日本SF大賞・星雲賞受賞の「日本SF精神史」に続く著作だが、続編ではなく姉妹編ということになっている。戦後から災後までのSF史だが、SF小説だけでなく、マンガ、アニメ、幻想文学から、現代美術やアングラ演劇といった周辺領域まで含む想像力/創造力の系譜をたどったもの。第一章「戦後的想像力の始動」は終戦直後?50年代あたりまでの復興期の状況。第二章「空想科学からSFへ」は科学創作クラブ・おめがクラブといったSFファンクラブ草創期からSFマガジン創刊、初期のSFコンテストやSF大会の創設あたり。第三章「戦う創造の現場」は、ちょっと趣を変えて、芸術運動や演劇の状況など。第四章「論争とお祭りの日々」は60年代のSFブームとアニメ・特撮の勃興。ニューウェーブた論争など。第五章「進歩と未来とオカルティズム」は万博から「日本沈没」そして様々なサブカルチャー誕生、コミケまで。第六章「幻の八0年紛争からオタク革命へ」は、スターウォーズなどによるSFブーム、SF雑誌の変遷や世代間闘争、日本SF大賞創設や、オタクの語源など。第七章「「幻想文学」とその時代」はここでもちょっと趣を変えて幻想文学関係の状況。第八章「反復と変容」は80年代からのアニメ隆盛、宮崎事件、オウム事件からSF冬の時代、エヴァンゲリオンを経て、21世紀の状況まで。前作と同様、70年に及びSFを取り巻く状況をコンパクトに概観する。著者は私の5つ下だが、大学SF研にいた70年代後半?80年すぎの状況は懐かしさいっぱいだった。次は「日本SF精神史」の続き?
(「戦後SF事件史」、長山靖生著、河出ブックス、2012年2月発行、ISBN978-4-309-62439-6)
2012年2月アーカイブ
恒例の「SFが読みたい!」だが、国内編1位は円城塔「これはペンです」、海外編1位はグレッグ・イーガン「プランク・ダイヴ」。円城塔はインタビュウ後に芥川賞も取りめでたいことが続いた。イーガンの1位は5回目だそうだが、今回はガチガチのハードSF短編集での1位ということで文句はない。どうも年々ベストのうちの読んでる割合が低下してるような気がするが、国内編ベスト10のうち既読はわずか2(笠井・巽編「3・11の未来」と小林泰三「天獄と地国」。短編集で一部読んでるのはあるが)、ベスト20まで広げても小川一水「天冥の標IV」しか増えない。海外編も似たようなものでベスト10の既読は3(1位とウィルスン「クロノリス」、山岸編「スティーブ・フィーヴァー」、「ねじまき少女」は今読んでる体たらく)、ベスト20まで広げてもカストロ「シリンダー世界111」が増えるくらいだ。イーガンは受賞メッセージと訳者の山岸真のインタヴュウ。国内編2位の瀬名秀明「希望」がらみでは、仙台文学館で行われたトークイベント「科学と文学の境界を越えて」[巽孝之・小谷真理と)収録。各々ベスト20までは作品ガイドつき。恒例の「マイ・ベスト5」アンケート全回答と、サブジャンル別ベスト10が、ライトノベルSF、伝奇アクション&異世界ファンタジイ、国内・海外ファンタジイ、国内・海外ホラー、国内・海外ミステリ、海外文学、文芸ノンフィクション、科学ノンフィクション、SFコミック、SF映画、SFアニメ。各SF出版社の2012年刊行予定である「このSFを読んで欲しい」は、早川書房、角川春樹事務所、河出書房新社、光文社、国書刊行会、出版芸術社、東京創元社、徳間書店。あの物語はいまどうなっているの?はペリーローダンだけになってしまった。SFマガジン読者が選ぶ「ベストSF2011」は、ちょっと結果が違って「希望」「ねじまき少女」がそれぞれ1位。他には、≪新☆ハヤカワ・SF・シリーズ≫創刊を記念して第1期10点のラインナップ紹介と創刊記念トークショー「現代SFの最高峰、ここに集結!」(大森望×塩澤快浩×清水直樹)採録。COCOのコミック「SFが読みたい!の早川さん」も3作。特別企画は「21世紀SF必読書ガイド100」として、大森望&山岸真による100選とその読書ガイド、さすがにこちらの最上位SAランク(両者が★5または★5と4.5)の20作+3作は、15ほど読んでいた。巻末は資料として2011年度SF関連書籍目録とSF関連DVD目録。
