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21世紀SF1000

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2001年?2010年に<本の雑誌>の連載「新刊めったくたガイド」に載ったものを集めたSF時評集。JAなので≪ハヤカワSFシリーズJコレクション≫や≪リアル・フィクション≫が中核を形成してSF冬の時代から脱出したと書いてあり、それは一面ではそのとおりだが、この時代はそれだけにとどまらず、ライトノヴェル系でSFが普及したこともまた"SF夏の時代"の到来を告げた面もある。時評集なので、内容に細かく触れる意味はないだろうが、その年ごとにどんなSFが出ていたのかを概観するガイドになると共に、その時をなつかしむ手がかりにもなる。紹介されている各作品は★5つによる大森望の評価つきで、もちろん趣味の問題もあり賛同しかねる評価もあるが参考にはなる。また、巻末には★5つがついた32作品と★4つ+☆がついた68作品を抜き出した00年代の推薦作100も掲載されていて参考になる。葛西日記の続きも出してくれないかなあ。

(「21世紀SF1000」、大森望著、ハヤカワ文庫JA1052、2011年12月発行、ISBN978-4-15-031052-3)

1と同じ、大学の図書館にあったので予約していたのが順番が回ってきた。「きらら」に連載された5編+書き下ろし1編。第一話「アリバイをご所望でございますか」では、立川のビルでの女性殺人事件の容疑者にはアリバイがあったが、そのアリバイ証言にある違和感を元に影山の推理がアリバイの秘密を解き明かす。第二話「殺しの際は帽子をお忘れなく」では、浴槽で死んでいるのが発見された女性殺人事件の部屋には、あるはずの帽子がなくなっていた。麗子行きつけの帽子屋の娘の話から、帽子がなくなったことを元に影山が犯人を解き明かす。第三話「殺意のパーティにようこそ」では、学生時代の友人の父主催のパーティに出席した麗子は、学生時代の旧友たちと再会するが、友人の1人の瑞穂が何者かに襲われる事件が起こる。赤いドレスと緑の宝石という目撃証言から、影山は犯人を推定し、麗子の協力で犯人の秘密を暴き出す。第四話「聖なる夜に密室はいかが」では、前日に雪の降ったイブ、殺人事件のあった家への道には被害者の自転車の跡と発見者の足跡しか見当たらなかった。犯人はどうやって現場から脱出したのか。容疑者たちの情報から影山が犯人を推定し、お礼に麗子はミニスカサンタとなって影山のケーキ売りを手伝う。第五話「髪は殺人犯の命でございます」では、家電量販店を展開する資産家の花柳家、主人が交通事故でなくなった家では、従妹の女性が殺される事件が起きる。被害者の長かった髪はハサミで切り焼かれていた。何のために犯人はそのようなことをしたのか。影山の推理が導き出したのは殺人の犯人ばかりではなく、主人の交通事故の真相でもあった。第六話「完全な密室などございません」では、有名画家・松下慶山が自宅アトリエで殺される事件が起きるが、発見者の女性2人がかけつけた状況から慶山は密室で殺されたように見えた。アトリエにあるフレスコ画の秘密を解き明かした影山と麗子は真犯人に襲われるが、それを救ったのは風祭警部だった。徐々に変わってきそうな風祭警部との関係とか、まだまだ続きそうだが、どうなんだろう。原作が続けばTVドラマの続きもできそうだが。

(「謎解きはディナーのあとで2」、東川篤哉著、小学館、2011年11月発行、ISBN978-4-09-386316-2)

