注意:ここにある委員会とは平成11年度まで活動していた、いわゆる「藤本科研グループ」です。現在のものではありません。

日本教育大学協会全国特殊教育研究部門 免許問題検討委員会  

このページの構成
<委員会設立の経緯>
<委員会の委員>
<これまでに明らかにした問題点>
<各回の審議事項>
<学会での活動>
<最終年度報告>

<委員会設立の経緯>

 日本教育大学協会全国特殊教育研究部門は、平成4年度以降、当部門合同研究集会「教員養成と教育実習」分科会を中心として、障害児教育の教員養成と障害児学校教員免許の在り方について継続して議論してきました。その議論の蓄積を踏まえて、平成7年1月、免許問題検討委員会が、恒常的に教員養成と教員免許問題を検討するために専門委員会として設置されました。


<委員会の委員('99,11,13.現在)>

免許問題検討委員会の会議を行っている京都教育大学
 伏見区の閑静な所です。
委員長の藤本文朗先生(滋賀大学)

行動派、人情派として有名。
今は、ベトナムでの障害児教育に力を入れてます。
 藤本先生に魅せられて後を追う学生が多い。魔力なのか誑かしなのか?
世話人の小川克正先生(岐阜大学)

理論派、知性派として有名。
いかにも紳士!
 藤本先生とは好対照なのだが、二人は気が合うらしい。
いつもおもろい玉村公二彦先生(奈良教育大学)
 若頭として大活躍。人なつっこい笑顔でいつも場を盛り上げてくれます。彼の頭脳は委員会のCPUと言えます。
ヒゲが売りの河相善雄先生(兵庫教育大学)
 玉村先生とのからみは絶品。グランド花月にも出演できそう。
 大局的観点から問題を把握するのが得意です。
記録をとってくれている
前田岳志君(京都教育大学4回生:左)

荒川喜博先生(元滋賀大学院生:右)


委員長:藤本文朗(滋賀大学教育学部・障害児教育講座)     
世話人:小川克正(岐阜大学教育学部・障害児教育講座)      
委 員:加瀬 進(京都教育大学教育学部・発達障害学科, KASE@wsml.kyokyo-u.ac.jp)    
委 員:玉村公二彦(奈良教育大学教育学部・障害児学研究室, tamamura@nara-edu.ac.jp)  
委 員:河相善雄(兵庫教育大学・障害児教育講座, nba00147@edu.hyogo-u.ac.jp) 
委 員:江田裕介(和歌山大学教育学部・障害児教育学教室) eda@center.wakayama-u.ac.jp
委 員:有岡昭三(佛教大学教職課程指導室)
委 員:中林稔尭(神戸大学発達科学部人間発達学科障害児教育学コ−ス)
委 員:太田富雄(福岡教育大学 tomiohta@fukuoka-edu.ac.jp

<これまでに明らかにした問題点>
 
 本委員会は、定例会議の他、日本特殊教育学会で自主シンポジウムを開き、多くの方々の意見を求めて障害児教育における教員養成と免許制度を検討している。
 これまでに以下のような点を検討し、問題点を明らかにしてきました。

1.障害児学校・障害児学級における教師の専門性の確保という観点から、現在の免許状
 保有率の状況は深刻であること。
2.現在生じている障害児学校・障害児学級における教員の免許状保有率が低水準にある
 状況は、「教育職員免許法の一部を改正する法律(昭和29年)」の附則24をはじめとした
 障害児教育免許の制度上の欠陥によって引き起こされているものであること。
3.障害児学校・障害児学級いずれにおいても、免許状保有率に関して都道府県での格差
 が顕著に見られること。

