前半の「惑星スティモンドの危機」では、前巻で昆虫生物の侵入を受けていた第3惑星の隣の第4惑星では、原住生物フェベエル人が極地探検をしようとしていた。今まで送られた探検隊はすべて帰っていないのだ。極地で突然攻撃を受けた彼らを救ったのは偵察に来ていたミュータントのロイドとラスだった。この惑星にも昆虫生物プローンが侵入していたのだ。ラスたちはフェベエル人と協力して敵にあたろうとするが、フェベエル人の不信はなかなか解けず、プローン基地を壊滅させ捕虜からゼウスとの関連(と彼らがクシュモルトと自称していることも)が判明して惑星を後にする時に援助用に残したコルベットも不信から破壊されてしまう。後半の表題作では、ゲルックスヴィラ恒星転送機から誤って転送された4人の技師はメールシュトロームに転送された。近くに古レムール艦を見つけて侵入した彼らはそこで深層睡眠にされていたレムール人の補助種族マーサッケン人のフロンキィを発見する。状況を確認しようとする彼らの艦に、いもむし状の異生物が侵入してくる。その昔、メールシュトロームに漂着して古レムール艦に住み着くようになったアルトマクの部隊だった。アルトマクはレムール艦のうち17隻に住み着き<鋼球帝国>と称していたのだ。パラライザーで捕虜にされた4人はアルトマクの支配者であるタカチュの前でトランスレータを通じて交渉を試みようとする。
(「鋼球帝国」H.G.フランシス&ウィリアム・フォルツ著、嶋田洋一訳、ハヤカワ文庫SF1647、2008年1月発行、ISBN978-4-15-011647-7)
2008年1月アーカイブ
こちらも3巻目。ミリオポリスの聖木曜日の昼からの24時間を描く。ミリオポリス公安高機動隊(MSS)の要撃小隊<焱の妖精>の紫火こと鳳、青火こと乙、黄火こと雛は国連ビル内での内務大臣暗殺に始まるテロに立ち向かう。MSS長官ヘルガは兄のエドワルド州知事の協力のもとテロに対峙するが、ことごとくMSSの先回りをして起こる襲撃は内部通報者の存在を疑わせた。たまたま持たされたPDAにより容疑者とされた冬真だが、転送員の水無月の協力により真犯人を探ろうとする。大臣暗殺現場で存在を消されたはずの”4JO”ウイルスにニナが感染し、さらには家族を人質にとられた議員に代わって鳳までがウイルスに感染する。ニナたちがウイルスに殺される前に事件を解決しようとするMSSの面々は最重要容疑者である額に電子義眼を持つ男チェイス=ザ・サードアイを追う。ついにMSS内部の情報汚染が水無月のボスのシャーリーンの裏切りによることが判明するが、シャーリーンは冬真を殺そうとしたところをニナたちに防がれ逃走、彼女により転送機能を阻害された<焱の妖精>たちは翼だけで武器が使えない状態のまま敵の兵器を体当たりで阻止する。その後、チェイス=ザ・サードアイは逃すが、テロ事件に利用された<山猫>部隊を特甲猟兵に始末させたトラクルが国境に逃れようとしたところを傷だらけになった鳳たちが身をもって阻止し、ついにトラクルの逮捕に成功する。トラクルの逮捕と共に事件の裏に潜む<リスト>の存在が暗示されて次巻(書き下ろしの予定だそうだ)に期待を持たせる。
(「スプライトシュピーゲル?」冲方丁著、富士見ファンタジア文庫、2007年11月発行、ISBN987-4-8291-1973-0)