女子高生マジシャン・酉乃初の事件簿、第2弾。前作のサンドリヨン(=シンデレラ)はフランス語だったが、今回のロートケプシェン(=Rot-käpp-chen=合成語で赤頭巾、käppはkappe(帽子)から転じた語)はドイツ語から。今回も連作短編の形で、第1話「アウトオブサイトじゃ伝わらない」では、須川君のクラスメイトの織田さんの様子がおかしい原因を酉乃が失恋と推理しサンドリヨンで織田さんにマジックを見せる。第2話「ひとりよがりのデリュージョン」では、友人の三好から密かに受け取った写真集が文芸部の笹本さんとぶつかった際に入れ替わって慌てた須川君だが、いつのまにか笹本さんの手元にいったはずの本は文芸部誌になっていた。行方不明の本の謎は酉乃の推理で笹本さんのクラスのリーダーの1人柿木園さんの仕業ではないか、ということになる。第3話「恋のおまじないのチンク・ア・チンク」では、バレンタインで騒がしいクラスで、1年生のクラスのチョコがいつのまにか須川君のクラスの教卓に集められるという事件が起き、酉乃の推理によると転校する小岩井君がチョコの送り主の女の子を突き止めるため、ということになる。一方、八反丸さんから強制的に渡されたチョコ(実はカレールー入り)を酉乃に見られたり、サンドリヨンに東大生のイケメンマジシャンが現れたり、須川君の心は穏やかでない(東大生・桐生さんは彼女もいると判明する)。第4話「スペルバウンドに気をつけて」では、やっと酉乃さんとケーキ屋に行くことができた須川君だが友人の児玉君から気になる女の子について調査を頼まれる。上条茜と名乗る子は名簿になく、井上さんの偽名とわかるが井上さんはクラスでハブられて不登校になっていた。児玉君が会ったという井上さんの謎をめぐり、笹本さんのクラスのハブへの加担の後悔が酉乃によってはっきりする。第5話「ひびくリンキング・リング」では、演劇部のお別れ会での酉乃のマジックは好評だったが、須川君は八反丸さんに酉乃は自分のものだと宣告されてしまう。井上さんの不登校の原因も酉乃の推理により明らかになり、井上さんがハブられた原因の1つの小説の作者が織田さんで、織田さんと井上さんは中学校時代の友達でお互いに謝りたいと思いながら連絡が取れなくなっている。井上さんの進級がかかるタイムリミットを前にして酉乃と須川君の奔走で2人は会うことができる。今作では、全体を通して高校のクラスの女子たちの間でのささいな原因でのハブりの恐ろしさが事件の背後に描かれ、表題の赤頭巾もクラスのハブりによる闇に飲み込まれることを暗示している。前作ほどマジックによる解決という場面はないが、あいかわらずの須川君のへたれ具合には、もっと何とかしろよと言いたくなるが、今時の草食男子はこんなものなんだろうか。美少女・八反丸さんの怖い一面や、女子リーダーの1人・柿木園さんの件などは、解決したとはいえず続きになるのかな?

(「ロートケプシェン、こっちにおいで」、相沢沙呼著、東京創元社、2011年11月発行、ISBN978-4-488-02486-4)

