令和6年度卒業式・修了式式辞(令和7年3月24日)

令和6年度の卒業式にあたり、卒業生の皆様やご家族の皆様に、福岡教育大学の教職員を代表して、お慶びを申し上げます。誠におめでとうございます。
ご臨席を賜りましたご来賓の皆様にも厚く御礼を申し上げます。
ご臨席を賜りましたご来賓の皆様にも厚く御礼を申し上げます。
さて、皆さんの中には、期待や希望とともに、一抹の不安を抱えながら入学された方も、いらっしゃったことでしょう。しかし、その不安に打ち勝ち、無事に今日という日を迎えることができましたのは、皆さんの努力に拠るものであると思います。心から敬意を表します。加えて、忘れてはならないことは、皆さんの努力が実を結ぶことができたのは、皆さんの努力を後押しした、仲間、先輩や後輩、そして家族などの励ましや応援があったからだということです。本学の教職員による励ましもあったことと思います。努力は応援する人々の存在により、より一層、力強く続けることができるものなのです。
幼・小・中・高校の恩師の姿に感銘を受けて、教職の道を志した方も多いことでしょうが、本学の中にも皆さんが恩師と呼ぶにふさわしい教員ができたとすれば、教員養成を主目的とする本学の学長として大変うれしいことであります。ここでは、私にとっての恩師と、その恩師から受けた指導の一端をご紹介したいと思います。
私の大学院時代の恩師の平林一榮先生は、「やさしいことを難しく語る研究者が多すぎる。難しいことでも大切なことをやさしく語る研究者になりなさい」とおっしゃっていました。私の専門は算数・数学教育ですので、卒業式での学長式辞では、小学校低学年の算数で取り扱う内容に関する指導の工夫についてご紹介することにしています。小学校の算数で学んだことの中で、2年で学習した「かけ算九九」のことを印象深く覚えている人も多いことでしょう。今日は「かけ算九九」に関わることについてお話しします。
幼・小・中・高校の恩師の姿に感銘を受けて、教職の道を志した方も多いことでしょうが、本学の中にも皆さんが恩師と呼ぶにふさわしい教員ができたとすれば、教員養成を主目的とする本学の学長として大変うれしいことであります。ここでは、私にとっての恩師と、その恩師から受けた指導の一端をご紹介したいと思います。
私の大学院時代の恩師の平林一榮先生は、「やさしいことを難しく語る研究者が多すぎる。難しいことでも大切なことをやさしく語る研究者になりなさい」とおっしゃっていました。私の専門は算数・数学教育ですので、卒業式での学長式辞では、小学校低学年の算数で取り扱う内容に関する指導の工夫についてご紹介することにしています。小学校の算数で学んだことの中で、2年で学習した「かけ算九九」のことを印象深く覚えている人も多いことでしょう。今日は「かけ算九九」に関わることについてお話しします。
私は、平成22年度からの3年間、本学の附属久留米小学校の校長を務めました。学期はじめの全校朝会などでは、1年生から6年生までの約480名の子ども達を前にして、校長がお話をすることになっています。そのような時に、高学年の子どもたちに向けた話しをしていたのでは、低学年の子どもたちは何のことなのかわからないので、私はいつも1年生に向けた話をするようにしていました。
お皿の上にみかんが3個ずつあります。お皿が2枚だとみかん何個でしょう。6個です。お皿が3枚だと何個ですか。9個です。「校長先生。そんなの簡単です。」と1年生が言いだして、ざわざわし始めています。そんな時、「そうだね。簡単だね。それでは、お皿が8枚だったら、9枚だったらみかんは何個になりますか」と発問するのです。「えー。それは難しいな。」指を折りながら考えていた1年生は困ってしまいます。3を何回かたしていく方法は「同数累加」と言いますが、3+3+3=9くらいまではできますが、3を8回も9回もたしていくのでは大変です。いくつまでたしたのか、わからなくなってしまうからです。
