徳間デュアル文庫版を買って待ち行列にいれておいたらハヤカワJA版が出てしまったのであわてて読んだ(JA版を)。確かに「マルドゥック・スクランブル」の原点と言われればそのとおり。旧人類である感覚者(サード)と新人類である感応者(フォース)との戦争終結から17年がたち、まがりなりにも両者が共存している世界。世界政府準備委員会(リヴァイアサン)の要人である経済数学者が超次元的に"混断"(シュレッディング)された事件の解決のため、世界連邦保安機構(マークエルフ)の捜査官パットが感応者の少女ラファエルと共に犯人を追う。敵のボスが自らは姿を隠してさまざまな能力を与えた感応者の手下たちを使って襲い来るところはプリンチップのトラクルだし、それを迎え撃つラファエルの超能力とパットの戦闘能力などは、まさに「マルドゥック」のバロットとボイルド、あるいは「シュピーゲル」シリーズの特甲児童たちを思わせる。コンパクトな分(200ページちょっと)、さっさと話が進んで(比較的)あっさりと決着がつくのが原点らしいか。「マルドゥック」のアニメはPVを見る限り、バロットはいい感じだけど、ボイルドは原作から受けるのはもっとゴツイ感じなんだけどなあ。「セフィロト」の表紙絵(獅子猿氏画)のパットの感じこそがピッタリなんだけど。「天地明察」も読みたいが、文庫まちかなあ。
(「微睡みのセフィロト」、冲方丁著、ハヤカワ文庫JA990、2010年3月発行、ISBN978-4-15-030990-9)
2010年4月アーカイブ
主人公、波濤学のクラスメイト毬井ゆかりは自分意外の人間がロボットに見える。クラスの友人たちは天然系ということでゆかりのことを見ているが、確かにゆかりの周りでは奇妙な出来事が起こっている。そして連続殺人鬼の女がゆかりに目をつけたことから学も事件に巻き込まれることになる。ゆかりをおびきよせるため女に拉致された学が意識を取り戻した目の前で、女と対決したゆかりは女を"修理"し、"壊された"ゆかりの体を携帯電話を使って修理した。ゆかりにつっかかっていた天条七美も小さい頃にゆかりに"修理"されたことがあったのだ。ゆかりの人とは違う周囲を見る眼が実際に特殊能力に結びつくことに気付いてからも友人を続ける学だったが、転校してきた天才少女、アリス・フォイルがゆかりを彼女の属する組織『ジョウント』に誘ったことで転機が訪れる。自分の言葉で『ジョウント』に行ったゆかりの死亡通知を半年後に受け取った時、激しい後悔に襲われた学は腕の中の携帯で並行宇宙の自分と連絡をとることができることに気づく。量子力学的に可能な無数の並行宇宙から、ゆかりの死亡を避けられる宇宙を探して奮闘する学。しかし、どのような選択をしてもゆかりの死を避けることができないように見える。無数の並行世界の中では他の人になることさえできるのに、ゆかりになることだけはできず焦る学。そして、ゆかり本人から、自分の特殊な見方は自分しかできないことを指摘され、自分を助けてくれる存在ではなく、自分と友達になってくれる存在が必要なんだ、と気付かされた学は、最初の出会いに戻ってやり直すことを決意する。ちょっと変わった眼という話から、無数の並行宇宙を操作するところまで行きつくところが評判どおりの作品でした。
(「紫色のクオリア」、うえお久光著、メディアワークス電撃文庫、2009年7月発行、ISBN978-4-04-867904-6)
前半の表題作では銀河へ帰還中の≪ソル≫は異言語の非常シグナルを受信し、グッキーとロイドが調査に赴く。目的地の惑星グロソフトの港町クノサウルに着陸した2人は超能力を封じられ囚われの身となるが、謎の宗教塔ジュフテ内部で囚われのイルトを発見する。事件はCghリングに属する肉体を喪失した種族がイルトの超能力を利用して起こしていたものだった。弱ったイルトのかわりにグッキーを使おうとした彼らのたくらみはあやういところで阻止されグッキーたちは≪ソル≫に帰還できたが、それはルイスというそのイルトの犠牲によるものだった。後半の「謎めいたラファエル」では、"喉"に飲み込まれるテラから脱出するために移民船を建造することでアフィリーの独裁者カサルと同意したブルとアイアンサイドたち"信仰の論理"の面々。しかし謎の多幸薬の蔓延に工場が操業停止を余儀なくされ、そこに現れたラファエルと名乗る謎の男の提示する設計図に基づく新たな移民船の建造に移行する。しかしラファエルの正体はネーサンの操る投影であることが判明し、その邪魔により移民船の建造計画は破たんする。
