前半の「宇宙のサルガッソー」ではメールストロームの中心のいわゆる”臍の緒”の調査に向ったトロナル・カソム提督の第11攻撃戦隊は不思議な黄金の糸により航行不能に陥ってしまう。かろうじて救助船に助けられたカソムたちは近くの恒星系の住人がかつて入手した生きたネットにより黄金の糸を防げることを発見し、ネットの一部を持ち帰るが地球の大気圏に帰還したときにネットは死んでしまう。黄金の糸=エネルギー・ペストとメールシュトロームの彼方の伝説の惑星グラーグ・シャナート、そこで入手できるエネルギー・ペストと共生する半有機性ネット、故郷銀河のブルー族との関係などの謎を残して。後半の表題作では、再び”臍の緒”の調査に向った24隻の調査艦は突如出現したプローンの大艦隊に殲滅される。かろうじて脱出した1隻から報告を受けたローダンは2万の艦隊を率いて”臍の緒”に向う。プローン3万隻と太陽系艦隊2万隻による艦隊戦はローダンとプローンのジャイマダル・コンツェントリン女王の頭脳戦になり、膠着状態になる。太陽系艦隊のうちの3千隻がメールシュトロームの”喉”に近づきすぎて、いずこかに転送されて均衡が崩れてしまい、窮地に陥ったローダンは、残りの艦隊を”喉”に送り込み、プローンの本拠地に向う決断をする。
(「昆虫女王(ペリーローダン346)」、クラーク・ダールトン&H.G.エーヴェルス著、渡辺広佐訳、ハヤカワ文庫SF1658、2008年4月発行、ISBN978-4-15-011658-3)
2008年4月アーカイブ
クラーク&バクスターによる<タイム・オデッセイ>シリーズの2。3月にクラークが逝去したため帯に追悼の文字が入っている。前巻の「時の眼」が200万年の人類史をパッチワークした世界(ミール)を舞台にした歴史絵巻的な内容だったのに対し、今作は近未来の巨大工学プロジェクトを描くハードSFになっている。大規模な太陽からの質量放出により電子機器類に大きな打撃を受けた2037年の世界だが、この事態を唯一予言していた月面のニュートリノ研究者ユージーンは、太陽内部のシミュレーションにより5年後に今回の事件よりケタ違いの増光が起こると予測した。そのような事態が起これば人類のみならず地球上のほぼすべての生命は絶滅してしまう。一報を受けた王立天文台長のシヴォーンは地球上のネットから生まれたAIアリストテレスの助けを借り地球の断面積に匹敵するシールド(盾)をL1点に設置する案を立て、ユーラシア連邦首相やアメリカ大統領(どちらも女性)の主導により、中国を除く世界中の協力により、この計画を推進することになる。月面上ではやっと恒久的な有人基地によりマスドライバー建設が始まったばかりで火星有人探査もやっと1次隊の調査が始まったばかりという状況の中、人類(と地球・月に生まれたAI)の総力を結集した盾の建設が始まる。一方、ミールでの5年の歳月の後に地球に帰還した前作の主人公ビセサは、この事件の背後に魁種族(ファースト・ボーン)がいることをシヴォーンに告げ、ユージーンのシミュレーションによりBC4年にアンタレスからの巨大木星型惑星が太陽中心部に打ち込まれたことが今回の事件の原因であることが突き止められ、魁種族が人類滅亡を仕掛けたことが確認される。様々な技術的困難やテロを受けながらも何とか完成された盾は予測された太陽嵐をかろうじて防ぐが、太陽からは追加の質量放出が起きる。絶体絶命の危機を救ったのは盾に生まれたAIアテナによる捨て身の解決法だった。最後が復興途上の地球での宇宙エレヴェータ建設という希望ある結末なのはクラークらしい。訳者あとがきにもあるとおり、作中のあちこちにクラーク作品を想起させる場面があるが、小説からばかりでなく、シヴォーンの最初の月への旅行場面のように、映画「2001年宇宙の旅」のオリオン号の場面そっくりなところなどもあって楽しめる。もうクラークによる新作が読めなくなったのは残念だが、このシリーズに関しては、既に刊行ずみの次作では新たな魁種族による危機が描かれるそうで、魁種族の謎のさらなる解明の期待も含めて楽しみである。
