新教育課程研究協議会 (1999年12月5日 up)   

99年11月6日 本学にて開催

第3分科会「新しい障害児教育の課題と教員の力量形成について」
司会:志村 洋(福岡教育大学教授)
    藤田 庸久(福岡県教育庁主幹指導主事)
シンポジスト: 新谷 喜之(文部省特殊教育課課長補佐)   新谷氏の提案
         山口 俊(佐賀県教育委員会特殊教育係長) 山口氏の提案
         松原 太洋(福岡県立聾学校教諭)       松原氏の提案
質疑応答
司会者のまとめ

司会の志村洋氏(手前)
      藤田庸久氏(向こう側)
文部省の新谷喜之氏
佐賀県教育委員会の山口俊氏
福岡聾学校の松原太洋氏
まとめをする藤田庸久氏


  盲・聾・養護学校の課題と教員の資質
                      文部省初等中等教育局特殊教育課 新谷 善之

┌───────────────────────────────┐
│これからの盲・聾・養護学校の課題と教員に求められるものは何か。    │
└───────────────────────────────┘

1.新学習指導要領の趣旨の実現
○ 幼稚園、小学校、中学校及び高等学校の教育課程の基準に準じた改善
  @ 豊かな人間性や社会性、国際社会に生きる日本人としての自覚を育成すること
  A 自ら学び、自ら考える力を育成すること
  B ゆとりある教育活動を展開する中で、基礎・基本の確実な定着を図り、個性を生
    かす教育を充実すること
  C 各学校が創意工夫を生かし特色ある教育、特色ある学校づくりを進めること
○ 幼児・児童・生徒の障害の重度・重複化や社会の変化等を踏まえ、一人一人の障害
   の状態等に応じたきめ細かな指導を一層充実する。
  @ 障害の重度・重複化への対応
   ・養護・訓練→自立活動
     (小・中学部学習指導要領)
     個々の児童又は生徒が自立を目指し,障害に基づく種々の困難を
     主体的に改善・克服するために必要な知識,技能,態度及び習慣
     を養い,もって心身の調和的発達の基礎を培う。
   ・個別の指導計画
   ・高等部の訪問教育 など
  A 早期からの適切な対応
   ・特殊教育に関する地域における相談のセンターとしての役割 など
  B 職業的な自立の推進
   ・職業に関する教科の新設 など

2.盲・聾・養護学校の教員に求められるもの
○ 小・中学校等の教育において求められる教員の資質と共通のものを求められる。
 (例えば)
  ・豊かで幅広い人間性
  ・基礎・基本の定着のための指導や体験的な学習など様々な学習場面に対応し うる指導力
  ・創意工夫を生かした教育活動を展開できる柔軟で豊かな創造力 など
○ 障害に対応した教育についての専門的・総合的知見が求められる。
 (例えば)
  ・障害に基づく種々の困難を改善・克服するための指導についての専門性
  ・障害の重複化に対応できる総合性
  ・多様な障害に関する専門的な相談に対応できる専門性・総合性 など

すなわち、盲・聾・養護学校教員に求められるものは、
┌─────────────────────────────────────┐ 
│※豊かな人間性、確かな指導力に加えて、特殊教育についての専門的・総合的な力   │
└─────────────────────────────────────┘ 
3.教員の専門性の向上と指導体制の整備
○ 教員養成、教員採用、人事配置、研修における専門性の向上
  ・教員養成 複数の障害に対応した専門性と実践的指導力を備えた教員の養成
  ・教員採用 特殊教育について、養成課程で専門的に修めた専門性が適切に評価され
          る仕組み
  ・人事配置 特殊教育の指導分野のリーダーの確保、専門的な指導力を身に付けさせ
          るための人事異動サイクルの弾力的な取扱い、管理職人事への配慮
  ・研  修 特殊教育に関する認定講習等、特殊教育教諭免許状の取得のための工夫
○ 校内体制、指導体制の整備
  ・校長のリーダーシップの下、全校体制、あるいは複数の教員の協力体制による取組
  ・専門の医師及びその他の専門家の指導・助言を求めるなど学校外の専門家との連携

<提案>
1.新学習指導要領の趣旨の実現
 あくまでも私見ということで新しい学習指導要領との関連でお話しさせていただきます。
 ご承知のように盲・聾・養護学校の学習指導要領は、平成10年7月、教育課程審議会の答申を受け本年の3月に改訂・告示を行っております。今回の改訂は、盲学校と聾学校については4回目、養護学校については3回目で、初めて教育課程審議会に対して、小学校中学校などと同時審議、同時諮問、同時答申いった形で行われたわけです。それから学習指導要領の改訂のスケジュールについても、幼・小・中に関しては先行して改訂・告示を行いましたが、高等学校と盲・聾・養護学校については同時に、ほぼ同様のスケジュールで通常の教育とともに本年3月告示されました。これまで小・中学校等が先に諮問・答申がなされ、盲・聾・養護学校の改訂の議論をするときには改革の熱気がさめていたのですが、今回については21世紀の教育をより良くしていこうという非常な熱気の中で、多くの方々に特殊教育とがどういうものか理解していただいたり、ご意見をいただいたりしました。また特殊教育の方から通常の教育に対して積極的に発信をする「特殊教育からの発信」ということを行って審議し、結果として、小・中学校等の学習指導要領に交流教育についての規定が設けられたり、また特殊学級、通級による指導についても小・中学校の学習指導要領の中に組み込まれたということがございます。作業的には同時進行ということでタイトなスケジュールになりましたが、盲・聾・養護学校については小・中学校等の教育課程に準ずる教育を行うわけですから、同時にその意味について検討できたことは非常に大きかったと考えています。資料のように、新学習指導要領の趣旨の実現ということが大きな課題です。そのためにも教員の養成、教員の資質というものは大きなウエートを占めているというふうに考えてほしいと思います。まず今回の学習指導要領改訂の基本方針から私なりに読み取っていった、求められる教員像、資質というのはどういったものかということについてお話しさせていただきます。

