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2007,2,10.発行 編集:吉田優子(H12年度生:ドイツ特派員)
ドイツ研修レポート No.17
2/10受信
「ドイツの教育、日本の教育」
日本でも、ドイツでも、若い人、児童が問題を起こすと、教育のあり方を問いただされていることが良くあると思います。確かに、教育現場の責任は、大きいですが、決してそれだけではないと私は思っています。
また、今ドイツでは、子供たちの学力低下が大きな問題になっています。これは、日本でも問題になっていることですが、昨年、世界各国で10歳の生徒を対象に行われた学力診断で、ドイツの子供たちの水準は圧倒的に低かったそうです。今、政府は、教育のシステムを見直していますが、この先どうなるのか、私も興味深く見守っています。
教育のシステムは、国によって、とても違っていて、一長一短のように思います。もし、完璧なシステムがあれば、すべての国がそれを導入すればいいだけですが、文化の違い、宗教などの関係もあって、本当に難しいのだと思います。

図1 ドイツの学校制度
今回、私のわかる限りで、ドイツのシステムについて調べてみました。まずは、主な流れから。
ドイツでは、秋に新学期が始まります。義務教育が始まるのは、子供が6歳か7歳の時。日本のように、昭和○年4月2日から、翌年の4月1日生まれまでというような明確な、基準はありません。
子供が8月に6歳になった場合、9月から学校に行けますが、1年遅らせることもできます。判断は、保護者に任されています。
まずここで、「基礎学校」grundschuleに、入学します。基本的に4年間で、最終学年になった時、教師と保護者、生徒で面談があり、進路を決定します。
卒業後の選択肢は3つ。
@「基幹学校」Hauptschule, A 「実科学校」 Realschule
,B「高等学校」 Gymnasiumです。
@、A、Bの順に、学力が高くなり、通う年数も、@が5年、Aが6年、Bが9年です。
もし、大学進学を目指しているなら、Bに進むのが基本です。9年の教育を受けた後、卒業試験を受けます。これに合格すると[Abitur]大学入学資格を得ることができます。ドイツの大学は基本的に入試をしないので、高校での成績と、この試験の成績で、大学に願書を出し、審査を受け入学することになります。
次に、Aに進学した場合。Aを終了するときには、試験があり、それに合格すると、「中等教育修了証書」がもらえます。その後、職業訓練をうけて、就職。もし、大学に行きたい場合は、さらに、1、2年補習校[FOS]のようなものに通うのが一般的で、Bに通っていない分の学力を補います。FOSでは、自分が学びたい学部に関して、主に学び、終了時にその学部の修了資格を得ます。@を卒業したときに得るAbiturは、全教科ですが、こちらは、専門科目のみです。その後、大学に進学し、この分野を、学ぶことができます。もし、全科目のAbiturが欲しい場合は、その後2、3年、補足的に勉強して、[Abitur]の試験をうけることになります。基礎学校を終了する時点で、大学進学を考えていてBに通いたくても、学力の少し低い生徒には、学校側は、Aに進学することを勧めます。少々、遠回りしますが、しっかりと基礎を固めてから、大学進学の準備をすることができるからです。
次に@。ここを卒業した人の多くは、基本的に、職業訓練を受け、就職します。が、ここでもやはり、大学進学の道が残されています。@終了後まずは、1年Aの最終学年に編入し、その後、「中等教育修了」の試験を受けます。後の流れは、Aの人がBを目指すときと同じです。が、実際にこれを実行するには、かなりの根気が必要で難しいようです。
基本的に、@、A、Bのどこに進学するかは、両親の意思に委ねられているようです。理由の一つは、10歳の子供が明確に「大学に行きたい」とか、「職業訓練をして、大工になりたい」など、決定することが難しいからです。この点に関して、私はこのシステムがあまり好きではありません。
また、Bへの進学を希望していて、成績が微妙な生徒は、試験を受けて、B、Aのどちらに進学するかを決められるそうです。
このように考えると、日本で言う「留年」、「落第」のようなことを繰り返して、大学に進むようで、日本人の感覚では受け入れにくいかもしれませんが、こちらでは、「それだけ努力して、勉強したことに価値がある」と、認められます。就職の際にも、むしろ、その根性を認められると言った風です。
