【音楽科と総合的な学習との有機的関連】

 各教科等で得られた知識や技能が生活の中で生かされ,総合的に働くようにすることを意図した総合的な学習では,各教科等の学習との有機的な関連を図りながら,知的好奇心や探求心を持って,試行錯誤を繰り返しながら,自ら考え,判断し,表現するとともに,社会の変化に主体的に対応し行動できるようにすることを目指した学習活動を積極的に展開していくことが重要です。平成10年12月に告示された「小学校学習指導要領」においても,次のようなねらいをもって創意工夫を生かした学習活動を行うことが示されていますが,これからの総合的な学習では,既存の各教科等の間の内容や方法のいくつかを関連づけて行うような合科的な学習をさらに発展させ,既存の教科の枠を越えた視点から学習内容を取り上げ,課題を追究することが求められています。
1)自ら課題を見つけ,自ら学び,自ら考え,主体的に判断し,よりよく問題を解決する資質や能力を育てること。                   
2)学び方やものの考え方を身につけ,問題の解決や探求活動に主体的,創造的に取り組む態度を育て,自己の生き方を考えることができるようにすること。
 ただ,総合的な学習に取り組む場合,いきなり教科の枠を越えた課題の追究といっても,すぐにその内容や方法が導き出されるものでもありません。ただ形式的なものだけを模倣した学習を展開しても,いわゆる「活動あって課題なし」というような状態になってしまって,その結果として,教師だけではなく子供たちも含め,授業に混乱が生じてしまうことになりかねません。このような事態を避けるためにも,各学校においてどのような方針でこの時間を運営するのかについて十分な検討が必要です。その中でまず音楽的活動を中心として授業を展開する場合でも,まず他の教科等の内容を少し取り込んだ形の教科総合学習的な活動や,複数の教科等と関連させて学習を展開する合科総合学習的な活動にアプローチし,そして教科横断的・総合的学習へと徐々に課題を多面的・総合的な内容に拡大することによって取り組み方を学んでいく方が,より充実した学習活動になると考えられます。「総合的な学習の時間」は,小学校では3年生から導入されますが,3〜4年生では105時間,5〜6年生では110時間が配当されています。1〜2年生には直接設定されていませんが,生活科がこの「総合的な学習の時間」の前段階的な役割を果たすものとして位置づけられていると考えることができます。「小学校学習指導要領」の音楽科の「指導計画の作成と各学年にわたる内容の取扱い」の項目においても,「低学年においては,生活科等との関連を図り,指導の効果を高めるようにすること」という文言が新たに加えられ,教科間等との関連を図りながら授業を展開することを重視しています。
 ところで,音楽科と総合的な学習の有機的な関連を考える場合,実際にどのような学習活動を展開することができるかということですが,ここでは,国際理解,情報,環境,福祉,表現の領域における具体的な取り組みに関して,どのような課題が設定できるかについて少し例をあげてみます。もちろん,これらの領域は操作的なものなので,学習の展開の仕方によっては融合されることも可能です。
[ 国際理解 ] − 異文化を正しく理解すると同時に,自文化についても再認識する。また外国語会話や外国の生活・文化等について慣れ親しむ機会を持つ。<例>「アジアの人々の生活や文化」について学習することを視点として,「韓国」や「中国」等といった単元を設定し,その地域や国について言語,地理,歴史,音楽や美術等の様々な分野から総合的に学習する。
[ 情報 ] − コンピュータをはじめとする情報手段を適切に活用する基礎的な能力を養い,高度情報化社会における情報リテラシーの育成を図るとともに,それらを表現やコミュニケーションの活動,あるいは課題解決のための手段として取り入れる。<例>音楽用ソフトとMIDI(Musical Instrument Degital Interface)を活用した音楽づくり等を通して,コンピュータと音楽とのつながりについて学習する。また国際理解との関連で,インターネットを活用した情報収集・情報交換を行うことによって,その国や地域の音楽文化等について理解を深める。
[ 環境 ] − 自然や社会・文化環境とのかかわりを多面的・総合的に追究することを通して,環境に対する認識や感性を高めるとともに,自分たちの生活環境や社会環境を見つめなおし,そこでの問題解決に向けての自分なりの行動(参加)がとれる態度の育成を図る。
<例>「音・音楽環境を考える」− 学校や自分の町の音探検活動や,身のまわりの音楽について調べたりすることを通して,生活と音・音楽とのかかわりについて気づいたり興味や関心を持つ。
[ 福祉 ] − 福祉に関する体験的活動を通して,福祉的心情・福祉に関する理解や豊かな心を持った実践的態度の育成を図ったり,奉仕や勤労に対する喜びを体得する。<例>老人ホームを訪問し,音楽会を催すことによって,お年寄りと一緒にうたを歌ったり,おどったりして交流を図り,高齢者や社会福祉に対して認識を持つ。
[ 表現 ] − 自分の思いや考えなどを言語や音楽,美術,身体表現等によって豊かに表現したり,他者とのコミュニケーションを通して,お互いに協力して一つの表現を作り上げる楽しさを実感しながら,目標に向かって共に学習活動を進めることができる。<例>表現手段を総合的に学習する場として,音楽を伴う劇(オペレッタ)をみんなで企画・運営し,上演に向けて協力して取り組む。
 これらの活動を実践するにあたっては,ただ単に子供たちに知識内容を教え込むのではなく,学び方やものの考え方の習得を重視し,主体的な学習を推進するとともに,各教科,道徳,特別活動等で身につけた知識や技能を総合的に活用するよう心がけることが必要です。各学校では,地域や学校,児童の実態や興味・関心等に応じてその学習活動を選択し,創意工夫を生かして取り組み,それらの時間が効果的に運用されるよう十分に配慮しなければいけません。これから先の学校教育の場において,この総合的な学習の運営はますます注目されてきます。各学校において横断的・総合的な課題等について十分に検討し,教師間や地域との協力関係や協働体制を保ちながら,社会の変化に対応した学習活動を展開することが,今後大いに求められるところです。

<参考文献>
 吉田 孝 「音楽科教育の立場から見た横断的・総合的学習」『第14・15 回教育研究公開シンポジウム:これからの学校教育とカリキュラム』国立教育研究所,1998年2月,pp.61-69.
 加藤幸次 「教科間の総合化の課題」『授業研究21 総合的学習のカリキュラム開発情報』 明治図書,No.487,1998年10月号,pp.21-23.
村川雅弘 編著 『総合的学習のすすめ』日本文教出版株式会社,1998
 文部省 『新学習指導要領』,平成10年12月

                    (学習創造:音楽科 福岡教育大学・附属福岡小学校共同研究誌 1999年4月発行より)