2.盲・聾・養護学校学習指導要領の改訂の基本
 盲・聾・養護学校の学習指導要領の改訂の基本としてまず、幼稚園、小学校、中学校及び高等学校の教育課程の基準に準じた改善というものがございます。これは障害のあるなしにかかわらず求められるものです。1つ目の方針として @ 豊かな人間性や社会性、国際社会に生きる日本人としての自覚を育成すること。これを実現するためには教員に対しても豊かな人間性、幅広い視野そういったものが求められています。次に A 自ら学び、自ら考える力を育成すること。これを実現するためにはやはり教員にはいろんな体験的な学習、今回総合的な学習の時間というこれからどう進めていいのかよくわからない、新たな時間の枠が教育課程の基準の中にしっかりと組み込まれたわけです。これから学校で創意工夫を生かして作って行っていくという総合的な学習の時間、そういった体験的な学習であるとか、問題解決的な学習など、学習場面で指導を確実に展開できる指導力というものが必要であろうということです。それから3つ目としては、B ゆとりある教育活動を展開する中で、基礎・基本の確実な定着を図り、個性を生かす教育を充実すること。これは基礎・基本のところをしっかり押さえていこうということです。ゆとりの中で基礎・基本を重視するのが今回の大きな改善の目的です。それから個性を生かす教育と、そのために必要な確実な指導力が教員に求められていると思います。4つ目としては C 各学校が創意工夫を生かし特色ある教育、特色ある学校づくりを進めること。これは特に強調したい点ですが、昨年の9月中央教育審議会から「今後の地方教育行政のあり方について」という大きな課題の答申がなされております。それにもとづいて法律も改正され、今後そういう方向で進められると思いますけれども、これに今後の学校のあり方というものが示されています。これまでは国や教育委員会の指導のもとにさまざまな規制があったわけですが、今後はこれを大きく外していこうと、今後は学校の裁量権限も大きく認め拡大を図ろうということです。校長のリーダーシップの下、各学校が自主性を持って、また責任を持ってしっかりと教育をしていこうという方向性です。国や教育委員会は指導や規制ということではなくて、そのための支援を行うという点を明確にしています。従って各学校が特色ある教育を行っていくためには、教員もそれに伴って柔軟で豊かな想像する力というのが必要です。単に教科書どおり教育委員会にどういうふうに指導をすればいいんですかと聞いているようではいけない、教科書通りやっていくのではないのだ、ということです。この点については特殊教育の担当の先生方というのは子供一人ひとりに応じて教育実践を、非常に創意工夫して実践していただいております。そういった意味では特殊教育では、創意工夫というのは得意分野であると理解しているところです。以上盲・聾・養護学校の教員に求められるものは、小学校・中学校等の教員に求められるものと同じであるという点を、まずしっかりと踏まえていただきたいと思います。

3.一人一人の障害の状態等に応じたきめ細かな指導の充実
 次に改善の方針として、幼児・児童・生徒の障害の重度・重複化や社会の変化等を踏まえ、一人一人の障害の状態等に応じたきめ細かな指導を一層充実する、というのは特殊教育の部分です。
  (1) 障害の重度・重複化への対応
その中でまず1つ目としては障害の重度・重複化への対応。これはその中身として、養護・訓練から自立活動という形で名称を変えるとともに目標、内容を見直すということです。またそこで個別の指導計画を作ることを規定した、それから高等部の訪問教育についても、現在試行として行っているわけですが、来年度から移行措置で正式な形でスタートさせるわけです。ここで養護訓練の改正について、追加資料を見ながら説明させていただきます。まず全体の改善の方針として、障害の重度・重複化への対応、早期からの適切な対応、職業的な自立の推進があり、またスケジュールについてもそれぞれ書いています。このスケジュールについてはかなりの部分で4月から移行措置として実施されることになっています。またこの移行措置についても十分ご留意いただきたい。
  @養護・訓練の改善
 そこで養護・訓練の改善ですけれども、名称については法律上、省令、学習指導要領を改定するというものです。その趣旨は、創設後20年以上たっています、その間に障害者を取り巻くいろいろな環境の変化があります。ひとつは、養護されるとか訓練されるという非常に受け身的なイメージがあり、また中に「・」があることで極めて違和感がある名称ではないかという一般の方からの意見がありました。それからもうひとつは、障害についての考え方の変化です。器質的な障害の部分だけをとらえていた点を、機能低下、社会的不利といった考え方を含めて今回考えようではないかということだったわけです。そこで自立活動という本来の趣旨にふさわしいものにするというのが今回の名称の変更の趣旨です。個々の幼児・児童・生徒の自立を目指し障害に基づく種々の困難を改善・克服する主体的な活動であるというのを支援していく教育活動であるというわけです。教師の適切な指導の下に行われる学校の教育活動、自立を目指したそういった教育活動なんだ、自立活動というように落ち着いていたわけです。ディスアビリティについて、教育としてしっかり行っていくんだということを明確にしたわけです。内容についても従前5つの柱という言い方をしていた分を、5つの区分として指導要領の内容を5つに「区分」し、改訂したわけです。これは専門性よりもむしろ、わかりやすさを重視した改善にしました。特殊教育の基礎的な知識がなくて盲・聾・養護学校に来られる先生方もいらっしゃるということで、そういった方がパッとイメージできるようにできるだけわかりやすくという観点で、そのためには専門性を捨てた部分も「区分」には確かにあります。しかしそれぞれの内容については、専門性を重視した内容で専門家の方からいろいろの意見をいただいて、項目については内容を設定したということです。教師の着眼点を内容として示したものですので、実際の指導は学校の方で工夫して作っていただく、そこに期待する指導がそういうものであるとまとめています。
  A個別の指導計画
個別の指導計画は先ほども述べましたように、これを作成することとしています。これは、義務づけた、規制を加えたというわけではないです。実際、養護・訓練の指導はこれまでも一人ひとりに応じて目標を設定してやっていただいている、当然個別に指導計画が作られているということで、その根拠を指導要領中に示したということです。授業時数についても適切に定めるというような形で、子供一人ひとりに合った形の教育活動が展開されるようにしたというものです。こういった自立活動の指導を充実させるためには、教員はその障害の重度化に対応できる専門性、それから重複化、多様化に対応できる総合性という、見方によったら違った方向かもしれない、そういったものを求められる。そして一人ひとりにきめこまかな指導ができるようにする必要があるということです。
  (2) 早期からの適切な対応と職業的な自立の推進
 そして、もうひとつ早期からの適切な対応というところで、特殊教育に関する地域における相談のセンターとしての役割、これも盲・聾・養護学校の新たな役割として示されているところです。このため教員は障害に関する専門的な相談に対応できる専門性、多様な相談に対応できる総合性を求められているということです。それから、職業的な自立の推進ついては、専門の教科についての専門性の高い教員が必要とされる。

