影響〉
2024年1月1日の能登半島地震は、沿岸域で発生した観測史上最大規模の内陸地震です。本研究では、海岸線のすぐ沖に位置する海底活断層の活動によって生じた海岸地形の変化を精密に捉えました。これは、地震・津波ハザード研究に新たな視点をもたらす重要な成果といえます。
従来、海岸線に極めて近い海底活断層は調査が難しく、十分に注目されていませんでした。本研究では、海底地形データの解析と陸上での地形調査を組み合わせることで、これらの断層の動きを初めて明瞭に捉えることに成功しました。この点で、手法的にも大きな優位性を有しています。
さらに、本研究成果は、地形変化による被害の拡大を抑えるための早期警戒体制の整備や、地域防災計画の見直しに直接貢献するものです。海岸部の隆起・沈降は、沿岸住民の津波避難行動、道路・防波堤・港湾施設などのインフラ設計、さらには耐震・耐津波性能評価に直結します。今後、沿岸自治体や関係機関が「海岸線近傍での断層活動の可能性」を防災計画に反映させる必要性を示す重要なメッセージとなります。
今後の展開
今後の研究では、本論文で示された海底活断層が2024年の地震時に実際に活動したことを示す直接的な証拠を、海底面のずれや変形の観測によって検証する必要があります。また、この活断層の活動周期や変位速度など、長期的な活動履歴を明らかにすることも重要な課題です。
さらに、他の沿岸域においても、海岸線近傍に存在する海底活断層の有無を調査し、地図化を進めることが求められます。従来の海底活断層調査は、主に海底下の地層構造に基づいて実施されてきましたが、陸上の活断層研究と同様に、海底地形の詳細な判読を組み合わせることで、これまで知られていなかった活断層の発見や、歴史地震の震源特定につながる可能性があります。
参考資料
用語解説
(※1)海岸隆起:
地震によって地盤が持ち上がる現象。海岸では、地震前に海水面の影響でできた痕跡(波の跡や海藻の付着跡など)が、地震後に海面より高い位置に現れることで、隆起の様子を確認できる。不動とみなせる海水面を基準に、これらの痕跡との高さの差を比べることで、地震による隆起量を知ることができる。
(※2)海底活断層:
海底にあり、過去に何度も動き、将来も活動すると考えられる断層。沿岸の近くに分布する場合、断層面が陸地の下まで延びていることもあり、地震のときには津波だけでなく強い揺れをもたらすことがある。
報道発表資料
本学研究者情報