<各回の審議事項>

 第1回(H7,1,28.):
  (1)藤本委員長、小川世話人選出。
  (2)当委員会の発足経緯について
  (3)有岡委員「障害児学校教員養成の動向」
  (4)小川委員「障害児学校教員養成の歴史と今日的課題」
  (5)日本特殊教育学会第33回大会で「教育職員免許法附則24の改廃をめぐって」を
    テ−マにシンポジウム企画
 第2回(H7,4,29.):
  (1)太田正委員「近畿地区国立大学附属養護学校における教員免許の所有率(H6年度)」
  (2)河相委員「諸外国の障害児学校教員養成−アメリカを中心に−」
 第3回(H7,6,24.):
  (1)後藤委員「和歌山大学発達障害教育教員養成課程の現状について」
  (2)太田富委員「聾教育から見た免許問題について」
 第4回(H7,9,2.):
  (1)藤本委員長「養護学校教員養成課程の専門教育ならびに教師としての資質に関する
    アンケ−ト調査(滋賀大学)」
  (2)教大協での当委員会の「中間報告」について
 第5回(H7,11,18.):
  (1)藤本委員長「養護学校教員養成課程の専門教育ならびに教師としての資質に関する
    アンケ−ト調査(滋賀大学)」
  (2)教大協教員需給等検討特別委員会報告書「教員需給と教育系大学・学部の在り方」
    について
 第6回(H8,2,24.):
  (1)玉村委員「教育学部と障害児教育教員養成の課題
     −障害児教育の教員免許制度をめぐって−」
  (2)障害児学校教員の採用実態について、近畿地区府県教育委員会の方針を確認し、
     免許状の取得と専門性の向上との関連について検討
  (3)日本特殊教育学会第34回大会で「障害児教育教員の専門性の向上をめぐって」を
    テ−マにシンポジウム企画
 第7回(H8,3,30.):
  (1)谷川邦宏氏(立命館大学)「京都府・京都市における障害児学校教員の採用実態に
    ついて」
  (2)藤本委員長「滋賀県における障害児学校教員の採用について」
  (3)玉村委員「全国特殊学校長会が教員の専門性を高めるために「当分の間」規定の
    改正を検討事項の1つにあげたことについて」
 第8回(H8,5,11.):
  (1)玉村委員「都道府県における特殊教育諸学校教員採用と現職教育に関する実態
    調査」
  (2)小川委員「岐阜県の障害児学校教員の採用方式並びに岐阜大学の障害児学校
    教員養成の特徴について」
  (3)特殊教育学会でのシンポジストについて
 第9回(H8,6,29.):
  (1)太田富委員「大阪府・大阪市における障害児学校教員の採用実態について」
  (2)玉村委員「奈良県の教員採用試験における障害児教育の専門科目について」
  (3)藤本委員長「滋賀県の教員採用試験における障害児教育の専門科目について」
  (4)教育職員養成審議会に対する文部大臣の諮問事項の概要が報道されたことに
    伴い、今後の対応について
 第10回(H8,7,27.):
  (1)後藤委員「和歌山県の教員採用試験の実態について」
  (2)小川委員「障害児学校教員採用試験の諸類型」
  (3)玉村委員「障害児学校教員に関する調査の質問項目について」
  (4)教育職員養成審議会の審議方向に関連しての意見交換
 第11回(H8,9,28.):
  (1)小川委員「教大協部門連絡協議会において藤本委員長が「中間報告2」をした
    ことについて」 
  (2)藤本委員長「日本特殊教育学会シンポジウムでの参加者数、話題提供者の
    提言内容、質疑応答、討論などの報告」
  (3)河相委員「科研費の申請について」
 第12回(H8,11,9.):
  (1)玉村委員「教育学部・教育大学における障害児教育教員養成に関する実態調査
    について」
  (2)科研費申請は滋賀大学に提出
 第13回(H9,1,11.):
  (1)越野和之氏(奈良教育大学)「奈良教育大学における教員養成と障害児教育の
    力量形成 −卒業・終了者に対するアンケ−ト調査結果(1996)−」
 第14回(H9,3,8.):
  (1)玉村委員「障害児教育と教員養成この1年」
   a.中央教育審議会答申と教育課程審議会・教育職員養成審議会の発足
   b.教員養成における介護実習の義務化の動き
   c.教員養成大学・学部の改革と障害児教育の位置
  (2)太田正委員「障害児教育教員養成の現状と課題−京都教育大学の場合−」
   a.課程・コ−ス・専攻の再編成
   b.発達障害学科の志願者の選考方法の変更
