某メディア企画からのスピンアウトとのことで、プロット13本あるうちの最初の3つを中編書き下ろし連作にしたもの。地球国家群の大戦終結後、力を持つ軌道国家群と地球国家群が表面上は平和を取り戻した世界。復興と平和のシンボルとして大戦の元となりたった1本だけ完成した軌道エレベータ(<グレート・ピラー>)の根元に建設された永久平和都市オフィールが舞台。この世界では発達したネットワークは自己進化する義脳蟲(コンピュータワーム)に汚染されうかつにネットにつなぐことは危険を伴う。先の大戦からVAC(Variable Armed Craft=可変型武装移動機)と呼ばれる人が乗って肉体を生体管理装置(メタボライザー)の管理下に置き意識を依代型疑脳(ペルソナ)に移行して高速思考でき、装備を変えることで汎用に使える兵器が実用化されており、戦後もそれを応用した機械が使われている。軌道国家群から入都した報道士(レポーター)のキャロルと記録士(ノーテイター)のシオリは都市の取材を通じ、その表層的な"平和"に疑念を抱くが、やがてテロや大規模犯罪を密かに闇に葬る特殊部隊<手品師>(ザ・ジャグル)の噂を耳にする。第1話「永久平和都市」では、平和になじめない帰還兵グループのテロリストにキャロルとシオリが拉致され、あやういところでザ・ジャグルによる介入を目撃して助かる。第2話「首無し騎士」では、連続殺人の犯人が大戦中に使われたタイプのVACと推測されたことからザ・ジャグルと犯人の首無し騎士との戦いを描く。首無し騎士の正体には大戦末期の壮絶な戦場であるバラモ高原攻防戦がからんでおり、ザ・ジャグルの一員である<三月兎>(マーチヘア)ことジェイドもその戦場にいたことが明かされる。第3話「鎧の内」では、高機動空母がテロリストに乗っ取られオフィールを目指していることが判明しザ・ジャグルが阻止に乗り込む。艦の進行は止まったものの、ジェイドは艦内に閉じ込められ、沈みゆく艦の中で、自分とそっくりな戦い方をする敵のVACと壮絶な消耗戦を繰り広げる。"戦後"という重いテーマをはらみつつもVACという魅力的なメカと派手なアクション満載で面白く読めた。徐々にザ・ジャグル隊員たちの抱える闇が明らかにされていくが、わりとすぐに出るという話のII巻ではより進展がありそうで楽しみだ。
(「ザ・ジャグル、汝と共に平和のあらんことをI」、榊一郎著、ハヤカワ文庫JA980、2010年1月発行、ISBN978-4-15-030980-0)

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