2006年11月アーカイブ

ボクのセカイをまもるヒトシリーズの番外編。本編の合間にはさまるエピソード集ということでハルヒシリーズで長編の合間に挟まる短編みたいなものか。第1、2章は巽の有人の石丸文一郎が綾羽にライバル心を燃やし挑戦する話。第1章では体力測定で挑戦するが50mを1秒フラットで駆け抜ける<妖精>に普通の人間がかなうわけもなく完敗した石丸は修行の旅に出る。第2章では修行から帰って来た石丸がリングで綾羽に再挑戦する。短期間の修行にしては信じられないくらいの体技を身に着けた石丸は第1ラウンドを互角に戦ったがちょっと本気を出した綾羽に第2ラウンドノックアウトされ、再度修行に出る。第3章ではいかにもサービスのプールで水着のエピソード。綾羽が感じた視線を追ってみると盗撮を防ぐために張っていた新人教師だったというオチで特に危機には至らない。第4章は家庭科の時間に調理に挑戦する綾羽だが、<妖精>界のスパイスをかけた料理を食べた猫子の様子に異変が。実際にはパソコン教室のネットで発生した原始的な電子生命を感じた猫子がコンタクトに熱中していただけだが、そうと知らない面々は綾羽の料理のせいだと決めてかかる。本編と違って危機がせまるわけでもなく、気軽に読める。

(「ボクのセカイをまもるヒトex」谷川流著、メディアワークス電撃文庫、2006年11月発行、ISBN4-8402-3615-1)

前半の表題作では、”科学者”の宇宙船がラール人のSVE艦のハイパー空間からのエネルギー注入を断つ手段の開発に成功する。それを見届けて地球に帰還したローダンの元に七種族のヘトスへの抵抗組織のリーダー、ロクティン・パルが現れる。SVE艦の破壊にローダンがからんでいると見て訪れたのだ。しかしパルの乗艦はラール人に発見され破壊されてしまう。パルを送り届けるためアルクトゥルスに赴いたローダンたちの前に直径千キロのヘトス級巨大SVE艦が出現するが”科学者”艦との協力でそれを打ち破り、パルは無事仲間の艦に収容して去ることができた。後半の「暗黒星雲への飛行」では、ローダンたちはロクティン・パルたちの抵抗組織のメンバーであるプロヴコナーの秘密基地がある暗黒星雲を訪れて同盟を組もうとする。ポイント・アレグロまたはプロヴコナーの組織にちなんでプロヴコン・ファイウストと呼ばれる暗黒星雲内は絶えず変動するエネルギー嵐により案内人がない限り侵入した船は破壊されてしまう。案内人としてパルがよこしたヴィンクラン人の案内で途中まで侵入したローダンの旗艦マルコポーロだが、ハルト戦争のころに迫害されたレムール人の子孫であるヴィンクラン人はトロトの姿を見て、行方をくらましてしまう。破壊寸前の艦に連絡してきたテクヘターというヴィンクラン人から分かれた一派の案内によりローダンたちは何とか基地惑星プロヴコン・ファウストに到着する。報酬として搭載艦を得たテクヘターたちはしかし封印されていた武器を使用しようとして自爆してしまう。

(「アルクトゥルス事件(ペリーローダン329)」クルト・マール著、増田久美子訳、ハヤカワ文庫SF1588、2006年11月発行、ISBN4-15-011588-5)