   c.養護学校教員養成課程卒業生の進路状況
 第15回(H9,4,12):
  (1)上野矗氏(大阪教育大学)「特殊教育の改善・充実に関する研究調査協力者
    会議」の審議経過と今後の方向について「特殊教育の改善充実について
    (第1次報告)」に基づき説明
  (2)玉村委員「日本特殊教育学会第35回大会で「障害児教育教員養成の実態と
    課題」をテ−マにシンポジウム企画提案
 第16回(H9,6,7.):
  (1)黒田吉孝氏(滋賀大学)「教員養成と学部改革の方向−滋賀大学の場合−」
  (2)加瀬委員「スウェ−デンにおける障害児教育教員養成の動向
     −SpeciallaereからSpecialpedagogへ−」
  (3)平成9年度科研費申請について採択の内示
  (4)玉村委員「教育職員養成審議会カリキュラム等特別委員会審議経過報告
    (H9,5,26)」のうち、障害児教育教員養成と盲・聾・養護学校教諭免許状に
    関連する事項について
 第17回(H9,9,6.):
  (1)谷川邦宏氏(立命館大学)「教養審答申の問題点・疑問点について」
  (2)小川委員「教大協全国特殊教育研究部門研究集会の報告」
 第18回(H9,11,8):
  (1)太田委員「周辺領域の資格・免許について
  (2)玉村委員「教育学部・教育大学における障害児教育教員養成に関する実態
    調査」の質問項目の検討
  (3)加瀬委員「『介護実習』導入にかかわるアンケ−ト調査の実施と資料提供に
    ついて(お願い)の質問項目の検討」
 第19回(H9,12,20):
  (1)小川委員「障害児教育教員の免許状に関する調査の実施案」
  (2)加瀬委員「『介護実習』導入に関する調査結果の中間報告」
  (3)玉村委員「障害児教育教員養成に関する実態調査の中間報告」
 第20回(H10,2,14):
  (1)加瀬委員「『介護実習』導入に関する調査結果の中間報告」
  (2)玉村委員「障害児教育教員養成に関する実態調査の中間報告」
 第21回(H10,4,29):
  (1)河相委員「米国の障害児教育教員養成の調査」
  (2)太田委員「全国聾学校への質問紙調査の実施案」
  (3)玉村委員「障害児教育教員養成に関する実態調査の中間報告」
  (4)その他(特殊教育学会シンポジウム、科研費研究など)
 第22回(H10,6,20):
  (1)玉村委員「免許問題検討委員会答申案(1)」
  (2)太田委員「総合免許状へ向けての具体的取り組み」
 第23回(H10,7,27):
  (1)玉村委員「免許問題検討委員会答申案(2)
  (2)太田委員「全国聾学校への質問紙調査について」
  (3)河相委員「米国の障害児教育教員養成の調査」(入院のため延期)
 第24回(H10,9,5):
  (1)太田委員「全国聾学校への質問紙調査の中間報告」
  (2)玉村委員「免許問題検討委員会答申案(3)
 第25回(H10,10,31):
  (1)河相委員「障害児教育の将来像と教員免許制度案」
  (2)玉村委員「免許問題に関連する諸資料と総合免許状案」
 第26回(H10,12,24):
  (1)小川委員「言語聴覚士の免許資格と養成カリキュラム」
  (2)江田委員「教育系大学院と現職研修の諸問題」
 第27回(H11,2,6):
  (1)藤本委員長「障害児教育教員養成のカリキュラム案」
  (2)玉村委員「障害児教育教員養成の実態調査案」
 第28回(H11,3,27):
  (1)藤本委員長「障害児教育教員養成のカリキュラム再案」
  (2)玉村委員「障害児教育教員養成の実態調査再案」
 第29回(H11,5,15):
  (1)玉村委員「教員養成実態調査の概要」
  (2)江田委員「教員養成カリキュラムの検討事項」
  (3)小川委員「総合免許状(専修)のカリキュラム案」
  (4)藤本委員長「関係諸機関への要望事項」
 第30回(H11,7,3):
  (1)玉村委員「教員養成の実態調査」
  (2)加瀬委員「教大協特殊教育部門免許問題検討委員会最終報告書(案)」
  (3)小川委員「障害児学校教諭専修免許状の検討(1)」
 第31回(H11,9,4):
  (1)江田委員「障害児教育関連異職種免許状の種類と現状」
  (2)玉村委員「障害児教育教員養成の実態調査報告」
 第32回(H11,11,3):
  (1)玉村委員「障害児教育教員養成の実態調査報告」
  (2)藤本委員長「障害児教育教員養成のカリキュラム(案)」
  (3)玉村委員「科研費報告書の構成案」

