2007年5月アーカイブ

前半の表題作では、銀河中心星域の恒星転送機アルキ・トリトランスに派遣さたアトラン率いる超弩級戦艦<カリオストロ>だが、調整ステーションの調査を始めたラス・ツバイらは黴のような謎の有機体が蔓延していることを知る。調整ステーションの機能を損なわずに黴を殲滅する手段が見つからず苦悩する面々の中でシェーデレーアは殲滅スーツを着用してステーションに赴く作戦を提案し、結果的にはそのおかげで黴は完全に除去され調整ステーションが使えるようになる。この事件の裏にははるか昔に謎の存在カリブソによって殲滅スーツ捜査網に監視者としてそのステーションに送り込まれたカミケン人スコペインの末路があった。以前のエピソードにちらっと出てきたカリブソだがハンドブックを読むと将来重要な役割を果たすキャラのようだ。後半の「太陽ベビー作戦」では、銀河中心星域の恒星三角転送機から白色矮星コボルトを太陽系に転送し、太陽とコボルトの2恒星による転送機に仕立てていずれATGフィールドを突破してくるはずのラール人に対する対抗措置としようという作戦が開始される。コボルトの転送のためにはATGフィールドを一時的に解除しなければならず、その隙を狙っていたレティクロン指揮下の混成部隊が太陽系艦隊と激しい戦闘を繰り広げる。予定時刻をすぎてもコボルトは出現せずあせるローダンたちだがSVE艦がさっとうする前になんとかコボルトが出現し太陽系は再びATGフィールドに包まれた。

(「カリブソの監視者(ペリーローダン334)」ウィリアム・フォルツ&H.G.エーヴェルス著、嶋田洋一訳、ハヤカワ文庫SF1605、2007年4月発行、ISBN978-4-15-011605-7)

SFマガジン2007年6月号

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異色作家特集?、今回は英米以外。ロシアのミハイル・ヴェレル「パリに行きたい」は、ずっとパリに行きたいと望んでいた男が停年まぎわにやっとチャンスをものにしてパリに行くが、そこで見たものは書割のパリだったという皮肉な話。同じくロシアのヴァジム・シェフネル「沈黙のすみれ」は、事故で口が聞けなくなった女を理想の聞き上手と思って結婚したが、あることがきっかけで口が聞けるようになってみると耐えられないくらいに喋り捲るようになり、という話。中国の夏茄「カルメン」は、越してきた少女は宇宙のあちこちで噂の踊り娘と同じ名前だったがひどくおとなしく主人公の少女だけが仲良くなったが、少女と一緒の中年男の監視を逃れて解放日の祭りで突然もう一人のカルメンとなり踊りだす。メキシコのロベルト・ロペス・モレーノ「秘密」は、マヤ文明の研究に没頭する研究者が書物や偶像だらけの部屋で空想にふけっていた時、現れた男は宇宙の謎を解いたマヤ族の秘密の城塞都市に案内するが、という話。総じて前号の特集よりも楽しめた。連載陣は夢枕獏「小角の城」<第11回>、田中啓文「罪火大戦ジャン・ゴーレ」<第29回>、山田正紀「イリュミナシオン」<第10回>。第2回日本SF評論賞の優秀賞受賞作、海老原豊「グレッグ・イーガンとスパイラル・ダンスを」は「適切な愛」「祈りの海」「しあわせの理由」を題材に様々な二項対立が揺れ動き再構築されることを分析する。後はプリースト「奇術師」の映画化である「プレステージ」の特集、非英語圏SF映画の人形劇「ストリングス」とアニメ「ルネッサンス」の紹介、「グアルディア」文庫化とその前日譚「ラ・イストリア」刊行記念の仁木稔特集など。

あちこちで取り上げられ絶賛の嵐なので読んでみた。例えばSFマガジン6月号では風野春樹(69年生)の日本SFの書評欄でノンフィクションなのに取り上げられ、大森望(61年生)のコラムでも取り上げられ、巻末の執筆者紹介でも鈴木力(71年生)が、といった具合。感想は年の近い大森望あたりの言ってることがやっぱり近いかな。70年代に大学SF研にいた者としては、一般教養として当然、星新一のそのころまでに出てた作品の大部分は読んでいるはずだが、星新一のショートショートはすでに空気のようにあるのが当たり前のような感じで、小松左京あたりの長編の読みごたえや筒井康隆の毒のある作品の方が印象に残ったりしていた。もっと前の50年代末から60年代にかけての日本SFの草創期において、星新一の果たした役割や、最初にSFの代表として世に認められたのが星新一だったことの意味などが、改めて浮き彫りにされて、そうだったのか、という感想を持つ箇所がたびたびある。80年代、特に1001篇を達成した後の現役作家としてのこだわりや賞へのこだわりや、それにからんだ作家としての苦しみや悲しみがにじみ出ているところは涙なくしては読めない。優れたノンフィクション作家によって明らかにされた大学の大先輩でもあるSF作家の生涯は示唆に富み、500ページを超える大部をあっという間に読み終えさせた。石原藤夫博士による「SF書籍データベース」(1946-2000)で作者・星新一で検索すると5033ほどヒットする(このデータベースは書籍も1項目、書籍中の各作品も1項目で収められているので書籍項目を除いて各作品を数え上げた数字)。さらに重複作品を落とし、英語への翻訳作品を落とし、エッセイ類を落とすと、残ったのは1205篇であった。この本でもあるとおり古い作品に何度も手を入れているようで題名の漢字なども変更されている例が多いため、数え間違いもあると思われるが、それでも1000を優に超えている。PR誌などに載っただけでデータベースに載ってないものもあると思われるので実数はさらに増えるだろう。願わくばこの本にも記述のある幻のリンデン月報の作品などの残された謎が解明される時が来ることを願う。

(「星新一1001話をつくった人」最相葉月著、新潮社、2007年3月発行、ISBN978-4-10-459802-1)

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