前半の表題作では、ついにアトランがラール人に捕らえられてしまう。技術力で上回るラール人にはミュータントを投入してもアトラン奪回は難しい。裁判にかけられれば死刑は免れ得ないし、銀河系第一ヘトランとしてラール人に表向き協力せざるをえないローダンにとっては死刑の執行をさせられることも確実となる。ダントンの発言から逆に原始的な手法で立ち向かうしかないと決断したローダンは唯一生き残っている現役の古典的な奇術師である大宇宙のチャンことアルパル・ゴロンコンを徴用し、アトランそっくりのアンドロイドと本人を奇術ですりかえる作戦に出る。かろうじて作戦は成功し、細胞活性装置をなくし肉体崩壊する様を模倣したアンドロイドを見てラール人もアトランの死亡を信じ、アトランは脱出できた。後半の「秘密保持者」では、アトラン生存は厳重に秘密にされたためオラーナ・セストレもローダンがアトランの処刑をしたと非難する。何とかしようと画策したアトランやグッキーによってオラーナは真相を知り、ローダンと結婚することを決める。一方、アトランの脱出を助けたゴロンコンは報酬に細胞活性装置を要求するが受け入れられないことを不満とし逃亡を計る。かつてZGU(中央銀河ユニオン)の工作員だったゴロンコンはラール人に取り入ろうとして失敗しZGUの秘密ステーションに逃げ込むが、アトランたちの急襲でゴロンコンは死亡し、かろうじて秘密は守られる。アトラン救出に大きな貢献をしたはずのキャラクターをこんなにあっけなく殺していいものかと思うがローダンシリーズにはままあることでもある。

(「地球最後の奇術師(ペリーローダン328)」ウィリアム・フォルツ&クラーク・ダールトン著、天沼春樹訳、ハヤカワ文庫SF1583、2006年10月発行、ISBN4-15-011583-4)

待望のマルドゥック・スクランブルの前日譚。大森望(だったか?)が評していたとおり、スターウォーズの第1期(エピソード4?6)に対する第2期(エピソード1?3)でダースベイダーが誕生するまでの前日譚を描いていたように、スクランブルで敵方のO9担当官として出ているボイルドが、ウフコックとパートナーを成していたころとその後どのように虚無に落ち袂を分かつことになったか、が描かれる。戦地で友軍への誤爆を犯したボイルドは肉体改造のため軍研究所に収容されるが約束の地(グラウンドゼロ)への墜落のビジョンに悩まされる。重力制御(フロート)と不眠活動可能な肉体を与えられたボイルドは知能を持つ万能兵器であり無垢の良心たるネズミのウフコックというパートナーを得て一時の救済を得る。しかし戦争が終結し軍事機密たる彼らを抹殺すべく襲撃者が研究所を襲う。襲撃者を撃退したボイルドたちに研究所を統べる3博士は3つの提案をする、即ちチャールズ博士の提案する研究所を閉鎖し閉じた楽園で研究を続ける案とサラノイ博士の提案するシザース(人格共有者)となって民間転用する案、そしてクリストファー博士の提案する民間で自らの有用性を証明するという提案。ボイルドを含む12人はクリストファー博士と共に外に出る決断をする。赴いたマルドゥック市でクリストファーが提案するO9法案=新たな証人保護システムに従事したボイルドたちは各人の特殊能力で任務を遂行する。そのうち都市政財界・法曹界を巻き込む巨大陰謀の中、ギャングの世代間抗争に端を発した拷問殺人の捜査をするうちに、彼らと同様の特殊な肉体改造を受けた闇の眷属カトル・カールと遭遇し壮絶なバトルが展開される。労組対立を利用して権力拡大を狙うオクトーバー一族の影がちらつく中、仲間を失いながらも大部分のカトル・カールを殲滅したO9メンバーだが、捕らえた敵の一員のカメラマンの証言をきっかけとして、残ったメンバーたちも次々と斃れていってしまう。最後に残ったのはボイルド、ウフコック、イースター博士だが、O9の存続のためにウフコックを眠らせて関係者をすべて始末しようとしたボイルドに対し、目覚めたウフコックは自分が濫用されたことを悟り自閉してしまう。ウフコック、イースターと袂を分かち、すべての黒幕を知ったボイルドは、カトル・カールの残ったメンバーとの最終対決を制し、シザースの一員として黒幕を倒す機会がくるまでウフコックたちと別にO9に従事することとなる。最後のエピローグではスクランブル後についに目的を遂げるボイルドたちの姿も描かれる。スクランブルではバロットの姿に救いが感じられたが、ヴェロシティでは敵味方ともにどんどん死んでいく壮絶な戦いが描かれ続け、どんどん落ちていくボイルドが印象的である。テーマから行って当然だがエピローグがかろうじて救いになっている。

(「マルドゥック・ヴェロシティ 1,2,3」冲方丁著、ハヤカワ文庫JA869,870,871、2006年11月発行、ISBN4-15-030869-1,4-15-030870-5,4-15-030871-3)