<学会での活動>
日本特殊教育学会第33回大会の自主シンポジウム6 「教育職員免許法附則24の
  改廃をめぐって」(特殊教育学研究,33,5,137-139,1996に概要を掲載)
日本特殊教育学会第34回大会の自主シンポジウム17「障害児教育の力量形成上
  の課題 −障害児教育における教師教育をめぐって−(特殊教育学研究,34,5,
  161-163,1997に概要を掲載)
日本特殊教育学会第35回大会の自主シンポジウム21「障害児教育教員養成の
  実態と課題」(特殊教育学研究,35,5,108-109,1998に概要を掲載)
日本特殊教育学会第36回大会の自主シンポジウム31「教師教育の今日的課題に
  おける障害児教育教員免許問題の位置づけ」(特殊教育学研究,36,5,141-142,1999.に概要掲載)
日本特殊教育学会第37回大会の自主シンポジウム28「障害児教育教員養成の
  実態と『(仮称)障害児教育教員免許』の構想」(特殊教育学研究,37,5,254-256,2000.に概要掲載)

<最終年度報告>
免許問題検討委員会最終年度報告
平成11年9月17日

1.はじめに
 平成7年1月に発足した本委員会は、これまでその審議経過を中心に毎年1回、計4 本の中間報告を行ってきた。最終報告をまとめるにあたり、まずその要旨と背景を概 括的に振り返っておきたい。
 「中間報告・(平成7年9月16日)」では、今後検討すべき課題を提起したが、その骨子は@障害児学校教員養成百周年に向けた取り組み、A現行盲・聾・養護学校教員養成課程の障害児学校教員養成課程への拡充と免許状の総合化、B盲・聾・養護学校免許状保有率の引き上げ、C職能団体相互間のコンセンサスの形成、であった。これは本検討委員会の発足とも関わる基本的な論点の再整理である。即ち、平成4年度 以降の教大協特殊教育研究部門合同研究集会・第6分科会「教員養成と教育実習」において改めて課題視された、免許状保有率の向上と免許状一本化(免許制度に関する 平成6年度教大協アンケート結果で賛成が過半数を越えた)について具体的案を策定することが本委員会の任務であるという位置づけの明記である。「中間報告U(平成8年9月15日)」では、上記の課題を継承しつつ、新たに当面の具体的検討課題としてD教員採用試験における障害児学校教員の選考方式についての実態把握とE障害児学校教員養成のカリキュラムの実態把握が措定された。これらはいずれも免許状保有率の向上と免許状の一本化へ向けた養成体制の基盤整備にかかる基礎的調査活動として方向付けられたものである。Dについては既に本委員会委員の小川克正らによって平成9年度採用試験状況の調査・分析が報告されている(小川克正・廣嶌忍,1997)。
 ところでこの中間報告U以降、「中間報告V(平成9年6月21日)」を挟んで「平成10年度中間報告(平成10年9月14日)」に至る時期は、教養審第一次答申(平成9年7月28日)によって大学学部における教員養成の方向性が示され、翌平成 10年6月10日には改訂免許法が公布される。続く教養審第二次答申(平成10年10月29日)では大学院修士課程を活用した教員養成の方向性が示される。といったように本委員会の検討課題に直接関連する重要な公式答申が出された時期でもあった。加えて教育系大学学生定員5000人削減という非常事態の到来も重なり、勢い本委員会でもこうした動向の把握・理解・検討にシフトせざるを得ない状況に立たされた。
 即ち「中間報告V」にあるように、この時期は委員会委員もしくは特別講師の所属大学における養成・改革の現状と課題(奈良教育大学、京都教育大学、滋賀大学)、「特殊教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議」や教養審における審議経過の検討に力点が置かれた。結果的には40数年来の懸案事項であったいわゆる「附則24廃止」問題は全く解決されずに「附則19」として継続され、大学改組の方向も独立した養護学校教員養成課程が定員削減に伴って小学校・中学校教員養成課程と統合される方向が明らかになるなど、きわめて厳しい状況がもたらされつつあることが確認されていった。
 「平成10年度中間報告」では、かかる状況を踏まえた上で、これまでの検討事項の総括と最終報告へ向けた基本的方向性を提示した。即ち、「附則19」問題に象徴される免許状保有率の向上に対しては、具体的提案をもっていっそう強力な働きかけを行っていくこと。実質的には部分的改訂に終わった障害児教育関連の新教員免許法の問題点の整理とカリキュラムまで含めた「総合免許状」案の提示、並びにそれを実現する基盤としての各教育系大学の現状・実態把握の提示である。以上、簡単にこれまでの審議経過を概観したが、本最終報告では基本的に「平成10年度中間報告」で示した方向性にそって、これまでの調査・研究にもとづき、具体的改革案と今後の検討課題を提起することとしたい。

2.「免許問題」の基本的捉え方と最終報告の位置づけ
 具体的報告に入る前に、本最終報告における「免許問題」の基本的捉え方を明らかにしておきたい。
 新免許法が公布され、教育系大学の改組が実施に移され、かつ深刻な学校教育をめぐる問題が顕在化している現在、実は「免許問題」をそもそもどのような枠組みで捉えるかは、論者によりかなり多様化しつつある。それは障害児教育を核としながらも、いかなる学校教育改革を展望するかに左右される問題だからである。例えば「障害児の教育にかかわる教員の専門免許」としても、そこでいう「障害児」を従来の障害種別で捉えるのか、「特別な教育的ニーズを有する子ども」と捉えるかによって、かかる専門免許を取得すべき学生・現職教員の範疇も異なってくるし、別枠採用の是非や新教免法の評価にも影響する。あるいは、かかる専門免許が「障害児」という対象に焦点化されるのか、「障害児学校・学級」という教育の場に焦点化されるのか、さらには小・中・高といった教育階梯へ対応する必要はないのか、という問題も、「免許問題」としてすぐれて重要なファクターといえよう。しかしながら、本委員会としてはこの最終報告を上述した歴史的時点にあるものと位置づけ、「免許問題」の範疇、その「検討」課題の提起の意味を次のように整理しておきたいと思う。
1)ここでいう「免許問題」は、@現行/新免許法に定められた盲・聾・養護学校教員免許の保有率の向上とその質的向上、A「総合免許状」案の策定とその実現に不可欠な条件整備要件の解明に特化する。
2)その意味で特化された「免許問題」の解決課題は、今後より広範かつ施策の中枢に直結する研究組織により批判的に継承されることを前提とする。
3)但し、免許問題検討委員会および関連する研究協議の場で出された様々な論点は、継続的な研究が期待されるものとして明記する。