詩羽のいる街

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マンガ家志望の陽生が公園で出会った若い女性は、あっと言う間に子供たちの間で複雑なカード交換を全員が満足するように終えた。それを見ていた陽生に彼女は唐突に「ねぇ、デートしない」と話かけてきた。彼女の名前は詩羽、他人に親切にするのが仕事と言う。第一話「それ自身は変化することなく」は、こうして始まる。詩羽に連れられて陽生は奇跡とも思える光景を見ていくことになる。詩羽はお金も家も持たない。それでいて、街のあらゆるところにコネクションを持ち、人と人をつなげることで人々に笑顔をもたらしていく。そして詩羽とこの街で最初に会ったという自費出版家の女性から、詩羽は人と人をつなぐ触媒だと聞いて納得する。第二話「ジーン・ケリーのように」では、自殺しようとしている女の子の前に現れた詩羽は、あからさまな制止はせず、話続けるうちに流星観測会に女の子を誘い込む。女の子はそこで、かつて詩羽が独居老人の自殺を救えずショックを受けたことを聞き、自分の自殺を止めようと必死だったことを悟る。好きなマンガにショックを受けて自殺の決意をしていた女の子は、詩羽と一緒に雨の中で踊りながら世界の美しさに気付く。第三話「恐ろしい「ありがとう」」では、大学の教員をしている中年男性が、小さな悪意をまき散らす。ブログにわざと炎上するような書き込みをする、コンビニで包装紙に穴を開ける、図書館で本のページを切り取る、などなど。しかし、その悪意の源を突き止めた詩羽から天敵と認識され、詩羽の人的ネットワークの集中包囲によって、悪意を封じられ、様々な親切をうけて「ありがとう」の気持ちに傾いていく自分に恐怖し、ついに街から逃げ出す。第四話「今、燃えている炎」では、それまでにも話のあちこち触れられていた、マンガの『戦まほ』(戦場の魔法少女)とアニメ『ガルテリ』(ガールズテリトリー)が関わってくる。アニメ『ガルテリ』の原作者・凍野蒼が故郷を自作の舞台のモデルとしたことから、賀来野市で、町おこしの『ガルテリ』イベントが行われることになり、凍野蒼、本人と共に友人の女性サキが賀来野市に来る。サキは詩羽の噂を聞いて真相を確かめようとしていた。スタッフの女性に頼まれて中学生の女の子と一緒にイベントのクイズに挑戦したサキは、賀来野の街を回りながら詩羽の断片を感じていく。クイズが終わった後、スタッフの女性こそが詩羽だと見破ったサキは、自らの正体が『戦まほ』作者のマンガ家・坂城しじま、であることを明かす。『戦まほ』を書き終えて虚脱していたサキは次作への手がかりを詩羽に求めていたのだ。詩羽と話をするうちに、詩羽が人と人をつなぐことで世界を変えようとしていることを知り、マンガにできることを再確認して一抹の希望を抱く。詩羽の行動の根本には「論理的に考えたら共存共栄の方が絶対に得、地道でもそれを皆にわからせていくことで世界を少しでも良い方向に」という作者の主張が貫かれている。また、各所で出てくるエピソードも、マンガには世界を変える力がある、無用な表現規制への怒り、など、かねてからの作者の主張がちりばめられている。これらの主張に同調する者(私もそうだが)にとっては小気味よいストーリーだ。人によっては現実世界のどうしようもなさを考えると楽観的すぎるいう批判も出そうだが、こうした希望を描いてくれる小説が少ないので、私などは読後にホッとするのである。

(「詩羽のいる街」、山本弘著、角川文庫、2011年11月発行、ISBN978-4-04-100019-9)

退院した栞子さんは店長に復帰したが、前巻の事件の怪我は後遺症が残り杖が必要になっている。大輔も就職がダメになったので元通り店員として復帰した。プロローグでは住居に呼ばれた大輔は栞子さんから、坂口安吾「クラクラ日記」を何冊も店頭に出すように言われる。第一話、アントニー・バージェス「時計じかけのオレンジ」では、小菅奈緒から妹の読書感想文について相談を受けた大輔は栞子さんに見てもらい、その結果、妹の感想文は昔の文集のものを写したと判明する。写した元になったのは小学生の時の栞子さんの感想文だった。第二話、福田定一「名言随筆サラリーマン」(福田定一は司馬遼太郎の本名)では、大輔の高校の頃の彼女だった高坂の実家に本の鑑定に行った栞子さんと大輔は、そこで父から高坂さんに贈られた本に込められた秘密を解き明かす。しかし風邪ぎみなのを押して仕事した栞子さんは熱を出してしまい、栞子さんの妹によって寝かしつけられた時、大輔が母屋で見たのは栞子さんそっくりの女性が描かれた30年前の絵だった。第三話、足塚不二雄「UTOPIA 最後の世界大戦」(足塚不二雄は藤子不二雄の初期ペンネーム)では、店に査定に訪れ消えてしまった男の行方を栞子さんの推理によって追いかけて判明したのは、男の父と栞子さんのお母さんの因縁であり、それは今も栞子さんに翳を落としていた。エピローグでは、坂口安吾「クラクラ日記」が栞子さんにお母さんが残した本であることが判明し、そこに残されていたかもしれないメッセージを探して、栞子さんは今もそれらしい本を探しているということを推理して当てた大輔だが、褒美にデートと思った大輔に栞子さんが告げた行先は古書店だった。栞子さんの謎も徐々にわかってきて、先が楽しみなシリーズになっている。