4.盲・聾・養護学校の教員に求められるもの
 盲・聾・養護学校の教員に求められるものは、小・中学校等の教育において求められる教員の資質と共通のものが求められ、かつ障害に対応した教育についての専門的・総合的知見が求められるということです。豊かで幅広い人間性であるとか、基礎・基本の定着のための指導や体験的な学習など様々な学習場面に対応しうる指導力であるとか、創意工夫を生かした教育活動を展開できる柔軟で豊かな創造力徒か、通常の教育で求められるそれプラス、障害に基づく種々の困難を改善・克服するための指導についての専門性、それから障害の重複化に対応できる総合性も必要だ、多様な障害に関する専門的な相談に対応できる専門性・総合性も求められてくるということで、豊かな人間性、確かな指導力に加えて、特殊教育についての専門的・総合的な力を、これはとても理想的な形で要求しているわけです。オールマイティな姿を描いてみました。

5.教員の専門性の向上と指導体制の整備
  (1) 教員養成、教員採用、人事配置、研修における専門性の向上
 これは次の3点目ですけれども、教員の専門性の向上と指導体制の整備ということで、教員の資質うんぬんというところから少しずれるかもしれませんが、教員養成等を考えるうえでぜひ踏まえる必要があるのではないかということで挙げています。先程示しましたオールマイティな姿、これを全ての教員に求めることは難しいだろうと、従ってわれわれとしては、教員の資質向上のために一方では最大限の努力を図っていこうと思っています。例えば教員養成の段階、教員採用の段階、人事に対する配慮それから研修という点でも、そこにあるようないろんなアプローチから盲・聾・養護学校の教員の資質の向上を図っていこうとするとともに、これからの学校のあり方として、指導体制のあり方として、校長のリーダーシップの下、全校体制、あるいは複数の教員の協力体制による取組みを行っていこう。また、専門の医師及びその他の専門家の指導・助言を求めるなど学校外の専門家との連携も図っていこうと、学習指導要領の規定にも自立活動の時間における指導は、専門的な知識や技能を有する教師を中心として全教師の協力のもとに効果的に行われるようにするというのがございます。各学校に力のある教員、ぜひ数名中心となる人を置いていただいて、その人の下に全校の協力体制で行っていくということです。あるいは医師等の専門家との連携も指導要領上書かれている、そういった専門家との仲立ち役、コーディネーターとなれるような教員がぜひ各学校にほしいということです。いずれにしても、そこにございますような教員の理想的な姿をもちまして、それに少しでも近づく方向で教員養成あるいは研修を含めて今後努力していく必要があろうと、それが特殊教育の質の向上につながっていくのだろうと考えています。


  自立活動の課題と教員の資質について
   − 新しい伝統作りを目指して −
                        佐賀県教育庁学校教育課 山 口  俊

1.はじめに
平成11年3月29日に改訂された盲学校、聾学校及び養護学校新学習指導要領は、「平成14年度から実施される完全学校週5日制の下で、各学校がゆとりのなかで特色ある教育を展開し、幼児児童生徒が豊かな人間性や基礎・基本を身に付け、個性を生かし、自ら学び自ら考える[生きる力]を培うことをねらいとして、幼稚園、小学校、中学校及び高等学校の教育課程の基準の改善に準じる」とともに、幼児児童生徒の障害の重度・重複化や社会の変化等を踏まえ、「一人一人の障害の状態等に応じたきめ細かな指導を一層充実すること」を方針として改訂された。
この中で、盲学校、聾学校及び養護学校の教育課程の特性である、障害の状態を改善 ・克服するための指導領域である「養護・訓練」は、自立を目指した主体的な活動を一層推進する観点から、その名称を「自立活動」に変更するとともに、その目標、内容が大幅に改訂されている。 
  本発表では、自立活動を中心に、私が所属している佐賀県内の盲・聾・養護学校の現状に触れつつ、自立活動の課題とその指導において中心的な役割を果たす教員のあり方について意見を述べてみたい。 

2.自立活動の課題
自立活動は、今回の新学習指導要領の中心的な概念である児童生徒の[生きる力]をはぐくむための重要な指導領域であり、長年「養護・訓練」に馴染んできた教師にとっては、発想の転換が必要である。
  例えば、教師主導から子供の主体性重視へ自立活動のあり方を転換し共通理解することが必要であろうし、指導分野等の内容や名称を新しい発想にふさわしい内容や名称に切り替える必要もあるだろうと思われる。
 次に、障害の状態等に応じた個別の指導計画の作成が求められている。個別の指導計画の作成は、それが有効に活用されるか否かが大切であり、記録のための記録とならないようにしなければならない。そのためには、一人一人の児童生徒に対する適切な評価と指導方針、有効な指導内容・方法の記載とその情報の有効活用が継続できるような学校の指導体制の確立が必要である。

3.自立活動を担当する教員の課題
本県の盲・聾・養護学校に自立活動を担当する教員の資質についてたずねたところ、校種により若干の相違があるが、大きく言えば人間性と専門性が際立っていた。しかし、保護者の団体との話の中では専門性に対する要望は根強いものがある。
教員の採用に当たって、盲・聾・養護学校を独立させて採用していない場合、必ずしも専門の教員が障害のある子供たちの教育に携わっているわけではない。人事異動もあり、そのために、それぞれの学校において特殊教育に対する専門性を維持・発展させていくことは大変な課題なのである。

4.最 後 に
  自立活動の課題をいくつか述べたわけであるが、それには教員養成、任用、現職研修等の人事面を基盤とした裏打ちが必要であり、学校長を中心としたリーダーシップの発揮により、盲・聾・養護学校の教育の特色としての伝統作りをすることが必要であるということを述べてまとめとしたい。