(「太陽の盾」、アーサー.C.クラーク&スティーヴン・バクスター著、中村融訳、ハヤカワ海外SFノヴェルズ、2008年4月発行、ISBN978-4-15-208912-0)
ハヤカワJコレクションの1冊。最近のSFマガジンやSF Japanに載ってたものは読んでたので収録8作のうち既読4、未読4だった。表題作は軌道エレベータ(地球のだけじゃなく太陽-地球のL2基点のまで)が設置され、その後地球に取り残された科学技術を拒否した人々の中で突然変異的に科学への興味を持った主人公のエレベータ遍歴を描く。中臣亮氏の表紙イラストとも相まっていい感じが出ている。地球の人々を取り巻く<妖怪>たちって何だろう?「灰色の車輪」は科学技術の暴走に恐れをなした人類により隔離された研究開発環境として作られた惑星上での進化したロボットを描く。作中にちらっと出てくるマッドサイエンティストの開発状況からは同じ舞台でもっと作品が書けるんじゃないだろうか?「あの日」は宇宙船の中しか知らない(はず)の小説教室の生徒と先生のやりとりにからむミステリタッチの作品。地球の重力下での現象に対する無知からの描写例がおかしい。「性交体験者」は女性が支配的な世界で劣った権利しか持たない男性による殺人事件を扱った作品。女性捜査官と容疑者の壮絶な交わりが圧巻。「銀の舟」は赤い惑星の人面岩に取り付かれた女性が遭遇したのは旅立っていった先住種族の残した先進文明への鍵の情報だった。結末で明かされる逆転の状況があざやかな作品。「三00万」は肉体での直接対決での勝敗が価値を持つ宇宙で、異なる価値観を持つ地球人と出会った侵略者の姿を描く。暗示される結末が侵略者の王に影を落とす。「盗まれた昨日」は空間の相転移により短期記憶しかもてなくなったため、それを補う外部メモリをすべての人々が持つようになった世界での異常殺人者の犯罪に巻き込まれた少女を描く。外部メモリのデータを人格の問題がキーになる。「時空争奪」は唯一の書き下ろし。時空同士が争奪戦をしているという設定のもと、過去を奪われつつある世界の住人が経験する奇妙な現実改変を描く。個人的には表題作が読後感も含めていいと感じた。
(「天体の回転について」、小林泰三著、ハヤカワJコレクション、2008年3月発行、ISBN978-4-15-208906-9)
ダーク・ピット・シリーズの第19弾。バイカル湖で調査中だったピットたちは巨大地震の高波から石油調査船のクルーを救助するが、彼らは何者かに拉致されピットたちの乗船もあやうく沈没させられそうになる。一方、ペルシア湾のサウジ最大の石油施設が地震で壊滅し、中国でも石油基地が謎の火災に襲われ、世界経済は石油パニック寸前になる。困窮する中国政府に内モンゴルの返還と引き換えに石油の供給を申し出たのはモンゴルに本拠を構えるボルジンだった。ボルジンの本拠地の研究室には拉致された石油技術者たちが捕らえられ、各地で暗躍する掘削船には謎の音響装置が積まれていた。ピットたちの調査と、パールマターやイェーガーたちの協力でわかってきたのは、ボルジンたちがフォン・ヴァハター博士の開発した地下音響プロファイリング装置を利用して人工的に断層を刺激して地震を起こさせ石油パニックをたくらみチンギス・ハーンの栄光を取り戻そうと画策していることであった。ピットたちの活躍によりボルジンの陰謀は潰え、歴史上の謎とされていたチンギス・ハーンの墓(実はボルジンの本拠地にあった)からチンギスの遺体が回収され、ハワイ沖でのダークとサマーたちの活躍により、クビライ・ハーンの秘宝までもが発見されたのだった。一時はどうなるかと思われたこのシリーズだが、随所に主人公たちの老化がみられるにせよ、相変わらずの肉体をはったアクションを見せてくれている。子ども達のダークとサマーの世代へのバトンタッチはまだ先になりそうである。今回カバー裏を見て気づいたが、これまでの18冊の仲でもカタログ落ちしてるのがあるようだ(NUMAファイルシリーズなんかはもっとひどい)。油断できないなあ。
