SFマガジン2010年2月号

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創刊50周年記念特大号のPARTII日本SF篇。現代の日本SF作家の主力の作品が揃ってるのは壮観である。昔の第1世代の名前(小松左京や筒井康隆など)がないのが少し寂しいが。読切では、山田正紀「フェイス・ゼロ」は人形浄瑠璃の人間国宝が究極の表情を夢見た末にロボット学の表情工学の専門家の教授殺害事件とからむ。椎名誠「問題食堂」は定食屋でのできごとから始まるが壮大な超常的展開に至る。瀬名秀明「ロボ」はシートンの小説にからみ自然史家となったロボット画文家に話を聞きに行った男の話。上田早夕里「マグネフィオ」は昏睡状態の夫の内面を知るために妻が磁性流体を使った装置を使う話。谷甲州「ザナドゥ高地」は航空宇宙軍史の15年ぶりの新作で「タイタン航空隊」の後の時代のタイタンを描く。連作化の予定だそうだ。牧野修「小指の思い出」はiPS細胞から作られた超互換臓器により脳以外の臓器交換が可能になった結果人口増加対策で75才以上の老人が臓器メンテナンスを停止された世界で、老人の島ノドランドに妻の復讐に向かった男の話。神林長平「確かな自己、固定・変換・解放」は考古意識工学者コーパスと意識生命医学博士ジェイクのシリーズの第4作で、ある惑星で発掘された<国家>と呼ばれる人工物をめぐる話。林譲治「古の軛」は≪AADD≫シリーズの1篇で、ストリンガーの対人類交渉用の複合人格グラースが殺された事件を巡ってストリンガー種族に関する重大な情報が展開される。北野勇作「路面電車で行く王宮と温泉の旅一泊二日」は路面電車で街に帰ってきた男の語る奇妙な王宮と温泉の街の話。小林泰三「囚人の両刀論法」は古典的命題<囚人のジレンマ>の究極的解決法を考案したという男が恒星間探査に送り出されて出会ったアケルナル系人は一見理想的な文明を築いていたが、彼らと共に太陽系に帰還した男が見たものはダイソン球から湧き出てくる奇怪な物体だった。田中啓文「カッパの王」はカッパを目撃してから超常現象を見るようになった男の話から始まって2019年に地球の大部分が水没する話が壮大な駄洒落で結ばれる。冲方丁「メトセラとプラスチックと太陽の臓器」は抗加齢臓器の形成遺伝子注挿技術により不老不死の子供が生まれるようになった時の新人類の母親になる旧人類の女とその夫の話。小川一水「アリスマ王の愛した魔物」は小国の王子アリスマが恐るべき算術の才によって大帝国を築く
アラビアンナイト風の話。円城塔「エデン逆行」はシェルピンスキー=マズルキーウィチ辞典から始まる例によってこの作者らしい展開の話。山本弘「地球から来た男」は『地球移動作戦』と同じ背景の世界の34年後の話で、太陽系外に向かう小惑星船<ラウファカナア>で見つかった密航者の男はある国のプリンスだと明かすが、という話だが、明らかに日本の皇室制度を題材にその硬直性を痛烈に皮肉って痛快である。皇太子と同世代の身として個人的には激しく同意するが右翼とかから文句が出ないかなあ。森岡浩之「気まぐれな宇宙にて」はカイパーベルトに他恒星との間で転移する空間<ポジション>が発見されハミルトン・クリークと名付けられるが、その転移は時間こそ規則的ながらどこに転移するかはランダムで、そこの近傍のステーションでは異星人との交易をもくろむ人々がたむろしているという話。菅浩江「夢」はイディオ・サヴァンでパターン認識に超能力を発揮する主人公が仲間の能力者たちと異星人からの通信の解読に挑む話。野尻抱介「コンビニエンスなピアピア動画」は「南極点のピアピア動画」の姉妹篇で地方のコンビニ店員の女性が知り合った男が宇宙環境に適応する蜘蛛を使った宇宙実験をする話だが、最後には壮大な構築物にまでつながる。連載陣では梶尾真治の怨讐星域第13話「減速の蹉跌」はノアズ・アーク号の船長室及び制御室が放射能汚染で入れなくなり、刻々と迫る反転のタイミングまでに何とか船の向きを反転させ減速体制に入る必要があるが、という話。新城カズマの連作シリーズ≪あたらしいもの≫の「議論の余地はございましょうが」は参議院選挙に立候補した候補の立会演説中のエピソード。新連載の飛浩隆「零號琴」は都市をまるごと覆う巨大楽器の秘密に挑む特殊楽器技芸士トロムボノクと相棒の少年シェリュバンの話。コミックスも多数収録されている。吾妻ひでお「僕と彼女の微妙な関係」、とり・みき「SF小僧の花嫁」、横山えいじ「おまかせ!レスキュー・スペシャル」、COCO「SFマガジンの早川さん・スペシャル」、n西嶋大介「無題」、水玉螢之丞「SFまで100000光年スペシャル」は4本立て。記念エッセイが石川喬司、眉村卓、鏡明、川又千秋、高千穂遥、夢枕獏、森下一仁、新井素子、巽孝之、小谷真理の各氏。巻頭は大橋博之によるSFマガジン表紙ギャラリーの2回目、巻中では映画「アバター」公開記念のキャメロン監督インタヴュー、巻末にはSFマガジン年表PARTII。あと、50周年記念企画として福島正実夫人の多賀子氏インタヴューや、第5回日本SF評論賞の最終選考結果発表など。

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