<提案>
1.保護者の願い
 私からは地方教育行政にいる立場から、自立活動を中心にしたいろいろな先生方の資質、学校のあり方といったところでお話しできればと思っているところです。私もかつて肢体不自由の養護学校にいたことがあるのですけれども、養護・訓練が新しく制度化されたころから指導に取り組んできたわけですが、その中でやはり保護者の方々と付き合う中で、ひとことで言えば保護者の願いというのは、「わが子を変えてね、変える実力を先生方は持ってね」「一緒に自分たちに沿って歩いてね」「私の相談にいつでも応じて、私を安心させてね」この3つが常にあったような気がするわけです。保護者の願いというのは、今日行政の立場におりまして聞いてみても変わっていないなと、学校でそれぞれ先生方は頑張っているわけですけれども、親というのはやはりそういうことを真剣に思い悩んでいらっしゃるという事実は変わらないということを最近思っています。
 手元の追加資料を見ていただければわかると思いますが、これは佐賀県内のある短大の学生さんが県内のこれから就学しようという障害のあるお子さん、あるいは就学して1、2年の保護者の方にアンケートをとった結果を整理したものをお借りしてきたわけですが、これから就学先をどうしようか悩まれている保護者の見解というのは、友達関係とか地域の子供との関係というのがうまくいくだろうかという、ノーマライゼーションの世界があったり、わが子を理解したり支えてくれる先生や職員の方がいるだろうか、あるいは学校の勉強が自分の子に合うだろうか、そういったところからいろいろ揺れ動いて悩んでいらっしゃるところが見えてくるわけです。実際それで希望する学校が決まったところで何を求めるかということになってきますと、若干様子が変わってまいります。「お願いする以上は子供を育てて、しっかり伸ばしてよ」ということが親御さんたちの本音だということがこれでもよくわかると思います。

2.自立活動の課題
 (1)盲・聾・養護学校における教員免許保有率
 自立活動の問題についての今回の学習指導要領のさまざまな考えは先ほど述べられましたので、私の方は話を進めさせていただきます。先ほどから言われています、自立活動を支えていこうとするわれわれ学校の先生方の専門性とは何ぞやという話になってきたときに、やはり免許を持っている先生の数というのは盲・聾・養護学校の中にそんなにたくさんいるというわけではないという現実があります。私どもの県の場合は採用を盲・聾・養護学校で独立させない関係で、小・中・高の採用でやっていますから、必ずしも免許を持った方が来れるとは限らない、そういう現実がございますし、今度は、採用されてきたとしても長期的な視野の中で人事交流が入りますから、実力がついて「中核で頑張って欲しいな」「彼がいれば安心」と思っているような先生が、小学校、中学校、あるいは高校へ転勤をされるというようなことが繰り返されるわけです。そういった中で、専門性というものは何とか維持していかなければならないというのが現実でございまして、個人の専門性というようなことと、その組織が抱える専門性、両方の視点で物事を考えておきませんと実際の学校の子供たちはなかなか十分な手当てをしてもらえないということが起きてくるわけです。人事課の方は努力をしているわけですが、例えば盲学校、聾学校という世界になりますと我が県では免許を持った人自体少ないので、なかなか専門家の方を配置することができない。1年1年努力をして、力のある方を盲・聾・養護学校の方に据えていこうという努力はされているようです。
 (2)養護・訓練の内容
 さて内容の方ですが、今回来るにあたりまして盲・聾・養護学校の方にお尋ねをしてみました。「今はどのような養護・訓練をしているのですか」「もうすぐ自立活動に変わりますが何か準備をしていますか」という調査による指導を行ったわけです。それぞれの学校が今必死に自立活動について取り組まれているわけですが、今学校で行われている養護・訓練の内容を聞いたところ、学校、障害種が違いますので複雑になるとは言いながら、それぞれの学校の中でも実にさまざまな名称で内容を規定されている、種種雑多という感じがしないでもない。それくらい子供たちの障害がいろいろあるのかと思うわけですが、「養護・訓練の指導内容、方針の決定に関与するのはだれですか」という問い合わせをしたところ、「その子供の担当となった教師」という回答が最も充実しておりました。大きな方針はそれぞれの学校のたまたま専門的な先生が考えて下さる、あるいは養護・訓練の担当の方が考えるけれども、後はそれぞれの指導者が考えるということになっているのだろうと思うわけです。そうした時に一人ひとりの子供に対応する先生の力量というものが非常に問題になってくることがございますので、十分にこの問題を考えていくともう少しその表がすっきりはしないかと考えるわけです。特に今回自立活動というものが子供の主体性ということで、子供中心の世界に置き換えていかざるを得ないということを考えますと、訓練という名称もどうだろうか、また実際の授業の中に起こす活動の名称として子供たちに分かりやすい、自分が何をすればいいのかがわかるような内容の体系と名称が使われていくようになるのかというところは、これからやはり考えていかねばならないという印象を受けました。
  (3)養護・訓練の指導形態と個別の指導計画の実施状況
「養護・訓練の指導形態をどうしていますか」ということを聞きますと盲学校、聾学校、肢体不自由の養護学校においては時間における指導をきちんと組みながら対応されているわけですが、知的障害の養護学校になりますと現実的には教育課程そのものを大きく検討していくという部分が多くて、それに対する対応はあまりはっきりとは出てまいりません。個別の指導計画の実施状況というものが、「養護・訓練に関する資料やファイルなどを整備していますか」という質問に入っているわけですけれども、作っているところと作っていないところがあるわけですね。養護・訓練の時間における指導をきちんとやっているところは作っているのですけれども、教育課程全体の中で取り扱いをするというところになりますと、そのあたりがぼけて見えてこない。そういったことから考えますと、指導要録は当然ありますし、カルテ等が他にはあるんだろうと思うのですが、まだまだ仕事の意識の中に明確になっていない。
 私が養護学校の現場におりましたときに、1番大きく壁を感じたのは何かというと学部の壁、小・中・高といった世界の大きな壁がありました。小学部で一生懸命カルテづくりをやって、縦に繋いで卒業までと思っていても他の学部になってくるとがんとしてそれを受け入れてもらえない、そういったことが昔あったのですけれども、現在もこの内容を見ていますとそういう努力はされているわけですが、自信を持って、胸を張ってきちんと通っているかというとそうもいかない。小学部と高等部の年齢の違い、立場の違いによる役割の違いというものは当然あるわけですが、今回なぜ個別の指導計画を入れたかと考えれば、やはり一人ひとりの子供に対して縦の一貫性を通そうということでしょうから、そういうことを考えていける人々の資質というのが非常に大事になってくる。個人個人の持っている資質の問題ということに加えて、組織の中で上手に強調し合い、連携し合って流していく、そういう能力も他の機関との連携ということと合わせて重要になってくるという印象も持っています。

