2010年2月アーカイブ

最終定理

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クラーク最期の長編。といってもこれも単独ではなくフレデリック・ポールとの合作。ポールもクラークと2歳しか違わないのでご老体である(今年でクラーク没時と同じ90歳?)。内容は近未来の地球を舞台にしたスリランカ人数学者の生涯を描くもの。ランジット・スーブラマニアンは少年時代にフェルマーの最終定理に取り付かれ、ワイルズの証明とは違うフェルマーのメモにあるようなすっきりとした証明を追い求めることとなる。コロンボで学生生活を送っているうち、ひょんなことから海賊騒ぎに巻き込まれ、海賊の一員でスーブラマニアンの名を騙っていると誤解されて拷問され、理不尽な幽閉生活を強いられる。しかし、その幽閉生活の中でフェルマーの最終定理の新たな証明を見出し、救出されてからの人生は一変してしまう。その後は有名人として教授ポストも得、大学時代の同級生とも結婚し順調な生活を送る。一方、並行して描かれるのは銀河系を管理する高度知性体グランド・ギャラクティクスが地球人の核実験を危険視し、配下の種族であるワン・ポイント・ファイヴズの艦隊を派遣するが、もうひとつの配下種族であるナイン・リムズの観察により対応を変更していく様子。後半で両者のストーリーは交錯し、スーブラマニアンの娘のナターシャが完成した軌道エレベーターを使って行われる宇宙ヨットレース中にナイン・リムズに姿をコピーされ、地球に到来したワン・ポイント・ファイヴズの艦隊と米軍があやうく交戦しそうになる危機とその回避などが語られる。最後の妻の悲劇的な事故死が異星人テクノロジーによる精神のアップロードにかろうじて間に合う場面が、エピローグでのスーブラマニアンのアップロード後の精神のはるか未来でのエピソードにつながっていく。軌道エレベータや銀河系を管理する超越種族、アップロードされた事実上不老不死の精神、などクラークの定番アイテムが出てくるいかにもの作品になっている。これが最後の作品なんだから、できれば、先に3部作の最後である"First Born"の方を出して欲しかったなあ。

'「最終定理」、アーサー・C・クラーク&フレデリック・ポール著、小野田和子訳、ハヤカワ海外SFノヴェルズ、2010年1月発行、ISBN978-4-15-209101-7)

前半の表題作では、燃料不足に陥ったSZ-2はアトランの協力を得てニューガス燃料の貯蔵施設があるオリンプへ向った。燃料施設のあるニューグ盆地にはラール人の罠が仕掛けられておりあやうくSZ-2は罠にはまり込むところだった。かつてオリンプの皇帝アーガイリスであり、現在もオリンプで活動を続けるヴァリオロボットが超重族の冒険家カントエネンとして申請した冒険を隠れ蓑にニューグ盆地の調査に入り、ラール人基地を見つけて妨害工作をしたことでかろうじて罠を逃れSZ-2はいくらかの燃料補給もできて宇宙へ逃れた。後半の「ラール人の駆けひき」では、ホトレノル=タアクはヴラト伝説を利用してアトランの根拠星系を突き止めるため、マルコポーロと同型艦を偽装し、ローダンとフェルマーロイドたちのドッペルゲンガーを訓練して、ローダンの帰還を演じようと企てた。テストに利用された辺境惑星トマルケインでは、偽ローダンの着陸は熱狂で迎えられた。しかし、紛れ込んでいたUSOの工作員は、マルコポーロのエンジンが本物のマルコポーロのプロトン放射発電装置を装備していないことから偽装に気付いた。何とか脱出した工作員はアトランにそれを知らせることに成功した。

(「ニューグ作戦(ペリーローダン369)」、エルンスト・ヴルチェク&H.G.エーヴェルス著、赤坂桃子訳、ハヤカワ文庫SF1741、2010年1月発行、ISBN978-4-15-011741-2)

SFマガジン2010年3月号

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恒例の英米SF賞受賞作特集。2009年度。ナンシー・クレスのヒューゴー賞ノヴェラ部門受賞作「アードマン連結体」では老人介護施設で暮らす老物理学者アードマンが発作的に不思議な感覚やヴィジョンを経験するが、それは80才以上の老人が進化を遂げる予兆だった。ジェフリー・A・ランディスのアナログ誌読者賞ノヴェレット部門受賞作「マン・イン・ザ・ミラー」では太陽系の果てのセドナで異星人の遺物と思われる黒い椀状の鏡に誤って落ちてしまった男が(ほぼ)摩擦0の椀からどうやって脱出するかというメールシュトローム2を思わせる謎解きのハードSF。キジ・ジョンスンの世界幻想文学大賞短編部門/アシモフ誌読者賞ショート・ストーリー部門受賞作「26モンキーズ、そして時空の裂け目」では1ドルで手に入れた26匹の猿と興行をして回るエイミーだが猿たちが姿を消す原理がわからないまま1匹の猿が老齢で別れの時がきた後で孤独から解放され謎の真相に思い当たる。ジェイムズ・アラン・ガードナーのスタージョン記念賞/アシモフ誌読者賞ノヴェレット部門受賞作「光線銃-ある愛の物語」では思春期に偶然見つけた光線銃による少年の成長譚。なかなかいい味の話になっている。他にSFスキャナー特別版として受賞長編のレヴューと英米SF界の動向+2009年度受賞作リスト。連載陣は、飛浩隆「零號琴」の第2回では磐記の街で開催される假劇に参加したトロムボノクたちを襲う凄絶なテロリズムを描く。小林泰三「天獄と地国との狭間」第8話「シェヘラザード」ではウインナー村の長老ザビタンは若い少女であり自らの長老となったいきさつを語りカムロギたちに合流を希望する。樺山三英「世界最終戦論」は戦争は一度も途絶えたことがないのだという状況を語る。他に昨年7月来日時のテッド・チャン・インタヴュー。ストラーニク2009レポートでは大野典宏氏の遍歴者賞受賞のレポート、速水螺旋人氏のマンガレポート付き。榊一郎「ザ・ジャグル」シリーズ刊行記念巻頭記事(でも近くの本屋では品切れなんだよなあ)。センターカラーでは鹿野司「ザはサイエンスのサ」刊行記念の特別編。先号の積み残しのオールタイム・SF映画ベスト50座談会。まあまあ納得のラインナップかな。アニメ系があまりはいってないけど。スターウォーズはやっぱり帝国の逆襲だよね。

2010年3月

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