(「SFが読みたい!2012年版」、早川書房、2012年2月発行、ISBN978-4-15-209275-5)
ベルタ・ギースの妨害は功をなさず、ローヌ・バルトはポート・ヴィアネイに入港した。しかし宙軍のフリゲート艦が攻撃を受けたことから、ローヌ・バルトかベルタ・ギースのどちらかのシェルの関与が疑われていた。そんな中、ローヌ・バルト船長のパースウォーデンが上陸中に拉致される事件がおき、救出に向かった陸軍特殊部隊はシェルの攻撃に壊滅状態となる。出撃したノーマとオルスはベルタ・ギースのシェルに乗るピナ・パワーズを撃破したが、人質は殺された後だった。その頃、ベルタ・ギースは許可なくポート・ヴィアネイから強制的に出港していった。ピナの後任のシェル・ドライバにはルイス・コテスという男が搭乗し、専任のレイモン・シェルと組むことになった。ベルタに先行されるわけにいかない、ローヌ・バルトもまた、港の施設を砲撃して邪魔を排除し、出港していった。ベルタのシェル群と交戦したノーマは、ベルタのシェルの一部が無人機であることを疑う。そして次の交戦でオルスは無事帰還したのに対し、ノーマ機は帰還できないままだった。目的地のポート・リヴァプールに向かうローヌ・バルト船内では、ローヌ・バルト本人がオルスに接触してきていた。まだまだ序盤といった趣だが、これって3巻て出てるんだっけ?ちゃんと続きが出るのかなあ?
(「シェル・ブリットII」、幾原邦彦・永野護著、角川文庫、2011年12月発行、ISBN978-4-04-100062-5)
遥かな未来、人類は3つの「種」に分化していた。巨大な宇宙船の姿になった「ジーンライナー」、遺伝子改良による進化を受けた「ジーンメジャー」、そして進化を遂げなかった「ジーンマイナー」。ジーンマイナーでありながら遺伝子特異体のためジーンメジャーに類似した遺伝子構造を持つオルス・ブレイクは、ジーンメジャーとして世界最速のジーンライナーである「ローヌ・バルト」に搭乗する。しかし、ローヌ・バルトのシェル・ブリット要員であるノーマ・クイックにジーンマイナーであることを見破られる。ノーマは何故かその事実を隠してオルスを新人シェル・ブリット要員につかせる。シェル・ブリットとは、ジーン・ライナー船からシェルと呼ばれる宙間作業機で前方に打ち出され航路確保を行う船外作業のことを指すが、高速航行するジーン・ライナー船は速度を落とすことを嫌うため、任務に失敗して自力帰還ができなくなれば回収もしてもらえない過酷な任務である。今回の航行でも、ローヌ・バルトはライバルであるベルタ・ギースの妨害に対しシェル・ブリットで対抗し、予定どおりポート・ヴィアネイに入港する。「少女革命ウテナ」の幾原邦彦と「ファイブスター物語」の永野護のコラボレーション小説。永野の絵によるキャラやメカ設定、巻末には詳細な用語解説がついてファイブスター物語を彷彿させる。
(「シェル・ブリットI」、幾原邦彦・永野護著、角川文庫、2011年12月発行、ISBN978-4-04-100061-8)
<オレゴン・ファイル>シリーズ最新作。前作のミッションでのアメリカとの関係悪化で他の任務を引き受けざるを得ないコーポレーションは、スイスの資産家の依頼で、ミャンマーで消息を絶った娘の捜索に乗りだした。足取りを追ってジャングルの奥に潜む仏教寺院にたどりついたカブリーヨたちは、突如現れたミャンマー軍に捕らわれ刑務所に連行される。依頼が罠と知ったカブリーヨは、エディーたちの機転により刑務所から脱出し、敵につかまったリンダの救出に向かう。遺棄された海上掘削基地に監禁されていたリンダを間一髪救出したカブリーヨたちは、同室に監禁されていた捜索対象だった娘ソレイユも救出に成功する。その証言から、仏教寺院から奪われたのは特殊な宝石であり、真の黒幕の正体に気付いたカブリーヨたちは敵の本拠地を急襲する作戦を立てる。一方、敵であるインドネシアの資産家バハルは、宝石を使って開発した量子コンピュータの作動に成功していた。