今回は3話の短編でミリオポリス警察組織MPBの特甲少女・遊撃小隊<猋>の三人のエピソードを描く。「Like Blue Murder」では黒犬こと涼月がMPB通信解析官・転送員の吹雪がマスターサーバの解析網をくぐりぬけたスパイプログラムに脳を侵されたのを助けようと奮闘、ついには特甲レベル3の転送を受け敵を倒す。「Scarlet Ob-La-Da」では紅犬こと陽炎が覚えのない子猫のぬいぐるみに書かれた略字の謎を解こうとする中でいつのまにかMPB内部の内通者を暴く事件に巻き込まれ敵を一毛打尽にしてしまう(謎の美女が実はあこがれのミハエル中隊長の妹と判明するおまけも)。「Holy Week Rainbow」では白犬こと夕霧がバイオリン引きの少年とデートするが、実はその少年白露こそは失踪した軍事レベルの特甲を持つ特甲猟犬であることが判明し、レベル3の特甲の転送を受けて特甲同士の壮絶な戦いを繰り広げるが、最後には白露はいずこかへ逃げてしまう。<猋>の3人の通常の特甲がレベル1Bで、もうひとつのシリーズのスプライトの3人の特甲がレベル2Aであることや、レベル3の特甲がなぜなかなか使われないかという話や、涼月と吹雪の過去にまつわる衝撃的な事実の判明、失われた最初の出撃の記憶など、まだまだ深まる謎は次へ続く。
(「オイレンシュピーゲル参」冲方丁著、角川スニーカー文庫、2007年11月発行、ISBN978-4-04-472905-9)
シモンズのホラー。史実に基づいて描いたそうで南極探検で名をはせた<エレバス>号と<テラー>号が北極に挑んで遭難したことをネタにしている。サー・ジョン・フランクリンを隊長とする英国の北極探検隊はフィッツジェームズ艦長の<エレバス>号とクロウジャー艦長の<テラー>号の2隻で北極域を抜ける北西航路の探索に出るが、カナダ北方、磁北極付近のキング・ウィリアム・ランド(島)近海で氷に閉じ込められる。氷はいっこうに溶けず生き延びる道を探す探検隊の面々に巨大な白い怪物が襲い掛かる。次々に倒れていく隊員たちと身動きできない船の状況を踏まえ、氷上を歩いて脱出しようとするクロウジャー艦長以下の隊員たちだが、白い怪物以外にも飢えや叛乱などの困難が降りかかる。ある事件により船内に収納されたエスキモーの少女と白い怪物の関係がキーとなり、最後にはクロウジャー艦長も少女と同じ役割に落ち着いていき、他の隊員は全滅することが暗示される。白い怪物とエスキモーの少女の間にある神話的な関係を思えば、あとがきにもあるようにハワイを舞台にその地の神話を題材にしたホラーともなっている「エデンの炎」の北極版とも言えるjかもしれない。怪物や飢え、叛乱などに襲われた隊員たちの凄絶な死に様がこれでもかと描かれるあたりはさすがシモンズで上下巻で1000ページを超えててもどんどん読めるが、白い怪物の正体が神話的な解釈で終わるのでSF的な決着がつくわけではない(SFのカテゴリーにしてるけどホラーだから無理もないが)。
(「ザ・テラー-極北の恐怖-」ダン・シモンズ著、嶋田洋一訳、ハヤカワ文庫NV1156,1157、2007年12月発行、ISBN978-4-15-041156-5,978-4-15-041157)
シリーズ3巻目にして完結編。装者の霧音がダメージを受けたことで、翔夏に人工人格である「翔ちゃん」を入れた剣者に仕立て、共に戦う舞矢だが、「集積者」との最終決戦は刻々と近づき、式者を統括する「調律師機関」は対抗手段を進めていく。そんな舞矢たちの前に現れたのは死んだはずの馬路原鏡壱だった。鏡壱はかつての「集積者」の端末から、集積者に切り捨てられた独立端末として霧音を復活させ、調律者機関に協力を申し出る。最初は疑う舞矢たちだが、「集積者」によりアメリカが消されるに及び、共に最終決戦に向けてすべての力を結集するしかなくなる。筑波で集積者の攻勢を受けた調律師機関は最後の対抗手段を取り、まさにこの世界が集積者に消されんとする刹那、一瞬、神の立場に立った舞矢は太陽系全体を遠方の平行世界の一部と交換して集積者から逃れ、自らも含む関係者の記憶を消して日常生活を復活させる。あとがきからどうも当初の構想よりも短縮して完結せざるを得なかったようで、前巻で思わせぶりな登場をした若手国会議員はあっさり死んでしまうし、貴重な剣者としての翔夏が活躍する場もなく、敵だったはずの鏡壱はこんなにいい子になっていいの、というキャラになってしまうし、各所に影響が見られてもったいない。
