2010年3月アーカイブ

前半の「次元地獄」では、ベラグスコルスを≪ソル≫で本格稼働する試みは実験中に並行航行していたツグマーコン艦≪モルゲン≫が溶解しはじめるという事態を引き起こす。ツグマーコン艦隊の追跡もあり事態は急をつげるが、ケロスカーの計算者ドブラクや闇のスペシャリスト、オルウ、プィの協力により何とか稼働状態にもっていき、新たな隠れ家に向かうことができた。後半の表題作では、謎だった公会議の7番目の種族はかつて付近の銀河を支配し現在は肉体を喪っているコルトン人だった。コルトン人のヴォイロクロンは、かつてツグマーコン人のガルコン・エルヨグを操り闇のスペシャリストを生みださせた。闇のスペシャリストは12人揃うと絶大な能力を発揮する。ヴォイロクロンは好奇心からテレパシーの探りを入れてきたグッキーとの接続を元に≪ソル≫に飛来して肉体を取り戻そうと画策する。コルトン人の強力な能力に手も足も出ないかと思われたが、最後の瞬間に格納庫に入ったコルトン人を収めた結晶をベラグスコルスを始動して六次元からエネルギーを取り出すことで破壊し、難を逃れることができた。一方、闇のスペシャリストはツグマーコン人により惑星ケルノトの監獄カルミオンス=クロスに囚われ、助けようと向かったオルウ、プィ、グッキーも囚われてしまった。いよいよ公会議の秘密がわかり出したが黒幕であるコルトン人がやけにあっさりと片付いてしまったなあ。

(「最後のコルトン人」、ハンス・クナイフェル&H.G.フランシス著、嶋田洋一訳、ハヤカワ文庫SF1747、2010年3月発行、ISBN978-4-15-011747-4)

地球保護区

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環境汚染で人類が地球から退去して数百年後、各地の植民惑星は地球系連合を組織していた。もはや全員の地球回帰は不可能だが、独自に回帰し回復途上の自然を再開発する人々が増え問題になっていた。連合の地球保護委員会に環境調査を任されたコーリンに同行する青年シウは天才科学者といわれたオザイ博士のクローンだが、クローン仲間では落ちこぼれであり悩んでいた。地球に降り立ったコーリンとシウは地上の1グループによる宇宙船の撃墜を生き延び、ひょんなことからコーリンの命をつけ狙う少女ニナとも同行する羽目になる。さらなる襲撃や、謎の水棲生物の襲撃などの事態が襲い来る。ジャーナリストを自称するキュビエの介入で異星人オソンモウ族から提供された装置が発火し、ついには地球は再び人類の生存に適さない環境になってしまう。月にのがれたシウはコーリンやニナと共に調査員を続ける意思を固める。前作の「回帰祭」の姉妹編とのことだが背景世界は共通するものがあるのかもしれないが、直接の関係はないし。、前作を思い出させる場面などもないので別物と思ってよさそうだ。

(「地球保護区」、小林めぐみ著、ハヤカワ文庫JA972、2009年11月発行、ISBN978-4-15-030972-5)

福井晴敏によるガンダムの新シリーズ小説。ファーストガンダムの世界観を受け継ぎ、宇宙世紀0079の1年戦争とその後の10年ほどの混乱の後の宇宙世紀0096が舞台。工業用スペースコロニーに住む少年バナージ・リンクスはオードリー・バーンと名乗る少女を助けたことから『ラプラスの箱』を巡る事件に巻き込まれていく。軍産複合体と反政府組織が企てた策謀が渦巻く中、コロニーを舞台にモビルスーツ同士の戦いがおこり、戦火の中を走るバナージは、幼き日に別れた父と、純白の巨人兵器≪ユニコーン≫に出会う。父が最期に施した認証手続きで、≪ユニコーン≫に乗り込むことになったバナージは、≪ユニコーン≫の驚異的な能力で戦闘に介入し反政府組織のモビルスーツを退ける。角川文庫で出たのですぐに買ったが、直後に角川ンスニーカー文庫でも出ていた。そちらはライトノベルレーベルのスニーカー文庫ということで、イラストの入った体裁になっているが、読むだけなら角川文庫版で十分である。表紙は加藤直之だし。

