地震、台風などと同じく自然災害の一種として"怪獣災害"が存在する並行宇宙が舞台。有数の怪獣大国である日本で気象庁内に設けられた怪獣対策のスペシャリスト集団"特異生物対策部"、略称"気特対"の活躍を描く連作。太平洋から日本に接近する海獣(シークラウド)に対する"気特対"を描くメンバー紹介編的な第一話「緊急!怪獣警報発令」。巨大化した少女型怪獣を相手にする苦悩と暗躍する謎の組織の片鱗を描く第2話「危険!少女逃亡中」。この怪獣は事件後人間サイズに戻って捕獲されヒメと呼ばれるようになる。謎の飛行怪獣(グロウバット)の発光現象が放射能に関係するとわかって大騒ぎになる書き下ろしの第三話「脅威!飛行怪獣襲来」。マスコミの密着取材が入った中で出現した植物怪獣(メガドレイク)事件を描く第四話「密着!気特対24時」。そして最終第五話「出現!黙示録大怪獣」では、謎の組織の暗躍で巨大な多頭龍が目覚めようとする。組織に攫われたヒメはしかし脱出して多頭龍の目覚めを察知してそちらに向かおうとする。気特対の本部が組織のテロリストに抑えられている間についにMM9(Monster Magnitude 9)に達する多頭龍(クトウリュウ)は目覚めてしまい、ヘリで運ばれたヒメと神戸ポートアイランドの遊園地跡地での黙示録決戦が始まる。ヒメは傷つきながらも決め技の巨大光輪でクトウリュウを倒し事件は終了するが組織のテロリスト(実は人間大の怪獣=妖怪だった)は逃亡してしまい、続きへの伏線がつながる。何よりも初代ウルトラマンからのTV怪獣番組をリアルタイムで見ていた世代にとっては怪獣小説の部分だけでも感激もの。本作のもう一つのキモは怪獣ものにSFとしての理屈をつけるべく導入された多重人間原理。一見我々の宇宙(ビッグバン宇宙)の物理法則に反しているように見える怪獣たちは実は別の物理法則の支配する宇宙(神話宇宙:ミス・ユニヴァースとのしゃれ)の存在で、我々の宇宙に紛れ込んできているとする複数の人間原理に基づく宇宙の交雑を怪獣の説明に使っているものだ。いかにもSFにこだわる作者らしいが何よりも怪獣への愛に満ちた傑作。やっと文庫化で読めてよかった。帯によれば連続TVシリーズになって放映されるそうだが、地上波ではほとんどの地区でみれないじゃないか。後でDVDででも見るしかないか。
(「MM9」、山本弘著、創元SF文庫、2010年6月発行、ISBN978-4-488-73701-6)

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