(「虚攻の戦士、五分間ノ神話」神野オキナ著、ソフトバンククリエイティブGA文庫、2007年11月発行、ISBN978-4-7973-4059-4)
ストロスと言えば「シンギュラリティ・スカイ」に始まるシンギュラリティ後の世界を舞台にした作品が先に出版されているが、これが私の趣味的にはイマイチだったのであまり期待せずにいた(超AIと舞台の惑星の妙な後退ぶりがどうもね)。しかしこれはいい意味で裏切ってくれて面白かった。数学者チューリングが基礎を築いた数学的魔術により平行宇宙との交流が可能だという設定の世界。英国政府は、平行宇宙からの異生物侵入という魔術的災厄の防止を目的とする秘密組織<ランドリー>を設立し、対抗策をとっている。<ランドリー>の新米エージェントのボブ・ハワードは初の現場任務として、偶然、オカルト的な研究にかかわった赤毛の美人哲学教授モーとの接触をすることになる。初級任務のはずが、中東系テログループにモーが誘拐されたことを皮切りに、背後にナチス・ドイツの魔術研究機関アーネンエルベの存在がちらついたり、異世界に通じる穴から再度誘拐されたモーを追って異世界への救出作戦に参加したりする羽目に。最後には陰謀の黒幕の魔術的な正体も判明し何とかモーを救出し世界を救うことができるわけだが、面白いのは細かい描写に現れる作者の趣味の一端。クトゥルーなどの魔術的な事項と情報数学的なガジェットが混在し、不可視効果を持つ<栄光の手>や<バシリスク銃>、クヌースの著作の第4巻のエピソードなど、事情を知っている者なら楽しめることうけあいである。ちなみに表題の残虐行為記録保管所というのは、アーネンエルベの資料が保管されているアムステルダムの施設という設定である。なお、表題作は長めの中篇くらいで、続けて収録されている、続編で2005年ヒューゴー賞ノヴェラ部門受賞作の「コンクリート・ジャングル」では、表題作で何かと主人公に難癖をつけていた<ランドリー>内の女性職員の陰謀に関するエピソードが語られる。既に続編も刊行されているそうだが、こちらのシリーズの方がよっぽど期待できる。
(「残虐行為記録保管所」チャールズ・ストロス著、金子浩訳、ハヤカワ海外SFノヴェルズ、2007年12月発行、ISBN978-4-15-208880-2)
<レヴェレーション・スペース>の中短編集の後半。冒頭の「時間膨張睡眠」は発表年代でシリーズ最初の作品で、融合疫で文明崩壊したイエローストーン星から脱出した星間船で冷凍睡眠から目覚めさせられた主人公の話。「ターコイズの日々」は、海洋惑星ターコイズ星でパターンジャグラーの研究をする姉妹だが姉のミナはジャグラーに吸収されてしまう。その2年後、星間船の使節団がジャグラー研究の視察に来るが、実は彼らはオズマルド教信者でジャグラーに吸収されたオズマルドを取り戻そうとしており、姉を守ろうとするナキが対抗して奮闘する。「グラーフェンワルダーの奇獣園」では、融合疫発生後のイエローストーン星の軌道上ハビタットでの奇獣収集家の話。ハマドライアド、ハイパー豚、デニズンなどのレナルズの宇宙史に出てくる奇怪な生物たちが登場する「タフの方舟」を思わせる部分もあるが、「ダイヤモンドの犬」で出てきたトランティニャン博士も登場し重要な役割を果たす。「ナイチンゲール」では、長い戦争の終わったスカイズエッジ星で、ある戦争犯罪人を逮捕するため元軍人たちが集められ軌道上の宇宙船に赴くが、その船は失われたと思われていた病院船であり不吉な伝説を伴っていた。無事侵入できたと思ったら眠っていたはずの病院船の奥の活動が見られ、ついには追い込まれ捕獲されたメンバーは奇怪な姿で解放される。巻末の「銀河北極」はSFマガジン掲載時に読んでいたが、再読してもやはり長大な時間スケールが末尾にふさわしい。旅客星間船イロンデル号のイラベル船長は海賊船に襲われて奪われた積荷と裏切り者の副長を追って、長い追跡行を始める。相対論的効果で4万年に及ぶ追跡行の末には、人類宇宙が緑機虫の進化した緑の波に追われる様が描写され、タイトルどおり銀河北極方面に逃げ延びる姿が描かれる。まだまだこの宇宙史では書けることがありそうなので続く作品を期待したい。
