2006年9月アーカイブ

メモリー(上・下)

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マイルズ・ヴォルコシガンシリーズの新刊。1つ前の「遺伝子の使命」(実はまだ読んでない)が傍流扱いなのに対し、本作はシリーズの本流のしかもかなり重要な転換点となっている。デンダリィ隊と救命作戦の最中に低温蘇生の後遺症を起こしあやうく救出すべき相手を殺しかけたマイルズはネイスミス提督という立場を失うのを恐れ機密保安庁への報告でこの件を隠すが、それが発覚しイリヤン長官から医療退役処分を宣言され帝国軍中尉の地位も失ってしまう。失意のマイルズの周囲でグレゴール帝の結婚話が持ち上がる最中、イリヤン長官が脳内チップの機能不全で暴れだすという異変が起きる。イリヤンに会い事態の確認をしようとするマイルズは機密保安庁に拒まれたため一計を案じグレゴール帝から臨時聴聞卿の地位を手に入れ、事実究明に乗り出す。このあたりはSFミステリの趣だが、わずかな手がかりからイリヤンの異変が仕組まれたことだと判明し、ついには犯人がイリヤンの後任のハローチ臨時長官であることを突き止めて事態を収拾する。最後に恋人エリ・クインとの結婚はかなわぬ状況だと確認したが、失ったネイスミス提督と帝国軍大尉の立場の代わりに聴聞卿としての新たな可能性をマイルズが見出したところで物語は終わる。マイルズが失意のどん底に落とされたり、イリヤンが脳内チップを失ったりという暗い面や後半も惑星内での犯人追跡劇というあまり派手な見せ場がない中で読ませる話に仕上げるビジョルドの腕はさすがである。

(「メモリー(上・下)」ロイス・マクマスター・ビジョルド著、小木曽絢子訳、創元SF文庫、2006年7月発行、ISBN4-488-69812-3,4-448-69813-1)

サライ16

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サライの過去の追憶が続く。天才的な発生生物学者の父と遺伝子工学のエキスパートの母は北の連邦の秘密研究所から脱出して日本に潜伏したが、連邦の魔手は日本にも伸びる。ついに事故を起こさせられ母が死亡しサライも重体となって神薙博士は研究所に戻らざるを得なくなる。しかしそこで見たものは母の肉体に接合されるべく首だけの姿で生きさせられているサライの姿であった。複素念動を発揮しあばれるサライの肉体をキーワードで止めた神薙博士はサライの姿を見て狂ってしまう。一方研究所の研究員イリナは生体兵器SARAI(Surpassing Armed Race Accumulate experience Infinitely=無限に経験値を積み上げる卓越せる戦士の種)の秘密を解明すべく自らの子宮を使うことを画策する。サライの誕生の秘密が次第に明かされ、物語も終局に近づいているのか?

(「サライ16」柴田昌弘著、YK(ヤングキング)コミックス、2006年10月発行、ISBN4-7859-2671-6)

前半の「ヘトッサの反乱者たち」では、ローダンたちのコルベットを破壊し退路を断とうとするラール人ホトレノル=タアクに対し、ラール人レジスタンスのロクティン=パルと連絡を取ったローダンたちはレジスタンスによる自らの誘拐を演じヘトッサから脱出する。潜伏先のパインテポルで原住民のキュクロプスがラール人の圧制に苦しむ姿を見たローダンたちは改めてラール人に対する反抗の意を強くして地球に向かう。後半の表題作では、ローダンの留守中の地球ではラール人に情報を流す工作員であるヘトス・インスペクターの存在が推測される。一方久しぶりに地球に帰還した化学関係企業TEMSYVの副社長ピロン・ボンヘロが社長のマルトラの自分に対する豹変した態度を怪しみ、それがきっかけでマルトラはヘトス・インスペクターが化けていたことが判明する。インスペクターの存在が証明され、TEMSYVの科学者ラモン・プリンツによりSVE船の探知手段が開発された矢先、ラール人のSVE船がひそかに地球に飛来し地球に帰還するローダンたちを捕らえようとする。先手を打ったローダンたちは一芝居うち、アトランだけが帰還しローダンたちはレジスタンスに捕らえられたふりを続けることとなった。

(「ヘトス・インスペクター(ペリーローダン326)」エルンスト・ヴルチェク&H.G.フランシス著、渡辺広佐訳、ハヤカワ文庫SF1574、2006年8月発行、ISBN4-15-011574-5)

