2007年4月アーカイブ

宇宙家族ノベヤマ

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仕事ひとすじの会社人間だった野辺山雄一だが、8歳の息子・翔太がメッセンジャーDNAの持ち主であることが判明し、一家で先進異星人とコンタクトするために宇宙に出ることになる。宇宙に満ちている宇宙電波を受信した人類は「宇宙はDNAで満ちている」で始まるメッセージの中にスターゲートの位置や宇宙に送り出す人間の資格としてのメッセンジャーDNAのことを発見したのだ。国際協力の名の下で宇宙技術の公開を受け宇宙への切符を手にした日本は先進技術とその優先研究権を得るために野辺山一家を乗せたイカルガ号を発進させたのだ。最初はバラバラだった一家だが、ぐれていた14歳の娘・美里もイカルガの航行の仕事に能力を発揮し、次第に家族の絆を取り戻す。最初の目的地ネッカルは謎の滅亡をとげていた。2番目の目的地ルゴウフは魔法のようなテクノロジーを持っているが、現在は機械的な進歩を停め、母星と協調する道を取っていた。ルゴウフの代表ラフクフラクフラは強い核力の秘密の提供を提示するが隊長の本郷は試されていると感じそれを受け取らない。3番目に出会ったパントンカの恒星船は乗員のDNAと代理ロボットだけを乗せた船だった。翔太との暖かい交流はロボットのマルルにも何か影響を与えたようだ。4番目の目的地のスターゲートを抜けたイカルガは小惑星に妨害されるが計略でそれを突破しメラク星系の惑星グララガンの宇宙都市に招待される。歓待を受けるが何か違和感を覚える本城たちが突き止めたのは、主星メラクの変動により300年前に文明を失ったグアラガンが先祖の遺産の解明を続けていることだった。機略に長けた地球人に協力をせまるグアラガンを何とか振り切って第4の目的地に向かったイカルガは謎の宇宙船の攻撃を受け、あわやというところでチクチルン文化圏の宇宙船に助けられる。代表のナンボッコの話によれば襲ってきたのはチクチルンが惑星開発用に作った生物から進化したドルガモスであり、倦怠を防ぐためにあえて完全に滅ぼそうとしてないということだった。チクチルンの宇宙船で歓待を受けた本城たちはナンボッコから、1万年前に侵略を繰り返していたギラングルという文明が短期間にルゴウフによって滅ぼされ、その理由がギラングルが侵略しようとしていた惑星モンカにいたメッセンジャーの存在だという話を聞かされる。バラエティに富んだ異星人とコンタクトを続けるうちに次第に明らかになるメッセンジャーの意味。現在は続きが止まっているようだが是非続きを描き完結して欲しいものである。

(「宇宙家族ノベヤマ」岡崎二郎著、小学館ビッグコミックス、2007年4月発行、ISBN978-4-09-181089-2)

移動都市

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60分戦争で文明が荒廃した未来で移動しながら互いに狩ったり狩られたりする都市間自然淘汰主義の世界、というプリースト「逆転世界」みたいな設定の世界を背景に主人公の少年と少女の冒険を描く。あとがきにはブリッシュの<宇宙都市>にも言及があるけどあくまで蒸気機関ベースで地上を走り回るので「逆転世界」の方が近そうだ。移動都市ロンドンの史学ギルド見習いのトムは、ギルド長の命を狙った少女ヘスターを助けて都市から取り残されてしまい、へスターと共に旅をする羽目になる。小都市に拾われ売られそうになったり、飛行船の女船長に助けられ空中都市エアヘイヴンを訪ねたり、海賊都市に行ったりと、へスターの追っ手である<復活者>シュライクから逃れて旅を続け、反移動都市同盟の拠点バトモンフ・ゴンパへたどり着く。一方トムの尊敬するギルド長ヴァレンタインは実は著名な冒険家の裏にロンドン市長と結託した陰謀の影を隠していたことが判明する。ヴァレンタインの暗躍でロンドンは前世界の超兵器<メデューサ>を復活させることに成功、敵対都市パンツァーシュタット・バイロイトを粉砕してしまう。ロンドンの次なる目標はバトモンフ・ゴンパ。惨劇を回避しようとするヴァレンタインの娘キャサリンやトムとヘスターたちによりかろうじて<メデューサ>は蓄積エネルギーの暴走で破壊されるが、キャサリンやヴァレンタインらは事件の中で死亡してしまい、トムとへスターはロンドンを後にして行くことになる。宮崎アニメに通じるとの評もあるが、確かに移動都市のちょっとレトロな雰囲気や飛行船による旅の浮遊感にそうした点を感じないでもないが、主要登場人物は次々に死んでいき(飛行船の女船長アナやキャサリンの男友達ベヴィスなども)、この巻での主題の1つであるロンドンは上部が破壊されて唖然となる結末など、ちょっと違うように感じたけど。四部作だそうなので続きを待つか(火星シリーズみたいに最後まで出ないんじゃないだろうな)。