シャーロック・ホームズものの書き下ろしSFパロディ短編集。第1部過去のホームズは原典のホームズと同時代を舞台にしたものを集めてある。メンバーはエフィンジャー、(マーク)ボーン、バートン&カポビアンコ、マッキンタイア、(ローラ)レズニック、アーロンスン、ロビンスン、トムゼン、(ウェズレイ)スミス、デチャンシー、ゼルデス、ルース、シメル、テトリック。ツングースカの謎とからめたバートン&カポビアンコ「ロシアの墓標」、吸血鬼もののレズニック(編者の娘)「行方不明の棺」、異星人の事件を解決するアーロンスン「第二のスカーフ」、コピーマシンが出てくるルース「数の勝利」、バベッジもののテトリック「未来の計算機」あたりが面白い。第2部現在のホームズは舞台が現代となる。キャスパー、ガードナー、ジェロルド、ラッシュの作品が納めてあるが、コンピュータ時代ならではのキャスパー「思考機械ホームズ」あたりが面白い。第3部未来のホームズでは、ニマーシャイム、ロバーツ、シャーマン、ルイス、マルツバーグ、ソウヤーが集録されている。このあたりがやっぱりSFらしくて面白い。ソフトウェアとしてのホームズを扱ったニマーシャイム「仮想空間の対決」、未来からホームズを頼ってくるロバーツ「時を越えた名探偵」、ホーカもののようなモノマネ異星人の話シャーマン「シュルロック族の遺物」、AIのホームズとイルカの警部補のルイス「不法滞在エイリアン事件」といったところ。第4部死後のホームズにはシムナーとレズニックが集録されている。編者が定評のあるレズニック&グリーンバーグということで全体に楽しんで読めた。

(「シャーロック・ホームズのSF大冒険(上・下)」マイク・レズニック&マーティン・H・グリーンバーグ編、日暮雅通監訳、河出文庫、2006年9月発行、ISBN4-309-46277-4,4-309-46278-2)

前号に引き続き日本沈没関連の内容が多い。巻頭は映画「日本沈没」リメイク裏話として日本SF大会のずんこんで行われた小松・樋口真嗣の特別対談(司会:堺三保)、下村健寿氏の研究論文「「日本沈没」と「復活の日」の海外での宣伝戦略とメディアの反応」は力作。ロフト・プラスワンで行われた「「日本沈没」をめぐる果てしなきトークショウ」(2006/07/06)は小松・谷甲州・樋口真嗣・笹本祐一・松浦晋也・乙部順子の面々、一部ずんこんの対談と内容がかぶっていたのは仕方ないか。リバイバル小説として「ハーモニカ」を掲載、60年代の作品とのことだが、すでに世代間のギャップをコンピュータ言語の進化の早いこととからめて題材にしているところはさすがである。コラムでは高斎正「ローライフレックスとトライアンフ・スピードツイン」が二眼レフとバーチカルツインの源流を探って面白い。石毛弓「「小松思想」とわたし」はイギリス留学中のエピソードを小松思想とからめた一文。リバイバル集録としては澤田芳郎・中西秀彦「因子分析で探る小松左京の作品世界」は80年代初等のPCの出始めのころの分析。自作を語るは短編小説(70年代後半?80年代前半)で大学時代に対応しているので結構読んでいる部分であった。小松左京研究会のページは永瀬佳江「西安旅行記「渭水のほとりにたってきた」。

(「小松左京マガジン第24号」、イオ発行、角川春樹事務所発売、2006年10月発行、ISBN4-7584-1074-7)

