イリナの不在中にジスクールの秘密研究所で起こったイエティたちのクーデターに対し、所内で生まれた10人の子供達は反撃を開始する。しかしジェースイッチを除く9人はイエティたちをゲーム感覚で狩ることしか考えていない。そのうちP4区画研究室にいたイエティに対しても無差別に攻撃したことから、SARAIを生み出す元になったレトロウイルス(=ウイルスベクターとして人間の遺伝子を思いのままにデザインする機能を持つ)から作られた恐ろしく伝染力の強い凶悪なウイルスであるMOZAICが解放されてしまう。それを知った所長はジェースイッチの協力により所長室のイエティを制圧し、生物汚染対策として90秒のカウントダウンで自爆装置を起動する。しかし、それでもMOZAICは世界に拡散してしまい、それが現在の世界を生み出したのだった。ここで場面は転換し、協会の設立場面が紹介された後、さらに時代は飛んで、ロシアからの人身売買船の取材をしていた河原女史たちが、かつての級友、紗莉とそっくりの娘と遭遇するところでこの巻は終わる。終わりの方のタイトルが LAST WORK となっているので、そろそろ終盤か。(2008年5号に載るのが最終回だそうだ。)
(「サライ18」、柴田昌弘著、少年画報社YKコミックス、2008年2月発行、ISBN978-4-7859-2906-0)
2008年2月アーカイブ
恒例のベストSF2007年は、国内編:1.虐殺器官、2.SelfReferenceEngine、3.沈黙のフライバイ、4.星新一1001話をつくった人、5.プリズムの瞳、6.時砂の王、7.マルドゥック・ヴェロシティ、8.進化の設計者、9.鯨の王、10.赤朽葉家の伝説、というラインナップ。ベスト10では3つほど読んでないが、そのあたりを割り引いて個人的な評価では、王道の時間SFと泣ける要素を見事に圧縮した、1.時砂の王である。以下、壮絶な戦いに引き込まれた、2.マルドゥック・ヴェロシティ、特に大風呂敷が気に入った、3.沈黙のフライバイ、4.と5.に虐殺器官とSREか。あ、完結記念で「食卓にビールを」も。「星新一1001話をつくった人」はノンフィクションなんで別格とします。一方、海外偏:1.双生児、2.ゴーレム100、3.ひとりっ子、4.輝くもの天から堕ち、5.オリュンポス、6.擬態-カムフラージュ-、7.老人と宇宙、8.マジック・フォー・ビギナーズ、9.火星の長城、10.キルン・ピープル、というラインナップ。こちらは1位を含めて4つほど読んでいない、特に買って読んでないゴーレム100が痛いが、それを割り引いて、個人的評価では、積み残しの謎に不満はあるが続編への期待を込めて、1.オリュンポス、後は、2.ひとりっ子、3.老人と宇宙、4.擬態、5.キルン・ピープル、といったあたりが気に入った。3?5は気軽に読める。火星の長城も入れるべきだがこれは2巻と合わせてだろう。他には、伊藤計劃×円城塔対談と最相葉月による「SF草創期を支えた人々」小稿、いずれ福島正実の評伝でも書いてもらいたいものである。加藤×小川×林×東による座談会「2008年、本格SFの行方」も。後はいつものようにサブジャンル別ベスト10、マイベスト全回答、SF出版社各社2008年の刊行予定など、やっぱりブルーマーズは消えてしまっている。特別企画として「SF最新スタンダード200徹底紹介」として1987?2006の20年間からのベスト200作品の紹介。表紙も描いてるCOCOのコミックも目玉の1つ。
(「SFが読みたい!2008年版」、SFマガジン編集部編、2008年2月発行、ISBN978-4-15-208896-3)
異形コレクションの39巻目であると同時にショートショート生誕50周年記念アンソロジーだそうだ。これは星新一が宝石誌に「セキストラ」でデビューし実質的に現代で言うところのショートショートが始まった時点を起点としている。編者の井上雅彦が書いているとおり様々な意味で星新一の影響なくして生まれなかったとも言え、ちょうど星新一没後10年の区切りに編まれた。ショートショートとはいえ、総勢81名もの作品を集めているので500ページを優に超えるボリュームになっている。異形コレクションらしくマンガ家の作品も収録されているが、これもヒトコマの異形と称してヒトコママンガで揃えてある。内容はいくつかのセクションに分かれており、<デラックスな発明>、<謎と秘密と犯罪>、<闇の種族あれこれ>、<未来からのノック>、<つねならぬ日常>、<妖夢のような>、<ひとにぎりの人生>、となっている。中ではやはり<未来からのノック>にSF風の作品が多いようだ。ここしばらく異形コレクションを読みとおしてなかったが、これはショートショートということもあり読み通すことができた。
