本部訪問 2005,6/22-7/1.
2005年6月、アメリカのニューヨーク州ロチェスターにあるNTID(National
Technical Institute for the Deaf:写真1)で開催されたPEN-International
(Postsecondary Education Network-International)のビジネスミーティングに参加する機会を与えて頂き、筑波技術短期大学(現筑波技術大学)の大沼直紀学長を始め6人の先生方とご一緒させて頂いた。
NTIDは、1829年創立のRIT(Rochester Institute
of Technology)の1カレッジで、1965年に設立された(写真2:設立認可のサインをするジョンソン大統領)。RITはビジネス、工学など8つのカレッジで構成され、その中の1つにNTIDがある。ロチェスター市にはコダックやゼロックスの本社があり、RITとのつながりも深く、学内にはコダックが寄贈して建てた立派なビルもあった。RITでは学生自らにプロジェクトを行わせ、優秀なプロジェクトは企業側が買い上げることもある。学生たちのプロジェクトの部屋がショツピングモールのようにガラス張りで続いていたのが印象的だった。RITには約1100名の聴覚障害学生が在籍し、半数がNTIDで学んでいる。RITでは約200のプログラムを提供しているが、4学期制のため本学よりも年間で10週も授業期間が長い。
ここでは、PEN-Internationalの模様とNTIDでの支援について報告する。
1.Postsecondary Education Network-International
(PEN-International )(写真3:PEN-International本部)
PEN-International のビジネスミーティング(写真4)に参加したのは下記の機関である(設立年はろうプログラム開設の年を記載)。
| 大 学 名 | 国 名 | ろう学生 受入開始 |
ろう学生数 |
| NTID(National Technical Institute for the Deaf) | アメリカ | 1968 | 1250 |
| TCT(Tsukuba College of Technology) | 日本 | 1990 | 200 |
| Tianjin University of Technology | 中国 | 1991 | 125 |
| Beijing Union University | 中国 | 1999 | 125 |
| Changchun University | 中国 | 1987 | 200 |
| Zhongzhou University | 中国 | 1980 | 200 |
| De La Salle College of Saint Benide | フィリピン | 150 | |
| Bauman Moscow State Technical University | ロシア | 1990 | 250 |
| Institute of Social Rehabilitation at Novosibirsk State Technical University | ロシア | 1993 | 296 |
| Vladimir State University Center for the Deaf | ロシア | 1994 | 60 |
| Academy of Management TISBI at Kazan | ロシア | 2001 | 24 |
| Charles University | チェコ | 24 | |
| Ratchasuda College Mahidol University | タイ | 1991 | 89 |
この他、韓国からのオブザーバーもいた
各国での支援状況が報告された後、今後の取り組みが話し合われた。主要な柱として次の4つが挙げられた。
1. トレーニングとファカルティ・ディベロップメントの充実
ニーズ評価、ワークショップ、教員の連携、形成的・総括的評価
2. マルチメディア、コンピュータセンターの充実
学生への学習支援、教員の教材開発への支援
3. オンラインとwww上のリソースの充実
Webページのリニューアル、リソースの充実、ユーザビリティの改善
4. 評価と研究
アメリカでのトレーニング、各国でのトレーニング、地域でのトレーニング
パンフレットの作成、年次報告書の発行、文化交流
さらに、今後は各国内でのネットワークを展開させること、トレーニングを進めること、
他の国とのネットワークを広げること、すべての結果に対して徹底的に評価することなどが今後の課題として挙げられた。これらを受けてPEPNet-Japanも今後の活動方針や目標が議論されることになるだろう。
世界中に散らばっているので、やはりweb上で必要な資料の収集、養成、支援ができるようにするのが基本で、グローバルな基準で行った上で各国の実態に合わせて修正していくやり方が確認された。さらに2006年度はろう者のリーダーシプ養成のワークショップをイギリスで開くことが紹介された。余談だが、聴覚障害学生の支援を考える者として、必要な情報を短時間に的確に呈示するのは基本だと思うが、各国のプレゼンを見比べると、日本のプレゼンをやった白澤麻弓先生(写真5)がBest
1だった。
今回は、ろう学生のアート展(写真6)も同時に開催され、各国からたくさんの素晴らしい力作が展示され、参加者の目を楽しませてくれた。
| 写真1 広大なキャンパスのNTID 芝生が広くていいですね。 6月下旬なので日本では梅雨ですが、 こちらは青空。さわやかな晴天続きでした。 訪問するならこの時期がベストです。 |
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| 写真2 NTID設立認可のサインをするジョンソン大統領。 ステンドグラスになっている。 |
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| 写真3 PEN-Internationalの本部 NETACの本部も兼ねている |
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| 写真4 PEN-Internationalのビジネスミーティング 8ケ国から14大学が参加 各国の音声通訳者と手話通訳者が一斉に通訳しているのは圧巻でした。 |