(「ビブリア古書堂の事件手帖2」、三上延著、メディアワークス文庫、2011年10月発行、ISBN978-4-04-870824-1)

出た時に買おうか相当迷って立ち読みまでしたんだけど、2巻が出て我慢できなくなって買ってしまった(買うのを躊躇ったのは、単に普段買うSF以外のものまでため込んで置き場所がなくなるのを恐れただけなんだけど)。鎌倉の片隅でひっそりと営業している古本屋「ビブリア古書堂」。高校生のときにそこにいた若い美女が気になっていた五浦大輔は、就職活動に追われる中、母に頼まれて夏目漱石の「漱石全集・新書版」を見てもらうためビブリア古書堂を訪れた。店番をしていた高校生くらいの女の子は店長が入院しているからと大輔に入院先の病院に行くように言う。病院を訪ねた大輔はそこで、かつて見た美女に再会する。その美女、篠川栞子さんは、初対面の人間とは口もきけない人見知りなくせに、古書の話になると人が変わったように生き生きと語る人だった。大輔から見せられた本を調べた栞子さんは、鋭い推理を働かせ由来を解いてしまった。古書については語りすぎで逃げてしまう人が多い中、自分では本を読めない体質なため、本の話をよく聞いてくれる大輔にビブリア古書堂で働いてもらえないか持ちかける。こうして人見知りの美人店長と店員の生活が始まった。第二話、小山清「落穂拾い・聖アンデルセン」では、常連のせどり屋・志田に盗まれた本の捜索を依頼された大輔は、病院の栞子さんに事情を話す。ここでも鋭い推理を働かせた栞子さんは、犯人の女子高生・小菅奈緒と話をし、志田のところに本を返しに行かせる。第三話、ヴィノグラードフ・クジミン「論理学入門」では、本を売ろうと訪れた坂口という男、しかし直後に妻の女性からの連絡が入る。ここでも栞子さんの推理は冴え、抱えていた秘密を妻に打ち明けた坂口は、妻の優しい言葉に応え、仲睦まじく去っていく。第四話、太宰治「晩年」では、大輔は栞子さんの入院が実は誰かに突き落とされたせいであることを聞かされる。犯人を突き止めるために協力する大輔だが、突き止めた犯人・せどり屋の笠井が欲しい本を狙って病院に向かったのを、栞子は危険を冒して1人で迎えて解決してしまう。信用されなかったことに気付き店をやめてしまった大輔だが、退院した栞子は大輔に大事な本を預けようとすることで仲直りしようとし、大輔は本の話をしてもらう条件で聞くことになる。

(「ビブリア古書堂の事件手帖」、三上延著、メディアワークス文庫、2011年3月発行、ISBN978-4-04-870469-4)

