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 令和2年度の卒業式、修了式にあたり、卒業生並びに修了生の皆さんに、福岡教育大学の教職員を代表して、お慶びを申し上げます。誠におめでとうございます。同時に、皆さんを今日までささえてこられました、ご家族の方々に対して、お祝いを申し上げます。また、ご臨席を賜りましたご来賓の皆様にも厚く御礼を申し上げます。

 さて、皆さんの中には、期待や希望とともに、一抹の不安を抱えながら入学された方も、いらっしゃったことでしょう。しかし、その不安に打ち勝ち、無事に今日という日を迎えることができましたのは、皆さんの努力に拠るものであると思います。特に今年度は、新型コロナウイルス感染症の拡大のために、就職試験はもちろんのこと、学校教育課題研究や修士論文等の作成にも、相当の努力をされたことでしょう。心から敬意を表します。
 加えて、忘れてはならないことは、皆さんの努力が実を結ぶことができたのは、皆さんの努力を後押しした、仲間、先輩や後輩、そして家族などの励ましや応援があったからだということです。本学の教職員による励ましもあったことと思います。努力は応援する人々の存在により、より一層、力強く続けることができるものなのです。

 卒業の日を迎えられまして、本学での学びはいかがでしたでしょうか。本学では、学生の皆さんに、多くの知識を教授するとともに、知識を見いだし、知識を獲得し、知識を活用する学びを醸成するカリキュラムを提供しました。知識の獲得は、「なぜだろう、本当だろうか」という問いを抱き、解明することによりなされるものです。ただ、ぼんやりと社会や自然を眺め、問いを抱かないままでは、知識の獲得はできないのです。

 皆さんは、これから教える立場に立つ方が多いと思いますから、教える立場での知識の獲得についてお話ししてみたいと思います。私の専門は算数・数学教育ですので、小学校の1年生で学ぶ十進法の指導法について「26羽のスズメ」を例にしてみます。絵の中のスズメが何羽いるか数えたときに、1年生ですと、1羽のスズメを数え忘れて25羽と答えたり、1羽のスズメを2回数えて27羽と答えたりする児童がいるものです。そのような間違いを防ぐために、ブロックを用意して、スズメの上にブロックを1対1対応によって1個ずつ置いていき、今度はブロックが何個あるかを数えさせます。ここで、皆さんだったらどのように発問しますか。「できるだけ早く数えましょう」と発問する先生も多いのですが、これはよい発問ではありません。教えたいのは、10個ずつ数えて、十の位に「2」、一の位に「6」と表す十進法なのですから、「ニ、シ、ロ、ハ」と2個ずつ数えている児童や、「ゴ、ジュウ、ジュウゴ、ニジュウ」と5個ずつ数えている児童にとっては、十進法のよさに気づくことができないのです。

 算数科の「深い学び」を実現するための、とてもよく練られた発問は、「いくつあったか、ぱっと見てわかるようにしよう」というものです。活動の後も始めと同じブロックの置き方になっている机の上が多い中で、10個のブロックを2列、そして1個のブロックをバラで6個置いている児童の机の上は、ブロックが26個あるということがぱっと見ただけでわかるのです。あとは、十の位の箱の中に「2」、一の位の箱の中に「6」と書くだけです。十進法とは正確には「十進位取り記数法」といい、「記数法」とは、数の数え方ではなく数の表し方なのです。この児童は、数えるだけではなく、いくつあったかを表しているのです。

 子どもたちの人間形成のための、とりわけ「深い学び」を実現するための教材研究は、とても奥が深いものなのです。ここでは算数科を例にしましたが、皆さんが興味のある教科に置き換えて、教える立場での知識の獲得について考えてみてください。私は、皆さんに、教職生活の全体を通じて学び続ける教師であってほしいと願っています。

 今日は、授業づくりのお話しをしましたが、教える立場としては、学級経営や生徒指導などの課題に直面することも多いはずです。実践の場面で生じたいろいろな課題には、個人として対応するだけでなく、組織として対応する必要があります。即ち、いろいろな困難をたった1人で抱え込んではいけません。学校であれば、同僚、教頭先生や校長先生と、そして地域の人々とも協働して対応することが大切です。みなさんの若さを生かして、周りの人々とスクラムを組んで、共に学び、困難に打ち勝っていかれることを祈っています。

 志を秘め、謙虚に学び、勇気をもって教職生活をスタートしてください。そして、教職生活の全体を通じて学び続ける際に、本学で学んだことで生かされることがあれば幸いです。必要があれば遠慮なく、再び本学を訪ねてください。そして、福岡教育大学には、本学を中心として九州地区、あるいは全国につながる教員育成ネットワークがあります。本学の同窓生を含めて、皆さんの課題の解決に本学がかかわることができれば、それに勝る幸せはありません。

 卒業生、修了生の皆様が、希望に満ちた人生をしっかりと歩んで行かれることを祈念して、式辞といたします。

                                        令和3年3月25日
                                            福岡教育大学長
                                              飯 田 慎 司

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