映画のノヴェライズかと思って一瞬スルーしそうになったが、よく見るとハリー・ベイツの原作を含む短編集だった。解説によると過去に映画やテレビドラマになった作品集として企画されて一時お蔵入りしていたのが今回の映画公開で復活(集録作は変更されているが)したものだそうだ。表題作は51年のロバート・ワイズ監督映画で有名な原作で最後の一言が衝撃的な作品。他の集録作は、同じく今回リメイク映画公開になったイブ・メルキオー「デス・レース」はレース中にひき殺した人数までも得点になる死のレースを描く。リン・A・ヴェナブル「廃墟」は、最終戦争で一瞬にして廃墟になった街に残された本好きの近眼の男の悲哀を描き、ロッド・サーリング&ウォルター・B・ギブスン「幻の砂丘」は19世紀中ごろに新天地を求めながら砂漠で遭難しそうだった男がタイムスリップで20世紀に来て医者になった息子の記事を見て事態に気づく話、この2作は60年代に人気を博したTVシリーズ<トワイライト・ゾーン(ミステリー・ゾーン)>から。この後の5作はやはり60年代に人気を博したTVシリーズ<アウター・リミッツ(ウルトラゾーン)>から。ジェリイ・ソール「アンテオン遊星への道」は事故を起こした先発船の反省から長期の星間植民船の旅を無事に終了させるために乗り込む妨害者の話。クリフォード・D・シマック「異星獣を追え!」は密輸入した危険な異星獣を追って仕留めた男は自分がそのために作られた複製人間であることを知るという話。ジェリイ・ソール「見えざる敵」は探検船と先発の小型船の乗員が消息を絶った惑星に調査に訪れた戦艦の軍人が真相に気づいたアドバイザ科学者を無視した結果を描く。ハーラン・エリスン「38世紀から来た兵士」は未来の戦場から現代にタイムスリップしてきた兵士に体験を語らせて戦争の悲惨さを広めようとする話。フレドリック・ブラウン「闘技場」は正確にはTV原作ではないが、敵対する種族の代表が超越種族の設定した闘技場で戦い種族全体の命運を決めるという設定が魅力的で、色々と使われている名作。<アウター・リミッツ>では特にキャプションなく使われたが、<スタートレック(TOS、宇宙大作戦)>のエピソード「怪獣ゴーンとの対決」ではきちんとキャプションされていたし、五十嵐浩一のコミックでも使われていたはず(めいわく荘の人々だったかな?)。すべて50?60年代の作品だが面白いものは時代を超えるの実例だろう。
(「地球の静止する日」、ハリー・ベイツ他著、南山宏・尾之上浩司訳、角川文庫、2008年11月発行、ISBN978-4-04-298001-8)
2008年12月アーカイブ
小林めぐみのハヤカワ文庫初登場。地球の環境汚染から逃れた避難船ダナルーが不時着して300年後。管理コンピュータの不調により出生率が男女比9:1という異常な値になりトラブルを避けるために16歳でカップリングできない男子は回帰船で全員地球に回帰する。兄が逃亡分子となったため矯正教育を受けた秀才少年ライカ、家庭の事情から地球行きに憧れる勝気な少女ヒマリ、地球行きを憂いヒマリにひとめぼれした少年アツ、の3人が主人公。都市化しているダナルーの謎を調べるうちに下層部の独立空間でしゃべるウナギに遭遇した3人は、ウナギとの会話から次第に閉鎖都市ダナルーの不可思議な状況に気づいていく。美女書記官ロボットの暗躍により危機にさらされる3人だが、管理コンピュータ室の崩落により書記官ロボットのプログラム改変が事態の原因とされ、回帰事業についても見直しがされる中、ヒマリに振られたアツは回帰船に乗り出発し一件落着かと思われた。しかし、その後再び地下に降りたライカとヒマリは死んだはすのウナギの声を再び聞く。それは密かに設けられたHDP(高次元圧縮航行法)による地球との通信回線だった。ウナギの声と思われたのは地球の科学者からの通信で、復興中の地球ではコンタクトした異星人から人間の感情を食べる異星種族の話を聞いており、ダナルーの状況の原因がその異星人である可能性を指摘される。危険を感じ取った異星人はダナルーを捨てて脱出し、かろうじてバランスを保っていたダナルーは崩壊するが、何とか脱出したライカとヒマリはアツとの再開を希望と共に待つ。異常な状況の閉鎖世界を舞台にしたSFだが、”ウナギ教授”との会話などに作者らしい味が出ている。
(「回帰祭」、小林めぐみ著、ハヤカワ文庫JA940、2008年11月発行、ISBN978-4-15-030940-4)
ウィリアム・ギブスン特集。何でと思ったら「スプーク・カントリー」が海外SFノヴェルズで出るからなのか。でも特集は小説はなく、ローカス誌インタヴュー、論考(巽孝之、伊藤計劃、菊池誠)とゲイリー・ウェストファールの論考「ガーンズバック連続体」(嶋田洋一訳)、エッセイ(小谷真里、高野史緒、ミューザキ)、永瀬唯による用語集「差動事典」、ギブスンを読み解くためのブックガイド(新島進、香月祥宏、海老原豊、飯田一史)、で構成。小説は、読みきりで友成純一「レヤックの爆裂」は東南アジア類似の架空世界を舞台にした見習い魔道士ティクンの遭遇した怪異を描くファンタジー。ニール・スティーブンスン「ジピと偏執症のソフト」はあるソフトウェアとの対話をたくみに誘導し危機を回避する話。ブルース・スターリング「キオスク」は物のコピーを作るファブリカトールを持つキオスクを巡る話。連載陣では、山本弘「地球移動作戦」(第7回)では魅波が傷心のマイカを説得し連れ出すことに成功し地球移動作戦も実施に向けて動き出す。朝松健「魔京」(第16回)は奇怪な三猿像を林羅山の元に届けた彦四郎の遭遇する怪異。谷甲州「乱風楓葉四」(霊峰の門第十六話)は楓と野添は敗走して郷に戻るが、、、。他には、今回からカラーページ(4色ページ)になった巻頭で難波弘之の特集と映画公開に合わせて「WALL・E/ウォーリー」誌上公開。同じく中ページでは「回帰祭」でハヤカワ文庫初登場の小林めぐみ特集。移転新装開店となった仙台市天文台で行われたトークショー「SFと宇宙の楽しみ」(瀬名秀明×平谷美樹×鹿野司×土佐誠(天文台長・日本天文学会理事長)を読むと仙台に行きたくなった。1月に仙台市天文台である天文教育系のワークショップに行こうかな。次号は創刊49周年だが、以前のように厚い特集号にはしないのかな。
