日本SF大賞&新人賞の特集号。大賞の伊藤計劃「ハーモニー」と特別賞の栗本薫「グイン・サーガ」関連では、それぞれ父の伊藤進一氏と夫の今岡清氏の言葉、選評、伊藤氏原作のコミック「ATD:Automatic Death」、今岡清×新井素子対談。新人賞は最終選考会のレポートと受賞第一作。伊野隆之「冷たい雨」は、安全なはずの遠隔戦闘ドローンによる攻撃が化学工場の破壊による死の雨を降らせ、退役した主人公は戦後の国連本部に現れた敵独裁者へのテロ攻撃に向かう。山口優「アンノウン・コンクェスト」は超光速航行の特許出願の実態調査に赴く調査員を描くが、簡単に結末が割れてしまっている。読み切り小説は、恒例のイラスト先行小説の我孫子武丸「記憶の欠片」では、記憶を消された記憶修正士がその原因を突き止めようとする。他には、神代創「銀河広告ビーグル支店の日常」では大手広告代理店に就職した新人女子社員が赴任先の辺境惑星で奮闘する。秋口ぎぐる「未来少年」では、汚染された大気を避けてシェルターで暮らす少年と父だが、実は父には秘密があった。加地尚武「冬のアリ」では、高速道路を歩く難民の中で父が息子に語る<アリたちの世界>。日本SF新人賞作家の競作では、杉山俊彦「グノ族の話」は都市に住むいろいろな神を崇める種族たちの寓話。片理誠「ラストソング」では、クリア不能のゲーム『冬玄』(ウインターロード)をめぐり死んだ作者の女と遺された男が探るゲームの秘密。連載小説では、あさのあつこ「スーサ」(第六回)は紅キ族と狗イ族の争いと髪の関係に気付く歩美。恩田陸「愚かな薔薇」(X)では変質が進む少女の一人、三上結衣が宿坊で自らの出自を振り返る。篠田真由美「黎明の書」(第四回)ではついにシェミハザ伯爵と弟ダニイル卿の決闘をきっかけに城は墜ちイオアンとラウルは旅に出る。東野司「新ミルキーピア物語、天狗のしわざ」では、依頼人のミコガールの調査で判明した背後の天狗と仁姫の父の変容には関係があるのか。火浦功「またしても火星のプリンセス・リローデッド」はまたしても進展なし。古橋秀之「百万光年のちょっと先」(第十二回)はショート3編だが面白い。森岡浩之「地獄で見る夢」(第六回)では、優月と再会した俺のところに現れた矢上紫織。夢枕獏「闇狩り師、摩多羅神」(再録第二回)では、乱蔵と岳の勝負が続く。若木未生「オーラバトラー・インテグラル、ファウスト解体」は(後篇)で完結。他には、コミックスが、つばな「第七女子会彷徨、番外編、早回りの世界」、中臣亮「猫の足跡」、は<ペロー・ザ・キャット>のコミカライズ、なかせよしみ「TECH MATES」と「エリカさんの狂発明日記」。連載評論が魁!P.K.ディック塾。といったところ。
(「SF Japan 2010 SPRING」、徳間書店、2010年3月発行、ISBN978-4-19-862918-2)

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