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2010,7,25.発行 編集:吉田優子(H12年度生:ドイツ駐在員)
ドイツ滞在レポート No.41
「ミュンヘンの聾学校 その1」
ドイツでは、州ごとに法律などが決まっていて、教育制度も基本的には各州に委ねられています。なので、公立の学校というのは、州立ということになります。
私の住むミュンヘンには、バイエルン州立の聾学校があります。(写真1,2)
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| 写真1 バイエルン州立聾学校の看板 | 写真2 バイエルン州立聾学校のメインエントランス |
もともと、この学校の敷地内に、聾学校と、寄宿舎がありましたが、校舎が戦前から建っているもので、とても古く、修復して使うことが困難になったため、十数年前に、移設の話が持ち上がりました。新しく建てた校舎に、まず、難聴児学校が移転、その後、言語障害児学校と、寄宿舎も移転しました。移設前は、ひとつの学校の中に、聾児学級と、難聴児学級という形で、存在していたようですが、移設を機に、別々の機関として存在するようになったそうです。その後すぐ、聾学校の校舎も建設される予定でしたが、ちょうどそのころから、ドイツでも、人工内耳が普及し始め、聾学校に通う児童の数が、極端に減ったそうです。そこで、校舎建設の話はいったん白紙に戻り、昨年からやっと再開、現在新校舎建設中で、来年度からの移転が予定されています。
ドイツの人工内耳ですが、日本のものと違い、耳かけ式になっています。(写真3,4)
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| 写真3 人工内耳 MEDEL社製 | 写真4 人工内耳を装用しているところ |
ちょうど、一昔前の補聴器のサイズといったところです。このような補聴器が10年ほど前から普及しているそうで、それに伴い、両耳に装用する子供が増えたそうです。両耳に装用することで、当然のことですが、片耳のときよりステレオのように音を拾うことができるので、聴力が上がります。その結果、健聴児と同じ学校に通う子供の割合が増え、結果として、聾学校のあり方が問われるようになったそうです。私が訪れた聾学校でも、人工内耳を装用している児童は、基本的に両耳装用のほうが多かったです。なので、中には、本当に聴覚障害児なのかと疑ってしまうほど、後ろや横からの問いかけにも答え、滑らかに話をする子供がいました。中でも、一番すごいと思ったのは、生まれたときから全く聞こえなかったそうですが、2歳のときに、両耳に人工内耳を装用し、とてもよく機能しているので、今では、バイオリンを弾くことができるという10歳の女の子がいました。「彼女は特例でしょう」と、学校の先生もおっしゃっていましたが、耳で音を聞きながら、音色を作り出していく楽器を弾いているなんて、本当に奇跡のようなことがあるのだなと思いました。
人工内耳の装用手術は、ドイツでも日本と同じように莫大な費用がかかります。でも、社会福祉の制度の整っているドイツでは、基本的にすべて障害者保険などで、手術費用が賄われているそうです。特に、最近では、政府が、人工内耳の手術を手がけている総合病院に毎年予算を与え、病院はその予算を使って、手術をしているそうです。そこで、病院側は、聾の子供を捜し、手術をするわけですが、ドイツでは、できるだけ早く手術を受けたほうがいいと考えられているので、1歳、2歳で手術をすることが多く、時には、術前の検査不足から、装用後、全く効果の見られない事例もあがってきているそうです。まずは、聾の子供に、そして予算が余ると、使い切ってしまわなければいけない病院側は、そこまで聴力の低くない難聴児を探して、手術をしたりもしているそうで、そのあり方については、少々、問題視されているようです。でも、この制度のおかげで、多くの子供が、両耳に人工内耳を装用できるというのは、すばらしいことだと思います。
そこで、今、どのような子供たちが聾学校に通っているのかということになりますが、私の訪ねたミュンヘンの聾学校の場合、多くが移民の子供たちです。「ドイツに渡ってきたのが、乳幼児期より遅く、人工内耳の手術を受けていない移民の聾児、難聴児がほとんどです」と聾学校の先生が教えてくださいました。そのほか、人工内耳を装用したものの、うまく機能していない子供、人工内耳を装用し、一般の学校でもやっていけそうだけど、親の希望などで、あえて、聾学校に来ている子供たちもいます。
でも、10年前に比べ、極端に児童数が減り、授業をすること自体が難しくなった聾学校では、健聴児の受け入れをしています。逆インテグレーションだそうです。そうすることで、もともと在籍していた聾、難聴の子供たちの発音などもよくなったそうです。健聴児の親としても、少人数制で授業を行っているという点に魅力を感じて、この学校を選んでいる方がいるようです。
次回は、そんな聾学校での授業の様子などをレポートします。