(「銀河北極」アレステア・レナルズ著、中原尚哉訳、ハヤカワ文庫SF1645、2007年12月発行、ISBN978-4-15-011645-3)
クライブ・カッスラーの第3のシリーズ<オレゴン・ファイル>の第4作、といってもこのシリーズでは日本初紹介となる。シリーズ名の由来となるのは保安業務を請け負う私企業<コーポレーション>所有の(一見)貨物船オレゴン号。しかし見かけは貨物船でも磁気流体力学機関を使ったウォータージェット推進で競艇ボートに匹敵する速度を出し、30mmガトリング砲・魚雷・巡航ミサイルをはじめとする各種武装や潜水艇・ヘリコプターなども搭載した<コーポレーション>の移動司令部を兼ねたスーパーシップである。指揮を執るのは元CIA局員のファン・ロドリゲス・カブリーヨ。この巻の時点では前回のエピソードで失った足の代わりに義足をつけながらも派手なアクションもこなすヒーローでもある。環境テロを仕掛ける悪役を相手に、誘拐された研究所所長が監禁されている砂漠の収容所<悪魔のオアシス>への奪回作戦や、油田基地での敵軍隊相手の奮戦などが描かれる。最近のカッスラーは年齢のせいか、誰かと組んで共作の形での作品が多く、このシリーズでもジャック・ダブラルと組んでいるが、この相棒の説明はあとがきにも全く書かれていない(ソニーマガジンズのヴィレッジブックスで訳が出ているようだが)。ただ、最近のピットシリーズや<NUMA ファイル>シリーズと比べると、オレゴン号の秘密装備の活躍やカブリーヨの派手なアクションが往年のピットシリーズのようで楽しめるものになっている。現在の3シリーズの中では一番面白いのではないだろうか。NUMA長官としてのピットもちょっとだけ登場するサービスもあるし。ソフトバンク文庫NVからという予期しないところからの登場だったが既存作品は順次紹介されるそうなので見逃さないように楽しみに待ちたい。
(「遭難船のダイヤを追え!(上・下)」クライブ・カッスラー&ジャック・ダブラル著、黒原敏行訳、ソフトバンク文庫NV、2007年10月発行、ISBN978-4-7973-4131-7,978-4-7973-4132-3)
日本作家特集。海猫沢めろん「アリスの心臓」は、<五次元とエロ本>テーマのインナースペースオペラとの触れ込みどおりの内容だが結構面白く読める。樺山三英「一九八四年」は、タイトルどおりオーウェルの生涯をたどって1984年の誕生の経緯を綴るもの、谷崎由依「夕暮れ畑」は、死者の墓の上に建つ団地で育った少女カリコの異色幻想譚、ということだがどちらもピンと来なかった。小林泰三「三OO万」は王同士の肉体戦を尊ぶ異星人とのコンタクトを描くものだがさすがに面白い。神林長平「雪風が飛ぶ空」は雪風第三部の前半の終了部だそうだ。やはりまとめて読みたいものだが今年中盤から毎号連載とのこと。他に特集関係では「日本SF全集・総解説」刊行記念で鏡明×牧眞冶×日下三蔵の対談、<異形コレクション>10周年記念の井上雅彦インタヴュー、渡邉英徳による SecondLife とSF作家の係りの紹介。連載陣は夢枕獏「小角の城」<第15回>、椎名誠のエッセイ<第6回>、梶尾真治「エデンの防人」は怨讐星域の第6話。第19回SFマガジン読者賞は海外部門がイアン・マクドナルド「ジンの花嫁」、これはヒューゴー賞も取ってるし異論はないんだけど他になかったかなあ。国内部門は伊藤計劃「The Indifference Engine」、これも面白かったので異論はないが結構悲惨な話なんだよなあ。イラストレーターは佳嶋氏、残念ながら4月号の表紙と言われてもすぐには思い浮かばなかった。映画公開記念で「アイ・アム・レジェンド」の誌上公開があるので原作が読みたくなったが実家なんだよなあ。