3.免許状保有率の向上をめぐって
 免許状保有率の低さ(盲・聾・養護学校平均で50%弱、小中学校75条学級平均で30%弱)が従来の教免法附則24、新免許法の附則19に起因していることはすでに明らかにされてきているところである。障害児教育教員養成のあり方の検討は、まず最低限度現在の盲・聾・養護学校教員、75条学級・通級指導教室の教員がいずれかの免許を保有することが前提となって、初めて実質的・本格的な議論ができるものと認識する。
 ところでこの「附則廃止問題」は半世紀に及ぶほどの長期にわたって語り続けられてきたが、その廃止が実現しなかった背景には障害児教育関係者にも垣間みられるやむを得ないという態度、文部省が「附則」を廃止しない限り無理だという諦観、それらと連動する教員採用・人事配置・現職研修における配慮の不足があったという反省・認識を改めて強くする必要がある。なぜならば、通称「秋田モデル」と言われる秋田県では大学・県教委・学校関係者の長年にわたる協力によって、盲学校31.1%、聾学校37.8%、養護学校93.5%、全体の平均で83.4%という高い保有率を実現しているからである。
そこで、免許状保有率の向上へむけ、以下の3点を一貫して取り組むよう、教大協として決議し、文部省並びに各都道府県・政令指定都市の教育委員会へ働きかけるよう提案したい。
1)障害児学校枠での教員採用
 平成9年度の47都道府県、5政令指定都市の52事例調査によれば(小川・廣嶌,1997)、盲・聾・養護学校いずれか一つの免許状取得を出願要件としているのは19例(36.5%)のみで、採用後の取得を義務づけている事例もわずか2例であった。また障害児学校枠を設けているところも29例(55.7%)で、上記の出願要件と併せて考えると実質的に「附則」依存の実態となっている。盲・聾・養護学校いずれか一つの免許状取得を基本要件として、障害児学校枠での教員採用試験を全国レベルで実施すべきである。
2)人事異動時における免許状保有状況への留意
 人事異動に際しては免許状保有状況に留意し、前年度比において下回ることのないよう運用上の工夫をすべきである。また小中学校の75条学級、通級指導教室の教員の人事に際しては盲・聾・養護学校教員免許保有者を優先するといった配慮を徹底すべきである。
3)認定講習等における免許取得奨励の強化
 「附則」の継続と呼応するように認定講習等による免許取得奨励が続いているが、上記2点と連動させ、かつ採用後ないし異動後に期限を設けて免許取得するよう奨励を強化する。そのためには教育委員会と大学がいっそうの連携をつよめ、現行の認定講習会や大学院の夜間開講のみならず、特別専攻科授業の夜間・集中開講や遠隔授業の活用など、現職教員が多様な形で単位取得できるよう柔軟な「開放型講習会」を組織する必要がある。そこには、現職教員の研修に関する諸規定の運用の工夫や改訂、大学教員の補強・拡充といった抜本的基盤整備も求められるところである。

