「クアドラ」で敵の手に落ちたロックの救出に向かったスーミンたちだが警戒厳重なICBM基地からの脱出は困難を極め、執拗な敵の追撃をロックとスーミンの超能力を駆使してかろうじてかわし何とか逃げ延びる。その間に湖将軍の命で暗躍する楊邦雄の狙撃によりT島の総裁は暗殺され、C国を四分する内戦の戦況は変化し、”クアドラ”の崩壊を懸念する劉参謀総長により、ロックたちは特区区長の護衛を依頼される。区長の暗殺を狙う楊との戦いでジェイクとサヒブの犠牲の上にようやく楊を始末することができたが、湖将軍の進言により中央は核ミサイルの発射を決行し1発目は人民宇宙軍の補給所に落ち、劉参謀総長たちは全滅する。続く2発目がS市郊外に落ちたことで内戦は終結に向かうが、最後に始末されそうになり逃れた湖将軍によって3発目が発射され、阻止に向かったロックやスーミンの前でリデルも銃弾に倒れる。ロックとスーミンは協力して3発目を何とかスティンガーで打ち落とすことに成功し、戦乱は多くの犠牲の末に終結した。このロックシリーズ最初期のエピソードはまだまだ話として続けられそうだが、とりあえずは一休みのようでOURsの連載はずっと後の時代のエスパーハンターとの戦いに移っている。いつかスーミンとの続編を期待したいところではある。
(「超人ロック・クアドラII」聖悠紀著、少年画報社ヤングキングコミックス779、2007年6月発行、ISBN978-4-7859-2779-0)
2007年6月アーカイブ
前半の表題作では、白色矮星コボルトを転送したすきに太陽系に侵入したレティクロン配下の艦隊のうちパリクツァ艦隊の第二ヴェシルであるエイモントプの<ピノル>だけが太陽系艦隊の追撃を逃れてかつて海王星にひそかに作られていた秘密基地である雷神基地に潜伏することに成功する。機会を狙って太陽系艦隊のうち水星近辺の実験艦隊のウルトラ戦艦に転送機で侵入することに成功した超重族だがミュータント部隊に撃退される。ローダン暗殺の試みも失敗した結果、コボルトによる恒星転送機のことをレティクロンに伝える作戦に変更してテンポラルロックからの脱出をはかったエイモントプだが寸前のところでミュータントが艦を爆破して阻止に成功する。後半の「ハイパー空間をこじあけて」では、恒星転送機のテストのために太陽系側の転送ポイントに実験コマンドを乗せた<ディノ55EXP>が突入するが、転送は失敗し、<ディノ55EXP>は5次元ハイパー空間からの謎のエネルギー流入により不可思議な膨張現象に見舞われる。事態を打開するためグッキーたちがラール艦に侵入・占拠し<ディノ55EXP>に向かった。ラール人科学者からの情報により事故の原因らしきものを想定したグッキーたちは事態の解消に挑み、何とか成功して<ディノ55EXP>はアルキ=トリトランスに出現した。
(「雷神基地(ペリーローダン335)」H.G.フランシス&クラーク・ダールトン著、五十嵐洋訳、ハヤカワ文庫SF1609、2007年5月発行、ISBN978-4-15-011609-5)
簡単にストーリーをまとめられるような本ではない。ある時「イベント」が起こって、宇宙が砕け散って無数の宇宙に分かれた。その経緯やその後の世界での様々な様相を短編としてまとめたもの、というように言うこともできるかもしれないが、それではとても言い尽くせないものが多い。(人類の生み出した?)膨大な演算力を誇る巨大知性体群が色々なエピソードに登場するし、さらに上位次元の超越知性体も登場する。前半の Neaside のはじめの方から後半の Farside の終わりの方まで、同名のキャラクター(リタとかジェイムズとか)が登場するが、それが1本の小説らしいストーリーラインを形成するかと言えばそうでもない。巨大知性体が八丁堀のダンナとハチを演じる話などはSFファンのバカ話に通じるし、4次元球の太陽が通過するときの情景や、乱れた時空間の戦闘場面のようなハードSF的な魅力敵な場面がちりばめれる一方で、謎のカラクリ箱やA?Z理論、鯰文書同時消失事件、入り組んだ時空構造を否定する医者の話、などの数理的なエピソードを見ると、帯にある神林長平の「文芸で表現するオイラーの等式」だとか、飛浩隆の「無数のソラリスの海の会話」といった紹介でしか表現しようがないのかもしれない。個人的な好みで言えば、面白い面はあるけど読後の満足感で言えば、混乱の方が大きく、数理的SFとしては「ディアスポラ」や「オロモルフ号」の方が好みである、といったあたりか。
(「Self-Reference ENGINE」円城塔著、ハヤカワJコレクション、2007年5月発行、ISBN978-4-15-208821-5)
