2009年2月アーカイブ

前半の「ロボットは嘘をつかない」では、ケロスカーの謎の装置ガジェットの捜索をはじめたローダンたちはすぐにいくつものガジェットを収集するが大型の1台を収納してから発見者のヴィルマ・セインズが何者かに襲われ、もう一人の発見者オサンチェクスは記憶喪失にされてしまう。ガジェット発見地の円形部を調べていたグッキーらは、それがケロスカーの機械の転送効果によるものとつきとめ、ケロスカーを追って転送された先は《ソル》のハイパーインポトロニクス、セネカ最奥部であった。セネカはケロスカーと密かに通じ協定を結ぼうとしていたのだ。侵入してきたケロスカーをグッキーらが何とか追い払い一見セネカも元に戻ったようだが。。。後半の表題作では、ケロスカーとの交渉のためセネカの端末であるロボット、ロミオとジュリエットを連れて巡洋艦《ブレシア》でラスト・ストップを飛び立ったデイトンだが、ハイパーカムの脱落や探知装置の脱落などのトラブルが続く。事態を打開するためにロボットたちに操船させたところ到着したのは特異な五次元放射を放つグリーンの恒星ボルガールの第三惑星タクレボタン近傍だった。この星の近傍には球状小銀河バラインダガルで恐れられる”次元漏斗”、ケロスカーが”大いなる黒いゼロ”と呼ぶものがあり、ケロスカーの基地があったのだ。到着したとたんロボット2体は乗組員を麻痺させ唯一残ったサイバネティカーのヘルムートはなすすべもなく、ケロスカーは《ブレシア》を接収しようとするが、ケロスカー船が突然離陸させられたことから再び惑星外に出された《ブレシア》はボルガールの放射のせいで異次元に飛ばされる。《ブレシア》に密航していた《ソル》生まれの子供2人の超能力で何とか通常空間に戻った《ブレシア》は再びケロスカーに接収され、搭載艇で脱出しようとしたヘルムートもロボットたちの工作でタクレボタンに引き戻される。

(「《ソル》の子供たち」、クルト・マール&H.G.エーヴェルス著、五十嵐洋訳、ハヤカワ文庫SF1698、2009年2月発行、ISBN978-4-15-011698-9)

恒例の年間ベスト。SFマガジン増刊からこの形態になって10冊目ということで1997?2007のベストの回顧も載っている。内容はいつもどおりの国内編、海外編20位までと国内編1位の貴志祐介と海外編1位のウィルスンからのメッセージ、国内編2位の山本弘インタヴュー。マイ・ベスト5アンケートの全結果とサブジャンル別のベスト10はライトノベルSF(柏崎玲於奈)、伝奇アクション&異世界ファンタジー(タニグチリウイチ)、海外ファンタジー(三村美衣)、国内・海外ホラー(笹川吉晴)、国内・海外ミステリ(千街晶之)、文芸ノンフィクション(長山靖生)、科学ノンフィクション(森山和道)、再刊作品(磯部剛喜)、SFコミック(福井健太)、SF映画(渡辺麻紀)、SFアニメ(小林治)の11分野(再刊分野があるのが今年の特徴か)。昨年は大物物故作家が多かったせいもあって物故作家ブックガイドとして今日泊亜蘭、野田昌弘、クラーク、アスプリン、ディッシュ、ベイリー、クライトンが取り上げてあり、牧真司による世界文学注目作30もある。今回も表紙を担当しているCOCOのコミックページ×3や長編シリーズのコラムはグイン、ローダン、氷と炎の歌。巻末にはSF関連書籍目録とSF関連DVD&ビデオ目録。肝心のベストだが、やはり読書率は半分くらい、特に国内の単行本をほとんど買ってないからなあ。自分のマイ・ベスト5は、国内編は「フリーランチの時代」「天体の回転について」「スプライトシュピーゲル&オイレンシュピーゲル(これは完結まで待つべきか?)」「小松左京自伝」「サイエンス・イマジネーション」あたり。海外編は「時間封鎖」「深海のYrr」「量子真空(銀河北極も?)」「残虐行為記録保管所」「太陽の盾」、番外がノンフィクションの「サイエンス・インポッシブル」、再刊の「ハロー・サマー・グッドバイ」といったところか。

(「SFが読みたい!2009年版」、ハヤカワ書房、2009年2月発行、ISBN978-4-15-209001-0)

