No.  2006,7,13.発行   編集:佐々木直子(H4年度生)

     ろうあ者の要求ー堺編10 

 

「自立支援法その後」
 今回は4月1日から施行された「障害者自立支援法」をめぐる話題に触れたいと思います。
 ろうあ者関係で気になるところは、新しい体系の「地域生活支援事業」に含まれる「コミュニケーション支援事業」です。
 新しいサービス体系は大きく分けて「介護給付」「訓練等給付」「自立支援医療(旧育成医療、旧更生医療、旧精神通院公費)」「補装具」 「地域生活支援事業」となっており、そのうち「介護給付」「訓練等給付」「自立支援医療」については4月から自己負担が決まっています。サービスにかかる費用の10%を利用者が負担する制度で、全国で、この自立支援法の影響で、施設退所者が出ているとのことです。また、通所施設では「利用控え」があり、これは、退所に至らなくても、日割り計算で請求が来るので「今月はもうこのくらいでやめておこうか」と、通所を休む現象です。施設の給食費についても実費負担(人件費含む) が生じています。
 ただ、利用費負担の上限が4段階に設定されていて、最初は低所得2(障害基礎年金1級のみの所得の人)の24600円であっても、生活援護課に申し立てをすることによって、段階的に利用費負担上限が引き下げられ、次には低所得1の15000円に、最終的には生活保護世帯に相当する0円になる措置もあります。実費負担についても軽減の措置があり、負担は始まりましたが、安くなる方法もあるとのことです。ですが、この法律が施行されたことによって、施設利用者、居宅サービス利用者に影響が出ていることは事実です。

 6月21日に、堺市で「障害者自立支援法を考える市民のつどい」が開催され、ろうあ協会からも代表を派遣しました。全体で109団体700名の参加があり、「自己負担の減免措置を講じてほしい」などの要望が出されました。
 リレートークもあり、さまざまな障害種別の人に交じって「手話通訳有料化反対」を手話で叫んできましたが、その「手話通訳有料化反対」 の言葉も、現在負担が始まっていて生活に甚大な影響の出ている障害者の人たちの訴えに比べれば、まだまだ軽いと思ったくらいの熱気を感じました。
 「成人した息子が重度の知的障害を持っていて、施設に通わせて、休日はガイドヘルパーも使って、生活を豊かにしてあげたいけれど、利用料の負担を考えると控えざるを得ない」 「現実に負担が始まって、いつお金が底をつくか、いつまで施設に通所できるかわからない」 などなど。
 障害者自立支援法の中身すべてが悪いとは一概には言えませんが、この「利用料の負担」については賛成できません。
 今は堺市では手話通訳を有料化するという話は聞いていません。かといって、有料化しないという話も聞いていません。私たちろうあ者は「コミュニケーションをすることは当然の権利。話をすることにお金を払うのはオカシイ」と思っています。ですが、視覚障害、身体障害の人は、現実に今歩くことに、生活の上で障害を補うのに利用料を払っています。いつかは「他の障害の人も払っているのだから」とろうあ者だけ無料ではすまなくなる日が来るのではないかと思います。

コミュニケーション支援事業と手話通訳者
 コミュニケーション支援事業は、聴覚及び言語に障害のある人に対して行なわれる支援で、「手話通訳」と「要約筆記」の二つがあります。
 10月から施行されるこの分野。 法律には「自己負担1割」は明記されていません。負担が生じるか否かは市町村の裁量にまかされることになります。
 ところで、手話通訳者の定義は何でしょうか。
 本来なら、国家試験にパスした「手話通訳士」と都道府県の養成事業を終えて登録した「手話通訳者」がそれにあたると考えるのですが、実際二つを合わせても、ろうあ者のニーズに応えられる人数にはほど遠く、また、制度自体が成り立たないため、「手話奉仕員」もこれに加えられています。「手話奉仕員」は、厚生労働省の奉仕員養成講座を修了した程度で、日常会話が可能なくらいの技術の人たちです。
 「手話奉仕員」を「手話通訳者」のレベルにするためには、奉仕員の人の努力も必要で、公的な手話通訳者養成事業が必要ですが、障害者自立支援法では、都道府県が養成事業を行なうことになっていて、市町村には義務がありません。大都市特例も障害者自立支援法では外されていますので、堺市は政令指定都市にはなりましたが、義務ではなくなりました。でも今年に限って言えば、新しく手話通訳者養成講座の受講募集がありました。お隣の政令指定都市の大阪市では今年から、残念ながら廃止になりました。
 上手な手話通訳を派遣してほしい、は、ろうあ者の願いでもあります。
 若いろうあ者から高齢のろうあ者まで、対応できる技術を持った手話通訳者を増やすこと、自己負担の問題も問題ですが、制度の中身を良くするために、人材の育成は急務です。堺市においても、手話通訳者養成講座を廃止しないでほしいと要望しています。
 この他にも、手話通訳登録者実技特別研修も年10回開催されます。
 研修の中身については「通訳現場に則した内容にすること」「ろうあ者の意見を取り入れること」などをめざして、ろうあ協会の手話対策部と、障害福祉課でカリキュラムについて話し合いを持っています。このカリキュラム作りに私も関わっており、「手話通訳養成講座」と内容が重ならないように、また、堺市の登録手話通訳者の課題に則することができるように、堺市のろうあ者の手話が正しく理解されるように、頭を悩ませているところです。が、よりよい仕事を残せるよう、先輩方の知恵も借りながら奮闘している次第です。

ろう盲者の「触手話手引き制度」
 障害者自立支援法が成立するまでは、政令指定都市にふさわしく、堺市独自で事業をやろうと、ろう盲当事者、ろうあ協会、障害福祉課で、「新しい制度はどうしようか」と語り合っていましたが、大都市特例が外されたことにより義務ではなくなり、夢に終わりました。
 現在は従来のまま大阪府の「チケット」による上限500時間の制度、視覚障害者ガイドヘルパー(自立支援法では「移動支援」という= これはすでに自己負担が始まっている)、堺市手話通訳派遣制度の中での弾力的派遣の3つの制度を活用して、なんとか、不十分ながらも、ろう盲者の外出や情報保障が行なわれています。
 なお「移動支援」については9月末まで「介護給付」の枠に入っていて、10月から「地域生活支援事業」に移行することになります。その時点で、自己負担がどうなるのか、サービス提供責任者はどこになるのか、変わってくるかもしれません。

堺市障害福祉計画等検討懇話会
 障害者自立支援法で定められた「市町村障害福祉計画」(第3次長期計画とは少し別)を策定するための、学識者、障害福祉担当官、障害者団体、障害者関係団体の代表が集まった懇話会です。堺市では6月27日にスタートしました。これにはろうあ協会、中途失聴難聴者協会の代表も参加することができています。当事者の意見、関係団体の意見を少しでも反映していくために、代表としてしっかりと意見を言わねば、と肝に銘じています。この懇話会では、堺市が平成21年開所をめざしている「(仮称)健康福祉プラザ」の中身についても話し合いがされる予定です。このプラザの基本構想については平成16年から、毎年話し合いが行なわれていて、私としては途中から入った形になりますが、7月1、2日に身体障害者団体連絡協議会で研修に参加した人は、倉敷にある「健康福祉プラザ」も見学してきたそうです。堺市に開所するのはどんなプラザになるのか、今は資料に言葉でしか載っていませんが、ぜひとも勉強させていただきながら、話し合いに参加したいと思います。