競作特集とのことで、イラスト先行小説として森山由海のイラストを元に神林長平は「自・我・像」でドゥウェルという言語工藤装置による人工<自我>発生装置による仮想空間と現実の混交を描き、山田正紀は「コンセスター」で赤外線感知眼の人体実験と視覚情報が何者かにコントロールされている不気味さを描く。もうひとつの競作は日本SF新人賞作家たちの競作。木立嶺「馬と車」は、ある時点で地球から切り離された日本で車が普及しなかった理由を描く。八杉将司「うつろなテレポーター」は、量子コンピュータ搭載の社会シミュレータによる演算空間の人工高次認知体のトレスがテレポーテーションの実施試験により失われた同僚のミリョンを探して無数の並行宇宙を探す話。せつないストーリーとかすかな希望を匂わす結末が良。青木和「たたりつき」は、恋人に祟りを理由に結婚を断られたと相談を受けた主人公が祟りの正体を暴く話。祟りの原因のマモリサマの行く末を暗示させる結末が救いがあって良。坂本康宏「超鋼戦士カメダキクオ最後の戦い」は、謎の人型生命体ガログールに対処するためパワードスーツの超鋼アーマーをつけて戦う超鋼戦士の亀田だが妻とは別居状態で引退勧告にさらされる状況の中、娘を人質にとった最強のガログールとの最後の戦いに挑む話。ストーリーは定番どおりに進み結末も定番どおりだが、それが逆にスッキリして良。北國浩二「靄の中」は、人にとりつく侵略者を発見・駆除する組織のリーと坂口がとある農場で取り付かれた人を処分するが、その過程で別のタイプの侵略者の存在まで発覚してしまうというホラー色の入った話。不気味な結末も良。タタツシンイチ「親友」は、最新型アンドロイドという触れ込みで我が家に来たタクだが失敗ばかりして引越し当日の今日もおつかいに行って行方不明になる。ずっと引きこもりだった長男の瞬が意を決して探しに行くうちにタクの機能の真相に思い当たり感動を呼ぶ。総じて新人賞作家の競作は面白いものが多く収穫である。連載陣では、山本弘「宇宙の中心のウェンズデイ」では、<播種者>の残した<ムーン・タブレット>の解読のために地球を訪れたフェブラリーが恐るべき真相に行き着くまでを描き、連載はこれで終了し書き下ろしで単行本化だそうである。文庫で出して欲しいなあ。小路幸也「蘆野原偲郷」は猫になる妻がかわいい。古橋秀之「百万光年のちょっと先」はちょっといい話のショートショート。森岡浩之「優しい煉獄」は秘書のアンドロイドのユリアの辞任騒動の顛末で一区切り。恩田陸「愚かな薔薇」はやっと吸血鬼譚の真相に近づいてきた。夢枕獏「黄石公の犬」と火浦功「なお火星のプリンセス・リローデッド」はもう少しペースがあがらんものか。週刊誌ならともかく年2?3回しか出ない雑誌でこれではなあ。梶尾真治の<クロノス・ジョウンター>シリーズ「栗塚哲矢の軌跡」は感動させる時間SF。このシリーズは読んでなかったけど良かった。他には厦門潤「PHANTASIE MANIE」はテラフォームの過程で人魚型生物が残された惑星の調査員を描く短編マンガ。なかせよしみは<エリカさんの狂発明日記>シリーズの4コママンガとと単発の「TECH MATES」。大橋博之「少年SFの系譜」はボーイズライフを扱っている。今号の SF Japan は近くの本屋に全然見当たらず入手に困った。そんなに部数が少ないのかなあ。
(「SF Japan 2007 WINTER」、徳間書店、2007年12月発行、ISDN978-4-19-862439-2)
