2010年6月アーカイブ

前半の「ケロスカーの逃走」では、勘違いからラール人基地から逃走したケロスカー3体は惑星ロルフスの原住種族に追跡され、つには恵みの肉を与えてくれる神としてとらわれてしまう。一方、タッチャー・ア・ハイヌの出来心によってポジトロニクスの中に収まってしまったロルヴィクを何とかしようとハイヌはラクトン人パンと情勢の調査をする。救助に向かったグッキーとラスは危ないところでケロスカーを救い出すことに成功し、ラール人基地の衛生区画に戻ったケロスカーからn次元歪曲構造に捕えられていたという説明を受け入れたホトレノル=タアクはローダンの80年計画に気付かず、バーヴァッカ・クラによって元に戻ったロルヴィクたちもローダンの元に帰還した。後半の表題作では、オヴァロンの惑星に逃れた人類は、男性人口の少なさから、極端な女権政治になっていた。ブルは、ローダンが捜索に来る時のことを考えて、ハイパーインメストロンによって恒星を五次元インパルスを発射する非常シグナルに仕立てようとするが、オヴァロンの大臣ヴァイたちは無用な注意をひきつける危険な計画として阻止しようとする。漂流する古レムール艦隊から戦艦を持ってきて防衛体制を整えるというブルの説明に、何とか妥協したように見えた女たちだが、ブルの乗る≪ジェミニ≫がハイパーインメストロンを仕掛けようとした時に無知から爆弾を爆発させてしまい、≪ジェミニ≫は恒星に突っ込むコースに乗る。最後に何とかInAF装置により恒星に点火することに成功するが、≪ファラオ≫でレムール艦を取りに行っていたダントンたちは、エネルギー藻によって大半の艦が使えなくなっていることに気づき、何とか25隻の艦を持ち帰ることに成功する。

(「星の非常シグナル」(ペリーローダン378)、H.G.エーヴェルス&H.G.フランシス著、五十嵐洋訳、ハヤカワ文庫SF1759、2010年6月発行、ISBN978-4-15-011759-7)

さよならペンギン

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ハヤカワでは初登場の大西科学。熟講師の南部観一郎は観測者(オブザーバー)としてこの世界を観測しながら1500年以上を生きていた。相棒の延長体(エクステンション)であるペンダンは普段はペンギンの姿をしているが、南部と共に出かける時は女の子の姿になったりする能力を備えており、南部自身もその正体はよくわかっていない。自分と同類の観測者を求めて夜な夜な街を彷徨う南部たちだが、ある日、ペンダンが黒い延長体と思われる相手に襲われる。突然の敵意に戸惑いながらも初めての同類らしきものの発見に、相手を探そうとする南部たちだが、その黒い奴は南部たちをおびき寄せるために橋を破壊し大惨事を引き起こす。ほっておけないと敵を倒しにかかるペンダン。止めようとする南部を押し切り、ついに最終形態のドラゴンの頭になって炎で黒い相手を焼き尽くすペンダンに別れを告げた南部の前に現れたのは熟の事務員、谷一恵だった。自分も150年生きていることを告げる一恵だが、話合おうとする南部に対し、黒い奴は自分の延長体で、過去に吸収してきた延長体の悲しい体験から、ペンダンを魔物と断じ、自分と一緒になるように告げる。延長体はそんな存在ではないという南部に対し、攻撃を仕掛けた一恵を防いだのは戻ってきたペンダンだった。延長体とは長く生きてきた観測者の記憶により生まれたものであり、南部と一恵の対立に関し、最も原初の形態である剣の姿になったペンダンは南部に一恵を倒すか自ら滅ぶかの決断を促す。やっと会えた同類を悲しい結果で失った南部たちは、住み慣れた国を離れて新たな国へ向かう。量子力学的な観測問題にからめて、自らの死なない世界を観測し続けることによる不死者を扱うところが肝となっている。人の基準を超えて長生きする時に問題となる記憶を延長体という存在に絡めている。小松左京の「虚無回廊」には1億年生きる異星人が記憶嚢をいくつもぶら下げている描写があったが、それとは違う解決策なのだろうか。不死者というのは魅力的な設定で主人公も新たな旅立ちで終わっているが、続きは書きにくそうだなあ。

