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2026/06/10
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【プレスリリース】本学の岩佐佳哉講師、広島大学の熊原康博教授らの研究グループが2016年熊本地震の断層に沿うずれが7年間継続していたことを解明

2016年熊本地震の断層に沿うずれが7年間継続していたことを解明
地震発生後の「地表余効すべり」の実態と、インフラ復旧に向けた新たな知見

発表のポイント

2016年の熊本地震後、断層沿いの5.7 kmの直線区間において、地震後も断層が動き続けることで、地表に変位が生じる「地表余効すべり」が発生したことを確認しました。この区間では熊本地震の前震と本震におけるずれに加え、地表余効すべりを含めて3回のずれが生じたことになります。

複数回の現地調査の結果、地表余効すべりは本震後6〜7年にわたって継続し、本震後からの累積変位量は10〜40 cmに達することが明らかになりました。

南部の地点では、地表余効すべりによる変位量が本震時の変位量とほぼ同程度であることがわかりました。

地表余効すべりは、地震後に修復されたインフラにさらなる損傷を与える可能性があるため、地震からの復旧計画において、その発生や終息時期を考慮することの重要性を示しました。

概要

福岡教育大学の岩佐佳哉講師、広島大学の熊原康博教授らの研究グループは、2016年熊本地震の後に生じた地表余効すべりの時間的な変化を、現地調査の繰り返しによって明らかにしました。
日奈久断層沿いの5.7 kmの直線区間にある7つの地点で調査を行った結果、地表余効すべりは本震の発生から6〜7年間継続しており、本震後からの累積変位量は10〜40 cmに達することがわかりました。過去の研究と比較して、継続期間は比較的長く、変位量は同程度でした。また、この区間では熊本地震の前震と本震におけるずれに加え、地表余効すべりを含めて3回のずれが生じたことになります。
数年間継続する地表余効すべりは、地震後に修復された地表および地下のインフラに再び損傷をもたらす可能性があります。そのため、地震後の復旧計画を立てる際には、地表余効すべりが発生しているかどうかの確認や、それがいつ終息するかの推定が不可欠であると考えられます。

背景

内陸活断層による比較的大きな地震では、断層が地表に出現することがあり、これは地表地震断層と呼ばれます。しかし、こうした地表の変形は地震時だけで終わるとは限りません。地震後も地表地震断層に沿って「地表余効すべり」と呼ばれる現象が生じることがあります。
地表余効すべりは数年間にわたって継続し、数十センチメートルの変位を引き起こすことがあります。これにより、地震で損傷してその後に修復された構造物が再び被害を受ける可能性があるため、効果的な地震後の復旧には、地表余効すべりの時間的な変化を理解することが極めて重要です。
日本国内では地表地震断層を伴う地震が多く発生していますが、2016年の熊本地震を除き、地表余効すべりが確認されたケースはほとんどありませんでした。また、世界的にも地表で定量的な変位が直接・継続的に捉えられた事例はごくわずかです。

成果

2020年3月から2023年9月にかけて計6回の現地調査を行いました。道路の白線やブロック塀などの直線的な構造物をトータルステーションと呼ばれる測量機器を用いて繰り返し計測し、構造物の変位の時間的な変化を捉えました。
その結果、日奈久断層北部の5.7 kmの直線区間において、亀裂や右横ずれ変位などの地表余効すべりが地表地震断層直上の7地点で確認されました(図1)。このうち地点2、地点6、地点7では、直線的な構造物が補修された2017年から、2023年9月までの期間で5〜9 cmの変位が蓄積したことが明らかになりました(図2、図3)。この区間では、熊本地震の前震と本震に伴って地表地震断層が生じており、地表余効すべりを含めて3回のずれが生じたことになります。
地表余効すべりは本震直後に最も大きくなると考えられています。本震直後の地表余効すべりの変位量を推定するために、本震時の変位を記録している直線的な構造物を計測し、本震直後に計測された変位量と比較しました。計測データから、地表余効すべりは本震後6〜7年にわたって継続し、その累積変位量は10〜40 cmに達することが明らかになりました。
また、断層の南部の地点(本震時の変位量が小さかった地点)では、本震時の変位量に対して地表余効すべりの割合が大きく、本震時の変位量とほぼ同等になる地点もあることがわかりました。過去の地震を調べるトレンチ掘削調査や地形調査においては、本震時の変位と地震後の地表余効すべりによる変位を区別することが困難な場合があることも示唆されました。
なお、変位量は対数関数的に減衰しており、最新の2025年2月の現地調査では新たな変位は確認されなかったことから、現在では余効すべりはほぼ終息していると考えられます。

今後の展望

本研究により、内陸活断層による地震が発生した直後には、数年間続く地表余効すべりによって、地震後に一旦修復された構造物やインフラが再び損傷を受けるリスクがあることが示されました。
特に、水道やガスなどの重要な地下インフラの修復には多大な時間とコストがかかるため、断層を横切るインフラの復旧にあたっては、この地表余効すべりの影響を考慮することが欠かせないと考えます。今後の内陸活断層による地震後の復旧では、数十センチメートルの変位に耐えられる柔軟な構造を採用するか、あるいは変位が完全に終息したことを確認してから本格的な復旧を行うなど、インフラ復旧における対応策の策定に役立つことが期待されます。

添付資料

図1 地表余効すべりが確認された地点

  • 図2 地表余効すべり変位量の時系列変化
  • 図3 地表余効すべりの様子

地点2では白線と舗装の継ぎ目が右横ずれ変位を受けている。地点3では、道路に生じた窪みを埋める補修跡がさらに窪んでいる。地点6ではブロック塀が右横ずれ変位を受けている。いずれの地点も地表地震断層が生じた位置で変位が生じている。

論文情報

タイトル:Temporal changes in surface afterslip along the 2016 Kumamoto earthquake rupture revealed by repeated field surveys
著者:Yoshiya Iwasa*, Yasuhiro Kumahara, Yuya Sumitani and Yuichiro Tabuchi
(*は責任著者)
著者所属:岩佐佳哉(福岡教育大学教育学部)、熊原康博(広島大学大学院人間社会科学研究科)、住谷侑也、田渕雄一朗(元広島大学大学院人間社会科学研究科)
掲載誌:Seismica
DOI: https://doi.org/10.26443/seismica.v5i1.2144

謝辞

本研究における現地調査の実施にあたり、坂本文隆氏には多大なご協力をいただきました。記して感謝申し上げます。本研究にはJSPS科研費(JP18H03601,JP20J22288,JP23K18735)および深田野外調査助成を使用しました。

報道発表資料

本学研究者情報