さよなら小松左京

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徳間からの追悼本。巻頭には SAKYO KOMATSU GRAFFITI。第1部・小松左京WORKSでは、小説「鬼の惑星-あるいは「青ヘルメット」」、漫才台本「いとしこいしの新聞展望」、NOTEBOOK「小松左京アイデアノート案内」、評論「"日本のSF"について ミスターXへの公開状」、小松左京インタビューI(「奇想天外」1976年4月号),II(「第19回日本SF大会プログラムブック」より),III(「第40回日本SF大会プログラムブック」より)、座談会「SF作家おもろ大放談」からの抜粋と「小松左京マガジン」第3号から桂米朝・澤田隆治との対談、小松左京テーマ別ベスト作品紹介は野尻抱介・上田早夕里・北野勇作・谷甲州・横田順彌・倉坂鬼一郎・牧眞司・堺三保、コラム「とり・みき 小松左京 on TV」、小松左京年表、筒井康隆の朝日新聞に載った追悼文。第2部・小松左京とは何だったのか、では、【SF創世編】が、筒井康隆の日記「SF幼年期に中ごろ」、インタビューが石川喬司・最相葉月・高千穂遥・伊藤典夫、豊田有恒・森優・田中光二の座談会、笠井潔の評論、吾妻ひでおのコミックス「ゴルディアスでも結べない」。【疾風怒涛編】では、インタビューが石毛直道・由美かおる・松本零士・的川泰宣、かんべむさし・堀晃の対談、長山靖生の評論、豊田有恒・鏡明・井口健二の座談会、門倉純一によるコラム。【SF進化編】では、山田正紀・瀬名秀明・小川一水の座談会、萩尾望都・新井素子・小谷真理の座談会、巽孝之の評論、鏡明のコラム。【多種多様編】では、出渕裕・樋口真嗣・庵野秀明の座談会、加藤直之のコラム、柳下毅一郎のコラム、とり・みき・米田裕・鹿野司の座談会、とり・みきのコミックス「小松左京の"もっとキャラクターして!"」、牧眞司のコラム、牧野修・牧野公子のコラム、青山智樹・小松左京研究会による「小松左京キーワード99+1」。最後に追悼アンケートと乙部順子インタビュー「小松左京との日々」、付録CDには1984年1月8日に「小松左京の世界展」で行われた手塚治虫との対談を収録。

(「さよなら小松左京」、徳間書店、2011年11月発行、ISBN978-4-19-863303-5)

別にミステリづいてるわけじゃないが、これも前から読みたかった本。創元の本だから文庫に挟まれてた刊行案内で見たのが最初で、設定と表紙を見て読みたくなった(このあたりライトノベルと同様だな)。このたび続巻が出たので地元の図書館にあるのを発見して借りてきた。主人公のポチこと高校1年生の須川君は入学時に一目ぼれした女の子にレストラン・バー「サンドリヨン」で偶然会った。彼女、酉乃初はそこでバイトする凄腕のマジシャンだったのだ。マジックを披露するときの彼女は魅力的な笑顔で観客を魅了するけど、クラスでは人間関係に臆病で心を閉ざしがちなよう。そんな彼女がマジックのテクニックを駆使して、学校で須川君たちが巻き込まれた不思議な事件を解決する。連作短編の形式で、第1話「空回りトライアンフ」でいじめにあっている図書委員のクラスメイトを助け、第2話「胸中カード・スタッブ」で進路に悩む先輩の女の子を助ける。しかし、第3話「あてにならないプレディクタ」では、占い師を騙る女の子に助けを出したつもりで手ひどく逆襲に会い深く傷ついてしまう。そして、第4話「あなたのためのワイルド・カード」では、須川君が発した一言で酉乃はさらに深く傷ついてしまう。関係修復を願う須川君だが原因がわからない。それがわかったのは同級生の美少女、八反丸さんから中学時代のことを聞いてからだった。おりしも学校では幽霊騒ぎが続いており、ついには自殺者が出そうになる。何とか止めようとする須川君は、勇気を出して酉乃さんに話をする。ぎりぎりのところで自殺を図ろうとして先輩の女の子のところに現れた酉乃は、鮮やかな推理で事件を収めることに成功する。その後、須川君は帰りの駅で酉乃の孤独な心に触れ、クリスマス・プレゼントを渡すことで少し近づけたような気持ちになった。普段は心を閉ざしたような女の子が、得意のマジックでは明るく生き生きとなる設定や、表紙の絵(加藤木麻莉)の女の子(酉乃)が魅力的な一冊。須川君のあだ名の由来や八反丸さんたちとの関係、酉乃との恋の行方など、続きが気になる。続編はすぐに借りられるかなあ。

(「午前零時のサンドリヨン」、相沢沙呼著、東京創元社、2009年10月発行、ISBN978-4-488-02449-9)