なので、子供たちの意識自体も違っていて、自分から留年を申し出たり、BからAに移る生徒も少数ですが、いるそうです。「自分には今の勉強は難しいから、もう1年同じことを学びたい」、「一つ下のレベルの学校で基礎を学びたい」。このようなことを自分から言える環境というのは、とても大切なことのように思います。そして、それをしっかりサポートできるシステムがあるというのは、素晴らしいと思います。
ドイツの教育では、こうして、みんなが自分で道を探しながら、行ったり来たりしながら、最終的な目標を見つけるのだと思います。
こうして書いてみると、子供たちは自分の学力にあった学校に通うことができ、しっかりと学べるように思えます。が、実際、世界的に見て、子供の学力が低いのは不思議なことです。1つは、学習時間が短いこと、朝8時から昼12時半が、一般的です。働いている保護者のために今は、学童のようなものがありますが、これはあくまでも子供預かるところであって、授業が行われるわけではありません。また、日本に比べると、休暇も多くて、長いです。単純に考えて、授業時間が短いということは、内容が薄い、もしくは少ないということです。そこで今、政府は学校の授業時間数などの検討をしているようです。
また、聞いた話ですが、@のように学力の低い子供が通う学校では、学級崩壊がおきやすく、@、A、Bの間の学力の差はさらに広がっているようです。
その他、日本人から見て、面白い授業として、「宗教」、「ギリシャ神話」などがあります。
「宗教」は、「カトリック」、「プロテスタント」、「イスラム」など、主なものがあり、どれにも属していない生徒は「道徳」の授業を受けるそうです。
このような教育を受けてきたドイツの大学生を見ていて思うことは、「自分で勉強する」ということです。日本の学生は、入学した時点で燃え尽きていますが、ドイツの学生は、自分から進んで勉強しますし、勉強の仕方を良くわかっているように思います。小さな頃から、プレゼンテーションや、討論をたくさん経験してきているからだと思います。
ドイツで、もう一つ重要なこと、「praktiker」です。直訳すると「経験者、実務家」ですが、職業訓練を受けた人のことです。就職の際、どのようなことをしてきたのかというのが、とても重要なようで、みんな、いくつかの経験を積んでいます。
高校終了後にする人も入れば、大学を半期休学して、自分の興味のある、企業で訓練をしている人もいます。ここでも、しっかりしたシステムがあり、大学側がpraktikerのための休学を認めていること、たくさんの企業が学生を受け入れる体制ができていること。これなしには、成り立たないと思います。この経験で、就職先を見つける学生も少なくないようです。
ほかに、興味深いのは、国外で経験を積んできている人が多いということ。高校卒業後、多くの人が1年ほど、進学せずに、国外に行ったりしています。一つは、国外での職業訓練。ほかには、私が去年参加していたようなボランティアプログラムへの参加。興味のある国に、2、3ヶ月旅に出る、語学力をつけるために1年間留学したり、オペアとしてその国に住んだりする...と、いろいろな方法があります。
私は、日本の学生もこのような経験をするべきではないかなと思います。視野が広がるし、自分の体で感じて何かを得るということは、本当に大切だと思うからです。今の日本では、1年海外に行ってから、大学進学と言うと、「怠け者」のような感がありますが、決してそうではないと思います。もう一つの問題は、ヨーロッパのように他の国と陸続きでないこと...
今、日本でも、大学を秋からにしようかという話がありますが、その時間を、有意義に活用できるなら、とてもいいことだと思います。でも、もし、学生に何の情報も与えず、ただ半年空白の時間を与えるのでは意味がないと思います。もう、18歳なのだから、その時間に何をするか自分で探すべきかも知れません。でも、高校卒業まで、時間に追われて勉強してきた日本の学生にとって、それは難しいことのように思います。だから、もし、システムを変えるのであれば、その中にいる学生に情報を与えてサポートしてあげる必要があると思います。その際に、このヨーロッパの学生のしていることはとても参考になると思います。
今回のレポートは私のわかる範囲内で調べたことなので、もし、間違いがあったら申し訳ありません。また、ドイツは教育に関しても州の法律に基づいていますし、今でも、旧西ドイツと、旧東ドイツでは、違いがあると、聞きます。
今回私が調べたのは、主に、私の住むミュンヘン、バイエルン地方のシステムです。