(「ユニコーンの日(上・下)、福井晴敏著、角川文庫、2010年1月発行、ISBN978-4-04-394335-7,978-4-04-394336-4)

ダゴンを倒された禁宮島は顕九郎に妹・蘭を差し向ける。蘭は顕九郎の異母妹で母の死が父のせいだと思い込まされ顕九郎を怨んでいた。蘭と同行のサジッタの奇襲で腕を切り落とされた姫乃はいったん灰の戻らざるをえず、回復までの1週間の間、蘭たちの攻勢に対抗する必要があった。協定機構から大蒜島の動向をさぐりに来た瀬戸と緑青の協力を得て、何とか蘭たちの攻勢をとめた顕九郎は、禁宮島の恨みを買うよりは「攻撃されれば対抗するが、ほっといてくれれば何もしない」というメッセージを蘭に持たせてダゴンの灰共々禁宮島へ返す。連合と協定機構の間でのパワーバランスを利用して、近隣の島とのペルセウス同盟を強固にしていこうという顕九郎の計画だった。協定機構の吸血鬼も加わり、今後への興味が増していく。

(「Le;0-灰とリヴァイアサン-2」、六塚光著、一迅社文庫、2010年1月発行、ISBN978-4-7580-4123-2)

某メディア企画からのスピンアウトとのことで、プロット13本あるうちの最初の3つを中編書き下ろし連作にしたもの。地球国家群の大戦終結後、力を持つ軌道国家群と地球国家群が表面上は平和を取り戻した世界。復興と平和のシンボルとして大戦の元となりたった1本だけ完成した軌道エレベータ(<グレート・ピラー>)の根元に建設された永久平和都市オフィールが舞台。この世界では発達したネットワークは自己進化する義脳蟲(コンピュータワーム)に汚染されうかつにネットにつなぐことは危険を伴う。先の大戦からVAC(Variable Armed Craft=可変型武装移動機)と呼ばれる人が乗って肉体を生体管理装置(メタボライザー)の管理下に置き意識を依代型疑脳(ペルソナ)に移行して高速思考でき、装備を変えることで汎用に使える兵器が実用化されており、戦後もそれを応用した機械が使われている。軌道国家群から入都した報道士(レポーター)のキャロルと記録士(ノーテイター)のシオリは都市の取材を通じ、その表層的な"平和"に疑念を抱くが、やがてテロや大規模犯罪を密かに闇に葬る特殊部隊<手品師>(ザ・ジャグル)の噂を耳にする。第1話「永久平和都市」では、平和になじめない帰還兵グループのテロリストにキャロルとシオリが拉致され、あやういところでザ・ジャグルによる介入を目撃して助かる。第2話「首無し騎士」では、連続殺人の犯人が大戦中に使われたタイプのVACと推測されたことからザ・ジャグルと犯人の首無し騎士との戦いを描く。首無し騎士の正体には大戦末期の壮絶な戦場であるバラモ高原攻防戦がからんでおり、ザ・ジャグルの一員である<三月兎>(マーチヘア)ことジェイドもその戦場にいたことが明かされる。第3話「鎧の内」では、高機動空母がテロリストに乗っ取られオフィールを目指していることが判明しザ・ジャグルが阻止に乗り込む。艦の進行は止まったものの、ジェイドは艦内に閉じ込められ、沈みゆく艦の中で、自分とそっくりな戦い方をする敵のVACと壮絶な消耗戦を繰り広げる。"戦後"という重いテーマをはらみつつもVACという魅力的なメカと派手なアクション満載で面白く読めた。徐々にザ・ジャグル隊員たちの抱える闇が明らかにされていくが、わりとすぐに出るという話のII巻ではより進展がありそうで楽しみだ。

(「ザ・ジャグル、汝と共に平和のあらんことをI」、榊一郎著、ハヤカワ文庫JA980、2010年1月発行、ISBN978-4-15-030980-0)

