前半の「パインテクの陰謀」では、カトロン銀河の惑星パインテクにあるPGT装置を使えば故郷銀河に帰れる可能性があることが判明。しかし装置は1回しか使用できない可能性があり、帰郷をめぐってアッカローリーのゼノとローダンは争う羽目になる。一方でペルトゥスの遺産であるロボット脳の脅威を取り除くべく作戦を開始したローダンたちはペノロクのロボット脳を惑星ごと破壊することに成功するが、PGT装置の方はゼノが先んじて転送を試みる。その結果は大規模な時空震に終わり、ゼノが信じていたのと違いカトロン銀河は正物資世界であることが判明し、ゼノを先に転送させたのもトリトレーアの計略であったことがわかる。後半の表題作では、PGT装置で帰郷を試みるローダンだが、トリトレーアはナウパウム銀河を統治する上でのローダンの価値を考え帰郷を阻止しようとする。ガイト・コールらの援助でトリトレーアに対抗するローダンだが、トリトレーアは太古のペルトゥスの秘密兵器<殲滅ロボット>を偶然発見し、ローダンらに対抗する。激しいやりとりの末、何とかトリトレーアを説得したローダンは再びPGT装置に乗り、帰郷の旅に出発する。
(「ユーロクとの戦い」H.G.エーヴェルス&クラーク・ダールトン著、増田久美子・青山茜訳、ハヤカワ文庫SF1565、2006年6月発行、ISBN4-15-011565-6)
2006年6月アーカイブ
前巻のYELLOWから思いのほか早く次が出た。この巻でも前半は例会のレポート、後半がトンデモ本大賞となっている。前半では、いつものように各種トンデモグッズ紹介があるが、青井邦夫氏の「60年代後半の少年雑誌における大胆なSFのビジュアル化」では当時の少年雑誌で今から思うと意外な人の絵が採用されていたのがわかって興味深かった(楳図かずおや水木しげるなど)。後半は2005年6月4日に行われた「第14回トンデモ本大賞」の選考から授賞式までの収録だが、ノミネート本の中で大差で受賞したのが、あの副島隆彦「人類の月面着陸は無かったろう論」で、いかに圧倒的支持を受けたかがわかった。
(「と学会年鑑GREEN」と学会著、楽工社、2006年6月発行、ISBN4-903063-04-6)
現役の宇宙開発現場の研究者であるランディスの描く迫真の火星SF。舞台となる2028年にはすでに二次の火星有人探査が行われていたが、一次隊のブラジル船<ジェズス・ドゥ・スル>の乗員は着陸後に原因不明で死亡、二次隊のNASAの<アガメムノン>は無事着陸したが白癬菌の増殖で緊急帰還しようとした帰還船<ユリシーズ>が金星スイングバイ時に爆発消滅していた。背水の陣で敢行された三次火星探査隊だが、火星の南半球に無事着陸したものの、帰還の頼りにしていた二次隊のバックアップ用の帰還モジュール<ダルネシア>は予期せぬ事故で失われてしまう。帰還に使えそうな船としては乗員の死亡で残された一次隊の宇宙船しかないが、それは北極点にあるのだった。かくして6000kmに及ぶ火星表面の縦断が始まった。乗組員それぞれが抱える事情とマリオネス峡谷をはじめとする異世界としての火星の風景が語られるが、やはり最新のデータや知識を踏まえた火星風景の描写が圧巻である。次々に襲い来るアクシデントに次第に減るメンバー。北極点に到達したのは3人にすぎなかったが、帰還船に乗れるのは2人だけであった。あくまでも異世界として描かれる火星を堪能した。こうなるとブルーマーズも読みたくなるが本当に今年出るのだろうか?