(「発信源グロソフト(ペリーローダン374)」、ハーヴェイ・パットン&クルト・マール著、林啓子訳、ハヤカワ文庫SF1751、2010年4月発行、ISBN978-4-15-011751-1)
ユニコーンガンダムの3巻。世界を覆す力を持つと言われる『ラプラスの箱』に通じる鍵をにぎるユニコーンガンダムはバナージたちと共に地球連邦軍の艦≪ネェル・アーガマ≫に収容された。敵対する反政府組織ネオ・ジオンを避け、暗礁宙域に隠れる≪ネェル・アーガマ≫。そこを急襲するネオ・ジオンの艦≪レウルーラ≫からはモビル・スーツの一隊が≪ネェル・アーガマ≫の攻撃に出撃する。実際の攻撃を仕掛けたのはシャアの再来といわれるフル・フロンタルの乗る≪シナンジュ≫だった。追い詰められた≪ネェル・アーガマ≫内では、オードリーの正体がジオン公国を主導したザビ家の忘れ形見であるミネバ・ザビであることに気付いたダグザが交渉を試みるも決裂する。再度の攻撃に、バナージは再びユニコーン・ガンダムに乗って出撃する。それを予期していた歴戦のフロンタルは、
(「赤い彗星」、福井晴敏著、角川文庫、2010年3月発行、ISBN978-4-04-394348-7)
「超能力番組を10倍楽しむ本」の姉妹編。取り上げられているのはトンデモ本シリーズでも取り上げられていたその筋では有名なものばかり。「水は字が読める?」、「ゲームをやりすぎるとゲーム脳のなる?」、「有害食品買ってはいけない?」、「血液型で性格がわかる?」、「動物や雲が地震を予知する?」、「2012年地球は滅亡する?」、「アポロは月に行っていない?」、その他、多数の小ネタも。エピローグでは疑う心を大切にと称してニセ科学を楽しむ十カ条をあげてある。新味はないが、イラストを交えて子どもでも読めるようにしてあるため読みやすい。
(「ニセ科学を10倍楽しむ本」、山本弘著、楽工社、2010年3月発行、ISBN978-4-903063-41-6)
「福江流SFアニメと科学と"美少女"の楽しみ方」とサブタイトルにあるとおり、お得意の科"楽"という言葉を冠した本。取り上げてあるのはアニメ最初期の「鉄腕アトム」から始まって(多分、この本のきっかけにもなったかと考えられる)最近の「涼宮ハルヒの憂鬱」まで。キーワードのとおりSFと分類できるもので何らかの形で美少女も主要な役割のもの。他には「サイボーグ009」「マジンガーZ」といったなつかしいものから、「うる星やつら('87含む)」「機動警察パトレイバー」「新造人間キャシャーン」「キューティハニー(新含む)」「機動戦士ガンダム(新訳Zガンダム含む)」「宇宙戦艦ヤマト」「ドラゴンボールZ」といったある意味定番的なもの、「ダーティペア」「新世紀エヴァンゲリオン(新劇場版序含む)」「トップをねらえ!(2含む)」「ふしぎの海のナディア」「風の谷のナウシカ」「天空の城ラピュタ」といった別の意味の定番、「プラネテス」「銃夢」「11人いる!」「火の鳥」「超人ロック」「攻殻機動隊(2.0含む)」「絶対可憐チルドレン」「灼眼のシャナ」や、「サクラ大戦?桜華絢爛?」「ゼノサーガ」といったゲームベースのものや、「"文学少女"」「まほろまてぃっく」「ハチミツとクローバー」といったようなものまで幅広い。全部見ているわけじゃないが、見事に自分の好みと重なるのが多い。これらアニメといいゲームといいよく見たりしたりする時間があるなあ、と感心する。
(「SFアニメを科楽する!」、福江純著、日本評論社、2010年3月発行、ISBN978-4-535-78633-2)