3.自立活動を担当する教員の課題
資料の最後にそう言った私のイメージというものを示しています。左側が、それぞれ学部が勝手に独立してやっている世界。自立活動を進めるために各学部に1人でも専門家らしき人を位置づけているが、縦の連携はとれていないというのがBのスタイル。Cのスタイルになりますと、貴重な専門的な知識技能のある先生は一本縦に通して大きく組織論として作りましょう、その組織が各学部の方の指導に当たるようにしなさい。Dになりますとそういう方々は各学部にきちんと入ってもらったうえで、縦につなぎましょう。Eになりますと、それらが混然一体となって大きく拡大してきている姿ということになりますが、私の経験からしてもだんだん右の方にいかざるを得ないだろうと、特にこれから個別の指導計画を取り、全体の子供の重度・重複化が進行した上の盲・聾・養護学校の教育を考えますと、こういったことを考えていかざるを得ないのかなと思います。そうなってくるとこれはひとえに、大きな学校経営の中の論理に入り込んでくる一個人の資質だけでなく、そういったことをとらえた校長先生のリーダーシップというのが非常に大事になってくる。またそれを支えるオピニオンリーダー的な役割を担う教師の力量というものが必要になってくるし、それを支える一人ひとりの先生方の資質というようなものが重要になってくるような気がします。子どもが非常に重くなってきている以上、一人一人の資質というものが上手く歯車のようにかみ合っていかないと、子ども達一人一人の世界は救えないかなというのが、横から見ている今の印象でもございます。 


聾学校教育の課題と教師の専門性について
                            福岡県立福岡聾学校  松 原 太 洋

1.聾学校教育の現状について
(1) 在籍者数の減少
 ・20,744名(昭和34年度) ⇒ 6,845名(平成11年度)
 ・聴覚障害のある子供を教育する受け皿の増加(難聴特殊学級、通級指導教室等)
 ・保護者のニーズの多様化とインテグレーションの影響
(2) 障害の重度・重複化、多様化の傾向
 ・重複障害学級在籍率(小・中);特殊教育諸学校全体(44.1%)、聾学校全体(16.3%)
 ・一般学級に在籍する児童生徒の実態の多様化
(3) 世代交代の進行と伝統的な指導技術の衰退
 ・新旧教師の価値観の相違とゼネレーションギャップ
 ・校内での研修体制に係る課題(養訓指導技術研修、転補者研修、初任者研修等)

2.聾学校における教師の専門性について
(1) 伝統的な指導技術(聴覚障害のある子供の理解も含む)
   ・聴覚管理、聴能訓練、発音・発語指導、言語指導等
   ・最新の情報機器への対応(コンピュータ・リテラシー等)
(2) 聴覚障害のある子供を持つ保護者への援助・支援
   ・子供のライフステージを見通したもの(保護者援助・支援プログラムの作成等)
   ・兄弟児も含めた家族への援助・支援(校内での教育相談体制との関連等)
(3) 教科指導についての専門性
   ・「準ずる教育」としての配慮事項(「関する養訓」など)
   ・通常の学校教育の動向の把握とそのアレンジ
(4) 関係機関等(医療・福祉関係機関も含む)の担当者との日常的な連携
   ・聴覚障害に係る最新情報の収集・整理及び活用
   ・地域における教育相談に係るネットワークづくり
(5) 聾学校教育の中身そのものについての理解・啓発
   ・交流相手校(園)に対して(子供、教師、保護者)
   ・地域社会の人々に対して(新レインボープロジェクトや学校行事等を通して)

3.新しい聾学校の在り方を求めて
 (1) 教師全体の総合力で学校の活性化を図る
   ・新しい学習指導要領に基づく教育への対応(「個に応じた教育」の一層の充実)
   ・自立、社会参加を目指した教育内容の整備・充実
   ・学年・学部・学校間の連携、聾学校の中での一貫教育の見直し
 (2) 開かれた学校づくりに向けての課題
   ・卒業生やその保護者への援助・支援(発音矯正、手話ボランティア、読み書き教室等)
   ・地域の聴覚障害に係るセンター的役割(聴力検査、補聴器フィッティング等)
   ・地域で総合的に支援・援助する体制づくり(教育相談体制の充実も含む)

<提案>
現場の立場で、こういう聾学校の姿はどうかということで提案したいと思います。
1.聾学校教育の現状について
  (1) 在籍者数の減少
在籍者数の減少については大きく3つの原因があります。原因のひとつに、出生数があります。合計特殊出生率というのが厚生省の調査によると1,37であり、21世紀後半には、3人の子ども達が1人の高齢者を支えているという、非常に少子高齢化が進んでいる、その風を受けて聾学校の子どもも減っています。聾学校の在籍者数は、昭和34年度20,744名をピ−クとして、平成11年度には6,845名に減っています。一人たりとも増えていません。2番目の原因は、聴覚障害のある子供を教育する受け皿の増加、難聴特殊学級や通級指導教室等で聴覚障害児を受け入れる。また医療福祉機関の中で病院のことばの教室とか福祉センターなどの通園施設、そういうふうな学校教育外の受け皿が増えてきたこと。
3番目の原因が、保護者のニーズの多様化とインテグレーションの影響。インテグレーションを考える際、地域の小中学校に行っているということはいいことだと思います。ただ、通常の学校の中でどういう教育をされているのか、生徒がただのお客様になっていないかどうか、ということを聾学校の立場から心配しています。私が教育相談を担当している時、小学校高学年の子どもの相談が多かったです。どういうことで相談が多かったかというと、まず友人関係。友達の言うことがわからない、伝わらない。それと学力。勉強がついていけない。それで聾学校に帰って来れますかという相談を受けた記憶があります。
  (2) 障害の重度・重複化、多様化の傾向
次に、障害の重度・重複化、多様化。重複障害の子どもの数が聾学校の中で増えています。文部省の平成8年度の調査では、重複障害学級在籍率(小・中)は、特殊教育諸学校全体で44.1%、聾学校全体で16.3%です。福岡県の聾学校の場合は、平成9年度段階で10%未満ということで、全国平均よりか低いということがわかっています。ただし、一般学級に在籍する児童生徒の実態の多様化が進んでいます。例えば、ぜんそくをもっているなど健康上配慮する子ども、早期的な言語的ケアが足りなかったために、同じ学年の子どもと比べてかなりことばの面で遅れている子ども、コンタクトを常用し黒板の字を大きく書いてあげないといけない子ども、行動面での課題がある子どもなどが聾学校の一般学級に増えてきたことが挙げられると思います。
 (3) 世代交代の進行と伝統的な指導技術の衰退
 聾学校の教師は10年勤めて一人前と言われます。人事異動があり、なかなか残れない。
 聾学校が有するノウハウ、例えば、発音指導や言語指導など、そういった指導技術が若い先生たちに伝えにくくなっている状況があります。聾学校の校長会が平成9年度に調査した、聾学校での勤務年数のデータを紹介します。本務教員の数4864人の先生を対象に調べたものです。聾学校5年未満の先生は全体の37%、5年から9年未満は29,3%、それらを合わせた10年未満の先生は66%。学校の中でそれだけ新しい先生が増えているということです。次に、新旧教師の価値観の相違とゼネレーションギャップ。ゼネレーションギャップに関してですが、ベテランの先生方からは「若い先生達にいろいろ教えてあげたいんだが、聞きに来ない」、若い先生方からは「聞きにいきたいんだが、何か近寄りがたい、いつも忙しそうにしている」、そのような話をよく聞きます。次に校内での研修体制に係る課題(養訓指導技術研修、転補者研修、初任者研修等)。このことに関しては、教員養成と現職研修をどう連携させていくかということが課題として挙げられるのではないかと思います。聾学校の中でも新任研修をどうするか、重複障害の子どもに対する指導に関わる研修についても課題の一つとなっています。

