P.学力低下への対応についてどう考えるか。
1.成績比較のグラフを見ると、全体的に必ずしも学力が低下している教科ばかりではないことが分かる。国語のグラフでは、前回に比べて向上しているものが80%に達している。他のグラフも成績が向上しているものが目立っている。そこで、学力低下だと言われる原因を考えた時、グラフから推測できることが2つある。1つめは、成績が前回と比べて現状維持を示しているグラフの割合が少ないとうことである。このことから、新しい学習を積み重ねることで、徐々に前回の学習を忘れたり、新しい学習を理解できていなかったりする生徒が多いのではないかと推測することができる。2つめに、算数・数学や社会のように極端に成績が下降した教科が目立つことである。特に算数・数学では、中1の下降の割合が100%に達している。その原因としては、小6の学習よりも難易度が上がり、学習についていけない生徒が多いという現状があるのではないかと考えることができる。また、社会に関しては、地理の分野や歴史の分野等の多様な分野に分かれており、得意・不得意の単元に分かれることで成績の向上が示されないのではないかと考えることができる。
そこで、上記で述べた学力低下の原因だと推測される2点を踏まえて、成績が向上する為の対策を考えていく。まず成績の現状維持ができていないことから、学習の定着を重要視する為に、単元毎や1時間毎の復習を行うことが必要だと考える。方法としてはプリント課題を出すことや小テストを行う等のものが挙げられる。そうすることで、自分自身で学習の確認ができ、もし理解できていなければ、その時点での再学習に取り組むことができる。その点から、復習は重要であると考える。そして、難易度が上がったり、得意・不得意が目立ち成績が向上しない教科に関しては、授業中に机間指導を行ったり、具体物を使う等の工夫をし、教師が分かりやすい授業を展開していくことが大切だと考える。机間指導をすることで、生徒が理解していないところや迷っているところに気付き、教科に対する苦手意識を取り除くことができる。また、教材に工夫を凝らして学習することに興味を持たせることで、不得意分野を作らせないようにすることが学力低下の改善につながると考える。以上のような対策を立てるに当たって、学力低下という言葉を子どもの学習の向上のためだけに当てはめるのではなく、教師の力量向上と共に改善していく必要がある。
2.全国の小中学校6,100校を対象に行った学力テストについて、教科・学年別に見た同一問題の成績評価をみると、全体的に前回に比べて下降しており、特に社会、数学は前回に比べると大幅に下降している。以前から「ゆとり教育」や完全週5日制の導入などによる授業時間の減少と、それに伴う生徒の学力低下が指摘されているように、前回の学力テストとの比較をすると、これまでに指摘されてきたように、実際に生徒の学力は低下しているようだ。
では、このような学力低下を改善するには、どのようにしたらよいだろうか。その対策として、まず一つ目に、「ゆとり教育」を見直すことがある。「ゆとり教育」は、文部省が2002年度から実施したもので、これまでの詰め込み教育からの脱却を目指したものである。現代のような、国際化や高齢化、情報化社会などといった変化の時代には、これまでの画一的ボトムアップでは通じなくなり、今の時代は個性が尊重されるようになった。この「ゆとり教育」は、自分の学びたい分野を選択するという「選択のゆとり」、一度学習したものを十分に咀嚼できる「反芻のゆとり」、そして一人一人が「気持ちのゆとり」を持って個性を育てられるようなシステムをとっている。確かに、このように一人一人の個性を育てる「ゆとり教育」は現代ではとても重要なものである。しかし、例え個性を伸ばしても能力がなければ現代の社会の担い手にはなり得ない。したがって、生徒が「ゆとり教育」の中での学習を徹底的にできるように、教師が工夫し、力を入れて指導に取り組むことが、学力低下を改善する方法の一つであると考える。二つ目は、削減された授業時間を取り戻すために、運動会や文化祭などの学校行事は、週5日制になって休日になった土曜日などに行うことがある。学校行事は休日に行い、また学校行事までの準備もできるだけ放課後や早朝に行うなどして、授業時間を増やす方がよいと考える。三つ目は、学力を伸ばすための教師の努力があげられる。先に述べたような対策をとっても、以前と比較するとやはり授業時間数が少ないので、この減少した授業時間の中で、教師がどれだけ工夫をし、生徒にとって能率のよい授業を展開できるかが問題であると考える。したがって、生徒の学力を伸ばすために、教師が思考を凝らし、工夫して授業を展開することがあげられる。