第1巻で防護服以外のすべてを失って軌道エレベータのふもとに降り立ったエンジニアのファエトンの孤軍奮闘の姿を描く第2巻。セイロンのタライマナーで同じ追放人の身分である船上人たちと出会ったファエトンは頭書の危機を乗り越え彼らの労働力を利用して<喜びのフェニックス号>を取り戻すべく交渉を始める。味方として妻ダフネ・プライムのコピーであるダフネが現れるが、彼女は”自殺”したプライムと違い献身的にファエトンを助けようとする。(これに対するファエトンの煮え切らない態度はこの時代の人間の特質を考えないとなかなか理解できないでイライラする。)ファエトンの想定する”敵”である<沈黙の普遍>のナッシング・ソフォテクが本当に存在するのかどうかは終盤まで明かされず、ファエトンの疑心暗記かとも思わせるがついに”敵”がキバを剥いた時に援軍として現れたのはこの時代の”軍”を代表するアトキンズであった。(このあたりの姿を現した”敵”とのやり取りはなかなかカッコいい。)海王星人との交渉の末、ついに<喜びのフェニックス号>に乗船したファエトンがこの恒星船を駆使して”敵”に向かっていくのが暗示されて次巻へ続く。第1巻では世界設定を読み込むのに時間がかかり苦労したが、この巻は結構すらすら読めて楽しめた。
(「ゴールデンエイジ2フェニックスの飛翔」ジョン・C・ライト著、日暮雅通訳、ハヤカワ文庫SF1612、2007年5月発行、ISBN978-4-15-011612-5)
巻頭の編集長インタヴューは女優の城谷小夜子。耳で聞く名作・小松左京作品集CDなどもやっている人である。高齋正のコラムは「TTのコースの記念碑」マン島でMVに乗って死んだレス・グレアムにまつわる話など。新潮社社内弁護士の村瀬拓男氏は「わたしの「SF的」遍歴」として新潮社での電子出版事業や著作権に絡んで弁護士になった経緯などを語っている。小説としては高橋桐夫氏「サバイバル学園」は、不登校の生徒のための塾教師ヒゲもじゃ熊男は齋藤レイジと名乗り、生徒達のいじめられた告白を聞き、自分は未来から来たから未来にいいことがあると諭す。その後立ち直って生徒の1人は首相になり、生まれた孫の名前をレイジと名づけた、というちょっといい小話。ワールドコン記念で1970年のクラークとの対談「未来社会への展望」と、田中顕生氏による英訳版"Sleeping, Traveling and Dreaming"。「さよならジュピター」のミステリーと題した下村健寿氏の「1984「スターウォーズ」に潰された映画」は発表時期に恵まれず不遇の扱いを受ける「デューン」と「さよならジュピター」を対比させて論じ面白い。他には小松左京研究会のページで小松左京著「黄河」追っかけ旅・青蔵公路バス行くを永瀬佳江氏。
(「小松左京マガジン第26号」、イオ発行、角川春樹事務所発売、2007年4月発行、ISBN978-4-7584-1083-0)
ワールドコン特集I。ノヴェレット部門候補のマイク・レズニック「きみのすべてを」は自ら命を投げ出すような行為を繰り返す複数の事件には、彼らが元兵士である惑星で作戦行動をしたという共通項があり、気づいた宇宙軍警備隊員が上司の忠告も聞かず赴いたその星で出会ったことは、という話。同じくマイクル・F・フリン「夜明け、夕焼け、大地の色」は千人近い乗客を乗せて出港したフェリーが奇妙な霧の中に消えた事件を、目撃者や残された家族などの視点からルポルタージュ形式で綴った作品。ショート・ストーリー部門候補のロバート・リード「八つのエピソード」は不評のうちに打ち切られたSFTVドラマ「小さな世界の侵略」はソフトが発売されると不思議な科学的事実との一致がカルト的人気を呼ぶが製作者の正体は杳として知れず、という話。ブルース・マカリスター「同類」は12歳の少年が殺人の依頼のために接触した異星人アンタロウ星人は凄腕の殺し屋だったが、少年と異形のエイリアンの間には奇妙な交流が交わされることとなる。同じくティム・プラット「見果てぬ夢」は映画についての愛情では誰にも負けないと自負するピートがある日入ったビデオショップで見つけたのは有名な作品の微妙に異なるストーリーのバージョンであった、という話。並行世界のビデオショップの店員の女性との交流を描いた後味の良い作品。次号でも引き続きノヴェレットとショートストーリーの訳載だそうである。他にはJコレクション、円城塔「Self-Reference ENGINE」発刊を記念して作者インタヴューと第3章の掲載。連載は朝松健「魔京」<第7回>、田中啓文「罪火大戦ジャン・ゴーレ」<第30回>、谷甲州「千年曲輪」<霊峰の門第十話>など。