3.「総合免許状」の必要性について
 標記にかかる本委員会の基本提案は、盲・聾・養護学校という学校種別の免許状を一本化し、1種・2種免許に相当する「障害児教育基礎免許状」と専修免許に相当する「障害児教育専門免許状」を創設し、前者を学部段階で、後者を大学院・特殊教育特別専攻科で出せるよう、各大学学部・大学院・特殊教育特別専攻科のカリキュラムや教官配置を再編成していく、というものである。かかる「総合免許状」化の必要性も既に20年来繰り返し提起されてきたものであるが、具体的なカリキュラム案と各大学の基盤整備状況については後述することとして、ここではこれまでに出されてきた主たる「総合免許状」案における背景・理由を総括しつつ、本委員会における「総合免許状」の必要性に関する立場を明らかにしておきたい。まず挙げなくてはならないのが、日本特殊教育学会特殊教育教員養成問題研究委員会(1980)の「特殊教育教員養成の改善に関する報告」である。同報告書の中の「V 国の制度面における改善提案、(1)現行免許法に関する提案、(2)現行の障害児教育の教員養成課程の改善提案」に関する提案説明の中で、荒川勇氏は免許状一本化の必要性について次の5点を挙げている。
 @学校別・障害別の教員養成では障害種別に偏った科目・単位のカリキュラムになりがちで、重度重複化に向かう児童生徒の状況においては特定の障害に関する知見のみならず、各種障害を通した一般的基礎的な障害児教育の知識技能の修得が望まれる。
 A学生募集の段階で障害種別・学校種別に分けていくことは、受験生の志望動機や将来の見通しがあいまいな現状とそぐわない。むしろ一般的・基礎的な知識・技能を指導する中で、真の専門性志向を自覚させていくことが実際的である。
 B教育方法の面でも、教育対象の面でも、各種障害の様態の中で共通的な領域があり、その部分に対応する一般的基礎的素養の修得が現場でも求められている。
 C基礎免許状取得の上に、盲・聾・養護学校免許状取得という2階建て構造のもとでは、どうしてもカリキュラムが過密化・細切れ化する。従って、学部段階では適宜ピーク制や科目選択制を導入するにせよ、障害児教育の一般的・基礎的科目に力点を置く方がよい。
 D障害児教育教員として求められる資質は、専門的知識技能もさることながら、人間性・一般教養・障害児理解が求められ、幼・小・中等の教育の素養も求められる。以上を勘案すれば免許状の一本化、並びに学部と大学院・特別専攻科における養成の2段階方式が必須と考えられる。
ここでいう「免許状の一本化」は本委員会の「総合免許状」案と軌を一にするものであり、1987年の教養審答申、1997年の文部省・特殊教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議による第二次報告でも重ねて指摘されてきたところである。上記5点の必要性については基本的に継承すべき論点とした上で、尚つぎのような若干の捉え直しをしておきたいと思う。
 まず「一般的基礎的素養」や「人間性・一般教養・障害児理解」であるが、障害種別に応じた専門療育的技法のアンチテーゼとしては理解できるものの、その具体像は見えにくい。そこで我々はこれを障害児の「学校教育」教員として求められる「子ども理解、子どもの生活のトータルな理解」としての基礎的力量、並びに日々の実践の中核となる「授業づくり、学校・学級運営に必要な教育学的素養」とする。一方「専門的知識技能」も子どもの発達段階把握、各障害に共通・共有しうる教育方法の修得といった階層と、その上で各障害に焦点化された専門知識・技能の階層からなるものと理解する。
 尚、この基礎免許状、専門免許状を、いわゆる「学校免許状」と理解するのか「資質免許状」と理解すべきなのか、という問題については本委員会においても統一見解を出すには至っていない。次期教免法改定に向けて提案をしていく際に継続的・集中的に検討されるべき問題の一つである。

4.「総合免許状」のカリキュラム案
 以上のような認識の上に、我々は「総合免許状」として次の2種類を提案する。

1)障害児教育基礎免許状
 本免許状は障害種別を越えたノンカテゴリカルなものとし、障害児の「学校教育」教員として求められる「子ども理解、子どもの生活のトータルな理解」にかかる基礎的力量、並びに日々の実践の中核となる「授業づくり、学校・学級運営に必要な教育学的素養」の形成をめざすものとする。教育系大学の学部段階での養成を想定するものである。
 本免許状取得要件としては全体で30単位を次のように設置する。

<「障害児教育」にかかるノンカテゴリカルな共通科目>
次の9科目(各2単位)から12単位を選択必修とする。
・概論、歴史、制度、教育課程、指導法、心理、就学指導、病理保健、福祉

<実践的指導力と基礎的な研究力量の向上にかかる演習・実習等>
次のものを10単位必修とする。
ゼミ(2単位)、教育実習(4単位)、特別研究(4単位)

<「得意分野づくり」への対応と専門免許へ向けた基盤づくりにかかる選択科目>
次の障害種別7領域から2領域8単位を選択必修とする。
・視覚障害(特論/2単位、指導法/2単位)
・言語障害(特論/2単位、指導法/2単位)
・聴覚障害(特論/2単位、指導法/2単位)
・知的障害(特論/2単位、指導法/2単位)
・運動障害(特論/2単位、指導法/2単位)
・学習障害(特論/2単位、指導法/2単位)
・病  弱(特論/2単位、指導法/2単位)

2)障害児教育専門免許状
本免許状は障害種別に通低する専門的素養をベースにしながら、各障害種別の特性に応じた高度な専門的知識・技能の修得をめざし、教育系大学大学院・特殊教育特別専攻科における養成を想定するものである。現行の専修免許状取得要件(実習を除き16単位)をベースに各大学の特色を生かしたカリキュラムを設定する。障害種別の領域としては次の8領域をおくものとする。