その卓越した性能の前には、どんなネットワークのセキュリティも破られてしまう。大統領へのバハルの脅迫は一刻の猶予もなく、ネットワークでの連絡ができないCIAのオーヴァーホルトは危機打開をカブリーヨたちに託す。ヨーロッパの鉱山跡にバハルの要塞化した基地があることを突き止めたカブリーヨたちは、そこを急襲し、量子コンピュータの停止に成功する。この巻では、死んだプラスキーの代わりの銃猟犬(ガンドッグ)として、元米陸軍兵で民間警備会社員をしていて捕虜になったところを救出されたマクド・ローレスが新メンバーとして加入した。また、エピローグでは、停止したはずの量子コンピュータ(女の声)が再び連絡してきて、ネットワークのどこかに逃げ延びたことが示され、このコンピュータのクライマックスでの行動から、新たな味方になりそうなことが示唆される。
(「絶境の秘密寺院に急行せよ!(上・下)」、クライブ・カッスラー&ジャック・ダブラル著、ソフトバンク文庫、2011年11月発行、ISBN978-4-7973-6626-6,978-4-7973-6627-3)
ジョージ・R・R・マーティンのホラー主体の短編集。痩身願望の男が知り合いから聞いて訪れた怪しい店で猿に憑りつかれ食べようとする物を獲られて痩せていく恐怖を描く「モンキー療法」。大学当時の友人だった女メロディーが疫病神となって当時の友人3人に恐怖をもたらす「思い出のメロディー」。ある作家に出て行った娘から次々に届く肖像画は作品内のキャラクターたちであり、その日から彼の目の前にはキャラクターが実体化するようになり、最新作で扱った内容が娘の受けたレイプであることが明かされていき作家の内面の狂気を露わにする「子供たちの肖像」。ある男が買った護符は満月の夜に変身を可能にするものだった、前の持ち主は鷹、彼は兎、それらは彼らの持つ車(フォード・ファルコン、フォルクス・ラビット)を反映していた、それを聞いて護符を買っていった別の男はカミさんへのプレゼントのつもりだったが、カミさんの車はノヴァでその日は満月だったという酒場のホラ話風の「終業時間」。引っ越していったアパートの地下に住む男は洋梨形の男で徐々に男に影響されてついに男の部屋に行った彼女は気付くと洋梨形の男になるという恐怖譚である表題作はブラムストーカー賞の第1回ノヴェレット受賞作。巻末には大学時代のチェストーナメントで負けたことでなじられた男が当時の仲間に復讐するために彼らを自宅に集め当時の譜面を再現して勝負させるが、その裏にはタイムマシンで過去に意識を戻し復讐のために彼らの人生に介入したという事情があったが、どう再戦しても勝ちに至る手順(ヴァリエーション)がなかったことが明らかになった時、キャプテンだった男が妻から解決策を気付かされる「成立しないヴァリエーション」。「終業時間」は酒場ホラ話風SFとも読めるし、最後の作品はタイムマシンがらみでSFとも読めるが、やはりホラー色が強い、それでも面白いことに変わりはないが。解説には宇宙SFを厳選した傑作集が他社で企画中とあるがどうなったんだろう。
(「洋梨形の男」、ジョージ・R・R・マーティン著、中村融編訳、河出書房新社・奇想コレクション、2009年9月発行、ISBN978-4-309-62204-0)
前半の表題作では、地球の秩序を取り戻すためコンセプトとして地球に現れたホーマー・G・アダムスだが、体内で同居するのはアフィリカーの若い女の意識だった。争いに疲れて眠るアダムスを見つけたテラに降りた≪ソル≫乗員のうち、細胞活性装置を見つけた男とその仲間は、それを奪って逃げてしまう。男がアダムスだと知った、惑星専門家のオデュッセウス(オディ)は、細胞活性装置の奪還のため、男たちを追う。無事、細胞活性装置を取り戻したアダムスの体内では、アフィリカーの意識が消えさろうとしていた。この結果を踏まえて"それ"内部では"ノーマルな"意識とアフィリカーの意識が自発的な統合の末、消え去っていき、ついに全てのアフィリカーが消滅した。後半の「"それ"への反逆」では、ドゥームでは、ラール人が5年ごとに行われる"源泉の祭り"の準備をしていた。それに隠れてラール人のジョルカン=タウたちは、ホトレノル=タアクへの反逆を企てていた。コンセプトのケルシュル・ヴァンネはウォルクロヴの首席立案者の助けで、老ラール人ケラン=ハアトの意識とコンタクトし、陰謀に気付く。何とか陰謀を阻止した結果、黒幕にいたのがマイルパンサーであることが判明しマイルパンサーはウォルクロヴに殺され、ホトレノル=タアクはヘトソンの告知者の地位を守る。一方、この事件のかげで、ヴァンネは"それ"の方針により再吸収されそうになるのに抵抗し、何とか踏みとどまることに成功するがコンセプトを構成する他の6人は再吸収されてしまう。
