SFマガジン編集部編のゼロ年代の短編集。ほとんどはSFマガジン掲載作だが、ちょうどここの記録を付け始める前くらいの作品が多く、意外に読んでなかった。冲方丁「マルドゥック・スクランブル"104"」はマルドゥック・ヴェロシティと同時期を扱ったもので研究所の内部告発をして犯罪に巻き込まれた女性の保護に尽力するウフコックとボイルドを描く(SFM2003年7月号初出)。新城カズマ「アンジー・クレーマーにさよならを」は『サマー・タイム・トラベラー』の登場人物A・K嬢の作中書簡体小説を借用した形式で情報電力網に覆われた世界での少女たちの交錯を描く(SFM2005年7月号初出)。桜坂洋「エクストラ・ラウンド」は『スラムオンライン』の登場人物の1人忍者の山之内純/ハシモトの視点から事件の後日談を語る(『スラムオンライン』英訳版のための書き下ろし)。元長柾木「デイドリーム、鳥のように」は機関(オルガノン)と呼ばれる自然発生的な組織の構成員を知覚でき戦って排除していく域外者(アウトサイダー)の姿を描く(SFM2003年7月号初出)。西島大介「Atmosphere」は唯一のコミックで『アトモスフィア』の原型短編(SFM2004年5月号初出)。海猫沢めろん「アリスの心臓」は少女と時空間・構造をめぐる物語(SFM2008年2月号初出)。長谷俊司「地には豊穣」はITPが一般化した時代に≪特徴を強調した日本人≫の経験記憶の構成に従事する研究者をめぐる物語(SFM2003年7月号初出)。秋山瑞人「おれはミサイル」は地表が伝説としてしか記憶されていない空の中での意識を持った戦闘機とミサイルの物語(SFM2002年2,5月号初出)。全体に面白く読めたが、中でも「おれはミサイル」、「エクストラ・ラウンド」、「マルドゥック・スクランブル"104"」、「デイドリーム、鳥のように」あたりはお勧め。
(「ゼロ年代SF傑作選」、SFマガジン編集部編、2010年2月発行、ISBN978-4-15-030986-2)

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