・視覚障害(制度・本質/4単位、心理・病理/6単位、指導法/6単位)
・言語障害(制度・本質/4単位、心理・病理/6単位、指導法/6単位)
・聴覚障害(制度・本質/4単位、心理・病理/6単位、指導法/6単位)
・知的障害(制度・本質/4単位、心理・病理/6単位、指導法/6単位)
・運動障害(制度・本質/4単位、心理・病理/6単位、指導法/6単位)
・学習障害(制度・本質/4単位、心理・病理/6単位、指導法/6単位)
・病  弱(制度・本質/4単位、心理・病理/6単位、指導法/6単位)
・情緒障害(制度・本質/4単位、心理・病理/6単位、指導法/6単位)

*不登校含む尚、聴覚障害領域を主とする専門免許状では「言語聴覚士」との整合性問題、学習障害領域を主とする専門免許状では大学側のスタッフ問題や「障害児教育免許」としての妥当性、情緒障害領域を主とする専門免許状では「臨床心理士」をはじめとする種々の心理系資格との整合性問題がある。本専門免許状の取得者が実際上どのような職務領域を担うのかは、上述した「学校免許か資質免許か」という問題ともあわせて、継続的に検討する必要がある。

5.「総合免許状」にむけた教育系大学の実状
 免許問題検討委員会では、全国の教育学部・教育大学にアンケート調査を行い、全国大学の障害児教育教員養成の実態について検討してきた。調査の時期が、先に述べた教員養成課程の学生定員の削減及び改組とも重なり、あわせて新免許法にともなう課程認定の作業と重なっていた。現在のところ回収は、全体の半数であり、全体像を明らかにするには至っていないが、特徴は以下のような点であろう。

(1)障害児教育教員養成の学生定員
 障害児教育教員養成の学生定員も全体の削減にあわせて削減されるという傾向にある。障害児教育教員養成の適正規模については、教員養成の1県1教員養成の原則や今後の障害児学校の教員採用とも関わるが、学生定員の削減の幅については各大学で相違がある。

(2)障害児教育教員養成の類型
 各大学での全体での学生定員削減との関係で、障害児教育教員養成については、いくつかの類型がある。大きくは、3つの類型であり、1)障害児教育教員養成課程、2)養護学校教員養成課程の維持、3)統合型教員養成課程への包摂という形態である。それぞれについては、次のような特徴をもつ。1)障害児教育教員養成課程(東京学芸・宮城・愛知・愛媛・福岡・(金沢)・(大阪)) 既に複数の障害児教育教員養成課程のあったところで、これまでに障害児教育教員養成課程として改組してきたところである。この類型であっても、学生定員の一定の削減は免れていない。しかし、例えば、福岡教育大学のように、既存の障害児教育教員養成課程の中に、あらたな専攻(視覚障害・重複など)をおき、視覚障害、聴覚障害、精神発達遅滞、肢体不自由、重複障害、言語障害の6専攻を設定し、また、障害児教育実践センターの強化を行ったところも存在する。未回収ではあるが、大阪教育大学でも視覚障害のコースの設置も計画されている。そこでは、複数の障害児学校免許状の取得が推奨されており、そのカリキュラムなどが模索されている。2)養護学校教員養成課程の維持(岐阜・鹿児島)これまで養護学校教員養成課程が存在し、改組後も存続する方向をとるところである。ここでは、教員養成課程の学生定員の削減もあるが、学内的にもその課程としての存続の合意があったものと推察されるが、そこでの教訓が明らかにされる必要があるだろう。
3)統合化教員養成課程内への吸収
大部分の養護学校教員養成課程単独で設置されていたものが、統合化教員養成課程の中に包摂されたものである。その中にも、いくつかのサブタイプが存在する。
 @課程内コースとして独立(学生定員は変わらず、ないし若干の削減)のサブタイプ
  ・学生定員が変わらない:福島・茨城・宇都宮・埼玉(20→25へ5名増?)
  ・横浜国立・静岡など
  ・学生定員の若干の削減:岩手・山梨・滋賀(専修名称であるが、独自に入試を行う)・宮崎
 A教育学系・コース内での障害児教育専修ないし分野という形態となるサブタイプ
  ・コース内ではあるが、定員の一部を独自入試で確保(和歌山など)
  ・コース内で、独自入試を行わず2回生以降、分野・専修という形で分かれる(奈良教育など)
  ・コース内に専修などの形態で養成はあるが、それ以外にコースでの養護学校免の取得と特別な
   ニーズ教育を志向する:鳥取、隣接の専修との関連を強化し支えあう体制とする
   :福井─発達科学系障害児教育コース・臨床教育科学コース、などのサブタイプ

(3)基礎免との関係とカリキュラム
 基礎面での小学校へのシフトが強まっている。中学部・高等部の障害児学校の教員養成上いくつかの問題点も指摘し得る。なお、カリキュラムとしては、臨床の重視、体験的観察参加・ゼミの系統化などの特徴を指摘していたが、教員養成全体で教養科目や教職科目の開講なども増えてきている。なお、課程認定上での「教科又は教職」欄への位置づけについては、できた大学(和歌山)とうまく行かなかったところ(福井)が同時に存在した。