これもずいぶん前に読んでたんだが。ほとんどは既に読んでいるものだった。表題作は各国コロニーが勢力争いを続ける近未来の火星で戦闘に従事するサイボーグ兵士ジローの話で長編「クリスタルサイレンス」の前日譚に当たる。「宇宙塵」掲載後「SFマガジン」に改稿掲載された。カルト教団による人質監禁事件の解決に黒猫の視覚の遠隔取得を利用しようとする視覚研究者の苦闘を描く「猫の天使」はアンソロジー「2001」に載っていたもの。乳児をウェットウェアとして利用する違法な人工知性体が追っ手を逃れようとする「星に願いを ピノキオ2076」は「クリスタルサイレンス」の後日談ともいえるもので「SF Japan」誌掲載。宇宙で生きるために最適な体に進化した遠未来の人類の姿を描く「コスモノーティス」は「SFマガジン」に初出。巻末の「星窪」は書き下ろしで奄美の画家が見たという隕石の記憶をめぐるエピソードで長編「ハイドゥナン」にも通じる話。いずれも上質のハードSFであり、満足した。
(「レフト・アローン」藤崎慎吾著、ハヤカワ文庫JA838、2006年2月発行、ISBN4-15-030838-1)
1,2月に連続で出てすぐに読んでいたんだけど記録してなかった。第四集では、日本神話のサルタヒコ伝説とモアイ像、鳥による伝染病を結びつけた「サルタヒコ計画」、地元・九州は宗像に立ち寄った教授が、かつての鉄の町、北九州と宇佐八幡宮の地底神社の謎に挑む「鉄の帝国」、イギリス人の”魔女”イザベラと共に安達が原の鬼婆の伝説に挑む「黒塚」の3話。第五集では、宗像教授と縁のある海女とその娘の女性ダイバーに道成寺の安珍・清姫の伝説をからめた「道成寺」、いくつもの時代の遺跡が重なって出てくる地と隕石クレーターの謎をからめた「複合遺跡」、虫に魅せられた昆虫学研究室の女性院生と教授の交流を堤中納言物語の虫めづる姫君にからめた「虫めづる姫君」の3話。ビッグコミックでの連載は順調に進んでいるようなので、第六集が出るのも近いに違いない。
(「宗像教授異考録・第四集、第五集」、星野之宣著、小学館ビッグコミックススペシャル、2007年1、2月発行、ISBN978-4-09-181019-9、978-4-09-181020-5)
ホールドマンのネビュラ受賞作。昨今の長大な作品になれていると、あまりにもストレートに話が進んでしまう。球状星団M22の惑星で進化した生物は長い道筋の果てに不老不死で何にでも擬態できる能力を手に入れた。そのうちの1体が宇宙船に乗って地球に飛来し太平洋に飛び込んだ。習性に従って周囲の環境に順応し擬態を続けるうちに自分がどこから来たのかの記憶がうすらぎ100万年もの時がたった。地表を人類が支配してしばし時間のたった20世紀はじめに至り、地上にあがって人類に擬態したその生物<変わり子>は様々な人に擬態しながら人類のことを学んでいった。2019年、1万メートルの深海で明らかに人工物と思われる物体が発見され、海洋工学の専門家ラッセルは海軍少将ジャック・ハリバートンに誘われそのサルベージに駆り出される。あらゆる分析を拒む物体を攻略しようとするチームだが成果は上がらない。現在は女性形態を取っている<変わり子>は物体と自らの出自との関連をかぎつけてチームに加わろうし、ラッセルと好意を持ち合うようになるが、身分の詐称をCIAにかぎつけられ危ういところで脱出する羽目になる。一方、やはり太古に地球に飛来していた別の擬態能力を持った生物<カメレオン>も物体を狙っていた。物体が唯一示した反応が「歌」であることに気付いた<変わり子>は別の女性の形態を取って再びラッセルに近づく。いよいよ物体のもとに集結した<変わり子>、ラッセルと<カメレオン>は能力の限りをつくして戦い、自分の分身とも言える物体とコミュニケートできた<変わり子>が<カメレオン>を封じ込め、愛するようになっていたラッセルを伴って宇宙に旅立って行く。全体の長さのせいかもしれないが、クライマックスであっさりと決着がついてしまい、都合よく愛した人類を体構造の変換をして連れて行く結末は、ちょっとうまくいきすぎの感がある。確かに私の好みにも合うし、すっきりして面白く読めるんだけど賞を取るほどなんだろうかともちょっと思う。ホールドマンは未訳の Forever Free もあることだし、次が楽しみではある。
(「擬態 カムフラージュ」ジョー・ホールドマン著、金子司訳、ハヤカワ海外SFノヴェルズ、2007年5月発行、ISBN978-4-15-208818-5)