(「さよならペンギン」、大西科学著、ハヤカワ文庫JA997、2010年5月発行、ISBN978-4-15-030997-8)

地球最後の野良猫

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猫が致死性の猫インフルエンザを媒介するとして、一部の企業に厳密に管理されるようになってしまった社会。母と暮らす少女ジェイドは庭に迷い込んできた一匹の猫に出会う。首輪をしていないその猫はこの社会ではありえない野良猫のようだった。届け出をすれば殺されてしまうと思ったジェイドはその猫フィーラを隠れて飼うことにする。クラスメイトの男の子クリスに知られてしまったジェイドはしかたなくクリスが猫を見に来ることを許すようになる。しばらくは平穏な日が続いたが、ある日コンパー(コンプロイト=保護局員)がジェイドの家に踏み込んで来る。フィーラはどこかに行ってしまい見つからずにすんだがショックで元々病弱な母が死んでしまう。居場所を失ったジェイドはクリスのところに行っていたフィーラと共に、世界に残された唯一の猫が自由に暮らせる国アイルランドを目指して逃亡することになる。途中、自由猫連盟の人たちに助けられたりしながらも、何とか港町ブルーヘイブンにたどりついたクリスとジェイドは、自由猫連盟のデモに紛れて町に入りこむ。しかし、ついに追いつめられて捕まってしまったジェイドとフィーラに、猫を一手に扱う多国籍企業ヴィアファラの経営者ジェイムズが取引を持ちかける。あやうく乗りそうになったジェイドだが、フィーラの妊娠がばれてあやうく手術されそうになったことから、何とかフィーラだけでも逃がすことに成功する。10年の刑で刑務所に入ったジェイドに届いたビデオレターには自由に暮らすフィーラとその子猫たちと共に待つクリスの姿があった。少女と猫の逃避行をストレートに描いたもの、ひねりもなくストーリーが読めるし、あくまで視点は少女の側で猫の視点が入るわけではないので、そのつもりで読むべし。

(「地球最後の野良猫」、ジョン・ブレイク著、赤尾秀子訳、創元SF文庫、2010年6月発行、ISBN978-4-488-73601-9)

氷上都市の秘宝

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<移動都市>シリーズの第3弾。前作から16年後。トムとへスターは氷上都市アンカレジで平穏に暮らしていたが15歳の娘レンは物足りなさを感じていた。そこに現れたのが盗賊団<ロストボーイ>のリンペット。アンカレジにあるブリキの本を奪おうと昔なじみのコールに持ちかける<ロストボーイ>のガーグルだが、アンカレジを出て冒険をしたいレンがまんまと乗せられて本を持ち出してしまう。そこにへスターがかけつけガーグルを射殺するが、残った<ロストボーイ>のフィッシュケーキはレンと本を攫ってリンペットで脱出する。<ロストボーイ>の本拠地に向かう途中で海賊狩りにあった2人は、水上都市ブライトンで囚われの身となる。そこでは昔トムとへスターを裏切ったペニーロイヤルが市長に収まっていた。一方、レンの行方を追うトムとへスターは<ロストボーイ>の本拠地に行くが、そこは壊滅寸前で、老いたリーダーのアンクルは本拠地の壊滅と運命を共にし、その後ブライトンにたどり着いたトムとへスターはレンの手掛かりを得る。同じころ移動都市連合と対決を強める<グリーンストーム>陣営では、ドクター・ゼロによって発掘されたへスターの育ての親である旧型ストーカー、シュライクが復活させられていた。<グリーンストーム>の最高司令官ストーカー・ファンはブライトンに攻撃の手を向けるが、おりしもブライトンでは年に一度の盛大なお祭りムーン・フェスティバルが開幕していた。祭りに集う多くの移動都市の中心ブライトンに襲いかかる<グリーンストーム>の飛行船隊。戦いの中で、昔の裏切りを暴露されたへスターは、トムにレンを連れて懐かしの飛行船<ジェニー・ハニヴァー>で脱出するように告げて姿を消す。そのへスターを救ったのは育ての親シュライクだった。ブリキの本に隠された秘密(最終戦争前の軌道兵器<オーディン>を起動する鍵)で戦争が新たな局面を迎えることが暗示され、トムとへスターの間の溝はどうなるのか、といった後を引くところで幕。最終の第4巻が早く出ることを祈ろう。