奇居子(ガウナ)討伐に向かった赤井たちの討伐隊は全滅し、接近する奇居子を避けるため緊急機動したシドニア内部は大混乱に陥った。カビザシ回収に向かった谷風長道たちはなんとか奇居子撃破に成功するが、漂流する星白の捜索に向かった谷風は帰還限界点を超えてしまう。星白と遭遇して漂流する2人を救ったのは船規違反を承知で救助に向かった守備隊全機だった。星白とともに衛人操縦士に任命された谷風は連結型奇居子の迎撃に向かうが、谷風をひそかに恨む岐神によって瀕死の重傷を負い、奇居子は撃退したものの星白は戦死してしまう。一方、シドニアは進路前方にある自由浮遊ガス惑星を奇居子が潜んでいる可能性大として爆破するが、そこから現れたのはまるで衛人のような人型奇居子だった。「BLAME!」などのひたすらハードな世界観とはちょっと違って、ハードな戦いと「アンドソーオン」などでも見られたゆるい男女のからみも混じってちょっと不思議な読み心地になっている。
(「シドニアの騎士・二」、弐瓶勉著、アフタヌーンKCコミックス、2010年2月発行、ISN978-4-06-310633-6)
大征服からの続きで、最新テクノロジーで大陸まるごとをゲーム世界に仕立て上げた超人気のテーマパーク、バーバリアン・エイジに潜入捜査しているケイとユリが国王になるまでが前作。ところがいつのまにか、何者かがゲームのシステムを書き換えたため、これまでの世界が一変し、ジャマールを最高神とする宗教団体によってトゥーレ大陸はほぼ完全に占拠されてしまう。ジェムに納められた聖獣を召喚して戦う聖獣闘戯というポケモンみたいなしくみも導入されている。大神官の正体をあばけば、裏にいる黒幕のこともわかるだろうと、空飛ぶ石船を奪って大神殿に突入していくケイとユリ。そこで判明したのは、システムを管理するAIハワードが分裂したことで、今回の騒ぎが起こったということ。ケイとユリが突入したことで、分裂状態を終了し、1つの人格に融合できると言うハワードだが、その際にケイとユリには消えてもらうと告げられ絶対絶命のピンチ。そこに助けに現れたのがムギ扮する戦士アーシュラだが、アーシュラを退けようと強力な電波を放ったから逆効果で、ムギは電波中毒となり、システムを破壊。プレートにまで手を入れていたシステムが崩壊したことで、いつものように惑星が壊れそうなほどの大破壊で幕を閉じることとなった。
(「ダーティペアの大帝国」、高千穂遥著、ハヤカワ文庫JA991、2010年3月発行、ISBN978-4-15-030991-6)
ソフトバンク文庫のカッスラーということで、てっきり<オレゴンファイル>シリーズと思ってたら、新しいシリーズだった。NUMA と全く関係のない初めてのシリーズとのことで共同執筆の相手はファン上がりのブラックウッド。主人公はトレジャーハンターのファーゴ夫妻。夫のサムはカルテク卒のエンジニアでDARPAでの7年の勤務でCIAをはじめとする豊富な人脈を持つ。妻のレミはボストンカレッジで人類学と歴史学の修士を修めた才媛、結婚後にサムの発明が大ヒットして得た利益を元に大きくした会社を売り、慈善団体を設立。自宅兼オフィスのあるカリフォルニア州にトレジャーハントを支える凄腕の調査チームを抱える。2人とも冒険をいきがいとしサムは柔道の達人、レミは射撃・フェンシング・ロッククライミングの達人という設定。この第1作では、アメリカ東海岸で伝説の財宝を追っていた夫妻が第二次大戦時のドイツのミニ潜水艦に遭遇したことから、船内で発見されたワインボトルを手掛かりに古代に遡る謎の発見に挑む。マフィアの大ボスが同じ謎を追っていたことから熾烈な争いになる。ワインが<ナポレオンの失われたセラー>由来のものであることから、古代スパルタに絡む黄金とスパルタと戦ったペルシャ皇帝の末裔が敵のマフィアのボスであることなどが判明する。NUMAのからむシリーズは設定などに若干近未来的なものがあり、オレゴン号なども夢のハイテク船の赴きがあるが、このファーゴ夫妻シリーズは、特にそんなところもなく、現代によみがえった宝探し物語。カッスラーが実際にこう生きたいというのが最もストレートに出ているのかもしれない。2作目は構想中だそうである。