(「ハーンの秘宝を奪取せよ(上・下)」、クライブ・カッスラー&ダーク・カッスラー著、中山善之訳、新潮文庫、2008年4月発行、ISBN978-4-10-217041-0,978-4-10-217042-7)
長谷川裕一のコミックス『マップス』の世界を舞台に、6人の小説家の短編を集めたシェアードワールドもの。日本でも田中芳樹の七都市のシェアードワールドものなどがあるが、コミックスが原作というのはめずらしい(のかな?)。原作の『マップス』は出た当初は読んでなかったと思うが、稲葉振一郎の評論「オタクの遺伝子」を読んでからマンガ喫茶(まだネットカフェとか言い出す前の頃)でまとめて読んだ記憶がある。銀河にあふれる多種多様なビメイダー(合成生命体)、惑星サイズの伝承族、銀河を超えるスケールのめずらしいくらい思い切りのいいスペオペというのが原作の特徴だろう。収録されている作品は、笹本裕一の「迷子の宇宙戦艦」はオリジナルマップスではほとんど触れられることのなかった電子戦を描いた現代的スペオペ。中里融司「流星のジュディ」はリープタイプの船ログが拾ったわけありの少女ジュディとの物語。秋津透「ソフティカ・リップ放浪記」はリープシップのソフティカの外伝。古橋秀之「町からきた先生」は物語世界を背景とした、とあるいなか惑星での1コマ。重馬敬「宙へ往く船」はダイナック・ゲンの弟、十鬼島ヨシキが地球人の開発したリープタイプ1号機リプ・トゥーラと共に飛び立つ話。新城カズマ「さよなら三角、また来てリープ」は銀河大戦前夜の地球の一般人を描いた掌編。他にもイラストでの参加が村枝賢一、三浦建太郎、麻宮騎亜、というなかなかお得な内容だった。
(「マップス・シェアードワールド-翼あるもの-」、ソフトバンククリエイティブGA文庫、2008年2月発行、ISBN978-4-7973-4619-0)
『移動都市』シリーズの2巻。最終戦争で文明が荒廃し、移動しながら食い合いをする移動都市と、それに反撥する反移動都市同盟が争う世界が舞台。この巻では、飛行船<ジェニー・ハニバー>号で北の氷原に不時着したトムとヘスターが移動都市アンカレジに拾われるが、そこは疫病で多くの市民が失われ、辺境伯を受けついた少女フレイアたちが何とか都市を維持していたが、著名な作家ペニー・ロイヤル教授の著書を信じて森が復活しているというアメリカを目指すことになる。フレイアとトムの仲を嫉妬したヘスターはアンカレジを抜け出し巨大都市アルハンゲリスクにアンカレジの情報を売ってしまう。後悔するヘスターだが<ジェニー・ハニバー>号の元の持ち主アナ・ファンを復活させようとする反移動都市同盟の一派<グリーンストーム>の司令官サスヤに捕まってしまう。一方アンカレジには盗人集団<ロストボーイ>の潜航艇が人知れずくっついていたが盗撮カメラで一部始終を見ていたコールにさらわれたトムはヘスターのことを知らされ<グリーンストーム>の本部に潜入することになる。<ロスとボーイ>と<グリーンストーム>の争いの混乱の中、<ジェニー・ハニバー>で脱出したトムとヘスターはアンカレジに向うが、そこには既にアルハンゲリスクの先遣飛行船が乗り込んでいた。ヘスターに助けられたフレイアたちは氷の薄いところでアルハンゲリスクが沈んだことに助けられ、<ロストボーイ>から逃れてきたコールのもたらした地図によって何とかアメリカにたどり着き、ペニーロイヤルに重傷を負わされたトムと共にヘスターはアンカレジにとどまることになる。飛行船という乗り物や、<ロストボーイ>たちが使うリモコンカメラなどのちょっとレトロなメカなんかの印象がやはり宮崎アニメ風と言われるとおりのイメージを紡ぎだしている。