ゴールデン.エイジ1

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新人ライトの3部作の第1巻。3分の1でもかなり分厚いが昨今の長大な作品に慣れるとそうでもないか。舞台ははるかな未来。この未来史では人類の時代は、人類が動物との違いを認識し言語を発達させた<第1精神構造紀>、文字の発達と農業革命の<第2精神構造紀>(古代?近世)、産業革命後の科学文明発達期の<第3精神構造紀>、神経システムへの光電子工学的な干渉が可能になった<第4精神構造紀>(この時期に第一次不死化が失敗する)、バイオテクノロジーにより頭脳の構造の再編成が可能になった<第5精神構造紀>(3つの改変脳モデル、ウォーロック、インヴァリアント、セレベリンと無改変のベーシックに分化)、特異点(シンギュラリティ)を迎え超知性を持つ光電子工学的自己認識体ソフォテクが出現した<第6精神構造紀>、電子的な不死を達成しコピーを生み出せるようになった<第7精神構造紀>とたどってきている。<黄金の普遍>(ゴールデンエキュメン)と呼ばれるこの文明は空前の繁栄を謳歌していたが、その中で新たな千年紀を祝う仮面舞踏会が地球で開かれている。大規模プロジェクトに参加してきたエンジニアのファエトンは3000年の生涯のうち250年分の記憶が封印されていることを知らされる。失われた記憶を追い求めるファエトンは、かつて<黄金の普遍>が攻撃された時の犯人が自分であると知らされ、詳細を知ろうとすれば追放されると告げられる。妻ダフネの反対を押し切り、一家の支援ソフォテクのラダマンチュスと共に調査を続行するファエトンだが、事故で死んだ父へリオンの遺産をめぐって元老院に呼び出され大審問会にたたされ、ついには追放されて地球の軌道エレベータの基部セイロンに脱出せざるをえなくなる。謎の解明とファエトンの運命は2巻以降に持ち越されている。長大な歴史を踏まえた壮大な設定になっているが人類の活動圏がほぼ太陽系に限定されていることもあり空間的にはあまり広がりがない。このあたりが2巻以降どう発展するのか?

(「ゴールデン・エイジ1?幻覚のラビリンス」ジョン・C・ライト著、日暮雅通訳、ハヤカワ文庫SF1584、2006年10月発行、ISBN4-15-011585-0)

ミッションスクール

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学園ラヴストーリーと銘打ってあるが中身はさすが田中哲弥。表題作は学園一の美少女はMI6の工作員で国連事務総長直属の諜報員の主人公とテロ防止任務を開始する。「ポルターガイスト」は学園で恥ずかしいことを口にしようとすると大音声になる現象が多発し、ついには巨大理事長まで現れて騒動になる。「「ステイショナリー・クエスト」は使い込んだ備品の追加調達のために向かった総務部の中へのたびはハチャメチャなファンタジーの冒険のようだった。「フォクシーガール」はSFマガジンで既読だが主人公の美少女がキツネにかまれて地球の平和を守るヒロインになってしまい大騒動になる。「スクーリング・インンフェルノ」は唯一の書き下ろしで、超巨大豪華学府の聖メトロン学園が沈み始めて大騒動。どの作品も美少女がらみのエロ場面が満載のアンソロジーとなっている。

(「ミッションスクール」田中啓弥著、ハヤカワ文庫JA850、2006年5月発行、ISBN4-15-030850-0)

M.G.H.

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第1回日本SF新人賞の受賞作。この新人賞の受賞作は単行本で出るので何となく買いそびれてしまって、今回文庫化されたのでやっと読めた。従姉妹の森鷹舞衣の計略で偽装結婚をして日本初の多目的宇宙ステーション「白鳳」に到着した若き研究者、鷲見崎凌は不可解な事件に遭遇する。無重量空間にもかかわらずまるで高所から墜落したかのような状態の死体を発見したのだ。事故か殺人か、謎の真相を探ろうとしていた2人の前で第2の事件まで起こってしまう。閉鎖されたステーション内の客室で、真空暴露したかのような死亡事故が起きたのだ。2つの事件の関連は何か、凌の推理により真相が究明される。凌には、かつて母親にかけられた嫌疑を高校生の時に探偵ばりに解決した一方で心の傷を負ったり、舞衣の姉の鳴美が事故でなくなったことをひきずっていたりという過去があり、舞衣にも病弱だった高校まで唯一の近しい異性だった凌と亡くなった姉との関係などのしがらみがあったり、という人間関係の背景が織り込まれていたり、インターネットの進化系である電脳空間であるミラーワールドやそこで活動するエージェントプログラムであるアプリカントなどの魅力的な小道具がちりばめられ、面白く読めた。表題のM.G,H.は第一の殺人事件の殺人方法が mgh=mv^2/2 と関係があることからつけられたようだ。エピローグで凌のマンションに転がり込んでくる舞衣とのやりとりにニヤリとさせられる読後感がさわやかである。

