笹島明桜高校の才女(問題児)が集う天文部。メンバーはボーイッシュな体育会系・神楽木芹香、和風美人で天才メカニック・葛城奈緒子、科学を偏愛する・片桐千鶴。芹香の幼馴染で生徒会会計の萩原蓮から部費の使い込みをネタに依頼されたのは、かつての戦争で葬られた戦闘機の修理だった。お目付け役の生徒会副会長・遠藤由衣を加えた4人の少女が見たものは前大戦の無人戦闘機だった。破損の具合を見て、有人で飛ばすなら修理可能と見た彼女たちだが、修理を進めるうちに戦闘機に隠された秘密が判明する。この戦闘機にはAIが搭載されており、それがいつしか自意識を持つに至っていたのだ。かくして、そのAI,ヴァルトローテと共に、首都上空に飛び立った芹香だが、不明機の迎撃に上がってきた自衛軍機には歴戦の女エース・彩香が乗っていた。ヴァルティの操縦で一度は振り切ったかに見えた自衛軍機だが、行く先を予想して追尾してきた彩香の攻撃に、芹香機は被弾してしまう。何とか地上に降りた芹香はヴァルティを外して共に逃走に成功する。美少女たちとメカの取り合わせが楽しいひと夏の部活動的な雰囲気の話になっている。続編も書けそうな雰囲気だがさて。
(「ピクシー・ワークス」、南井大介著、メディアワークス電撃文庫、2009年9月発行、ISBN978-4-04-868013-4)
2009年12月アーカイブ
創刊50周年記念のpart・I・海外SF編。いつもの倍近いボリューム、536ページ。さすがに読み応えあり。チャン「息吹」はアルゴン大気に住む生命体の科学者が大気圧低下危機から生命の本質の追求を通して宇宙論的な思索まで突き進む。イーガン「クリスタルの夜」は高性能の特殊プロセッサを用いて意識を持つ真のAIを生み出そうとする男の話、猛烈な速度で進化するAIのエスカレーションの描写が心地よい。ビッスン「スカウトの名誉」はネアンデルタールと現世人類の出会い時期を女性科学者の視点から描いた。ウルフ「風来」は文明が崩壊した世界で密告におびえる人々の中で生きる少年を描く。スタージョン「カクタす・ダンス」は行方不明の教授を捜し西部に赴いた男のエピソード。スターリング「秘教の都」は白・黒双方の魔術が交わるトリノで技術者の男がたどるミイラ男との遍歴。ウィリス「ポータルズ・ノンストップ」はアメリカの片田舎ポータルズで出会ったバスツアーの一行はSF作家ウィリアムスン由来の地を回るが、という話。ニーブン「ドラコ亭夜話」は《ドラコ亭》シリーズのショート5編。レナルズ「フューリー」は銀河帝国皇帝の暗殺未遂事件を追う警備担当者の男が犯人との邂逅で思わぬ事実を思い出さされる。スコルジー「ウィケッドの物語」は敵艦を追い詰めようとしていた戦艦で艦のAIが起こした叛旗はロボット工学にからんだ理由があった。バチガルピ「第六ポンプ」は環境汚染の進行するニューヨークで下水処理ポンプの故障に悩まされる男を描く。シモンズ「炎のミューズ」は惑星を巡業中のシェークスピア劇団が人類を統べる種族の命令で次々に劇を上演させられていく。甲殻を持つ戦闘種族アルコーンの要塞での上演、上位種族ポイメンの巨大地球型惑星での上演、さらに上位の種族デミウルゴスの透過可能な巨大ダイソン球世界での上演、最後のアブラクサスの前での上演、と魅力的な世界の遍歴がシモンズらしく巻末を飾るにふさわしい中編である。他に名作SF再録として、中途半端に冷凍睡眠が覚めた男の話がディック「凍った旅」、不老不死で人口過剰になった世界を描くのがヴォネガット「明日も明日もその明日も」、空に浮く不思議な月のエピソードがラファティ「昔には戻れない」、共生体生物と探検隊員の出会いを描くのがティプトリー「いっしょに生きよう」、脳内に納めた情報の売買で生きる男を描くのがギブスン「記憶やジョニイ」。連載は朝松健「魔京」がついに最終回で冒頭の描写につながった。記念エッセイは柴野拓美、伊藤典夫、高橋良平。海外作家からのお祝いメッセージも多数。創刊号?1985年までの年表。新連載が大森・中村・山岸による[新版]世界SF全集を編むと、中野善夫による評論。次号も楽しみである。
前半の表題作では、ソルを脱出させるためには、ラール人のためにケロスカーが作成した装置ベラグスコルスが必要であり、奪取作戦のためにローダンは装置があるラール人の惑星にグッキーたちを派遣した。トロトの不調が体内の子供のせいであることを知るシェーデレーアたちは心配するが、それを知らないローダンはトロトも作戦メンバーに加えた。一行は拿捕したツグマーコン船で惑星ヴォルターハーゲンに飛び、ベラグスコルスをバラバラにして転送機で送出することに成功するが、戦いの中でトロトの子供が死んでしまい、事情を知る少数の者は深い悲しみに包まれた。後半の「免疫保持者の蜂起」は、353巻でブルが非アフィリー化する1ヶ月前のエピソード。テラが黒いゼロに飲み込まれる危機が迫る中、アフィリーにはあくまで地球を救おうとする不屈派と地球を脱出して人類を生き延びさせようとする逃避派が存在していた。ブルの命令で地球に似た惑星の捜索に38隻からなる艦隊が派遣された。逃避派である艦隊司令のホッジ提督と別れて任務にあたっていた不屈派の副官トレヴォルは、理想的な惑星シグナルを発見する。そこの住民は一見原始的に見えたが、実は高度の文明を持っており、非アフィリー化を促す果実を作成することができた。捜索に加えられていた免疫保持者サイワンとレーラはそれを利用して艦隊員を非アフィリー化しようとするが、トレヴォルによって阻止され、サイワンを失って自棄になったレーラにより点火された触媒爆弾によりシグナルは燃えてしまう。艦隊の一部を失ったことでトレヴォルはホッジ提督と対立することになる。
(「ベラグスコルス強奪(ペリーローダン366)」、ウィリアム・フォルツ&ハンス・クナイフェル著、天沼春樹訳、ハヤカワ文庫SF1731、2009年11月発行、ISBN978-4-15-011731-3)
