2007年1月アーカイブ

時の眼

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クラーク&バクスターによる<タイム・オデッセイ>の第1卷。著者達によれば<スペース・オデッセイ>に対する直角編(=同様の前提を異なる方向から検討する)だそうだ。2037年、国連平和軍所属のビセサ・ダットたちは北西フロンティア(パキスタンとアフガニスタン国境地帯)をヘリで哨戒中、不可解な乱気流に巻き込まれ不時着するが、そこにいたのは1885年の英領インド軍だった。同時刻に軌道上のソユーズ宇宙船にいたセーブルたちは突然の通信途絶のあと食糧・水が尽きかけて運を天にまかせて大気圏突入しモンゴルに不時着するが、そこにいたのは13世紀のチンギス・ハンの軍勢だった。<断絶>と呼ばれる異変により世界は過去200万年間の様々な時代の断片がつぎはぎされたパッチワークと化していたのだ。各地に浮かぶ謎の銀色の球体<眼>を調べるうちにバビロンに謎を解く鍵がある可能性がわかってくる。かくしてバビロンを目指すアレクサンドロス大王とチンギス・ハンの両軍勢は北西フロンティアで激突する。クライマックスの戦闘は、ソユーズ宇宙船の生き残りで情報を漏らした廉で耳眼を潰されて閉じ込められていたコーリャの隠し持った爆弾によりチンギス・ハンが死亡し、モンゴル軍が後退した後、アレクサンドロス王たちがバビロンを占拠してキリがつくが、<眼>の謎については最後に魁種族によるものとの短い説明があるだけである。バビロンの<眼>によって2037年に戻されたビセサと太陽の異変を仄めかして1巻は終わっている。2巻は太陽の異変にからむハードSFとのことなので楽しみである。バクスターの<マニフォールド>シリーズとも関係あるそうなので、そちらも出してもらいたいものだ。

(「時の眼」サーサー・C・クラーク&スティブン・バクスター著、中村融訳、ハヤカワ海外SFノヴェルズ、2006年12月発行、ISBN4-15-208783-8)

SFマガジン2007年2月号

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日本作家特集。小林泰三「盗まれた昨日」は短期記憶を失い携帯型メモリに記憶を頼るようになった世界で起こった事件を描く。田中哲弥「羊山羊」は突然人格が変わる急性一過性遺伝子変異の奇病<羊山羊>にかかった部下の妻をめぐっての騒動を描く。森奈津子「陽根流離譚」は男性性器型の異星人と遭遇したジェンダー研の女子会員が遭遇する騒動を描く。藤田雅矢「口紅桜」は鬼の死体が埋まると伝えられる名木<口紅桜>の救済をめぐる話。小説以外ではアキバロボット運動会での山本弘講演と立花隆・妹尾堅一郎・早川浩の対談。特集以外の読切ではバクスター「避難所」は<マニフォールド>シリーズの番外編で異星人の船<バブル>で星海の彼方へ旅する羽目になった男の話。宇宙船に乗せられてどことも知れぬ所に連れて行かれるのはポールのゲイトウェイですな。連載陣は夢枕獏「小角の城」第9回は真田幸村と玄鬼とのかかわりの話。田中啓文「罪火大戦ジャン・ゴーレ」第25回は魂摘出を免れたピンクが死にかけているログロ人からガタやんの正体を聞く。梶尾真治「ノアズ・アーク」第4回は地球から脱出した宇宙船の中でのエピソード。他には冲方丁と小川一水のトークショウレポートや第2回日本SF評論賞結果(作品の掲載は後ほどの予定)など。

ストロスのシンギュラリティ・スカイと同じ世界を舞台にした作品。続編というわけではないが、同じ登場人物が出てくる少し後の話。植民惑星モスコウが(人為的な)超新星爆発で消滅し、報復艦隊が敵対していた星系に発進する。さらなる惨事を防ぐために前作にも登場した国連査察官レイチェルと宇宙船技師マーティンのカップルが活躍する。本作の主人公格はモスコウ近くのポータルステーション、オールド・ニューファンドランド・フォーの少女ウェンズデイ。彼女はメール友達のハーマンの指示で謎の書類を隠した結果、執拗な追跡を受けるはめになる。ハーマンは超AIエシャトンがマーティンに指示を出した時使った名前であった。ウェンズデイの乗った宇宙船の寄港地ではモスコウゆかりの大使たちの連続殺人が起こっていた。これらの犯罪の影にはエシャトンを排除して人類の再構築をもくろむ謎の全体主義集団リマスタードの暗躍があった。記者のフランクと意気投合し一緒に行動するウェンズデイだが、リマスタードの陰謀は進行し、乗っていた宇宙船は乗っ取られてしまう。なんとかリマスタードの首領から逃れたウェンズデイだが乗組員としてもぐりこんでいた殺し屋ステフィが正体を現し、報復艦隊の阻止が不能になる危機に直面する。最後に持っていた爆弾で何とか危機は回避されるが、リマスタードの脅威は地球にも伸びていることがエピローグで判明する。シンギュラリティ・スカイに比べると逃亡者と追っ手の追跡劇と事件の真相解明というミステリ仕立ての話で、比較的わかりやすいまともなSFになっている。SFマガジンの書評とは反対にこちらの方が読みやすく好みに合った。

(「アイアン・サンライズ」チャールズ・ストロス著、金子浩訳、ハヤカワ文庫SF1593、2006年12月発行、ISBN4-15-011593-1)

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