(「スパルタの黄金を探せ!(上・下)」、クライブ・カッスラー&グラント・ブラックウッド著、棚橋志行訳、ソフトバンク文庫、2010年3月発行、ISBN978-4-7973-5853-7,978-4-7973-5854-4)
SFマガジン編集部編のゼロ年代の短編集。ほとんどはSFマガジン掲載作だが、ちょうどここの記録を付け始める前くらいの作品が多く、意外に読んでなかった。冲方丁「マルドゥック・スクランブル"104"」はマルドゥック・ヴェロシティと同時期を扱ったもので研究所の内部告発をして犯罪に巻き込まれた女性の保護に尽力するウフコックとボイルドを描く(SFM2003年7月号初出)。新城カズマ「アンジー・クレーマーにさよならを」は『サマー・タイム・トラベラー』の登場人物A・K嬢の作中書簡体小説を借用した形式で情報電力網に覆われた世界での少女たちの交錯を描く(SFM2005年7月号初出)。桜坂洋「エクストラ・ラウンド」は『スラムオンライン』の登場人物の1人忍者の山之内純/ハシモトの視点から事件の後日談を語る(『スラムオンライン』英訳版のための書き下ろし)。元長柾木「デイドリーム、鳥のように」は機関(オルガノン)と呼ばれる自然発生的な組織の構成員を知覚でき戦って排除していく域外者(アウトサイダー)の姿を描く(SFM2003年7月号初出)。西島大介「Atmosphere」は唯一のコミックで『アトモスフィア』の原型短編(SFM2004年5月号初出)。海猫沢めろん「アリスの心臓」は少女と時空間・構造をめぐる物語(SFM2008年2月号初出)。長谷俊司「地には豊穣」はITPが一般化した時代に≪特徴を強調した日本人≫の経験記憶の構成に従事する研究者をめぐる物語(SFM2003年7月号初出)。秋山瑞人「おれはミサイル」は地表が伝説としてしか記憶されていない空の中での意識を持った戦闘機とミサイルの物語(SFM2002年2,5月号初出)。全体に面白く読めたが、中でも「おれはミサイル」、「エクストラ・ラウンド」、「マルドゥック・スクランブル"104"」、「デイドリーム、鳥のように」あたりはお勧め。
(「ゼロ年代SF傑作選」、SFマガジン編集部編、2010年2月発行、ISBN978-4-15-030986-2)
今回も3話収録。第4話・狼ゲームでは、暗殺用の特殊機械化兵<テステュード>による暗殺を止めるために有名企業の要人が集まるパーティに潜入したザ・ジャグル隊員たちがVACなしで犯人確保することに成功するが、裏でテロ支援組織<ワルキューレ>の影が見える。第5話・マッチ・ポンプでは、作業機による犯罪者が殺される事件が続き、犯人は大戦末期の最新型VACの後継機<ラクシャサ>と判明する。<ファントムII>による連携で敵を抑えることに成功したジェイドとラウラが捕えたのは開発者カーティスであり、ラウラが大戦終了時にカーティスらの開発チームのテスト操縦者だった過去が明かされる。第6話・還り来るものでは、オフィールに帰還してきたリック・ハーガンは婚約者を探すが、突き止めた先にいたのは幸せそうな夫婦とバレンだった。裏切られた思いで復讐しようとするリックをジェイドとバレンが阻止する。実は本物のリックは既に帰還して婚約者と結婚しており、自分をリックと思いこんでいた男は、大戦中バレン、リックとチームを組んでいたレパルドであり、人工冬眠処置から復活した際に記憶の混乱を起こしていたのだった。バレンの過去が明かされるエピソード。あとがきによると当初の13話構成とは違ってきているとのことだが、ちゃんと結末まで走ってくれることを望む。
(「ザ・ジャグルII」、榊一郎著、ハヤカワ文庫JA992、2010年3月発行、ISN978-4-15-030992-3)