(「アダムス再登場(ペリーローダン417)」、ハンス・クナイフェル&エルンスト・ヴルチェク著、赤坂桃子訳、ハヤカワ文庫SF1837、2012年1月発行、ISBN978-4-15-011837-2)
奇想コレクションの1冊、ライバーの日本独自に編んだ短編集。目玉はガミッチ・シリーズ全5作収録か。これに属するのは、表題作と「猫の創造性」、「猫たちのゆりかご」、「キャット・ホテル」、「三倍ぶち猫」、最後のものが本邦初訳。このシリーズはIQ160のスーパー猫ガミッチを主人公とするシリーズということになっていて、「猫たちのゆりかご」には、『放浪惑星』に登場する猫型異星人タイガリシュカがスフィンクスという名で登場するので、そういった意味でもSFと思っていたんだけど、再び読み返してみると、人間側の主人公<馬肉のせんせい>(ライバー自身がモデル)にはSF的なものは見えていないし、そういう意味ではファンタジーと見てもいいのかも。ここまで読んでしばらく積ん読状態になってたので、出版からこんなに間が空いてしまった。他の収録作は、ライバー自身のシェークスピア劇団との関わりの経験を生かした「『ハムレット』の四人の亡霊」、死神とのダイス勝負を描いてヒューゴー/ネヴュラ2冠に輝いた「骨のダイスを転がそう」、夕食の団欒の父・妻・息子の夢想の交錯を描く「冬の蠅」、ハレー彗星の回帰を題材にした「王侯の死」、数を題材にちょっとエロチックなファンタジーに仕立て上げた「春の祝祭」、というラインアップ。
(「跳躍者の時空」、フリッツ・ライバー著、中村融編、河出書房新社・奇想コレクション、2010年1月発行、ISBN978-4-309-62205-7)
小学館のBIG COMICS SPECIALでの星野之宣の傑作短編集の第3弾。ほとんどを「巨人たちの伝説」が占めている。ジャンプスーパーコミックス(1巻本)まるまるに、単行本未集録短編を加えたもの。確かに、「巨人たちの伝説」は初期の代表作だけど、今更 SPECIAL で出す意味があったんだろうか。まあ、第五惑星、木星、というキーワードが「星を継ぐ者」につながるという意味なんだろうけど。他の収録作は、寒冷化する地球を救うため太陽エネルギーを収集・転送する人工惑星ミッションを描く「太陽惑星イカルス」(1975)、巻末の単行本未収録作に、ハイウェイが縦横に走る近未来で若者の暴走による燃料満載の巨大トレーラーの事故を防ぐためハイウェイパトロールの奮闘を描く「ホライゾン・パトロール」(1978)。単行本未集録というけど「PILOTS 初期画集成」(チクマ秀版社)に載ってるんじゃなかったっけ、ああ、それを言うなら第2弾に載った「夜の女神」もそうか。ちなみにこのシリーズは表紙が描き下ろしだそうだが、カバーをめくると表紙はまた別の絵になっているところは良し。
(「巨人たちの伝説」、星野之宣著、小学館 BIG COMICS SPECIAL、2011年10月発行、ISBN978-4-09-184108-7)
