シリーズの待望の長編。短編「大使の孤独」(「虚構機関」所収)のちょっと後の年代が舞台。ストリンガーの大使は事件後、増殖し水星軌道のドラゴンネストに別集団セクトを築く。ストリンガー母集団との融合のためにの仲介で、両者の代表が感覚器の交換を行うが、ストリンガー母集団側の代表が死亡して失敗に終わる。その後、ストリンガー母集団のいるファーストライトが謎の存在、ファントマの襲撃を受けるという事件が発生し、その後もストリンガーから派遣されてきたロボット、カレランの乗る宇宙船がファントマの襲撃で破壊されるが、随行していたの戦艦群は攻撃をうけなかった。ストリンガーとダークマターに関係した存在と考えられているSE(Strange Element)の謎の解明には重力波によるダークマターの観測が必要と考え、月面のモンスターランドにあるGOD (Gravitationwaves Observation Darkmatter) を使った調査が始められる。一方、地球に建設中の軌道エレベータにテロを仕掛け、宇宙に進出することに成功した反AADDグループのGLA(The Gaia Liberation Army)は水星のセクトとコンタクトするため水星軌道に進出するが、そこでファントマに遭遇してしまう。ストリンガーとの交渉によりファントマがストリンガー母集団がセクト襲撃用に用意したロボット船が暴走したものであることが判明するが、その頃にはGLA代表の機転によりファントマは停船させられていた。宇宙に出て自分達の現状を認識しなおしたGLAはと別の人類集団として出直すことを決意し、2集団に分かれたストリンガーと共に、太陽系には4種類の知性体が存在することになった。また、GODの観測によりダークマターによる地球環境の変容が予想されることから、地球の人類を救うため、軌道エレベータの増設を含む計画が進められようとしていた。近年の宇宙論の進展を取り入れ、ダークマターとそれに関係する知性体を取り入れるなど、ハードSFとしての期待を裏切らないものであった。
(「ファントマは哭く」、林譲治著、ハヤカワJコレクション、2009年10月発行、ISBN978-4-15-209078-2)
コメントする