最後の空想科学大戦

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4巻が出てから5年ぶりだそうだ。4巻で予告してあったとおり宇宙に出ての空想科学大戦である。冒頭、落下した隕石(昭和のなつかしのテレビ型)からズキンちゃんが助けを請う映像が流れる(スターウォーズのレイア姫ですな)。救助に向かうため宇宙船を打ち上げようとするが、アサハカ隊長のこだわりでヤマト型の宇宙船を打ち上げようとしてロケットが全長5300mにもなって大騒ぎ。宇宙に出て謎の行商人の訪問を受けたりしてるうちにヒーロー部隊(ウーターマン、仮名ライダー、カガクゴー)も何とか宇宙に出て追いつく。今回の敵役はおなじみモドキングたちと、宇宙一の成金ワルサー総統(このへんはまんまヤマトですな)。艦内に重力を発生させるために(銀河)鉄道を2台反対方向にワイヤーでつないで回転させて重力にしたり、刺客として送られてきたのがメーテルならぬ大酒飲みのメートルだったり、キングギドラみたいな宇宙怪獣がでてきたり、と大騒ぎして最後には敵の小惑星に突っ込んであわやというところでかろうじて脱出して帰還する。原作はおなじみ柳田理科雄だが、コミックスの方が気にならずに読める。ほんとにこれで最後かなあ。

(「最後の空想科学大戦」柳田理科雄原作、筆吉純一郎漫画、ジャイブ、2006年9月発行、ISBN4-86176-329-0)

カッスラーとケンプレコスのNUMAファイルシリーズ。今回はバスク人とエスキモーのある一族の過去にからめて、過激環境保護団体と遺伝子工学を使った陰謀を企む企業の戦いを描く。環境保護団体<海の番人>の船がコントロールを失って巡洋艦に激突した事件で救助劇を演じたオースチンとザバーラのチームだが、その裏には多国籍企業<オケアノス>の影があった。各地の漁場で従来種の魚が見られなくなり代わりに巨大な”悪魔の魚”が目撃される。その正体は<オケアノス>によって遺伝子改変されたサケで、<オケアノス>はこの新種の魚を各地に放流し漁獲を自らの手の納めようとしていた。この事件の裏にはバスク人にからむローランの秘宝や消えたナチス・ドイツの飛行船の謎がからみ、事件とすべての謎はオースチンとザバーラにトラウト夫妻も含んだNUMAの特殊班の活躍で解決される。このNUMAファイルシリーズはダークピットシリーズに比べると敵方や出てくる謎の規模が小さく、主人公が直面する危機のスケールも小さく感じられるし、最後もわりとあっさりと解決してしまう。カッスラーが老いたのか相方のケンプレコスによるものなのか、そのあたりでイマイチ感がぬぐえないのは残念である。

(「オケアノスの野望を砕け(上・下)」クライブ・カッスラー&ポール・ケンプレコス著、土屋晃訳、新潮文庫、2006年7月発行、ISBN4-10-217037-5,4-10-217038-3)

現代女性作家特集。小説のラインアップは、ケリー・リンク「しばしの沈黙」は時間が逆に流れる世界の話ということだがよくわからない。マーゴ・ラナガン「地上の働き手」は「天使を見つけて来い」といわれた主人公の男の子の話だが異形の天使が描かれている。リズ・ウィリアムズ「天使と天文学者」はティコ・ブラーエとヨハネス・ケプラーの元に天使が現れる話。ジャスティナ・ロブソン「小熊座」はテレポーテーション実験で分岐した多世界で別れ別れになった夫婦の話。どれもあまりピンとくるものはなかった。他にアイリーン・ガンのインタヴューとエッセイに小谷真理の解説、<ウィスコン2006>レポート。もうひとつの特集はオリジナルシリーズ放映から40周年を迎えたスター・トレック。吹き替え声優である矢島正明(カーク船長)、麦人(ピカード艦長)とm-floの☆Takuの座談会に、丸屋九兵衛による社会学、言語学(クリンゴン語)、国際政治/民俗学、文学、文化人類学の序説と鹿野司による自然科学の序説。連載は夢枕獏「小角の城」第7回、田中啓文「罪火大戦ジャン・ゴーレ」第21回、谷甲州「小来栖の森」(霊峰の門第7話)であった。

MOONLIGHT MILE 13

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テロリストの攻撃はかろうじてH-IIAから逸らせることができたが荒川教授が眼をやられてしまう。しかし失明した荒川教授の指揮の元、一丸となって打ち上げに望むスタッフたちに減量した吾郎が合流し、ついに打ち上げの時を迎える。軌道上のステーション「フリーダム」で待つロストマンに対し、全世界が注目する中、H-IIAの打ち上げは成功し、日本発の有人ロケットで吾郎は軌道上に戻る。死んでいった技術者たちの遺骨を宇宙に散骨したあと、フリーダムにドッキングした吾郎はロストマンと再会する。その吾郎の目の前で、(表向きは)撤退する米宇宙軍の後を受けるISA直轄の警察組織であるスペースガードの宇宙艦隊をさしながら、スペースガードを吾郎に預けることをロストマンが宣言する。このあたりは連載時にほとんど読んでいるがまとまって読む方がやはりいい。連載の方では中国宇宙軍の暗躍も始まり、風雲急を告げる展開になりつつあるが、ちゃんと話の収拾がついて終わることができるのだろうか?

(「MOONLIGHT MILE 13」太田垣康男著、小学館 BIG COMICS、2006年10月発行、ISBN4-09-180649-X)

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