「そうだね。何回もたしていくのは大変だね。2年生から6年生までのお兄さんお姉さんたちは、簡単に計算できる方法を知っていますね。はい、そうです。かけ算の九九を覚えておくとできますね。サン パ ニジュウシ とか サン ク ニジュウシチ とかを覚えておくのです。1年生のみなさんは、2年生になったら2学期ぐらいに九九のお勉強をしますから、楽しみにしておいてください。」
私は校長として、1年生に語りかける感じでお話ししましたが、同じ体育館の中で並んでいる2年生から6年生たちにとっても、かけ算九九は既習ですから、興味を持って、うなずきながら聞いてくれていたのを覚えています。
かけ算九九をしっかり習得しておくと便利なことが、少なくとも2つあります。
1つは、18×3の計算を筆算でするときです。掛ける数、つまり3の段の九九が必要になり、この場合には「サン パ ニジュウシ」が出てくることがわかりますね。この時にまだ同数累加に頼って3を8回たしていたら大変です。もう1つが、18÷3というわり算のときです。わる数のかけ算九九、つまりこの場合も3の段の九九の中から、答えがわられる数の18になるものを見つけるのです。「サブ ロク ジュウハチ」が見つかって、18÷3というわり算の答えが6とわかります。
このように、かけ算の筆算やわり算を学習する3年生のとき、2年生で学んだ「かけ算九九」の大切さが実感されるわけです。4年生以降になって、小数や分数のかけ算やわり算の学習でも、「かけ算九九」が基礎になることは言うまでもありません。
かけ算九九をしっかり習得しておくと便利なことが、少なくとも2つあります。
1つは、18×3の計算を筆算でするときです。掛ける数、つまり3の段の九九が必要になり、この場合には「サン パ ニジュウシ」が出てくることがわかりますね。この時にまだ同数累加に頼って3を8回たしていたら大変です。もう1つが、18÷3というわり算のときです。わる数のかけ算九九、つまりこの場合も3の段の九九の中から、答えがわられる数の18になるものを見つけるのです。「サブ ロク ジュウハチ」が見つかって、18÷3というわり算の答えが6とわかります。
このように、かけ算の筆算やわり算を学習する3年生のとき、2年生で学んだ「かけ算九九」の大切さが実感されるわけです。4年生以降になって、小数や分数のかけ算やわり算の学習でも、「かけ算九九」が基礎になることは言うまでもありません。
子どもたちの人間形成のための、とりわけ「主体的、対話的で深い学び」を実現するための教材研究は、とても奥が深いものなのです。ここでは、私の専門の算数科を例にしてお話ししましたが、皆さんが興味のある教科に置き換えて、知識の獲得にふさわしい子どもの活動構成や発問について考えてみてください。私は、皆さんに、教職生活の全体を通じて学び続ける教師であってほしいと願っています。
今日は、教科の授業づくりを取り上げましたが、教える立場としては、学級経営や生徒指導などの課題に直面することも多いはずです。実践の場面で生じたいろいろな課題には、個人として対応するだけでなく、組織として対応する必要があります。即ち、いろいろな困難をたった1人で抱え込んではいけません。学校であれば、同僚、教頭先生や校長先生と、そして地域の人々とも協働して対応することが大切です。皆さんの若さを生かして、周りの人々とスクラムを組んで、共に学び、困難に打ち勝っていかれることを祈っています。
志を秘め、謙虚に学び、勇気をもって社会人としての生活をスタートしてください。そして、その生活の中で、本学で学んだことで生かされることがあれば幸いです。必要があれば遠慮なく、再び本学を訪ねてください。本学の同窓会を含めて、皆さんの課題解決に本学がかかわることができれば、それに勝る幸せはありません。
卒業生の皆さんが、希望に満ちた人生をしっかりと歩んで行かれることを祈念して、式辞といたします。
令和7年3月24日
福岡教育大学長
飯 田 慎 司