メモリー(上・下)

| コメント(0)

マイルズ・ヴォルコシガンシリーズの新刊。1つ前の「遺伝子の使命」(実はまだ読んでない)が傍流扱いなのに対し、本作はシリーズの本流のしかもかなり重要な転換点となっている。デンダリィ隊と救命作戦の最中に低温蘇生の後遺症を起こしあやうく救出すべき相手を殺しかけたマイルズはネイスミス提督という立場を失うのを恐れ機密保安庁への報告でこの件を隠すが、それが発覚しイリヤン長官から医療退役処分を宣言され帝国軍中尉の地位も失ってしまう。失意のマイルズの周囲でグレゴール帝の結婚話が持ち上がる最中、イリヤン長官が脳内チップの機能不全で暴れだすという異変が起きる。イリヤンに会い事態の確認をしようとするマイルズは機密保安庁に拒まれたため一計を案じグレゴール帝から臨時聴聞卿の地位を手に入れ、事実究明に乗り出す。このあたりはSFミステリの趣だが、わずかな手がかりからイリヤンの異変が仕組まれたことだと判明し、ついには犯人がイリヤンの後任のハローチ臨時長官であることを突き止めて事態を収拾する。最後に恋人エリ・クインとの結婚はかなわぬ状況だと確認したが、失ったネイスミス提督と帝国軍大尉の立場の代わりに聴聞卿としての新たな可能性をマイルズが見出したところで物語は終わる。マイルズが失意のどん底に落とされたり、イリヤンが脳内チップを失ったりという暗い面や後半も惑星内での犯人追跡劇というあまり派手な見せ場がない中で読ませる話に仕上げるビジョルドの腕はさすがである。

(「メモリー(上・下)」ロイス・マクマスター・ビジョルド著、小木曽絢子訳、創元SF文庫、2006年7月発行、ISBN4-488-69812-3,4-448-69813-1)

コメントする

2010年3月

  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31      

このブログ記事について

このページは、okが2006年9月29日 20:40に書いたブログ記事です。

ひとつ前のブログ記事は「サライ16」です。

次のブログ記事は「究極のサイエンス不老不死」です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。