No. 2005,12,25.発行   編集:佐々木直子(H4年度生)

     ろうあ者の要求ー堺編8 

 

ろうあ者と文化、趣味
 このテーマはなにも堺に限ったことではないと思いますが書かせていただきます。
 ろう文化、というものがあり、その昔「ろう文化宣言」ということも多いに世間に問われ話題になりましたがその文化とはまた別の話になります。(このろう文化宣言、のおかげで日本語対応手話を中心として当時話していた私などは非常に肩身の狭い思いを一時期しましたが一過性のものでよかったです。もちろん私はろう者自身が自らの文化を提案し、独自の手話を大切にするということを否定してはいませんが、日本語も手話も生きている人間の言語、単純に文化遺産のように純粋化することに抵抗を覚えました。昔の話です)
 文化活動のひとつとして、以前「ふれあいサークル手話隊」の記事を載せていただきました。ろうあ者と音楽、という非常に難しいテーマに取り組んでおられるサークルです。
 そのほか、ろうあ者の中には、個人的に趣味で文化活動をされている方が多くいます。「安来節」を演じるのがうまい人、手品を極めている人、手話劇に取り組む人、手話落語をやる人、そして踊りに取り組む人などです。女性部では手作り教室で小物作りをやっていますし、ときおり料理講習会が開かれるので、日頃の主婦の包丁さばきを見させていただいています。
 ある人は山登りが好きで、アウトドアが好きで、そして釣りが好きで、、、といったように趣味もいろいろです。釣りをする人は「ぼうず(全く釣れないこと)」状態でないとき、ときどきメールをくれて魚を 持ってきてくれたりしますからありがたいです。堺投釣友会というのも存在します。
 堺では毎年福祉関係者が中心となって「さかい福祉まつり」が梅雨前に大仙公園という仁徳天皇陵に近い大きな公園で開催されます。そのときにかならず、ろうあ者の踊りのグループである「もずよさこいグルー プ」や、個人でやっているけれども「堺にこの人あり」とうたわれる「安来節」が舞台で披露されます。とても好評なのです。

 聞こえないから、もちろん音楽はなかなか難しいものですし、そして聞こえないことによりほかにも制限もあることも確かです。カルチャースクールにいこうにも、手話通訳がなければ学ぶことはできないとか。 でも、こうやってさまざまな文化活動や趣味に身を置いておられる方はたくさんいるのです。踊りなどは、もちろん音楽に合わせなければなりませんが、最初は真似をしているだけ、それが、だんだんリズムが身体の中に入っていき、自分の表現となっていく。それが、醍醐味なのでしょう。市交渉では難しい顔をしたり怒った顔をしていますが、日常の会話でも、文化や趣味の場でもこぼれる生き生きしたみんなの笑顔、それがとてもうれしいのです。

 大阪には文楽劇場があり、私自身人形浄瑠璃を拝見したこともあります。舞台の上部に字幕が出るようになっていて、古文を読めさえすれば人形の様子と台詞と両方楽しむことができます。これは高い技術と高い感性とがある深い芸術だなあと思い帰ってきました。手話劇を楽しむことは多いのですが、完成度の高さで言うとまだまだこれにはかないませんね。映画もそうですね。映画もいろいろありますが、最近では映像の編集がうまくなされていて、劇場で見る臨場感は筆舌に尽くしがたい。残念ながら邦画には字幕がなく、私たちは見ることはできても「聞く」ことはできません。4で取り上げた「愛と平和を語るつどい」の邦画についても、映画会社と問い合わせてやっと字幕をつけることができるのです。
 字幕問題には、作品を作る側から、作品の完成度に対するこだわりは当然ありますので、字幕を挿入して画面を損ねることに抵抗を持っておられるとも聞きます。ですが、人間の感性を育むあらゆる文化や趣味、これが聴覚障害者も当たり前に享受できる社会を切望しています。

安来節

この方は、ずいぶん前から独学で安来節を研究しておられましたが、2002年の堺市ろうあ者福祉協会50周年記念大会の舞台に向けて、手話通訳者のとりなしでようやくプロから指導を受けることができました。旅行の宴会でもいつでも、てぬぐい、5円玉、ひも、着物、かごを持っていれば、要望に応じてすぐに披露してくださいます。とても明るく優しい方なのです。


30周年記念大会での坂本九氏
 今から24年前、堺市民会館で行なわれた堺市ろうあ者福祉協会30周年記念大会でご講演をいただきました。それからまもなく帰らぬ人となられてしまい、ほんとうに残念です。「上を向いて歩こう」などは大ヒットし、アメリカでもメディアに取り上げられたとか。また、福祉にも熱心で手話で歌を伝えようとした方でもありました。ご冥福をお祈りいたします。

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