No. 2010,8,5.発行   編集:吉田優子(H12年度生:ドイツ駐在員)
                   
 ドイツ滞在レポート No.43


「ミュンヘンの聾学校 その3」

 ミュンヘンの聾学校の校舎はとても古いですが、中に入ると、生徒の作品などがたくさん展示されていて、活気にあふれています。(写真5,6)どのクラスも、一クラスに、6名から、12名。担任が一人で授業をしています。体育、美術、家庭科などは、選科の先生が担当しています。学年によっては、人数が少ないため、2学年合同で授業をしているクラスもあります。

写真5 廊下に飾られている子どもたちの作品 写真6 廊下 廊下に飾られている子どもたちの作品


 今回、私は、3年生の二つのクラスで授業参観させていただきました。
ひとつは、健聴の生徒と、難聴もしくは、人工内耳をつけていて手話を必要としない生徒の混ざったインテグレーションクラス。この教室には、写真7のような機械があり、それぞれの机にマイクが設置されていて、自分が発言するときには、マイクをオンにします(写真8)。

写真7 いわゆる集団補聴器? 写真8 子どもの机にマイクがある


机は、半円形に並べられていて、真ん中に近いところに、聴覚障害児が、両サイドに健聴児が座るという形を取っていました(写真9)。

写真9 日本では馬蹄型と言いますね。


 私が見学したのは、日本でいう「理科」の時間。磁石の実験をしていました。二人一組で、先生が示したことを試してみます。そして、どういう結果になったのか、文にする。
ここで、板書の仕方が印象的でした。結果を自分で文にできるよう、先生は、一文に出てくる単語それぞれの頭文字のみを書きます(写真10)。

写真10 実験結果を子どもに書かせるように頭文字を書く


そこで、生徒は実験結果をもとに、自分で考えて文を作り上げる。発表しあって、ノートにまとめていく(写真11)。

写真11 子どものノート


でも、先生は出来上がった正しい文を板書しません。集中して、人の話を聞いていないと、正解がわからない。少々、酷な気もしますが、「どの授業でも、一番大切なことは、言葉。」と担任の先生はおっしゃっていました。また、わからないとき、聞き取れないときは、質問するということも身につくのだと、見学していて感じました。

 もうひとつのクラスは、主に聾、もしくは、重度の難聴児で、手話を必要とするクラスです。こちらのクラスでも、「理科」を見学しました。同じ3年生でしたが、こちらは、「電流」の授業でした。やはり、二人一組になって実験をしていました。こちらのクラスでは、プリントが配られ、実験に使った回路を図式化したものと、それぞれの名称を正しく組み合わせる活動をしていました(写真12)。

写真12 回路とその名称についてのプリント


電池、スイッチ、回路など、すべての名前を手話で表現し、文字化したものを見る。図式に当てはめていく。単純な作業のようですが、初めて出てきた器具の名所を覚えるのはやはり、難しいようでした。
 そのあと、体育、美術の授業も見学しました。美術の先生は、聾の方で、手話のみで授業を進めていました。
 また、パソコン室があり、一人1台パソコンが使えるようになっています。インターネットで調べ学習をしたり、子供新聞の記事を読んだり、算数のゲームをするときに時々、活用しているそうです。
 今回、2つのクラスを見学するに当たって、それぞれのクラスで自己紹介をしたのですが、どちらのクラスでも、日本語、日本の手話について質問されました。「おはよう、朝」などのドイツの手話と似ているものを紹介すると、喜んだり、びっくりしたりしていました。また、「学校」という肩掛けかばんのようなしぐさの手話を教えると、「それはドイツでは、『健康』っていう意味なのに!」と不思議そうでした。
 そのほか、「趣味は何?」など、さまざまな質問を受けましたが、びっくりしたのは、「旦那さんとは、どこで、どういう風に知り合ったの?」という質問を、両方のクラスでうけたことです。日本の10歳の子供はこんな質問するかな、などと考えながら、答えましたが、みんな興味深そうに聞いていました。
 そのほか、ドイツは日本に比べて、子供を大人のように尊重しているなと感じたことがあります。今回の記事を書くにあたって、写真を撮っていいかどうか、まず責任者の方に尋ねたところ、「それぞれのクラスにいって尋ねてください」と言われました。そこで、クラス担任に尋ねたのですが、「それは、直接、生徒に尋ねてみないと」と言われました。どちらのクラスでも、全員が「もちろん、撮っていいよ。」といってくれたおかげで、記事に写真を掲載できるのですが、インターネット上に写真を公開すること、その危険性などについて子供たちはどのくらい理解しているのか、少々疑問にも思いました。