恒例の英米SF受賞作特集。ジェフリー・ランディス「雲海のスルタン」は、金星の雲海に浮かぶ都市の支配者に招かれた女性研究者についていった男が巻き込まれた事件を描くシオドア・スタージョン記念賞の受賞作。アレン・M・スティール「火星の皇帝」は、火星滞在で正気を失った作業員ジェフは自らを火星の皇帝とみなすようになる、ヒューゴー/アシモフ誌読者賞ノヴェレット部門受賞作。ブラッド・R.トージャーセン「アウトバウンド」は、地球を含む太陽系が戦争で滅びた時、系外へ逃げ延びた少年が辿り着いたのはかつて系外へ向かって定住・進化していた人たちだった、アナログ誌読者賞ノヴェレット部門受賞作。レイチェル・スワースキー「女王の窓辺にて赤き花を摘みし乙女」は、女王お抱えの魔術師である女は陰謀で命を落とした後、召喚されて様々な人々に助言を与えていく、ネヴュラ賞ノヴェラ部門受賞作の前編。他に受賞長編レヴュウ(Sスキャナー特別版)、巽孝之による第69回世界SF大会リノヴェーションのレポート、加藤逸人による英米SF注目作カレンダー2010、橋本輝幸による英米SF界の動向+2011年度受賞作リスト。連載陣は、巨大海藻の秘密が明らかになる瀬尾つかさ「ウェイプスウィード」(後編)、オリオノンの影響で貧しい人々をす救おうとし始める山本弘「輝きの七日間」[第11回]、夢枕獏&寺田克也「十五夜物語」は十五章で完結、東城和実「完璧な涙」[第23回]、≪現代SF作家論シリーズ≫第14回は磯部剛喜による光瀬龍論「神々の代理戦争-『百億の昼と千億の夜』から生まれる再生」。他には、第23回SFマガジン読者賞は、海外部門がテッド・チャン「ソフトウェア・オブジェクトのライフサイクル」、国内部門が飛浩隆「零號琴」、ジャック・キャンベル≪彷徨える艦隊≫シリーズが第2部開幕編となる7の刊行記念、センターページでは2012年の注目のアニメ作品の紹介、など。
前半の「分子変形能力者の偵察」では、ガヌール銀河で暗躍する分子変形能力者たちは、青色恒星をめぐる隕石片に見せかけた基地に潜んでいたが、メダイロン星系からフルクースが撤退したのを見て、状況をさぐるべくケルシリアルとトーン=ベルカーンを派遣した。一方、コンセプトのグルケル・アソシェンは≪アイアンデューク≫でゴシュモシュ・キャッスルに向かう。ローダンを見失って地球に戻った≪ソル≫では、アトランが多方面に展開すべき作戦をあげた。ローダンとブルロクの捜索、ネーサンと地球の復活、コンセプトの計画の追及、分子変形能力者への対応、など。ロルヴィクが不可解な現象につかまっているのを何とかしようとするア・ハイヌはグラウス・ボスケッチに化けたケルシリアルをわざと逃がす。後半の表題作では、ゴシュモシュ・キャッスルでアソシェンに化けようとしたベルカーンは、うまく変身できず、≪アイアンデューク≫内でアソシェンとの戦いを続けるが、偶然、分子変形能力者キラーであるサグリアのアミュレットの上に落ちて死んでしまう。また、コンセプトたちの計画がゴシュモシュ・キャッスルを分割して"それ"に吸収された200億の人類の住処にすることだと判明する。分子変形能力者の船≪グドーン・カルス・トバ≫を見つけたグッキーたちは、もう一人を捕えようとテラに向かう。何とか分子変形能力者を助けようとするア・ハイヌは、グッキーとアソシェンが≪ソル≫に戻ったすきにケルシリアルと共に、分子変形能力者の基地であるゴール=チランに向かう。そこにはロルヴィクがいて、基地の元々の持ち主の監視者が目覚める前に支配しようとして弱体化し、分子変形能力者を道連れに死のうとする。分子変形能力者たちは基地が壊滅する前に≪グドーン・カルス・トバ≫で撤退し、ア・ハイヌは≪ソル≫を助けに呼ぶ。ローダンの追跡を急ぎたいアトランだったが、ロルヴィクを救うには数日セネカの能力が必要であり、ロルヴィクを救うことにしたアトランたちは無事、メダイロン星系に戻る。
(「分子変形能力者の基地(ペリーローダン416)」、H.G.エーヴェルス著、五十嵐洋訳、ハヤカワ文庫SF1836、2012年1月発行、ISBN978-4-15-011836-5)
2001年?2010年に<本の雑誌>の連載「新刊めったくたガイド」に載ったものを集めたSF時評集。JAなので≪ハヤカワSFシリーズJコレクション≫や≪リアル・フィクション≫が中核を形成してSF冬の時代から脱出したと書いてあり、それは一面ではそのとおりだが、この時代はそれだけにとどまらず、ライトノヴェル系でSFが普及したこともまた"SF夏の時代"の到来を告げた面もある。時評集なので、内容に細かく触れる意味はないだろうが、その年ごとにどんなSFが出ていたのかを概観するガイドになると共に、その時をなつかしむ手がかりにもなる。紹介されている各作品は★5つによる大森望の評価つきで、もちろん趣味の問題もあり賛同しかねる評価もあるが参考にはなる。また、巻末には★5つがついた32作品と★4つ+☆がついた68作品を抜き出した00年代の推薦作100も掲載されていて参考になる。葛西日記の続きも出してくれないかなあ。