巻頭は「題名のない番組」1968年10月3日放送分の紹介。続くコラムは2009年の始まりに合わせてタイミングよく黒田武彦(西はりま天文台長)による「今年は世界天文年」。小説は2編、第9回小松左京賞受賞者の森深紅「ランナバウト」は30代半ばカップルの車と結婚をめぐる話、男の方の車を操ることの楽しみはよくわかるが結婚してもその楽しみを捨てる必要はなく、そうした楽しみ方のできる車に乗ればいいはずだが、残念ながら現在の日本では、そうした楽しみを追求しようとした時に選べる車が皆無である。ファミリーで乗れる車、特にミニバン系にはMTで操れる車が皆無なのは何とかならんものか。もうひとつは高斎正「ニコンS3D」架空のデジタル・ステレオカメラをめぐる話、さすがにいかにもありそうなお話に仕上げてあり編集後記で<フィクション>で実在しません、と断ってある。評論ではアレッサンドロ・G・デミトリ「エイリアン領土への襲撃」は日本人作品のアンソロジーALIAの紹介。下村健寿「「復活の日」から読み解くバイオロジー2ウイルスは誰が発見したのか」は、ウイルスの発見をめぐる科学史で面白い。西村一「正しい氷河(×)期の起こし方」は、地球温暖化をめぐる論争とからめて氷期について関連するSF作品紹介や様々な角度からの検証とタイトルどおりの氷期の起こし方。南山宏「メタサイエンスねたさいえんす2」は質量原器、イグアナの体長変化、アンデスの円形遺跡の3つ。「賢人談話、あるいは小松左京の大口舌2」では、東京と地方の比較、特に東京の一人勝ち状態に対し、大阪の浮上策を論ずる。小松左京研究会のページでは新間策雄「SF的な、余りにSF的な?「果しなき流れの果に」私論2」が初期の時間テーマの諸作を経て、いかに当該作品が生まれたかの分析に入ろうとするところ。今回は天神の丸善で買えてよかったが、未だに巻末に紀伊国屋天神店があるのは誰も修正しないのか?(天神店はジュンク堂などとの競争に敗れて閉店し、現在は福岡市内の紀伊国屋は博多駅近くの本店と東店という体制になってるんだが。)

(「小松左京マガジン第32巻」、(株)イオ発行、(株)角川春樹事務所発売、2009年1月発行、ISBN978-4-7584-1131-8)

と学会年鑑BROWN

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年鑑だから「ドンデモ本大賞」の結果が載ってるかと思ったらなかった。代わりに第2章にあるのは「ホームレス中学生」の父親探しのインチキ暴露。今年中にもう1冊出すってことか?第1章は恒例の例会でのトンデモ物件紹介。注目は岩崎書店が復刻した「宇宙のスカイラーク」の萌えイラストとか、「ぷれい★ステーショナリー」という萌え文具シリーズ(これは表紙にも応用されている)とか、巨大ウサギのいる調神社とか、「現代中国ヌード写真集」のヘタなアイコラとか、Nature詩に載ったPOK Erythroid Myeloid ONtogenic factor=POK赤血球・脊髄個体発生因子、略して Pokemon とか、いったあたりか。

(「と学会年鑑BROWN」、と学会編、楽工社、2009年2月発行、ISBN978-4-903063-28-7)

SFマガジン2009年3月号

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恒例の英米SF受賞作特集。イーガンのノヴェレット「暗黒整数」は「ルミナス」の続編。10年間の平穏が破られ彼方側からの領域侵犯の知らせに調査に乗り出したブルーノたちは、その原因となったキャンベルという男を仲間に引き入れるが、キャンベルのおかげで彼方側の物理状況を探査できるようになったものの彼方側からの攻撃に混乱に陥る世界、対抗策をとるブルーノたちは切り抜けられるのか。異なる数論で起こる戦いを描く数理SFは今回も傑作であり、今号一押し。エリザベス・ベアのショートストーリー「受け継ぐ者」は、生き残った戦闘マシンが浜辺で出会った少年に戦友の思いのこもったアクセサリを渡す物悲しい話。デイヴィッド・モールズのノヴェレット「フィニステラ」は、巨大な浮遊生物の世界に密漁グループの一員として訪れた飛行技師の女性の物語、独特の浮遊感が雰囲気を出している。他に受賞長編レヴュウと英米SF2007年カレンダーと英米SF界の動向・受賞作リスト。マイクル・クライトン追悼として追悼エッセイと邦訳作解題。読切では蘇部健一の時間SF「依頼人」の後編、こんなにハッピーエンドで終わるとは。菅浩江のコスメディックシリーズ「シズル・ザ・リッパー」は自傷を続けるリッパーの女を題材にした作品。連載陣では、山本弘「地球移動作戦」第9回は、セカンド・アースに対抗して公開されたPV地球移動作戦への対策としてジェノアPからリアルタイム対談を申し込まれた良輔は魅波を代理として送り出すがジェノアPはIDOLユーナ・マノンを魅波の相手に指名する。朝松健「魔京」第17回は徳川京というシステムを構築しようと画策する大久保長安に対抗する彦四郎の戦いを描く。山田正紀「イリュミナシオン」第17回はメネリック二世との商談が決裂したランボー、場面は「酩酊船」の出動のところで次回に。他にはナンシー・クレスのプロバビリティ3部作完結記念特集、「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」監督のデビッド・フィンチャー・インタヴュー、黙星録の刊行が始まった荻野目悠樹インタヴューなど。

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