SFマガジン2010年4月号

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「ベストSF2009」上位作家競作。国内2位の長谷敏司「allo,toi,toi」は経験伝達言語ITPに関する短編で少女虐待殺人犯の男が刑務所でITP端子をつける実験に同意したことで脳裏に声が響くようになる。海外1位のミエヴィル「ジェイクを探して」は人々の姿が消えていった喪われたロンドンをさまよう男を描く。海外2位のストロス「ミサイル・ギャップ」は1962年10月2日に冷戦構造のまま異世界に飛ばされた人類を描くが、その異世界というのが銀河系を大規模に環境改造している種族により作られた太陽型恒星をめぐる厚さ8000マイル半径25000万マイル表面積は地球の何十京倍にもなるオルダースン・ディスクだったという壮大な話。オルダースン・ディスクなんて昔のSFマガジンの記事(1977年4月号のニーヴン「巨大な世界」に記述がある)ぐらいしか記憶にないが今号で1番面白かった。国内3位の津原泰水「テルミン嬢」は能動的音楽治療のyため脳内にミジンコを埋め込んだ女性を描く。連載は飛浩隆「零號琴」[第3回]ではトロムボノクは首都・磐記の実力者たちの宴席に呼び出され、シェリュバンは假面作家・峨鳳丸のもとへ行く。椎名誠のニュートラルコーナー第18回では宇宙エレベータなどの話題。菅浩江の連作<コスメディック・ビッキー>シリーズ「コントローロ」は男性向化粧品発表会で起きた事故をめぐる話。巻末には東城和実による神林長平のコミック化「完璧な涙」が連載開始。

SFが読みたい!2010年版

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恒例の「SFが読みたい!」だが、国内編ベスト10のうち既読は6点。その中では個人的には「虚構機関」がベストかな。海外編ではベスト10のうち既読が6点。こちらは個人的にはアッチェレランドかな。(レインボーズ・エンドはこれまでのヴィンジに比べるとイマイチ、無限記憶も前作のインパクトはないし、TAPも「ディアスポラ」とかと比べると、という感じ。一方アッチェレランドは予想を良いほうに裏切って面白かった。)関連して海外1位のミエヴィルの言葉と国内2位の長谷インタヴュー。国内1位の伊藤氏は亡くなっているのでSFマガジン前編集長の塩澤氏のエッセイ。そして集計に使われた人たちのマイ・ベスト5の全回答。サブジャンル別のベスト10は、ライトノベルSF、伝奇アクション&異世界ファンタジイ、ファンタジイ、ホラー、ミステリ、文芸ノンフィクション、科学ノンフィクション、SFコミック、SF映画、SFアニメ、の10ジャンル。特別企画として「発表!ゼロ年代SFベスト30」。こちらは国内編が既読16、海外編が既読18.個人的には国内ならマルドゥック・スクランブル、海外はディアスポラがベスト。こちらは関連して鏡明×大森望×佐々木敦による総括座談会とアンケート全回答、ベスト30ガイド。コミックが「SFが読みたい!の早川さん」by COCO。他には、2009年物故作家ブックガイドが栗本薫とJ.G.バラード。人気大河シリーズの現在はグインサーガが止まったので、宇宙英雄ローダンだけ。SFマガジン読者が選ぶ2009年ベスト。SF出版社の刊行予定が、早川書房、角川春樹事務所、河出書房新社、光文社、国書刊行会、出版芸術社、東京創元社、徳間書店、扶桑社。「ブルーマーズ」ってホントに出るの?創元さん。巻末には2009年度SF関連書籍目録とSF関連DVD目録。

(「SFが読みたい!2009年版」、早川書房、2010年2月発行、ISBN978-4-15-209107-9)

前半の表題作では、銀河中枢部の恒星凝集域である"サイモンズ峡谷"で会合したSZ-2とアトランのNEI艦は、SZ-2の戦力によりにせ《マルコポーロ》を撃滅する作戦の遂行を決意する。にせ《マルコポーロ》を攻撃したSZ-2は敵のバリアを崩壊させるがラール人のSVE艦隊の攻撃に、かろうじて脱出する。にせ《マルコポーロ》船内では、バリア崩壊で牢獄から脱出したハルト人2名が生ける戦闘マシンと化して暴れ回り、1人はやられるがもう1人がシュバルツシルト反応炉を暴走させて《マルコポーロ》は壊滅する。生き残ったハルト人ペルラトはアトランの誘いに応えて脱出しラール人は無人のハルト艦を追ってシュプールを見失う。途中で恒星凝集域の過酷な環境で変異した地球人の成れの果てイオタナーにプシオンエネルギーを奪われそうになり、ラスの作戦で作成したプシオンエネルギー発生器で逆にイオタナーが滅びてしまうエピソードが出てくるが、これも特に後との関係はないんだろうなあ。後半の「試練の帰還」では、目覚めた闇のスペシャリスト3名が辺境惑星ケルノトに搬送されるのを感知したグッキーたちは追跡する。ケルノトにて一時的に超能力が使えなくなったグッキーはツグマーコン人の子供に無害な生物と思われてかくまわれ、その間に能力を回復して、追跡してくるツグマーコン人から何とか脱出することに成功する。一方、《ソル》ではベラグルコルスを組み込もうとケロスカーのドブラクらが奮闘を続けるが、困難が続きなかなか思うように進展しない。