(「火星縦断」ジェフリー・A・ランディス著、小野田和子訳、ハヤカワ文庫SF1562、2006年5月発行、ISBN4-15-011562-1)
久しぶりのリングワールドの新作である。怪我のため自動医療装置(オートドック)に入っていたルイス・ウーが若返って装置から出てみると、周辺戦争(フリンジウォー)は激化していた。ルイスは、補修センターを支配する元<屍肉食い>(グール)のプロテクター<作曲家>(テューンスミス)の指令で、パペッティア人の<至後者>(ハインドモースト)やクジン人の<侍者>(アコライト)、<ぶらさがり人種>(ハンギング・ピープル)のプロテクjター、ハヌマンらと共にリングワールドを救うために奔走する。ARM(アマルガメイテッド・リージョナル・ミリーシャ:広域合同国民軍)の戦艦の爆発で反物質によりリングワールドの床面であるスクライスに大穴が開いた時は、<作曲家>が隕石栓(メテオプラグ)で補修する現場に行かされたり、ARMの捜査官たちと行動を共にしたり。その後リングワールド建設者であるパク人のプロテクターの最後の生き残りであるプロセルピナに出会い、リングワールド建設時の模様が明かされる。最後には周辺戦争から逃れるために<作曲家>たちはリングワールドのスクライスに量子第二段階ハイパードライブの機能を持たせリングワールドごと紛争地域から逃れ、いったんプロテクター化していたルイスは<至後者>と共に奪取したロングショット号で逃れた後、自動治療装置で再び繁殖者(ブリーダー)として再生し、ホーム星へ向かって大団円となった。しかし、あんな大穴が開いてよく千切れなかったものだなあ。この終わり方からすると今度こそリングワールドシリーズも終了かなあ。
(「リングワールドの子供たち」ラリイ・ニーブン著、小隅黎・梶元靖子訳、ハヤカワ・海外SFノヴェルズ、2006年5月発行、ISBN4-15-208728-5)
前半の「カトロン脈」では、カトロン銀河とヤアンツァルを結ぶカトロン脈が切れたことにより、チャトロの石化ペルトゥス脳が復活し、そのうちの1体がヒュプノ能力で肉体に移植させ逃亡した。同時にヤアンツァル全土で地震などの災害が多発し海底からは未知の宇宙艦隊が出現した。トリトレーアと共にヤアンツァルに戻ったローダンは逃げたペルトゥスを追ううち、壊滅した地下都市から脱出してきた男達にペルトゥスが宿った肉体が殺されて決着する。後半の表題作では、カトロン銀河に残されたヘルタモシュたちは、ロボット艦に搭載艇を撃墜され、千体のゴリアテからの逃亡を続けていた。唯一残った搭載艇はガイト・コールとゼノによりローダンの帰還を待つためにグロモ=モト星系に脱出した。途中謎の小人カリブソを引き入れ、殲滅スーツや大群とのかかわりが示唆されるが、このエピソードが後で利いてくろのかわからない。救援艦隊を連れて戻ったローダンたちはかろうじて計略によりヘルタモシュたちの救助に成功する。
(「永遠とのコンタクト(ペリーローダン323)」クルト・マール&ウィリアム・フォルツ著、渡辺広佐訳、ハヤカワ文庫SF1560、2006年5月発行、ISBN4-15-011560-5)
太陽系探査SF特集。特集の小説はジェフリー・ランディス「青き深淵へ」が天王星の海中の生命探査の話。サラ・ゼッテル「暗黒のなかの見知らぬ他人」は小惑星帯探査からの帰途トラブルに見舞われたクルーの姿を描く。ラリイ・ニーブン「ロキ」は異星の水棲生物を導く声は他の星からの探査体だという話。アダム=トロイ・カストロ&ジェリイ・オルション「ワイオミング生まれの宇宙飛行士(前編)」はグレイそっくりの姿で生まれたアレグザンダー・ドライアーの成長を描く。やっぱり最新知識を踏まえたランディスが面白い。他に松浦晋也の科学解説、ランディスのインタヴュー、東茅子の解説。特集以外では新連載の朝松健「魔京」は無形文化財保護のために秘神楽の取材をしようとするが謎の地震に続き異変が起こり、という発端。谷甲州「霊峰の門」は第6話で明智光秀の影たる運命の多聞丸の姿を描く。田中啓文「罪火大戦ジャン・ゴーレ」はついにエゾゲバロ・ログロ人たちが登場する。読切で草上仁「アインシュタインが当たった」はアインシュタインの精子がクジで当たったグータラ男と堅実な妻の戦い。