(4)他資格との関連
 いくつかの大学で福祉系の新課程の構想があり関与していたようであるが、それが実現しているというわけではない(福井・奈良)。なお、言語聴覚士資格との関係で、横浜国立や愛媛での模索がある。

 総じて、大学における障害児教育教員養成の変化は、大学として専門性をもつ障害児学校教員を計画的目的的に養成するという角度からみれば、その姿が見えにくくなっているといえる。特に、障害児教育教員養成については教員養成のブロック化と単科中心の拠点校方式で障害児教育教員養成課程を設置する動向もみられるが、地域の障害児教育の実情にしっかりと目をむけた障害児教育教員養成という視点から、各大学での位置づけを再度明確にする必要があるといえよう。

6.今後の検討課題
 以上、免許状保有率の向上と「総合免許状」案に特化した「免許問題」について、本委員会としての提言と報告をしてきた。最後に、本委員会におけるこれまでの議論、並びに直接・間接関与してきた「免許問題」に関する議論を整理し、さらなる検討に期待しつつ最終報告の結びとしたい。
1)障害児教育教員免許の再構造化について
 本委員会の「総合免許状」案は基礎と専門という2種類であるが、学習指導要領の改訂に伴う交流教育のいっそうの進展、75条学級や通級指導教室のいっそうの拡充、そして盲・聾・養護学校のセンター化の促進を展望して、現行の2種免を交流を行う通常学級教員の必須免許、同じく1種免を75条学級・通級指導教室教員の必須免許、専修免許をセンター化を果たした「障害児(特別)学校」教員の必須免許としてはどうか、という提案がある(河相,1999)。
 また「特別な教育的ニーズを有する子ども」への適切な対応をしうる教員養成という観点から、新免許法における障害児教育関連科目の履修を教育・心理系においてもいっそう進めて、通常学級教員やカウンセラーの障害児対応技量を高めるべきだとの提案もある(渡部、1999)。
 これらは上述した教育系大学の改組状況と今後の学校教育改革の展望と密接に関わる問題であり、さらなる検討が望まれる。

2)異職種免許との整合性・役割分担について
 「総合免許状」については独自の教育ニーズと制度的基盤から、とりわけ聾教育界において少なからず批判のあるところであった。しかし、言語聴覚士法の制定によって聾学校教員免許における専門性をどのように捉えるべきかが鋭く問われてきている。一方、通常学級における障害児の対応、通常学級における多様な病理的現象への対応という差し迫った課題から、スクール・サイコロジスト、スクール・カウンセラーといった異職種の学校教育への導入とそれに対応する複数の資格(臨床心理士、学校心理士、発達心理士等)が台頭し始めている。加えて、「寄宿舎教育」のスタッフとして重要な立場にありながら、その資格要件、処遇条件が未整備な「寮母」問題も指摘されている。
 今回の提案である「総合免許状」の実現に際しても、かかる異職種との養成・実践における整合性や役割分担に関する検討は避けて通ることはできない。各資格制度の動向、養成の実際、実践現場への登用の実態を把握しながら検討する必要がある。

3)小・中・高・中等学校に対応する障害児教育教員免許の問題
 新免許法ではいわゆる基礎免許による、盲・聾・養護学校の各学部への縛りは緩和された。しかしながら、「生活年齢」を重視して、それぞれの教育階梯に対応する障害児教育教員免許を構想する必要性も提起されている。今回の「総合免許状」案の延長線上で考えられるものなのか、新たな免許状構想案として捉えるべきなのか、その必要性・妥当性・現実性はいかなるものなのか。上述した2点との関連で検討する必要がある。

4)新免許法施行後の実態把握と評価作業
 以上とかかわって、新免許法における障害児関連科目の必修化や「介護等体験特例法」の施行が実際の養成システム、カリキュラムにどのように具現化され、それがいわゆる通常学級教員の障害児教育ないし特別なニーズ教育の観点からみた資質向上においてどの程度機能するのか、という問題については計画的にフォローアップしていく必要がある。問題はこと特殊教育研究部門だけでは対応できないものであり、この点でも教大協全組織を挙げての対応が求められるところである。

<文献>
小川克正・廣嶌忍(1997):障害児学校教員採用試験の8類型-都道府県等52実施例にみる-、岐阜大学教育学部治療教育研究紀要18号、19-30.
河相善雄(1999):教育職員養成審議会答申とSNE、SNEジャーナル4(1)、42-60.
渡部昭男(1999):教員養成の将来展望-「特殊教育」教員から「特別なニーズ教育」スタッフの養成へ-、第22回日本教育大学協会全国特殊教育研究部門合同研究集会・関東地区東京大会要項、88-89.