2.聾学校における教師の専門性について
 15期中教審で出た不易と流行ということで分けると(1)から(3)が不易、(4)(5)が流行となります。
 (1) 伝統的な指導技術(聴覚障害のある子どもの理解を含む)
 聴覚管理は、例えば、補聴器のフィッティングや聴力検査をする。特に補聴器の技術は日進月歩ですので、データを駆使して子どもたちの耳にどうやって合わせていくかということが大切となってくる。
  発音・発語指導では、パソコンを使ってディスプレイ上に発音する様子を見ながらどのように子どもたちに指導させていくかということが大切となってくる。そういう情報機器を使った技術に関しても問われてくると思います。もう1つが最新の情報機器への対応(コンピュータ・リテラシー等)です。現在では、携帯電話の文字情報を使ってEメールにも接続できるといったものがあるので、そういうものをこれから子どもたちが社会に出た時にどううまく使わせていくか。特に、実用的な読み書きの力をつけさせていくことが学校現場で問われてくるのではないかと思います。
 (2) 聴覚障害のある子供を持つ保護者への援助・支援
 まず、子供のライフステージを見通したもの(保護者援助・支援プログラムの作成等) 特に、保護者は、学校卒業後どのような進路につかせるかという発想になかなか及びません。そのことについてきちんと説明できる能力や責任が必要なのではないか。子どもたち一人一人に応じた具体的なビジョンを提示できる技術が必要なのではないかと思います。次に、兄弟児も含めた家族への援助・支援(校内での教育相談体制との関連等)です。
トライアングルという団体が出している「頼もしいサポ−た−たち」という本があります。
聴覚障害児の兄弟たちの感想が書いてあります。小さいときにどう思ったか、大きくなってどのように感じたかが綿々とかかれています。共通して言えることは、最初は嫌だった。友達からいじめられる。なぜ自分の兄弟に聴覚障害児がいるのかと思った。でも気づいたら福祉関係の仕事についていた。特殊学校の先生になったとかがあります。これからは、聴覚障害児だけでなく、彼らを取り巻く家族・兄弟への支援が大切だと思います。
 (3) 教科指導についての専門性
 まず、「準ずる教育」としての配慮事項(「関する養訓」など)。個人差のあるような一般学級の中でもどう個に即した配慮をするのか、どう教科の目標を達成させるのか、そのような教科の専門性。次に通常の学校教育の動向の把握とそのアレンジ。例えば、総合的な学習の時間においては、聾学校小学部低学年で今までやっていた総合的な言語学習によく似ている。総合的な学習の時間を聾学校の中でどのように取り入れ、アレンジしていくかということが問われてくると思います。
 (4) 関係機関等(医療・福祉関係機関も含む)の担当者との日常的な連携
 特に、聴覚障害に係る最新情報の収集・整理及び活用。聾学校ではこれから人口内耳の子どもが確実に増えてくるのでそれについての情報をどう収集していくか。そしてそれをどう保護者の方に提示していくか。また、最新の補聴器の機種についての情報や障害者を取り巻く情報も変わってきている。福祉制度や障害者の生活支援に関わる情報をどう提供していくかが大切だと思います。次に、地域における教育相談に係るネットワークづくり。
 最近は連携ということがよく言われている。連携というのは人と人とをつなぐということですから、だまっていたら連携はできないわけですね。聾学校の先生も、外に向けて何か関わる力、人と人とを関係づける力、コーディネイトできる力も資質として挙げられてくるのではないかと思います。
 (5) 聾学校教育の中身そのものについての理解・啓発
テレビで手話通訳がついているものが増えています。実際に聾学校の子どもに見せたら、理解できる子が少ない。やはり手話を読みとるのにも言語力が要るわけです。部分部分はわかるけど全体としてわからない。交流相手校の子が名前や趣味を手話で表現したら、かえってわからなかった。コミュニケーション手段について、段階に応じて我々は使い分けている。それを世間一般の人にわかって欲しい。次に交流教育の見直し。人権教育や福祉教育ということで学校訪問が殺到していますので、聾学校を知ってもらうチャンスにしたい。次に、地域社会の人々に対して。
  新レインボープロジェクトとは、平成8年から県立の特殊諸学校の活性化推進事業として進められています。盲学校の針灸や聾学校の手話教室など。社会体験や自然体験などいろいろなことを地域の方々と連携をとりながら行っています。これも理解・啓発の場としていろいろと働きかける余地があるのではないかと考えています。