(「氷上都市の秘宝」、フィリップ・リーヴ著、安野玲訳、創元SF文庫、2010年3月発行、ISBN978-4-488-72303-3)

前半の表題作では、アトランに協力を断られたローダンは、ケロスカーの立案した計画の実行のため、ガルトの協力によりポスビ艦を使うことにする。ラール人に捕獲されたポスビ艦に乗っていたケロスカーたちは、バラインダガル銀河の崩壊から逃げてきたという説明をし、ホトレノル=タアクをだますことに成功する。後半の「ロルフスの幕間劇」では、ヒュプトンの居住に適した基地惑星ロルフスに移送されたケロスカーたちは公会議種族の中に裏切り者がいるという話をホトレノル=タアクに信じさせる。一方、ガルトとコンタクトしたロルヴィクとア・ハイヌだが、ア・ハイヌがコーヒーに入れた幻覚剤のせいでロルヴィクの超能力が異常発動し、ア・ハイヌとガルトの乗ったスペース・ジェット≪ゴースト≫は突然ロルフスに移動していた。ローダンはケロスカーのプララルクにタコを憑依させてロルフスに送り込む。そこで時間テレポーターのラクトン人、パンに出会ったタコは、ア・ハイヌとガルトを見つけ帰還するが、ロルフスのケロスカーのうち3体がホトレノル=タアクに欺瞞を見つかったと勘違いして氷河に脱出したことを知る。

(「戦略家ケロスカー(ペリーローダン377)」、エルンスト・ヴルチェク&H.G.エーヴェルス著、嶋田洋一訳、ハヤカワ文庫SF1757、2010年5月発行、ISBN978-4-15-011757-3)

ザ・ジャグルIII

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第7話「接触感染」では、オフィールのショッピングモール<カナーン・マーケット>でテロリストによる人質籠城事件が起きる。シオリに頼まれてキャロルのためのプレゼントを取りに行っていたジェイドと偶然店にいたブリジッドが事件に巻き込まれる。時間がたつうちにテロリストとの会話でオフィールが難民を虐げていると信じだす軌道上国家の大企業令嬢コリンナとその友人の若者たち。ジェイドたちの流す情報を元に踏み込んでテロリストを排除したザ・ジャグルのVACに対してコリンナたちは非難の声を浴びせる。第8話「狙撃」では、<ワルキューレ>との連絡役に便宜を図っていた市議会議員アクショネンコを排除する狙撃のための待機に入るザ・ジャグルの面々。暇つぶしの議論の中で非武装の女を狙撃することに対する躊躇を覚えるフィリップだが、実際にそのチャンスがやってくると、港湾施設への移動の一瞬の隙をついて冷静に狙撃を成功させるラウラとジェイドにプロフェッショナルの一面を見る。第9話「メテオリック・シャワー"Prequel"」では、いよいよ<ワルキューレ>の幹部ヴォルフラム(コードネーム<盾を壊す者>(ランドグリーズ))とその護衛である少女ゲルトルーデ(実は最新鋭の機械化兵)が<グレート・ピラー>のトップステーションに現れる。それを察知した<教授>と<チェシャ猫>は迎え撃つため、ザ・ジャグルの面々をVACと共にトップ・ステーションに送り出す。ヴォルフラムの企みが着々と進行する中、ザ・ジャグルの面々はどう対抗していくのか、というところで以下次号。あと2巻(多分6話?)だそうでいよいよ佳境というところか。

(「ザ・ジャグルIII」、榊一郎著、ハヤカワ文庫JA999、2010年5月発行、ISBN978-4-15-030999-2)