これも読みたかった本だが、大学図書館にあることがわかって借りた。TVドラマも放映中なのでよい機会だった。第一話「殺人現場では靴をお脱ぎください」は、ブーツをはいたまま死んでいるところを発見された女の事件。第二話「殺しのワインはいかがでしょう」は毒入りのワインで殺された男の事件、第三話「綺麗な薔薇には殺意がございます」は薔薇園にあった死体の事件。第四話「花嫁は密室の中でございます」は後輩が結婚式当日に背中を刺された事件。第五話「二股にはお気をつけください」は四つ股をかけていた男が殺された事件。第六話「死者からの伝言をどうぞ」は消されたダイイング・メッセージの事件。いずれも主人公である大富豪令嬢の身分を隠して国立署で刑事をやっている宝生麗子が毒舌にいらつきながらも執事の影山の推理で殺人事件を解決する。上司の富豪御曹司の風祭警部も含めTVドラマは結構忠実に映像化していたんだなあ。2も出たことだし、これも買ってくれないかなあ。

(「謎解きはディナーのあとで」、東川篤哉著、小学館、2010年9月発行、ISBN978-4-09-386280-6)

小松左京の追悼本の1つ。巻頭のはアルバム写真、そして桂米朝と宮部みゆきの追悼エッセイ。新発見資料として『日本沈没』創作メモと東浩紀による解説。続く≪語る≫のパートでは、東浩紀×宮崎哲弥の「時代は小松左京を必要としている」、Live Wire 主催の追悼トークライブ「巨星、宇宙に逝く」は新宿GEISHAでの[東京編]が鏡明×横田順彌×山田正樹×高橋良平×とり・みき×大森望、なんば紅鶴での[大阪編]が堀晃×かんべむさし×山本弘×上田早夕里、と第50回日本SF大会DONBURACON L でのパネルディスカッション「知の巨人・小松左京のノンフィクションを語る」が瀬名秀明×森下一仁×巽孝之×林譲治×鹿野司×八代嘉美、小松左京マガジン20号からの再録の「OB編集者座談会」が森優×高松繁子×濵井武×萩原実×石井紀男。≪論ずる≫パートでは、世界SF全集の小松左京の巻の解説の再録で手塚治虫「小松左京 ペザロの白鳥的怪物」、新潮文庫『時間エージェント』解説からの再録で星新一「小松左京 情報を食事のように楽しむ人」、講談社文庫『さらば幽霊』の解説の再録で筒井康隆「小松左京論」。≪著作集未収録≫のパートでは、講演「人間にとって文学とは何か」、[Q&A]「小松左京氏に25の質問」、[エッセイ]「永遠の五分前」「半世紀前の「はずかし」漫画」、[漫画]「おてんばテコちゃん」、[対談]が×反村良と×梅棹忠夫。≪ロングインタビュー≫は乙部順子氏に対して「秘書が見た小松左京」。≪エッセイ≫パートでは、萩尾望都「小松左京子の発見」、樋口真嗣「輝く未来に向けた届くことのない恋文」、谷甲州「『第二部』までの道のり」。≪エッセイ漫画≫はとり・みき「臥猪庵再通信」。≪論ずる≫後半パートでは、山田正紀「『神曲』から『虚無回廊』へ 小松左京を考える」、堀晃「小松原理の宇宙」、佐々木敦「小松左京のニッポンの思想」、八代嘉美「小松左京にとっての科学とは何か」、安藤礼二「小松左京と「太陽の塔」」、磯達雄「超都市のヴィジョン」、輪島裕介「アパッチの歌を歌おやないか」、藤田直哉「小松左京を読み解くキーワード10+α」。≪小松左京この1冊≫のパートでは種村弘「ひりひり」、長谷敏司「心から流れ去ることのない真剣さ」、新城カズマ「彼に捧げる未完成ソナタ」、森深紅「未来を考える」、北野勇作「アオゾラのホシ」、宮内悠介「ひきこもる大国」、森岡浩之「巨人の掌編」。≪資料≫パートでは、日下三蔵「小松左京フィクション総解説」、堺三保「小松左京ノンフィクション総解説」。巻末には小松左京年譜。

「文藝別冊 追悼 小松左京」、河出書房新社、2011年11月発行、ISBN978-4-309-97764-5)

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