(「移動都市」フィリップ・リーヴ著、安野玲訳、創元SF文庫、2006年9月発行、ISBN4-488-72301-2)

サライ17

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サライの過去の記憶への旅は続く。研究所では神薙博士と紗莉の人工授精を開始し、人工子宮から9人のサライが生まれた。一方、自らの子宮を使って代理母となった研究員イリナ(後の御所代)からも3ヶ月遅れて10番目(ジェースイッチ)のサライが誕生した。9人のサライたちは早くから複素念動を発揮し自分達より後に生まれたチビの10番目のサライをいじめようとするが、10番目のサライは逆位相の念動を発揮してとっさに対抗する。イリナは10番目のサライと接するうちに、この子だけが人工子宮組と違って元のサライの記憶まで受け継いでいることに気づく。10番目のサライは世話役のイエティに対する接し方も違い、自分をかばって大怪我をしたイエティのカチュグを(本来なら処分されるところを)入院治療させる。しかしそれ以外のところではイエティたちは下等労働力として虐げられており、不満を煽る研究員ダーフーのクスリによる陰謀もあって密かに反抗の時を狙うようになる。そして、イリナが母の危篤の報に研究所を離れた時に、カチュグが主任に殺され、それを知らぬままに医療区からの廃棄物を焼却炉に投げ込んだカチュグの恋人のヤマルがカチュグの死体が燃えていくのを見て、ついに反乱の火蓋が切って落とされる。ジスクールを知り尽くしているイエティたちが研究所を抑えていく一方、9人のサライたちはイエティ狩をはじめる。裏切り者のダーフー、KGBなどの思惑がからむ中、10番目のサライの運命はいかに。

(「サライ17」、柴田昌弘著、少年画報社YK(YONG KING)コミックス、2007年5月発行、ISBN978-4-7859-2762-2)

反逆者の月

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月探査中のコリン・マッキンタイア少佐は突然未確認物体に牽引ビームで捕獲され月面の地下に拉致される。ダハクと名乗る相手は5万年前に太陽系にとどまることを余儀なくされ月に取って代わっていた戦列艦の艦載コンピュータだった。七千万年もの昔から人類の帝国は恐るべき敵アチュルタニの侵攻を受けており、月の正体は5万年前に存在した第四帝国がアチュルタニを迎え撃つために派遣した巨大宇宙戦艦だというのだ。しかし5万年前に機関長だったアヌ大佐が反乱を起こし艦長の措置で艦は封鎖され、反乱者と乗組員は共に地球に逃れるしかなかった。今またアチュルタニ接近の警報を受け、ダハクはコリン少佐を艦長に迎え入れることで事態の打開を図ろうとした。艦長として肉体強化を施されたコリンが地球に潜入して判明したのは、アヌ大佐は現在も肉体をとりかえつつ裏からいくつもの政府に食い込んで支配力を発揮していることだった。一方で、コリンは反乱直後に自らを悔いアヌ大佐に逆らって対抗組織を作っていたホルスたちと接触することでアヌ大佐への対抗策を練ることとなる。圧倒的な勢力を誇るアヌ大佐一味に対しホルスたちも各国の軍部に慎重にコネを作り上げており、敵の拠点への強襲を成功させたコリンたちは、ついにアヌ大佐の本拠地である南極への潜入作戦を遂行する。何とか作戦を成功させアヌ大佐の組織を壊滅させたコリンとホルスの娘タニ・ジルタニスたちはダハクに乗り込みアチュルタニの接近に対抗すべく発進していった。地球上の事件のケリがついていよいよ大宇宙へというとこで終わっているために続きが読みたいものである(第三部まで出ているそうなので)。

(「反逆者の月」デイヴィッド・ウェーバー著、中村仁美訳、ハヤカワ文庫SF1601、2007年2月発行、ISBN978-4-15-011601-9)

