行動分析的研究の基本的考え方
行動分析とは,スキナー(Skinner,B.F.)をはじめとするオペラント心理学の業績に基礎を置くものであり,米国を中心として体系的な教育研究の一分野として展開されている。本研究は,この行動分析の考え方に依拠しながら,その原理と技法をわが国の音楽科の学習指導に適用することの有効性について検討をおこなうものである。
米国の音楽教育研究の場においては,1970年代初頭より,基礎的研究および教育現場との連携を図った応用的研究が推進されている。わが国の音楽教育の場においては,多くの研究者や教師に行動分析の考え方がほとんど認識されていなかったり,誤解されていることが少なからずあり,まだ研究体制が十分に確立されていないというのが現状である。 しかしながら近年,徐々にではあるが,行動分析的手法を用いた研究が展開されつつあり,学習指導の場における実践の効果を実証科学的な観点から客観的に検討しようとする,教育科学としての側面の研究に対して目が向けられるようになってきた。そこでは,音楽科の授業(教室)で生じる行動的現象を可能な限り客観的にとらえ,そこに存在する問題点を明らかにしながら,効果的な授業設計の方法に関する示唆を導出することを主たる目的としている。
つまり,行動分析的研究は,様々な実験的手法を適用することによって,学習指導場面での教師の教授行動や児童・生徒の学習行動を観察・記録し,そこで得られたデータをもとに,教授方法や教材の有効性を決定したり,個々の児童・生徒の学習の進度を確認したりしながら,教育方法学的な観点から授業実践ついて検討しようとするものなのである。