3.教科・学年別に見た同一問題の成績比較の表を見て、小学5年生から中学3年までの生徒の成績の変化がわかる。まず、教科ごとに見てみると、国語は前回に比べて各学年ともに向上している。理科、英語も国語ほどではないが前回に比べて50パーセント以上が向上した学年がほとんどである。それに比べて数学、社会はほとんどの学年が下降しており、現状維持もあるが、向上した学年はほとんどない。活字離れが進んでいるといわれているが、国語の成績は向上していることが多い。次に学年ごとに見てみると、中学1、2年数学、中学1年英語の成績が特に下降してきていることが分かる。全体的には小学より中学での下降のほうが多い事がわかる。また、学年によって多少差はあるが、教科によって下降した、上昇したというのはほとんど変わらない。
以前は同じ学年の生徒は同じ時期に分かっていたのに分からないことが多い苦なってきていることが分かる。その中でも、全教科ではなく特定の数学と社会の成績の下降率が高い。以前の生徒は同じ問題が解けていたのだからその学年にとって難しいということではないはずである。まず、数学や社会に興味を持つことが大切ではないだろうか。式の計算を実際に日常生活に当てはまるような問題に近づけて見たり、問題を解くことに関して意欲がもてたりするような数学の勉強をしてみてはどうだろうか。また、社会に関しても同じように興味を持つことは大切である。そのためにはまず、教科書だけのテストのための勉強だけでなく、その他に実際に話を聞いたり見学に行ってみたりなどの工夫が必要である。生徒が、社会科に興味を持つことで意欲的に勉強しようという気持ちが湧いてくるのではないだろうか。
4. 学力低下について、学習内容の三割削減ということや、ゆとりある教育としての完全週5日制、総合的な学習の時間の新設に伴う授業時数の減少が大きく取り上げられると考えられる。学習内容の三割削減については、学力低下の主要因として言われているものの、学習指導要領等を見るとある単元で学習する内容を進めた発展的学習については否定していないため、行うことができると考えられる。そうであるにも関わらず、授業時数の減少に伴い教科書の内容を教えるということのみに盲目的に従事してしまい、先を見越した授業を教師が行えていないために学力低下を招いているのではないかと思う。
そのような中で、今回の成績比較を見ると、国語,理科,英語については成績が向上または現状維持であったというものが多いのは、朝の読書時間,実験・体験的学習の導入,総合的な学習としての異文化交流を取り入れるという活動によって、児童生徒にとって主体的な活動を行い易くすることによって学習意欲を喚起し学習活動に繋げられているのではないかと考える。しかしながら、社会と算数・数学については、学習活動の殆どが机上活動によって行われてしまうことによって、児童生徒の興味・関心に訴えかけられていないのではないかと思う。特に算数・数学の授業においては体験学習的な要素は全く無く、その上で教師がどのように児童生徒に動機付けを行うのかが重要であると考える。
また、学力低下に対して対策を講じようと、学校では寺子屋学習などのような土曜日に補習授業のようなことをしていたり、家庭では塾やお稽古事に通わせるということが多く見られている。これらを鑑みると、こどもにとっての「ゆとりある教育」、「心豊かな生活」とはかけ離れているのではないのかと考えてしまう。しかしながら、対称的に土曜・日曜日に家でTVゲームをしたり、ゴロゴロとしているという意見も多くある。この場合には十分な学習時間が確保できずに学力が育まれていないということも考えられるだろう。
学力低下の対策として、ただ学習時間を確保し勉強するということだけでは、以前から言われている「知識偏重型教育」になってしまう。そのようなものではなく、児童生徒が主体的に学習活動に取り組めるように教師は児童生徒の興味・関心の向くものを敏感に察知し、そこから児童生徒に考えることについての疑問点を投げかけるということが求められるものだと考える。