(「ひとにぎりの異形」井上雅彦編、光文社文庫・異形コレクションXXXIX、2007年12月発行、ISBN978-4-334-74355-0)
2007年度英米SF受賞作特集。といってもワールドコンNIPPON2007に合わせてヒューゴー賞候補のショートストーリーとノヴェレットは昨年の7,8月号で訳載されているのでそれ以外の作品になっている。ヒューゴー賞ノヴェラ部門受賞作のロバート・リード「十億のイブたち」では、<リッパー>と呼ばれる並行世界への転移装置を用いて女子寮とその住人がある男の道連れに転移させられた。時間がたち、そこでも<リッパー>による並行世界への転移が、祝福されたり半ば誘拐もどきだったりで実行される世界で、少女カーラが遭遇する事件を描く。ネヴュラ賞ショートストーリー部門受賞のエリザベス・ハンド「エコー」は、犬と共に孤島に住む女性の姿を通して間接的に壊れていく世界を描く。ローカス賞ノヴェレット部門受賞のコリイ・ドクトロウ「シスアドが世界を支配するとき」は、深夜のメールで呼び出されたシスアドたちがデータセンターに篭るが、システムダウンの原因は世界で同時多発的に起こったテロであり、壊滅した世界で何とかネットワークを維持しようとするシスアドたちの姿を描く。主人公の妻や子があっさりと死んでしまい、どんでん返しでもあるかと思ったが悲惨な現実は変わらず結末に至るのは現代的な破滅ものらしいかも。細井威男氏による特集解説とリストつき。関連してSFスキャナー特別版として受賞長編レヴュー、英米SF注目作カレンダー2006も。連載は朝松健「魔京」<第11回>、山田正紀「イリュミナシオン」<第13回>。読みきりで平山瑞穂「十月二十一日の海」は曖昧な関係にある男と人妻の女友達が地図にカッコつきで記載された曖昧な湖を訪れる旅を描く。「バトルスター・ギャラクティカ」の公開記念の特集が中ページにあるが、スカパー!は入ってないから見えないんだよなあ、見たいけど。
デイヴィッド・ウェーバーのミリタリイSF第2巻。第1巻で反逆者一味を倒し地球総督についたコリン・マッキンタイアは迫り来るアチュルタニに対抗するための援けを求めてダハクで帝国に向った。しかし最初に訪れたシェスカー星系は完膚なきまでに破壊されていた。次に向ったデフラムにも生物の姿はなかった。わずかな手がかりからはダハクの時代以降に帝国のテクノロジーは洗練され高度な艦船が作られていたが、どうやら4万5千年ほど前に生物兵器の事故(?)によりマット・トランス・システムと呼ばれる一種の転送機を介して致死性ウイルスが皇国となっていたかつての第四帝国に蔓延し、すべての生物を一掃したようだった。帝国主星のバーハットに向ったコリンたちはバーハットの軌道上に帝国艦隊司令部を発見し、コリンが中に入って中央コンピュータとコンタクトすることに成功する。ダハクの協力により中央コンピュータに現状が皇帝が亡くなった状況に対応するケース・オメガであることを認識させ、コリンを新皇帝と認めさせたことにより、バーハット周辺にいた皇国近衛艦隊を何とか修理して動かすことによってやっと地球を助ける手段が得られた。一方、様々な困難にあいながらも何とか期限までに迎撃体制を整えた地球にアチュルタニの先遣隊が迫る。思わぬ反撃にあったアチュルタニ(彼らの言い方ではアク=ウルタン)はついにイアペタスを質量爆弾として地球に落とそうとするが、何とか間に合ったコリンたちの救援艦隊により阻止される。皇国から持ち帰った艦隊は各隻がダハクを凌ぐ攻撃力を持つが、絶対数が少なく、300万隻を数えるアチュルタニの本体に対抗するには策略が必要であり、壮絶な艦隊決戦を経て、最後には敵の大ボスのコンピュータをダハクの捨て身の攻撃でシャットダウンさせ、アチュルタニの今回の攻勢を防ぎきると共に、アチュルタニの正体や、彼らの攻撃を根本から建つ手段も判明し、地球は一息つくことができた。第1巻が地球上でとどまっていたのに対し、今度は銀河を飛び回り大規模な艦隊戦が繰り広げられミリタリイSFというより派手なスペースオペラとなっている。非常に主人公たちに都合よく話が進むが、そこはお約束ということで、そうした点を気にしないなら、むしろ結末がわかるだけに安心して楽しめる。