(「掠奪都市の黄金」、フィリップ・リーヴ著、安野玲訳、創元SF文庫、2007年12月発行、ISBN978-4-488-72302-6)
前半の「背信のスペシャリスト」では、元USOスペシャリストのカンテンバーグがレティクロンの巧妙な罠に利用され、旧ミュータントを捕らえる手引きをさせられる。収容所惑星から脱出したように見せかけてUSO基地に逃げ延び、まんまとミュータント救出コマンドの一員に選ばれたカンテンバーグだが、ワーベ1000でカンテンバーグに乗り移ったタコ・カクタはカンテンバーグが裏切り者であることに気づき、阻止しようとする。両者のせめぎあいで超重族の艦にテレポートしてしまったカンテンバーグを残し、7名のミュータントはガイアへと脱出する。後半の表題作では、レティクロンの元に引き渡されたカンテンバーグだが、そこで発動した罠によりカンテンバーグは死亡し、やむなくレティクロンにトランスファーしたタコ・カクタはレティクロンの肉体に捕らえられ協力させられる。そこに旧ミュータントのことをかぎつけたラール人ヘトソンの告知者ホトレノル=タアクが現れる。すきを見て逃げ出したタコはラール艦のフィールドに捉えられ、そのせいでSVE艦2隻が爆発してしまう。異常の原因がミュータントにあることに気づいたタアクに追い詰められたタコはヘトスを構成する集合生物ヒュプトンにトランスファーした後、タアクの肉体に捕らえられてしまう。折りよくタアクに反攻する代行ラアフネトル=ブレックが叛旗を翻したスキにブレックの肉体をのっとったタコはラール艦で脱出し、ついに銀河中心部でUSO艦にテレポートしてテラナーの元にもどることができる。
(「肉体喪失者の逃亡」、クルト・マール著、五十嵐洋訳、ハヤカワ文庫SF1654、2008年3月発行、ISBN978-4-15-011654-5)
恒例のと学会の例会レポートと2007年6月に行われた「第16回トンデモ本大賞」の選考・発表の収録。例会の様子はいつもどおり、世にトンデモの種は尽きまじ、である。トンデモ本大賞は圧倒的大差で「人類の黙示録」枡谷猛著、文芸社刊、に決定。しかし、実際に楽しんだのは特別賞受賞のMOSAIC.WAVというユニットの歌。近頃とんと秋葉なんかに寄る暇がないので実物を見てないけど、ユニットのサイトから視聴版をダウンロードして楽しみました。確かに歌詞がないと専門用語で何歌ってるのかわからないんじゃあないか。特別賞そのものは「ギリギリ科学少女ふぉるしぃ」という歌だったけど、注で紹介されていた他の歌も楽しく、思わず片っ端からダウンロードしてしまった。あとがきでは初音ミクに触れていて、最近読んだ野尻抱介の短編といい、これの影響は大きい。私自身は時間もなくてそこまで手を出すこともできないんだけど。
(「と学会年鑑AQUA」と学会著、楽工社刊、2008年4月発行、ISBN978-4-903063-19-5)
海外SFTVドラマ特集。といっても、もう長い間TVドラマは見てないんだよなあ。巻頭特集のHEROESやSCI FIチャンネル開局のページの作品は名前を聞いたことがある程度だし、現代SFTVドラマガイド34に紹介されている1987年以降のものではスタートレック関係の一部を見たことがあるだけだもの。他には第3回日本SF評論賞の受賞作「阿修羅王は、なぜ少女か?光瀬龍『百億の昼と千億の夜』の構造」(以前は「光瀬龍『百億の昼と千億の夜』小論、旧ハヤカワ文庫版「あとがきにかえて」の謎」と紹介されていたものの改題)が掲載されている。星新一といい、第一世代の優れた評伝が続くのは喜ばしい。他の情報も補充して、星新一なみの大部の評論にでもなればよいのだが。読切小説では、藤田雅矢「トキノフウセンカズラ」は老婆から種をつけない実のなることがある不思議なフウセンカズラの話を聞いた植物園職員のエピソードで叙情的な好編。