星の舞台から見てる

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死後のweb上の死亡告知やサービス解約などを代行するHCC社の香南は、伝説の創業メンバー・野上の死後処理を任される。死亡したはずの本人から来る謎のメールに導かれて野上の人生を追っていく香南は、野上に助けられたと称する高校生広野と共に謎を追うが、この時代、ネット上では誰でもがエージェントと呼ばれるソフトウェアを持つようになっており、ネット上での香南のエージェント<カナ>は野上のエージェントと出会う。実世界とネット両面でストーリーは進んで行くが、親会社の辻河原から任務打ち切りを告げられた後も、あきらめきれず謎を追った香南と広野が突き止めた、野上の果たした機密任務とは国家をも揺るがしかねないものだった。進化して人格と呼べるまでになったエージェントや、情報のオープン化、信頼のネットワーク(Web of Trust)、など現代のウェブの延長上のネット世界がSEらしく描かれる。衛星ネットワークや、惑星間ネット、地球外からのエージェント、などの"明るい"未来が描かれ、ストーリーの先はある程度読めてしまうが、期待どおりにハッピーエンドになるあたりも含めて、心地よい読後感に浸れたので良かった。

(「星の舞台から見てる」、木本雅彦著、ハヤカワ文庫JA998、2010年5月発行、ISBN978-4-15-030998-5)

前半の表題作では、ガルトの提案でヴラト信仰がさかんな惑星デンモルクIIにヴラトとして降り立つ作戦を実行したローダンだが、そこは神官たちが己の権力を守ろうと画策する世界であり、ローダンは歓迎されなかった。ティフラーの運んできた燃料により≪ソル≫は一息つくが、ティフラーから新アインシュタイン帝国(NEI)のことを聞き、銀河系に残った者との亀裂を感じる。後半の「対立」では、新アインシュタイン帝国を訪れたローダンたちだが、ローダンが過激派<オリエント>に誘拐された事件を解決する過程で、積極的にラール人に対抗しようとするのは一部の過激派のみで、ガイアの長老たちはアトランの策定した"スタトゥス・クオ"を認めていることを知る。ラール人に対抗するためウルトラ戦艦の提供を求めるローダンだがアトランに拒否されて交渉が決裂しガイアを去ることになる。一方、アトランとティフラーはラール人との会合でローダンの計画に与しないと説明するが、ラール人の罠にはまりそうになり、ティフラー内に潜むタコのテレポーテーションでかろうじて脱出する。

(「ヴラト降臨」、H.G.フランシス著、嶋田洋一訳、ハヤカワ文庫SF1756、2010年5月発行、ISBN978-4-15-011756-6)

SFマガジン2010年7月号

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メタルギア・ソリッドの特集。ここまで大々的にゲームの特集をするのは初めてか?内容は、小島秀夫監督インタヴュー、矢野健二と前島賢の記事、深見真と万城目学のエッセイ、卯月鮎/藤田直哉による≪メタルギア・サーガ≫全作品ガイド、編集部による巻頭の紹介。もうひとつの特集が柴野拓美追悼。さすがに追悼エッセイは大勢で、伊藤典夫、内田昌之、小川隆、小木曽絢子、小野田和子、鍛冶(梶元)靖子、梶尾真治、小谷真理、酒井昭伸、嶋田洋一、清水義範、高橋良平、巽孝之、藤崎慎吾、牧眞司、山岸真、山田正紀、山本弘、夢枕獏、と多数・多岐にわたり、改めて柴野氏の影響力の大きさが感じられる。他に牧眞司による詳細な柴野拓美年譜は日本SF史となっている。小説では、山本弘「オルダーセンの世界」は『シュレディンガーのチョコパフェ』で言及されたディストピア世界を舞台にした量子論的確率の話。北野勇作「カメリ、掘り出し物を探す」は模造亀のカメリのシリーズの第7弾。菅浩江「いまひとたびの春」は<コスメディック・ビッキー>のシリーズでアンチエイジングで若く見せていることをかくして年下の青年と付き合っている女性を描く。連載の飛浩隆「零號琴」第6回ではワンダの元を訪れたシェリュバンが遭遇する事態を描く。コミック連載の東城和実「完璧な涙」は第4回。他には友成純一の第30回ファンタスポルト・レポート。JAから本が出たばかりの、木本雅彦と大西科学のインタヴュー。北原尚彦「星進一展」レポート。センターカラーページでは「フラッシュ・フォワード」と「レジェンド・オブ・ザ・シーカー」(≪真実の剣≫の第1部が原作)の紹介。フラッシュ・フォワードに竹内結子が出ているとは知らなかった。

2010年7月

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