MOONLIGHT MILE 14

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無事宇宙に上がった吾郎だが、米宇宙軍と中国宇宙軍の戦闘が勃発、米戦闘艦八ッセルホフが被弾し救難信号が発せられる。戦闘によるデブリの群れを抜けてレスキューに向かうロストマンと吾郎は久しぶりに協力して任務にあたる。途中デブリに被弾しロストマンが流されるが、GDL砲を推進力に変える非常手段によって八ッセルホフを何とかデブリの群れからロストマンの流された方向に脱出させた吾郎は、ロストマンの救助にも成功し、米宇宙軍の軍人たちからの信頼と感謝を勝ち取る。と同時にムーンチャイルドが無事誕生したことを知らされることになった。一方で中国宇宙船団はルナネクサス上空に向かい風雲急を告げる展開となっている。WOWOWで3月3日からテレビアニメも始まっているそうだが、あいにくWOWOWが見られる環境が近くにないので見ることができていない。

(「MONNLIGHT MILE14」太田垣康男著、小学館ビッグコミックス、2007年4月発行、ISBN978-4-09-181077-9)

前半の「火山泥棒」では、惑星ゴプストル=マルのクモル大学では18年に及ぶ実験が実を結びレトルト人間フランク・クモル=パルが目覚めるところだった。しかし人類にとり貴重なクモル金属を産するクモル火山をラール人の手から守るために火山ごと移設しようと太陽系帝国の艦隊テンダーが到着する。クモル金属を持ち去られるとレトルト人間の実験が失敗するとしてクモル大学のパイルシェパモ学長らがテンダー部隊に抵抗するうちにラール人の手先となったレティクロンの艦が到着してしまう。危機にあたってパモらは火山基部にあった古代遺跡の機械でエネルギー生物を操りSVE艦を打ち破った。もはや火山の移設は避けられなくなりテンダーに載せられたクモル火山だがレトルト人間のパモはヴィンクラン人に拒否され、火山だけが惑星ガイアに到着する。後半の表題作では、ブルの元に届いた資料により大群禍の前に銀河中枢部にあるレムール遺跡を調査に飛び立ったエクスプローラ船<EX?8977>は三恒星転送機を発見するが、大群により痴呆化したまま転送機により銀河間の重星デュオに転送される。正気に戻った乗組員たちは逃亡レムール人の惑星新レムールに着陸する。いったんは銀河に戻った<EX?8977>だが痴呆化は避けられず、かろうじて設定していた自動装置により再び新レムールに戻ることとなった。

(「恒星三角形の呪縛(ペリーローダン333)」H.G.フランシス&ハンス・クナイフェル著、青山茜・林啓子訳、ハヤカワ文庫SF1602、2007年3月発行、ISBN978-4-15-011602-6)

老人と宇宙

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75歳以上の男女しか入隊を認めないコロニー防衛軍に入ったジョン・ペリーの成長譚。この時代、人類は銀河の各惑星に植民しており異星種族との植民地の奪い合いで熾烈な戦争が起きているが、こうした状況は地球にいる人々にはほとんど知らされていない。入隊したペリーはコロニー軍のテクノロジーにより若く改造強化された肉体に意識を移され、新米軍人として徹底的に鍛え上げられる。訓練を終えたペリーは過酷な戦場に身を投じるが、惑星コーラルを襲ったララエィ族を撃退するために向かった宇宙船は予測できないはずのスキップ航法の出現点で待ち伏せ攻撃を受けペリーも重傷を負う。ペリーを救ったのは特殊部隊であるゴースト部隊だったが、その中に死んだはずの妻キャシーの顔を見つけてしまう。スキップ航法の出現点予測デバイスの出所は近隣の異星人で唯一白色矮星さえ操作してしまうテクノロジーを持つコンスー族でありララエィ族は単にコンスーから装置を買ったにすぎないことが判明し、コーラルと共に装置も奪回する作戦が実行される。その中でキャシーと見えたのはキャシーのDNA情報を利用した肉体に最初から意識を移されたゴースト部隊の女性ジェーンであることが判明し、戦いに戻ったペリーはいつかジェーンの元を訪れる予感を持つ。軍に入った主人公が鍛えられていく過程など確かに「宇宙の戦士」の現代版と言える内容になっている。同じ宇宙を舞台にした別作品もあるようなのでそちらも訳して欲しいものである。切りのいいSF文庫1600番でもある。