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| 写真5 日本の現状報告をする筑波技術短期大学(現筑波技術大学)の 白澤麻弓先生 流暢な英語で、内容もわかりやすく、時間も厳守。すばらしい!! |
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| 写真6 ろう学生の作品展。 世界中から力作が集まっていた。 これを見るだけでも来たかいがあった |
2.RITにおける聴覚障害学生支援
NTID自体がサポートセンターとしての機能を持ち、他に4つのサポートセンターが設置され、担当学部の聴覚障害学生へのサービスを行っている。
2005年度のサービスは、
ノートテイク(46,989時間)、チュータリング(15,103時間)、手話通訳(99,175時間)、 C-Printキャプショニング(7,485時間)、オージオロジカルサービス、発音指導、心理カウンセリング、学習相談、生活相談、技術的支援、アルコール依存症相談などが行われた。
(1)手話通訳
フルタイムの手話通訳者が100名も雇用されており、世界一の規模を誇る。
履修登録をオンラインでする際に、すでに通訳者の配置が決まっている講義もあり、登録画面上にIS(Interpreter
Supported)のマークが表示される。配置が決まっていない講義の場合は、通訳者の配置を依頼でき、数日後にISのマークが表示されるか確認する。学内の通訳者だけでは配置することが困難で不足する分は非常勤の形で外部の通訳者を派遣してもらうことになる。手話通訳サービスは講義以外でも受けられる。2005年度は、講義での通訳が83%
、課外活動での通訳が11%、学校行事等などでの通訳が6%の割合となっている。NTIDでは手話通訳養成のプログラムも提供しており、2005年度は115人が学んでいる。
(2)ノートテイク
ノートテイカーは基本的には同じ専攻の学生が担当し、事前に4時間の講習を受けることが義務づけられている。現在はNETAC(North
Eastern Technical Assistance Center)のWebページ上でもトレーニングできるようになっており、容易に応募できるような工夫がされているが、実態としては不足ぎみで、授業担当教員に紹介してもらったりと日本と似ていた。
評価は学期末に聴覚障害学生やチューター等から受け、悪い場合には指導を受けたり、登録が抹消される。一方優秀なノートテイカーは表彰を受ける。
(3) コミュニケーションサービス
音声・聴覚に関するサービスはCommunication
Studies and Services(CSS)部門が担当している。
1)オージオロジカルサービス
NTIDでは視覚モードがほとんどで聴覚補償などないのだろうと予想していたら、これが大外れ。オージオロジカルサービスも充実していた。2004年度は833人に対して3,147時間のサービスを実施。補聴器ショップの顧客も502人に及ぶ。
人工内耳を装用している学生は、2000年度には30人だったものが、2005年度には150人に急増している。@聴取、A読唇、B発声が改善したと自己評価している者は、それぞれ9割、8割、9割にも達していた。問題点としては、電池の消耗が激しいことやプロセッサを身につけるのが煩わしいといったことが挙げられていたが、最新のモデルではこれらも改善されており、今後ますます装用者が増えることが予想される。
2)コミュニケーションサービス
言語指導についても361人に85単位時間、126人に25単位(未認定)時間実施。加えて、188人に対して2,795時間の個別の言語指導を実施した。いわゆる日本の聾学校での発音指導をイメージすればよく、構音指導が中心だ。
(4)Self-Instruction Center
教職員・学生のために自習センターがあり、手話の受容と表出について自分で勉強したり、通訳の評価を専門のスタッフにしてもらえるセンターがある。2004年度は4,155回、5,606時間利用された。また2つのビデオ作成室では1,926時間ものビデオが作成された。
(5)学習センター
ここでは、コンピュータ、マルチメディア、ビデオ会議システムなどがあり、それらを通して学習支援が受けられる。数学、科学、英語、会計学、就職支援について個別か小集団指導が提供されている。2004年度では38,168回、37,290時間の利用があった。
謝辞:この視察にあたり、貴重な機会を与えて頂き同行させて頂いた筑波技術大学の大沼直紀学長、荒木勉先生、金田博先生、河野純大先生、白澤麻弓先生、須藤正彦先生に心より感謝申し上げます。
| 写真7 学習センター 機器、スタッフともに充実していました。 2004年度では38,168回、37,290時間の利用。 |
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| 写真8 補聴器ショップ。 ここも充実してました。 顧客リストには502人登録してあるので、ろう学生の半数ぐらいが利用していることになる。 |
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| 写真9 ASLを研究し、通訳を養成するプログラム。 学生が手話通訳しているところをビデオ録画し、それを分析評価してくれるスタッフが9人もいるとのことだった。さすが!! |
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| 写真10 自習センター たくさんの機器と豊富な教材が準備されていました。 2004年度は4,155回、5,606時間利用された。 また2つのビデオ作成室では1,926時間ものビデオが作成された。 |
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| おまけの写真 4年制大学へ移行後のアイデア?が膨らんできた大沼学長。 (実は遠くに浮かぶ気球です) おまけの美談: 一足先に帰国することになった学長が、「明日午前4時半に出るから、皆起きてこなくていいよ」とおっしゃったので、皆「明日は7時まで寝られる」などと言ってそれぞれの部屋へと戻っていきました。ところが翌早朝4時半、お見送りのために皆起きてきているではないですか。でも、それを見抜いていた学長は30分も前に出発されていました。 皆が起きてきてくれた事を学長は大変感動され、ご自宅でのバーベキューに招待してくださいました。 |