3.新しい聾学校の在り方を求めて

 (1) 教師全体の総合力で学校の活性化を図る
 聾学校の指導技術を考慮すると、すべてを網羅するオールマイティな先生になるのはなかなか難しい。だから、一つでも得意分野をつくって、その中から聾教育を行う。そういう先生たちが集まれば、学校全体としての総合力、専門性が高まると思われます。その際に必要なことは、校長先生のリーダーシップであり、どう学校についてのビジョンを持ち、児童数減少という危機感を持つかということ。それらがいかに先生達一人一人にしみわたって、現場の先生達はそれらに対して、自分の年代で、ポジションでなにができるかということを常に考える。そういった、トップダウンとボトムアップの意識改革がこれからは必要なのではないかと思われます。
次に、新しい学習指導要領に基づく教育への対応。通常教育では今「個に応じた教育」が大切と言われているが、障害児教育では昔からやっている。ティ−ムティ−チングや総合的な学習の時間、集団の中で個を活かすなど障害児教育から提言できるのではないか。
指導内容、方法の面から提言ができるのではないかと思います。次に自立、社会参加を目指した教育内容の整備・充実。養護・訓練が自立活動とわかりやすい名称に変わった。
障害を取り巻く環境の中に、国際障害分類の中にインペアメントとディスアビリティとハンディキャップとありますが、2000年から、インペアメントとアクティビティ、パ−ティシメントと、新しいエンバイロメンタルファクタ−が入ります。聴覚障害の子どもたちのことを考えますと、情報機器を学校教育のなかでいかに有効に使っていくか、そういう情報機器のリテラシーを使うことに関しても、「自立活動」の中で考えていかなければならないところだと思います。
 次に、学年・学部・学校間の連携、聾学校の中での一貫教育の見直し。聾学校は幼小中高、同じ敷地の中にあります。そのメリットをどう活かして教育ができるか。中・高6年
一環のカリキュラムを作ってみるとか、聾学校同士交流するとか、異校種の学校と交流するとかの取り組みも考えられます。
 (2) 開かれた学校づくりに向けての課題
 これからは、学校の中身をどう地域に知らせていくか、わかりやすく理解してもらうようにするかということの努力が必要ではないかと思います。その1つの試みとして、卒業生やその保護者への援助・支援。東京都では、社会人の聴覚障害者の方への発音矯正だとか読み書き教室等を行っている。そのような卒業生に対するケアをしながら学校のことをわかってもらうのも大切なのではないか。もう1つが地域の聴覚障害に係るセンター的役割(聴力検査、補聴器フィッティンク゛等)あるいは、地域で総合的に支援・援助する体制づくり(教育相談体制の充実も含む)。
 これからは、学校の地域の中での教育的機能をどのようにして図っていくのかということが問われてくることと思います。東京都での早期の教育相談という提言があります。
学校の枠を越えて、福祉・医療、知事部局とか教育委員会とか組織のうえでも連携をとって動きやすいようにしています。早期教育に関わるネットワ−クを作るということで、保護者を取り巻く環境をどう改善していくかが、述べられています。
 以上で私の提案を終わります。

各提案者への 質疑応答

<提案者 新谷喜之氏に対して>
Q納富福岡県においては養護学校教員の免許を有する教員が非常に少なく教育委員会と相談のうえ調査、改善を図ろうと考えるが、教員の専門性の向上について教員の配置において文部省の方で改正、改善していく手だてか指導があるのか。
A新谷:「特殊教育に関する改善・充実協力者会議」第二次報告が平成9年10月21日、各県の教育委員会に通知という形で出され、教員の専門性確保のための採用や研修、配置の改善についての検討内容が示されている。専門性に配慮した教員の配置、人事異動等の配慮、教員採用試験についても含めて提言がなされている。さらにこの報告では、採用後一定期間例えば5年以内にできるだけ当該免許証を取得できる体制をつくってほしいと求めている。各県に対して認定講習の開催に努めるよう求め、大学と連携して行ったり国立特殊教育総合研究所での短期研修を活用する、あるいはブロック単位で複数持ちまわりで研修会を確保するというような、現職教員が免許を取っていくための努力をお願いしたい。

<提案者 山口 俊氏に対して>
Q北九州LD親の会 大曲:指導方針や内容の決定に関与するのは誰かという点で、資料中1校だけ生徒の希望を加えるというのが掲載されているが、その他保護者の希望等を入れることは今後の個別の指導に関わるところで難しい問題か。
A山口:決して難しい話ではないが、その保護者の希望通りにならなければならないということが正しいかどうかは別である。県内のそれぞれの学校についても特に障害のある状況に関しては貴重な情報源になっているのは保護者の意見である。これからはさらに保護者の考え、本人の考えを大切にしていくことになると見ている。
A新谷:学習指導要領に従来からある規定で、「家庭、福祉施設、医療施設等との連携を密にして指導の効果を上げるように努めること」という配慮をしっかりと各学校に求めている。あくまでもその連携というような形でぜひ家庭の意見、本人の意見を充分聞いて指導計画の作成においてもそういったことを配慮してもらいたいと文部省は考える。

<提案者 松原太洋氏に対して>
Q志村:新しい障害分類について、環境的因子・要因までも横並びで挙げられたようだがそれについてどうか。
A松原:あくまでも分類は3つということである。
司(志村):DisabilityやHandicapという言葉が否定的だという批判により、Activity(活動)、Participation(参加・社会参加)という言葉が出現し、「障害」はいろいろな社会的、人的、環境的なバリアから出てくるのだという考え方に変化してきた。そこでActivity「活動の制約」、Participation「社会参加の制限」の2つをまとめDisablementという言葉を作ったが、このDisablementを規定する要因として環境要因はもちろん人的要因などが入ってくることになる。この考え方はバリアフリーを説明する際に大変説明しやすい概念となる。

<全体にわたって>
Q養護学校教員:今回出されている個別の指導計画と、組織化されているアメリカの個別指導計画、IEPについて整理をお願いしたい。
A新谷:性格的には違うものということを明確にしたい。IEPについては「この子供にはどこまでの教育を保証しましょう。どこまでのばしていきましょう」という教育計画であり、親に示す契約関係として位置づけられている。今回われわれが位置付けたのはあくまでも学校の先生が指導するための計画、学校の指導計画を一人一人、個に着目して作るという個別の指導計画であり、アメリカやイギリスの個別指導計画、個別教育計画と明確に区分するために学習指導要領上はあえて「個別の」と「の」をいれている。長期計画や短期計画、学校全体の指導計画、集団に対する指導計画などいろいろな指導計画がある中の個別の指導計画というものを、今回自立活動についてはしっかり作ってくださいということで、契約関係である個別指導計画とは違う性格を持っている。