(「反逆者の月2-帝国の遺産-」デイヴィッド・ウェーバー著、中村仁美訳、ハヤカワ文庫SF1649、2008年1月発行、ISBN978-4-15-011649-1)
小松左京の喜寿祝賀特別号。祝辞を寄せているのは、同人である桂米朝・福田紀一・濱田隆治・石毛直道・萩尾望都・とりみきをはじめとして、会員の中から、柴野拓美らの同世代作家から、それに続く世代の豊田有恒・堀晃・森下一仁・山田正紀・横田順彌・谷甲州・ひかわ玲子などの作家、巽孝之・みなもと太郎・中村桂子などの関係者や有村とおる・機本伸司などの小松左京賞作家、さらにはイラストや手書きメッセージを寄せた、吾妻ひでお・新井素子・石川喬司・上田早夕里・小佐田定雄・一峰大二・嘉門達夫・久美沙織・久保修・高斎正・最相葉月・すがやみつる・田中光二・高橋桐矢・ちばてつや・平谷美樹・藤臣柊子・町井登志夫・森優・八杉将司・夢枕獏といった面々を見るにつけ改めて小松左京の人脈を思い知らされた。高斎正のいつものコラムも他でも紹介されていたフィッティパルディのエピソード。すがやみつるは早稲田のeスクール入学記。パソコン通信のころから活躍していたすがやみつるが何故いまさらと思ったが、大学で学んだ経験がないと教え方がわからないというのが動機のようだが、いまどきのeスクールの利便性が紹介されて興味深かった。下村健寿氏の<さよならジュピターのミステリー>は「環境問題」というキーワードからの解読を試みている。先号に続いてのワールドコンレポートは「さよならジュピター」リメイク推進委員会と中国企画「アジアのsfと周辺事情?現状を語る」。小研の京都旅行レポートは京大お花山天文台と祇園の茶屋。こんなところで知った名前を目にするとは(とはいえ京大系なので花山天文台には行ったことはないんだけれど)。小松左京研究会のページの永瀬佳江氏は「チョモランマを見た!」という旅行記。唯一の小説は小松左京賞受賞作家の上杉那郎氏の「ミラクルビュレット?奇跡の弾丸?」。単純なヘルニアだったはずの患者が感染症の症状を表し死亡率100%近いアボリジニー出血熱と判断される。他に生き残ったのがHIV患者だったことからAZTの投与で危機を脱するまでを描く読み応えある医学SF。
(「小松左京マガジン第29巻」、(株)イオ発行、角川春樹事務所発売、2008年1月発行、ISBN978-4-7584-1106-6)
イギリスの新世代作家の一員ニール・アッシャーの長編。冒頭、200年ほど未来のイギリスでドラッグを得るために体を売るポリーと死んだ親友の兄ナンドルーは、連合政府のプログラム可能な暗殺者タックと、鱗に覆われた奇妙な物体ををめぐって遭遇する。戦闘の過程でナンドルーは次元の裂け目に喰われて、その人格情報がポリーに埋め込まれたAIプログラムに取り付くことになり、鱗が腕に取り付いたポリーと、そのかけらがやはり取り付いたタックは、鱗の作用で、強制的に過去に遡行させられていく。第2次大戦、ヘンリー8世、ローマ時代と遡る過程は時間SFの典型だが、その過程でわかってくるのは、鱗がトービーストと呼ばれる歴史の節目で人間を食らい生き残った人間を鱗で過去へおびき寄せる生体タイムマシンの一部であり、トービーストを送り込んだのが未来人カウルだということ。カウルは、遥かな未来に2派に分かれて戦う、アンブラセインとヘリオセインという2つの新人類種族のうち、ヘリオセインから遺伝子改変で生み出された<究極の人類>であり、自分に都合のいい未来を実現するために時間遡行の限界である、多細胞生物が発生する先カンブリア紀に設けた基地にいる。アンブラセイン、ヘリオセイン、カウルは存亡を賭けて熾烈な時間戦争を繰り広げていく。0)の元にたどりついた後にカウルの姉のアコナイトに助けられたポリーと、ヘリオセインによりカウルの元に暗殺者として送り込まれるタックは共にカウルをとめようと最後の戦いに突入する。タイトルからはカウルが良い方の意味の超人かと思っていたが、内容からはむしろ人類が生み出してしまった怪物といった扱いに近い。あとがきにもあるとおり、過酷で異様な世界背景の中での活劇主体のストーリーで比較的読みやすかった。弐瓶勉あたりがコミック化すると似合いそう。
(「超人類カウル」ニール・アッシャー著、金子司訳、ハヤカワ文庫SF1646、2007年12月発行、ISBN978-4-15-011646-0)