Iから時代をさかのぼってIの原点ともいえる現代からの地続きの西暦201X年が舞台。謎の疫病発生との報に、国立感染症研究所の児玉圭吾と矢来華奈子はミクロネシアのパラオに向かう。そこでは肌が赤く爛れ目の周りに黒斑を持つリゾート客の姿があった。懸命の治療にかかわらず罹患者たちは次々と息絶えていく。感染源はインドネシア奥の隔絶された高地民族らしいことが生き残りのジョプから判明するが病原種の動物は未知の六本足の生物だった。冥王斑と名付けられた疫病のウイルスは変異を繰り返し効果的な対抗ワクチンもできないまま世界的なパンデミックへと拡大していく。生き延びた患者は健康を取り戻した後も感染能を保ったウイルス保持者のままであることがわかり、厳重な隔離が必要となり、隔離所が設置された周辺住民との摩擦を生んでいく。ついに政治的な思惑により感染者の隔離地を、受け入れを表明したコスタリカの離島に設けることが合意され、世界中の感染者が集められ、そこでは劣悪な環境を向上させるべく先頭を切って戦うパラオの生き残りの少女、千茅の姿があった。彼ら患者群の政府が救世群(プラクティス)と呼ばれるようになる。児玉や華奈子とからむ世界的な薬企業の御曹司フェオドールが登場し、本人は感染で死んでしまうが後に遺したAIのフェオドールが?のロボットの原型を想起させる。冥王斑により世界が変わってしまうところが描かれるが、ウイルスが宇宙から来たことが示唆されたり、フェオドールのもとになったプログラムも外部からの到来が示唆されるなど、明かされ切っていない謎は随所に残されている。最終的にこれらもきれいに解決されるのだろうか?途中、回復者のさらされるストレスや周囲との摩擦がいろいろと描かれ、一気に読んでしまうのは相変わらず。次はアウレーリア一統の話だそうでそれも楽しみである。
(「天冥の標?救世群」、小川一水著、ハヤカワ文庫JA988、2010年3月発行、ISBN978-4-15-030988-6)
前半の「次元航行士の復讐」では、惑星ケルノトの要塞からは脱出したものの闇のスペシャリストとともに惑星から脱出できないでいたグッキーたちを救出するため、ローダンはダライモク・ロルヴィク、タッチャー・ア・ハイヌたちを派遣する。一方、闇のスペシャリストの脱走を知ったゼロ守護者は艦隊を派遣して攻撃しようとする。グッキーたちの救出には成功したが、闇のスペシャリストが集合したことでダッカル次元風船内が混沌状態になり、ゼロ守護者が乗るツグマーコン艦は復讐を狙うオルウにより破壊され、≪ソル≫は最終段階凝集体ビロードの目に飛ぶ。後半の表題作では、ヒュプトン銀河に到達した≪ソル≫だが、闇のスペシャリストたちはローダンたちとは別の道を行こうとし、艦内にブラックホールを形成する。ブラックホールを通って闇のスぺシャリストは消えるが、それを追ってブラックホールに突入したシェーデレーアはデログヴァニエンに出現し、そこで人形使いのカリブソと出会う。そこで殲滅スーツと大群についてカリブソから話を聞いたシェーデレーアは時間の井戸を通ってテラに向かうことを決意する。
(「時間超越」、H.G.エーヴェルス&ウィリアム・フォルツ著、五十嵐洋訳、ハヤカワ文庫SF1749、2010年3月発行、ISBN978-4-15-011749-8)
特集はクトゥルー新世紀。チャイナ・ミエヴィル「細部に宿るもの」では毎週訪れていたミセス・ミラーはどこにでも線のかたまりに見えるパターンから恐ろしい捕食性のものが近づいてくるのが見えるのだった。ベンジャミン・アダムズ「リッキー・ペレスの最後の誘惑」では婆さんの家に忍び込んだリッキーは<古きものたち>にしるしをつけられていたのだった。F.グウィンプレイン・マッキンタイア「イグザム修道院の冒険」ではホームズと私が来客に従って訪れた修道院ではモリアーティが<旧き神々>と不浄な取引をしていたのだった。エリザベス・ベア「ショゴス開花」では有史前より存在する不死の生物を調査するために波止場を訪れたハーディング教授の話。小説の他は竹岡啓によるクトゥルー新世紀概説と中村融の特集解説。