Q河東小学校PTA副会長 水島:教員配置の問題の中の、教員数の増加について文部省はどのような方向性を持っているのか。
A新谷:盲・聾・養護学校については通常の学級に比べれば手厚い基準を設けており、全国平均で教員1人当たりの生徒数が2、3人という状況である。今行っている定数改善計画が来年度で終わるため、今後の教員定数のあり方については教育助成局の方で検討会をもって議論が行われている。今検討の段階であるため、結論を得るにはもうしばらくかかるであろう。

Q西日本短期大学 葛西:教員養成に関して、教育学を専門としていない大学の教職指導について文部省で何か展望はないのか。
A新谷:教員養成というのは開放性をとっているため教育系の大学だけではなく、いろいろな大学で幅広い人材を養成していただいて優位な方を都道府県の採用試験で教員として登用していくということになる。したがって、いろいろな教員養成があって基本的にはいいのだろうと思う。ただその質的な問題になると大学自身の問題であり、教員の採用率、就職率などで社会的な一定の評価が加わるであろう。
司(志村):教員養成の問題について、これからは大学同士のいろいろな協力関係、パートナーシップが必要になってくるかもしれない。

Q北九州LD親の会 丸伊:個別の指導計画を立てるにあたり、学校外の専門家との連携というのはどのように作るのか、またそれがどれくらいの速度で実現できるのかという見通しを聞きたい。
A新谷:これからの文部省の方向性として、基準をしっかり設け、教育委員会や学校がしっかりとやっていただけるようにお願いをする、またそのための支援を行っていくというものがある。それについては学習指導要領に、力のある中核となる先生が複数いて、その人たちを中心として全教師が協力しあっていくような学校運営を今後していただきますというのを明確にしている。もう一つ、学校の中だけではなく、外部の専門家の意見を求めて適切な指導ができるようにするという決まりを明確に位置付けている。そこから先は、各学校あるいは都道府県の工夫におまかせすることになる。
A山口:専門家の専門性ということの中に、どれだけ専門家を知っているかという能力がひとつある。これからの学校の先生方というのも自分の手に負えない問題を抱えこまず、素直に専門家の助言を得る資質というのが大切である。「その問題にはこういった専門家の方がいらっしゃいます」という助言に対してそれを生かすことで新たな人間関係も形成され、みんなで協力して子どものためにやっていこうという体制が作られる。組織的に何か制度を作ってというのはなかなか難しいだろう。

Q納富:アメリカのIEPは契約の側面も大切だが、その前に学際的なチームによる詳細なアセスメントの結果を他職種の人たち及び学校の管理職、担任教師、親という中でまとめてみんなの共通理解を得る、そのうえで計画も承認してもらい実際の教育に移るというようなプロセスがある。日本の個別の指導計画を立てるときのきちんとした評価が、今の学校の現状、特に通常の学校や学級で行えるのか聞きたい。
A新谷:今回早期からの教育的な対応ということで小・中学部、高等部に関しては「特殊教育に関する相談の地域のセンターとしての役割をしてください」とある。これは単に盲・聾・養護学校に相談した人に対応していくというのもあるが、それだけではなく地域の中の小・中学校には障害の軽度の子どもたちがおり、そういうところについても積極的にアプローチをしていくような方向性でお願いしたいということで規定をした。具体的な人的配置などについては検討中であり、今後できるだけいい形でやっていけるように教育委員会にお願いしている。そういった形で小・中学校の通常の学級に対して盲・聾・養護学校から積極的に働きかけて専門性を出していこうという考えでいる。

<司会者(藤田)のまとめ>
 目指しているのは「生きる力」の育成である。そこで、求められている学校はポリシーを持っていること、そして、その実現の為の展望を持ち、実践的な教育力のある学校であることが大切である。この展望について、学校は、保護者の方にきちんと説明する能力が必要である。実践的指導力(組織的な実践的指導力)についても、子どもは家庭や社会の中で育っているのだから、家庭や地域との連携が必要である。この連携は、それぞれが自分の立場を持ちながら協力しあえるということである。その中での課題として、障害の重度・重複化への対応、早期からの適切な対応、職業的な自立の推進などが挙げられる。目的は、社会への参加、自立するという観点からの課題である。学校は子どもたちが自分の能力を可能な限り伸ばしていけるように支援し指導をしていくわけだが、個人が努力し続けてもできない分野については、周りの人や物や制度からの必要な支援を受けながら、自ら決定し選択でき、自己実現した生活をおくれるようになることが自立になっていくと思われる。そのためには、障害が軽度の状態から重度の状態まで、全体的に多様な子どもがいるのに対して、その中で早期からの適切な対応と職業的な自立の推進についての課題を重視していかなければならない。学校においては、障害の重度・重複化傾向への対応として、養護・訓練を自立活動へと変えていくことや個別の指導計画の作成、高等部の訪問教育の設置をおこなっていくことが大切である。教員の力量形成に関しては、養成、採用、研修、体制の整備について総合的な対応をしていくことが必要である。個別の指導計画に関しては、継続性と一貫性をもつことが必要である。そこで、学部ごとの継続をどのように図っていくかが問題になってくる。考えておかなければならないのは、小学部や幼稚部の段階で考えられる自立の範囲と高等部に至った時にどういう自立の仕方をするかを考えることは違ってくると思われる。あるいは、幼稚部、小学部の発達段階に即して求められる学習内容と高等部段階で求められる学習内容では違ってくる。高等部段階では、どのような場でどのような活動をして社会参加するのかということを具体的に絞っていかなければならないし、幼稚部段階では、どういう可能性を開いていくかという観点から個別の指導計画が作られることになる。ここでの継続性というのは、ただ単に同じことをずっとしていくことではなくて、発達課題を見据えながら、積み上げが利くように、これまで学んできたことが継続、発展できるようにするという観点で、個別の指導計画をずっと一貫して見直し続けることであると思われる。 「特殊教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議」の第二次報告の現職研修の改善のところで、重度・重複障害に関する研修の充実が書かれている。内容は、個別の指導計画、実態把握の方法、指導技術、障害に対応した配慮を重視する必要性についてである。 こうしたことができる教職員体制をどのようにして進めていくのか、それは、教員養成の段階、採用の段階、配置の段階等で解決していくことができると思われる。

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