自閉症に関する本格的な臨床と研究は、1943年に米国の児童精神科医であるカナーが、発達の早期から極端な社会的孤立と同一性保持を特徴とし、特有なコミュニケーションの問題をもつ11例のこどもたちの報告を行ったときから始まりました。その後およそ60年が経過しましたが、近年になって自閉症とその近縁の発達障害に関しては様々な新しい知見が示されています。
診断や評価に関するガイドラインの設定や認知障害についての詳細が明らかにされつつあること、治療や教育について確実な効果があるものは何かがわかってきました。
私は、もともとは精神科医としてこどもの精神疾患の診療に携わっていました。しかし約10年前TEACCHの初期訓練を受けて、日本では、発達障害児の診断・評価・教育、保護者への支援は十分発展していないことを痛感しました。そのことが契機となって、養護学校の先生を養成する課程をもつ福岡教育大学で教員養成に携わりながら、効果的な教育支援のありかたについて実践的な研究を行っているわけです。
今回は、まず自閉症圏障害を米国精神医学会の診断基準(DSM−W)をもとに解説し、発達障害の診断を告げることの重要性や診断告知後の保護者の気持ちについて解説します。次に教育方法としてどのような原則が大切なのか、とくに米国ノースカロライナ州のTEACCH部での指導の原則をお話します。また福岡市で定期的に開かれているTEACCHプログラム研究会の参加者が実際にどのような工夫をしているのかを紹介します。自閉症の人々は生活するうえでの困難を抱えていますが、彼らの几帳面で律儀な性格やユニークな才能を私たちが素直にうけとめることで、私たちの生活も豊かになっていく可能性があると思います。自閉症の人々のもつすばらしさを発揮してもらうためにも、自閉症児者の家族や支援を行う人たちを地域で支えていくための特別な工夫が必要と思われます。