(「にせ《マルコポーロ》」、H.G.エーヴェルス&クラーク・ダールトン著、五十嵐洋訳、ハヤカワ文庫SF1745、2010年2月発行、ISBN978-4-15-011745-0)

前半の表題作では、ラール人は人類の隠れ家NEIの場所を突き止めるため、補給惑星エンジョックに潜入したNEI工作員を捜索すると共に、ローダンのドッペルゲンガーと偽マルコポーロを使ってローダンの帰還を演じようとした。ラス・ツバイはエンジョックに潜入し、共にローダンとマルコポーロが偽者であることを発見し、NEI工作員と共に、アトランとコンタクトを取る決心をする。ラス・ツバイが深刻な体調不良に陥り、細胞活性化装置が干渉して病気に対する治療効果が逆に悪作用していたとわかるエピソードも含まれるが、後で何か意味が出てくるんだろうか。後半の「オルクシィの制御主任」では、NEIから銀河系諸種族の尊厳連合に連絡員が送られる。その1人のカルメクはいまだ尊厳連合に対し距離を置くハルト人への連絡役だったが、乗り込んだハルト船は偽マルコポーロに興味を引かれコンタクトを取ってマルコポーロに繋留される。カルメクはローダンに対し、かすかな疑念が晴れず、プロヴコンファウストの位置を教える代わりに、アトランが用心のために造った偽造NEIのあるヨルショル霧状星雲へ案内しようとする。ヨルショル霧状星雲に到着したマルコポーロの先導によりラール人艦隊が襲撃し、制御惑星オルクシィは壊滅するが、それはアトランの偽造にラール人がひっかかったということでもあった。ローダンたちが偽者と知ったカルメクは死に、ハルト人2名は偽マルコポーロに捕らえられた。

(「ドッペルゲンガーの陰謀(ペリーローダン370)、H.G.フランシス&ウィリアム・フォルツ著、渡辺広佐訳、ハヤカワ文庫SF1744、2010年2月発行、ISBN978-4-15-011744-3)

10年目突入号。冒頭は同人筆頭の桂米朝師匠の文化勲章受賞記事。続いてとり・みきによる祝賀漫画「左京ちゃん」。1982年にテレビ東京で放映された「3人がいっぱい」ではさいとうたかお・石森章太郎・松本零士との対談。皆若くてなつかしい。コラムランドは、パイプクラブ理事の青羽芳裕「パイプの灯をいつまでも」、銀座「エル」のママ・岩波恵子「夜の銀座に37年」、高斎正「フレイザー・ナッシュBMW328」。井口健二は「SF映画評論」。下村健寿『「さよならジュピター」を解読する』は宝塚映画祭十周年記念講演。同じ下村氏によるインタヴュー『「機本紳司」さよならジュピターを騙る』。山田信夫「日本アパッチ族」映画台本は残念ながら実現せず。賢人談話は昭和史顛末録「EXPO'70」(前編)。ゼミ・フィクション・ストーリー「警官美談」は牧慎三名義のもの。小松左京作品この一作は、平谷美樹による「果てしなき流れの果てに」。いつもの連載は、南山宏「メタサイエンスねたさいえんす」、田中光二「ぼくのシネマオデッセイ?」。小研のページは生方賢一「第48回エスエフ大会見聞録」。
(「小松左京マガジン第36巻」、イオ発行、角川春樹事務所発売、2010年1月発行、ISBN978-4-7584-1152-3)

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