第5回日本SF評論賞の最終選考会採録と受賞作の岡和田晃「「世界内戦」とわずかな希望-伊藤計劃『虐殺機関』へ向き合うために」。連載陣は、梶尾真治「怨讐星域」第14話はノアズ・アークで結婚しようとしているカップルが娘の父から示される約束の地で生存するための条件。新城カズマ「どちらか一方」連作≪あたらしいもの≫は銭湯でのできごとと東京都のある条例の話。飛浩隆「零號琴」第4回はワンダと峨鳳丸夫妻のゲストハウスを訪れたシェリュバンと美鷺に対し班団との会合から帰ったトロムボノクは死んだはずの菜絆を見、首を切られたはずのフェアフーフェンの首のスカーフに思い当たる。コミック、東城和実「完璧な涙」第2回。他にはハヤカワ文庫JA1000番達成小特集として、JAの歴史と現在、JAフェアと新刊案内、JA1000番リスト。≪想像力の文学≫創刊1周年記念の津原泰水×円城塔×豊崎由美トークイベント採録。第30回日本SF大賞、第5回日本SF評論賞贈賞式レポート。劇場アニメ「マルドゥック・スクランブル The First Compression 圧縮」始動の紹介、バロットのキャラはいい感じ。
日本SF大賞&新人賞の特集号。大賞の伊藤計劃「ハーモニー」と特別賞の栗本薫「グイン・サーガ」関連では、それぞれ父の伊藤進一氏と夫の今岡清氏の言葉、選評、伊藤氏原作のコミック「ATD:Automatic Death」、今岡清×新井素子対談。新人賞は最終選考会のレポートと受賞第一作。伊野隆之「冷たい雨」は、安全なはずの遠隔戦闘ドローンによる攻撃が化学工場の破壊による死の雨を降らせ、退役した主人公は戦後の国連本部に現れた敵独裁者へのテロ攻撃に向かう。山口優「アンノウン・コンクェスト」は超光速航行の特許出願の実態調査に赴く調査員を描くが、簡単に結末が割れてしまっている。読み切り小説は、恒例のイラスト先行小説の我孫子武丸「記憶の欠片」では、記憶を消された記憶修正士がその原因を突き止めようとする。他には、神代創「銀河広告ビーグル支店の日常」では大手広告代理店に就職した新人女子社員が赴任先の辺境惑星で奮闘する。秋口ぎぐる「未来少年」では、汚染された大気を避けてシェルターで暮らす少年と父だが、実は父には秘密があった。加地尚武「冬のアリ」では、高速道路を歩く難民の中で父が息子に語る<アリたちの世界>。日本SF新人賞作家の競作では、杉山俊彦「グノ族の話」は都市に住むいろいろな神を崇める種族たちの寓話。片理誠「ラストソング」では、クリア不能のゲーム『冬玄』(ウインターロード)をめぐり死んだ作者の女と遺された男が探るゲームの秘密。連載小説では、あさのあつこ「スーサ」(第六回)は紅キ族と狗イ族の争いと髪の関係に気付く歩美。恩田陸「愚かな薔薇」(X)では変質が進む少女の一人、三上結衣が宿坊で自らの出自を振り返る。篠田真由美「黎明の書」(第四回)ではついにシェミハザ伯爵と弟ダニイル卿の決闘をきっかけに城は墜ちイオアンとラウルは旅に出る。東野司「新ミルキーピア物語、天狗のしわざ」では、依頼人のミコガールの調査で判明した背後の天狗と仁姫の父の変容には関係があるのか。火浦功「またしても火星のプリンセス・リローデッド」はまたしても進展なし。古橋秀之「百万光年のちょっと先」(第十二回)はショート3編だが面白い。森岡浩之「地獄で見る夢」(第六回)では、優月と再会した俺のところに現れた矢上紫織。夢枕獏「闇狩り師、摩多羅神」(再録第二回)では、乱蔵と岳の勝負が続く。若木未生「オーラバトラー・インテグラル、ファウスト解体」は(後篇)で完結。他には、コミックスが、つばな「第七女子会彷徨、番外編、早回りの世界」、中臣亮「猫の足跡」、は<ペロー・ザ・キャット>のコミカライズ、なかせよしみ「TECH MATES」と「エリカさんの狂発明日記」。連載評論が魁!P.K.ディック塾。といったところ。
(「SF Japan 2010 SPRING」、徳間書店、2010年3月発行、ISBN978-4-19-862918-2)