草上仁「生煙草」生きた生煙草である異星生物<シガー>についての仮説を展開する生態学者のエピソードを描く落ちが鋭い短編。野尻抱介「南極点のピアピア動画」<後編>は月からの隕石衝突破片の降着流による南極点のポーラージェットを利用して宇宙旅行を企てる話だが、実行するのが大学院生やその仲間による「宇宙男プロジェクト」であり、動画共有サイトなどのネットの流行を取り入れたところがミソで「大風呂敷と蜘蛛の糸」の系列の話。後編は着々と計画が進み、お約束どおりのさわやかなハッピーエンドになるのが良。連載陣では、朝松健「魔京」<第12回>は織田信長のエピソードが続く。梶尾真治「誓いの時間」<怨讐星域第7話>は別のグループに囚われたタツキは捕らえたグループのマッサに連れられた彼らの町に行くが、そこではタツキたちと共通する<儀式>を行っていた。最後でタツキとマッサが従兄弟であることが明かされ続きへの期待がかかる。中ページでの新間大吾のイラストは良。公開映画の紹介で「NEXT-ネクスト-」(ディックのゴールデン・マンの映画化)と「クローバーフィールド-HAKAISHA」が掲載。
日本SF大賞&新人賞の特集。大賞は最相葉月「星新一1001話をつくった人」で文句なし。受賞記念の「幻の絵の先生」が受賞作の番外編になっていて楽しめる。一方の新人賞は黒葉雅人「宇宙細胞」と中里友香「黒十字サナトリウム」の同時受賞。それぞれ受賞後第1作が載っているが、黒葉氏の「メイド・イン・ジャパン」は日本企業お得意のITとナノテクを駆使した少子化対策製品の話だが交際から受精までの語り方が面白い。中里氏の「逆十字入門」は吸血鬼の妹がわざと兄とはぐれて遭遇した山小屋の少年を仲間にしようするが、という話。関連して日本SF新人賞作家の短編競作で、谷口裕貴「夏が来る」は翼を持つ「夏探し」を語り手に時々水を持った天体が落ちてくる巨大な世界を舞台に危険な群体生物による危機を描く。樺山三英「セルゲイ・Pの思い出」は狼少年と赤ずきんちゃんの話にからめて不条理な展開を見せる話(?)。吉川良太郎「誰がひばりを殺したか」は捕らえられたジャンヌダルクの背中に羽が生えるという話を確かめに行った神父の話。単発では、伊東京一「家鳴り」樹海に覆われる世界のある村で起きた殺人事件の解決を依頼された森林保護者の話。西條奈加「刑罰0号」は一見不良少年と老人との係りの話のようだが裏には究極の刑罰とされる処置が働いていたという話、本当にこういう刑罰ができればいいんだろうけど。連載陣では夢枕獏「黄石公の犬」が完結、えっもう、という感じ。古橋秀之「百万光年のちょっと先」(第7回)は夢見るものの夢の中でまた夢見るものが、というエピソードと超光速船に恋する(宇宙)鯨のエピソード、相変わらずどちらもちょっといい話。火浦功は相変わらず全然話が進まない。小路幸也「蘆野原偲郷」(其の四)は猫になった奥さんに子猫がついてきたと思ったら、その子猫も少女になり、という展開、このホノボノした味は良い。恩田陸「愚かな薔薇」?は空ろ舟乗りの先輩トワが登場し磐座の滅びを説明し始める。新連載として、あさのあつこ「スーサ」あらゆるものを商いの種とする薄暮の商人<スーサ>が娘を殺された鍛冶屋を訪れて、という展開。森岡浩之「地獄で見る夢」は「優しい煉獄」シリーズの新章。イラスト先行小説と銘打たれた菊池秀行「果てしなき航路」は全体に霧にかすんだような話、浅暮三文「新宝島」は祖父の残した絵が宝の地図に違いないと確信して探索に出る男の話、こちらの方がまだピンと来るかな。海野蛍のコミック「家族の肖像」は事故にあった家族が精巧なロボットで再生する。なかせよしみ「TECH MATES」は中々良いエピソード、「エリカさんの狂発明日記」は相変わらずのマッドサイエンティストぶりが楽しい。
(「SF Japan, 2008 SPRING」、徳間書店、2008年3月発行、ISBN978-4-19-862498-9)