(「老人と宇宙」ジョン・スコルジー著、内田昌之訳、ハヤカワ文庫SF1600、2007年2月発行、ISBN978-4-15-011600-2)

私家版魚類図譜

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鳥類に続く諸星大二郎の博物誌第2弾。内容は諸星版人魚姫「深海人魚姫」、嵐で遭難した男が助けられた女の住む島は鮫人の来る島だったという「鮫人」、いつとも知れぬ未来の地底都市の少年たちが生きている魚を求めて地底の海に遭遇する「魚が来た!」、女子高生の梓が喫茶店・渚のマスターから聞いた魚の学校に行って講習を受けているうちに鯨の中に取り込まれ、という「魚の学校」、魚になった夢を見るようになった男が次第に現実に違和感を覚えて、という「魚の夢を見る男」、冒頭の「深海人魚姫」の完結編にあたる「深海に還る」、最後に書き下ろしのギャグ、まんがのネタを探して深海をうろつくウナギを描く「ネタウナギ」、というラインアップ。冒頭と末尾を飾る人魚姫の話がカラーページも再現されていて良し。図鑑かと勘違いしていたが図譜でした。あとがきによると昆虫や動物までやる気はないそうです。

(「私家版魚類図譜」諸星大二郎著、講談社モーニングKCDX、2278、2007年3月発行、ISBN978-4-06-372278-9)

SF Japan 2007 SPRING

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日本SF大賞and新人賞特集。大賞は萩尾望都「バルバラ異界」読んでなかったので、これを機会に読もうと思ったが出張中に寄ったコミックカフェには1,2巻しかなかったので結末まで読めてません。新人賞は樺山三英「ジャン=ジャックの自意識の場合」こちらはいつものように徳間から単行本で出るのか?この号には受賞第一作として短編「跋」が載っているがイマイチぴんとこなかった。他には梶尾真治「ぬばたまガーディアン」はエマノンシリーズの1篇で、宇宙に出現する膿のような存在”邪魔”が日本の1辺地に出現することを察した善側の異生命体が地球人の体を借りて駆除しようとする場面に地球の記憶として同席を求められたエマノンを描く。小川一水「グラスハートが割れないようには、主人公の高校生の彼女・小枝が、想うことで増殖するというグラスハートにはまって、という話。小路幸也「蘆野原偲郷」は不思議なものへの対処能力を持つ蘆野原家の系譜の主人公とときどき猫になるその妻とのほのぼのとしたお話。梅村崇「月のない夜に」は異次元の魔物を退治する能力を持つ主人公だが、合コンの席でも他の人には見えない魔物を戦う羽目になり、という話。森青花「うさぎがぴょん!」は拾い物から裏世界に巻き込まれうさぎに脳を移植された女の子があこがれの彼氏に拾ってもらう話(イラスト:粟岳高弘)。大塚英志「海辺の教室」は17歳になると「間引き」のための戦争に刈り出される世界で「間引き」から逃れて海辺の教室にたどり着いた3人の少年少女を描く。平山夢明「ダラス・12」は人質をとって立てこもる犯人に交渉人として対するダラスを描く。連載陣はコミックスがわかつきめぐみ「夜のしっぽ2」が霊になった女の子とそれが見える犬の話と、なかせよしみ「エリカさんの狂発明日記」はマッドサイエンスものの4コマ。小説では森岡浩之「優しい煉獄」はVRNWS(電子的な死後の世界)で拳銃を盗まれた刑事の依頼を受けた探偵の話。古橋秀之「百万光年のちょっと先」は不死身の兵士と悪魔のエピソード「憂鬱な不死身の兵隊」と3機のガード衛星を連れたお嬢様と彼女にちょっかいを出す男の子のエピソード「三倍返しの衛星」の2つのショートショート。恩田陸「愚かな薔薇」、火浦功「火星のプリンセス」、夢枕獏「闇狩り師」はどれも短すぎ、季刊ペースでこれじゃなあ。コラムは大橋博之「少年SFの系譜」が山川惣冶の少年ケニヤを扱っていてなつかしい。昔実家にあって読んだ気がするがもうないんだろうなあ。

(「SF Japan 2007 SPRING」、徳間書店2007年3月発行、ISBN978-4-19-862299-2)

オリュンポス(上・下)