(「21世紀SF1000」、大森望著、ハヤカワ文庫JA1052、2011年12月発行、ISBN978-4-15-031052-3)
前作では超能力者・小牧ノブをめぐっての壮大な追跡を繰り広げたが、今作では一転して、学園祭前の一時を描く。間近に迫る学園祭での上映に向け、2年B組の面々は自主制作SF映画の撮影をしていたが、ある日、彼らのいる建物だけを地震が襲うという事件が起き、それが始まりだった。標本室で剥製が動き、温室でドラキュラ伯爵が出現してヒロイン役の女の子を攫う。追跡の最中、沖田が出会った永島陽子と名乗る女生徒は実は事故で昏睡状態のはずの子だった。その後も雪女やドラゴンまで出現した事態は、陽子が病院で亡くなるまで続くが、そこで沖田たちが出会った黒服の男は、あの世への案内人を名乗り、沖田たちの記憶を消してパターンA(前半)が終わる。しかし引き続きパターンBが学園祭3日前から再び始まる。ゴジラやラドン、モスラの怪獣たちや、玉蟲の群れ、巨大な宇宙船などなどが現れ、ついに学園祭当日、日本中はわやくちゃになった。夢の現実浸出は止まらず、案内人の提案で事態の収拾のために乗り出すことになった沖田たちは、暗黒の穴に下りていき、パンドラの箱を閉じる。事態は何とか収拾するが、沖田の出した永島陽子を生き返らせるという条件は無理なことがわかり、陽子はあの世へ旅立っていく。最後に陽子の次の輪廻転生という話が出るのがちょっと気になるが、アニメや映画のネタ満載の楽しいお話は一応決着する。次巻からはまた元の路線に戻るそうだ。
(「ハレーション・ゴースト(妖精作戦PARTII)、笹本祐一著、創元SF文庫、2011年12月発行、ISBN978-4-488-74102-0)
新☆ハヤカワ・SF・シリーズの第1弾。YA(ヤングアダルト)向けの仮想歴史小説、3部作の開幕編。舞台は1914年のヨーロッパ、遺伝子操作された動物を基盤とする英国などの<ダーウィニスト>と、蒸気機関やディーゼル駆動の機械文明を基盤とするドイツらの<クランカー>の両陣営の対立が深まっていた。オーストリア大公の暗殺をきっかけに、追われる立場になった大公の息子アレックの逃避行と、空への憧れから男装して英国海軍航空隊に志願した少女デリンの運命の交錯を描く。母親が貴族ではなかったことから複雑な境遇に置かれることになったアレックは、フェンシング師範のヴォルガ―伯爵やメカニック師範のクロップ師など、大公の忠実な部下に助けられ、からくも城を脱出し、追ってくるドイツ軍の八脚ウォーカーなどを躱し、からくもスイスの秘密の山城に辿り着く。一方、デリンは試験のアクシデントが功を奏したのか、英国が鯨の遺伝子操作で作り出した巨大水素呼吸獣でツェッペリン飛行船なみの巨体で空を行くリヴァイアサンに搭乗することになる。緊急任務で載せた若き女性科学者バーロウ博士は重要な秘密任務を帯びているらしい。コンスタンティノープルに向かったリヴァイアサンはしかし、ドイツ空軍の攻撃を受け、墜落してしまう。偶然に墜落を目撃したアレックは救助に向かい、結果的にはアレックたちの乗ってきたウォーカーのエンジンを流用してリヴァイアサンを再び浮き上がらせることに成功し、迫りくるドイツ軍を振り切ってリヴァイアサンは目的地に向かう。アレックとデリン、そしてバーロウ博士の謎の卵を乗せて。ヤングアダルト向けということで読みやすいが話はまだ導入部といったところか。完結編まで出ているようなので、順調に出ることを祈る。
(「リヴァイアサン」、スコット・ウエスターフェルド著、小林美幸訳、新☆ハヤカワ・SF・シリーズ、2011年12月発行、ISN978-4-15-335001-4)
