超人類カウル

| コメント(0)

イギリスの新世代作家の一員ニール・アッシャーの長編。冒頭、200年ほど未来のイギリスでドラッグを得るために体を売るポリーと死んだ親友の兄ナンドルーは、連合政府のプログラム可能な暗殺者タックと、鱗に覆われた奇妙な物体ををめぐって遭遇する。戦闘の過程でナンドルーは次元の裂け目に喰われて、その人格情報がポリーに埋め込まれたAIプログラムに取り付くことになり、鱗が腕に取り付いたポリーと、そのかけらがやはり取り付いたタックは、鱗の作用で、強制的に過去に遡行させられていく。第2次大戦、ヘンリー8世、ローマ時代と遡る過程は時間SFの典型だが、その過程でわかってくるのは、鱗がトービーストと呼ばれる歴史の節目で人間を食らい生き残った人間を鱗で過去へおびき寄せる生体タイムマシンの一部であり、トービーストを送り込んだのが未来人カウルだということ。カウルは、遥かな未来に2派に分かれて戦う、アンブラセインとヘリオセインという2つの新人類種族のうち、ヘリオセインから遺伝子改変で生み出された<究極の人類>であり、自分に都合のいい未来を実現するために時間遡行の限界である、多細胞生物が発生する先カンブリア紀に設けた基地にいる。アンブラセイン、ヘリオセイン、カウルは存亡を賭けて熾烈な時間戦争を繰り広げていく。0)の元にたどりついた後にカウルの姉のアコナイトに助けられたポリーと、ヘリオセインによりカウルの元に暗殺者として送り込まれるタックは共にカウルをとめようと最後の戦いに突入する。タイトルからはカウルが良い方の意味の超人かと思っていたが、内容からはむしろ人類が生み出してしまった怪物といった扱いに近い。あとがきにもあるとおり、過酷で異様な世界背景の中での活劇主体のストーリーで比較的読みやすかった。弐瓶勉あたりがコミック化すると似合いそう。

(「超人類カウル」ニール・アッシャー著、金子司訳、ハヤカワ文庫SF1646、2007年12月発行、ISBN978-4-15-011646-0)

コメントする

2010年3月

  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31      

このブログ記事について

このページは、okが2008年2月 4日 01:35に書いたブログ記事です。

ひとつ前のブログ記事は「鋼球帝国(ペリーローダン343)」です。

次のブログ記事は「小松左京マガジン第29巻」です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。