(「M.G.H. 楽園の鏡像」三雲岳斗著、徳間デュアル文庫、2006年6月発行、ISBN4-19-905160-0)

餓蟇に取り付かれた早苗を助けるため白井完を魔犬から守る毒島たちだが、白井はついに魔犬に襲われ瀕死の重傷を負う。餓蟇を早苗から白井に取り付かせれば助かるという鳳介の提案がうまく行き、餓蟇は白井の体内に納まるが、そのおかげで復活した白井に逃げられてしまう。寿海老師は自分の寿命を悟り、鳳介に飛狗の夜血を託して往生する。一方、卑弥呼の墓の場所がわかったとして鹿島天竜に話を持ちかけた川口は天竜と共に白井狂風に会いに行っていた。東北では金犬家の長老、草凪王をはじめ熊猪、早虎などの当主、高野山の円寂、腐鬼の渦紋・座鬼、佐久間玄斎、鬼奈村雅泉などが拉致された鬼奈村典子や金犬四郎の件をめぐって集まっていた。そこに表れた猿翁は座鬼との対決の後、この国をもう一度腐鬼一族の手に戻すという話をし、ケセンの主だったものの集まりに黒御所と共に表れると告げる。話の随所に唐へ渡る前後の空海と坂上田村麻呂のエピソードを交え、いよいよ物語の切りが見えてきたようだ。あと5年待たずに結末にたどりつくとの作者のあとがきである。巻末には夢枕獏の著書とコミック化された作品や関連書のリストがついている。

(「新・魔獣狩り10(空海編)」夢枕獏著、祥伝社 NON NOVEL、2006年11月発行、ISBN4-396-20822-7)

SF Japan, 2006 AUTUMN

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恩田陸の特集。新連載の「愚かな薔薇」は吸血鬼もの。萩尾望都との対談と、大人の読書会<特別編>として山田正紀・笠井潔と「常野物語」シリーズを題材にした対談。連載陣は清涼院流水「透明人間の告白」はテロリストの陰謀を防いだ諜報員の話、火浦功「まだ火星のプリンセス・リローデッド」は相変わらず遅々とした進行、夢枕獏「闇狩り師、黄石公の犬」(第14回)はいよいよ山き(漢字が出ん)との対決、森岡浩之「優しい煉獄?」電子的な死後の世界(VRNWS)の街角で拾った少年は記憶を失っていたという話、古橋秀之「百万光年のちょっと先」(第3回)はちょっといい小ネタ3題。宮部みゆき「ドリームバスター、時間鉱山」(Part2)は時間鉱山に入ったシェンたちのたどる探索行。単発として三雲岳斗「終末のガレキ」は引きこもりの男のところに現れた少女に地球人の唯一の生き残りと告げられてという話。矢崎存美「BLUE ROSE」は<ぶたぶた>シリーズの一遍で幸運を呼ぶぬいぐるみブルーローズの作者は実はという話。大塚英志「夏の教室」は17歳になった者は消えていく町で17歳を目前にした少年少女の話。コミックのなかせよしみ「エリカさんの狂発明日記」はマッドサイエンスものの4コマ。わかつきめぐみ「夜のしっぽ」は散歩中に成仏できない女の子の幽霊とであった犬のほのぼの話でなかなかよかった。コラムは池田憲章「プロジェクトブルー地球SOS」として小松崎茂のSFメカワールド。大橋博之「少年SFの系譜」は国土社と創作子どもSF全集。今号は近くの本屋で全然見かけなかったので福岡市の中心部の天神に行ってやっと買った。そんなに部数少ないのかなあ。大丈夫か?