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トロイア戦争を戦う英雄たちが神々に叛旗を翻し戦闘モラヴェックたちの加勢を得て、戦いの帰趨はいかに、というところで終わった「イリアム」の完結編。神々と英雄たちの戦いは続いているが神々同士、人間同士での諍いの種はくすぶりヘラの陰謀でゼウスが眠らされてしまい、アキレウスが自ら殺したアマゾンの長ペンテシレイアを愛する呪いを掛けられてしまい、オリュンポス山でヘファイストスに遭遇しペンテシレイアを生き返らせるために苦難の道を歩むこととなる。一方、地球ではヴォイニックスが人間を襲うようになりアーディスホールに立てこもり戦おうとするが、頼みのオデュッセウスが瀕死の重傷を追い、彼を救うために<マチュピチュの金門>に向かったハーマンは、そこでエアリエルに拉致されプロスペローと共にエッフェルバーン(いくつものエッフェル塔を結んだロープウェイ)の旅に連れていかれ、チョモランマ頂上に至る。そこで若いサヴィの姿をした最後のポストヒューマン・モイラが眠っており、プロスペローに半ば強制されるようにモイラを目覚めさせ<晶玉の室>で知識の強制注入を受ける。そこから<分海道>の旅に出されたハーマンは大戦時代の戦略潜水艦に眠る大量のブラックホール爆弾を発見する。パリの母親の様子を見に行ったディーマンはセテボスの出現によりパリが青い氷に覆われたことを知り反射的にセテボスの卵を盗んでアーディスホールに帰還する。卵の効果でかろうじてヴォイニックスを退けるディーマンたちだが、いよいよ最後という時にモラヴェックたちの介入が間に合う。量子擾乱の原因が地球にあるとみなしたマーンムートたちモラヴェックが地球に潜入し、放射能に犯され死の寸前にあるハーマンを救い出しアーディスホールにかけつけたのだった。オリュンポスでは不死身ゆえに死ねないアキレウスがヘファイストスと共にタルタロスに赴きデモゴルゴンの助けを借りてゼウスを倒し、アキレウスとペンテシレイアを除いたイリアムの住人たちは地球へと転移させられる。地球軌道上では復活したオデュッセウスが軌道上の魔女シコラックスを訪れ、イリアムからきた若い方のオデュッセウスを殺し、ファックスノードを復活させ、自分と共に旅立つようシコラックスを説得する。一応話しの結末をつけているようだが、セテボスとプロスペローの関係とか、シコラックスとオデュセウスの因縁とか、ヴォイニックスやキャリバンの正体とか、表立って現れない<静寂>とか、数々の謎は残ったままである。これは是非とも「オデュッセウス」をネタにした続編を書いてもらわねば。

(「オリュンポス(上・下)」ダン・シモンズ著、酒井昭伸訳、ハヤカワ海外SFノヴェルズ、2007年3月発行、ISBN978-4-15-208803-1,978-4-15-208804-8)

SFマガジン2007年5月号

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異色作家特集I。マイクル・ビショップ「合作」は1つの体に2つの頭を持ち一度には1人ずつが体を操る兄弟の心の内を描く。ハーヴェイ・ジェイコブズ「バラと手袋」は品物の収集に強い執着を示す旧友を昔交換した玩具を取り戻そうと訪ねた男の話。J.G.バラード「認識」はある夏の日の夜訪れた小人と女の小さなサーカスをめぐる話。チャールズ・ボーモント「ウィリー・ワシントンの犯罪」はいわれのない罪で投獄された黒人男性が神を信じ無実を信じて絞首刑が失敗し釈放されるが、、、という話。あまり趣味にあう小説はないなあ。他にはクリストファー・コンロン「カリフォルニアの魔術師たち」は50?60年代にチャールズ・ボーモントを中心にカリフォルニアで活躍したSF作家グループを描きアンソロジー"California Sorcery"の序文を飾ったエッセイ。あと<異色作家短編集>全作品レヴューの1。連載陣では朝松健「魔京」第6回、田中啓文「罪火大戦ジャン・ゴーレ」第28回、梶尾真治「ハッピーエンド」怨讐星域第5話。梶尾真治のはここで一休みらしい。第2回日本SF評論賞の選考会と受賞作である礒部剛喜「国民の創世?<第三次世界大戦>後における<宇宙の戦士>の再読」が収録されている。91年まで続いた<冷戦>を第三次世界大戦と位置づけ、その終了後の現代において宇宙の戦士を再読し、この作品が「人形つかい」の延長線上にあり軍国主義礼賛の作品でないことを論じる。

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