(「SF Japan, 2006 AUTUMN」徳間書店、2006年10月発行、ISBN4-19-862229-9)

うっかりしてたら既に23号どころか次の24号まで出ていたのであわてて買った。この号と次の号は「日本沈没」の映画のリメイクに合わせて特集みたいになっている。コラムとして出版・メディアプロデューサーの高橋聡が「日本沈没」と出会った少年の頃の回想。オックスフォード大研究員の下村健寿が「映画化された小松左京作品が海外でどのように公開されてきたか」と題して詳細な分析。発見された「日本沈没」の生原稿の話(残念ながら巻頭を含め欠落があるそうだ)。コマケンの武藤・永瀬による映画「日本沈没」プレミアム試写会野次馬取材記、といったところ。他には巻頭インタヴューは喜味いとし、高斎正のコラムは「グランプリ・レース」の本当の由来。小説ではSF新人賞のタタツシンイチ「里子」は、貧しい地方武士の家に里子に出されていた少年に両親の迎えが来ることになって、というタイムトラベルもの。武庫川女子大の三宅宏司は「職人の世界とモノ作りの技術」論文。コマケンのページは生方賢一による「広島の空に思いを寄せて」。インフォメーションとして映画「日本沈没」関連商品の紹介。

(「小松左京マガジン第23号」、イオ発行・角川春樹事務所発売、2006年7月発行、ISBN4-7584-1071-2)

天涯の砦

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軌道ステーション<望天>で起こった破滅的な事故(これも一種の人災ということが触れられているが)で、吹き飛ばされた残骸とそれに食い込んだ月往還船<わかたけ>からなる構造体は漂流を開始した。多くの乗務員や客が死体と化した中で、構造体の各所に隔離されたわずかな気密区画には数人の生存者がいた。空気ダクトによる連絡を通して真空を相手にしたサバイバルが始まった。生き残っているのは癖のある人間ばかり。惑星間航行士の最終試験に落ちた軌道業務員、レスキューオペレータの職から事情で逃げてきた女性、在月都市<月京>での治療費をめぐるトラブルから脱出途中の医者、貧しい生い立ちから才能と努力で這い上がろうとする少年と、たまたま同室になった傍若無人な成金の娘。両親と離れ離れになった幼い兄妹。<わかたけ>ブリッジで唯一生き残った月の制御環境科学者と同じく機関室で生き残った機関士、といった具合。最初の危機は構造体が地球大気圏に落ちようとしているのが判明したことだった。かろうじて<わかたけ>の噴射でそれを回避できたが、月に向かった構造体は生き残りのいない残骸として救助隊から見放されようとしていた。はたして彼らは生き残ることができるのか。最後に生き残った各人に何らかの救いがほのめかされるエピローグは小川一水らしく、良い読後感を生んでいる。

(「天涯の砦」小川一水著、ハヤカワSFシリーズJコレクション、2006年8月発行、
ISBN4-15-208753-6)

トラックバックスパム(14万件以上)の処理に手間取ってしばらく滞っていた。
この号は秋のファンタジィ特集。特集の小説は、エレン・クレイギス「地下室の魔法」はいじわるな継母にいじめられる女の子の家に来た家政婦はささやかな魔法が使えるのだったという話、ジェフリイ・フォード「イーリン・オク伝」は少女が砂浜で拾った極小の本にはある妖精の一生は綴られていたという話、チャイナ・ミエヴィル「使い魔」はある魔法使いが召喚した使い魔は貪欲にすべてのものを吸収していくという話。他には大河ファンタジィの<氷と炎の歌><永遠の戦士エルリック><エレニア記&タムール記>のガイド。11月に連続出版されるマルドゥック・ヴェロシティの特集として Prologue50枚の掲載とインタヴュウ。浅倉久志セレクションのオールディス「1ドルで得られるもの」はある蓋然性世界の探訪記。連載では夢枕獏「小角の城」第8回は果心居士の説話の続き、田中啓文「罪火大戦ジャン・ゴーレ」第23回は新章<南総里美八犬伝>だそうだ、山田正紀「イリュミナシオン」第8回は意味(サンス)たる阿修羅の語る平城京での物語りだった。スタートレックや大河ファンタジィなどの翻訳者として活躍していた斉藤伯好さん(膨大なスタートレック、ありがとうございました)、とファンタジィなどの翻訳者として活躍していた浅羽莢子さんがどちらも亡くなられていたのは残念でした、謹んで哀悼の意を表します。

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