2006年4月アーカイブ

と学会年鑑YELLOW

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2004年6月のと学会例会レポートと第13回トンデモ本大賞の選考・発表を収録。いつものようにいろいろと面白いネタ満載だが、気に入ったのは村上氏発表の「折田先生、七変化」。京大草創期に功績のある折田先生の銅像に対する様々な飾りつけ(?)や銅像撤去後の各種制作物の様子は爆笑であり、大学当局の対応もさすが京大である。これらの像の画像は最新の18年のものまで含めて、今も「折田先生を讃える会」のサイトで見ることができる。トンデモ本大賞の方は塩瀬中乗「ガチンコ神霊交友録」が獲得。しかし、これ2004年の例会でのものなんで対象は2003年のもの。既に2005年の大賞も決まっているんだから(例の副島氏の「人類の月面着陸はなかったろう論」)、早く次も出して欲しいものである。

(「と学会年鑑YELLOW」と学会著、楽工社、2006年4月発行、ISBN4-903063-03-8)

レキオス

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冒頭いきなり地面から女の足が現れ、その後出現した鼻のない女が逆さまに空中に浮かぶ姿にAH64D攻撃ヘリがミサイルを打ちこむ場面から物語が始まる。舞台は西暦2000年の沖縄。米軍から返還された天久開放地に巨大な魔方陣が出現し、逆さの女に取り付かれた主人公の混血(アメレジアン)の女子高生デニスを中心に、1000年の時を経て甦る伝説の地霊レキオスを巡る物語が展開する。レキオス復活のためにGAOTUという組織を使って暗躍するキャラダイン中佐に対し、米軍、天才女科学者、沖縄の霊媒師であるユタのオバァたちが入り乱れる中、魔方陣は147年前のペリー来訪時の沖縄と通じ、ついに封印が説かれてレキオスが復活する。知らずに受け継いだ霊的パワーであるセヂの集積力を使ってデニスたちは事態を解決できるのか、というストーリー。天才科学者であるサマンサが唱える統一理論などのSF的味付けはあるものの、沖縄の持つマジックリアリズム的な色合いの方がはるかに濃く何とも分類しがたい小説になっている。すぐにコスプレやノーパンに走る天才科学者サマンサのぶっとんだキャラクターをはじめキャラがたっていてリーダビリティは高くすぐに読めてしまった。

(「レキオス」池上永一著、角川文庫、2006年1月発行、ISBN4-04-364702-6)

SFマガジン2006年5月号

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西島大介&タカノ綾の特集号。西島大介は「特盛!」の逆に大森望のインタヴューと佐々木敦による作家論。タカノ綾は島田一志のインタヴューとタニグチリウイチによる作家論、読切コミック「火の星から飛んできたあの子たち」。特集以外では梶尾真治の新シリーズ「怨讐星域」第1話は、太陽のフレア星化の予測に、人類はおりから開発されたジャンプ装置で地球に似た星「約束の地」に避難するが、行ってみるとジャンプの成功率は0.1%以下であり目的地の星では奇怪な生物が跋扈し、かろうじて生き延びた人々は先に宇宙船で脱出した人々に対する恨みを募らせる。読切では、田中哲弥「フォクシーガール」は、普通の女子高生(ただしすごい美人)がひょんことから、あらゆるスーパーヒーローの能力を身につけてしまい、という話。イラストといいストーリーといいライトノベルそのものだがこれが今号で一番面白かった。森奈津子「女神の箱庭」は、一生に一度の妊娠期しかない世界で、オコトオンナと呼ばれる男でも女でもない人々の謎が、1人の少年の恋と成人の儀式の末に明かされていく。連載は、夢枕獏「小角の城」、田中啓文「罪火大戦ジャン・ゴーレ」。後は第1回日本SF評論賞・選考委員特別賞の受賞作、鼎元亨「ナガサキ生まれのミュータント?<ペリーローダン>シリーズにおける日本語固有名詞に関する論考および命名者は長崎におけるオランダ人捕虜被爆者であったとする仮説」に、いつものコラム類。

コラプシウム

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ウィル・マッカーシイは前作「アグレッサー・シックス」がイマイチだったので今作も期待せずに読み始めた。作品世界は未来の太陽系で人類は女王を戴く太陽系女王国を形成しており、表紙にはセーラー服にしか見えない制服姿の捜査局長が描かれえる、とくればかなりのキワモノかライトノベル系の作品を思わせるが、読んでみれば意外にも面白い。ストーリーは超天才の主人公が女王(主人公のかつての恋人)の要請で太陽系を揺るがす大事件を解決する、3つの連作長編の形を取っている。作中に出てくるガジェット、例えば、マイクロ・ブラックホールをグリッド状に配置・安定化させた超光速伝導物質コラプシウム(表題はこれ)、人間も含めてあらゆる物質を転送・コピーできるファックス、極細の半導体繊維からなり軽量で瞬時に様々な特性をもつ物質に変化させることのできるウェルストーンなどが楽しい(ちょっと万能すぎるような気はするが)。ハードSF+スペースオペラというキャッチがあるが、スペースオペラといっても肉体的アクションではなく、超天才の発想による問題解決というものなので、マッカンドルー航宙記に通じるような感じを受けた。続きも出ればいいなあ。

(「コラプシウム」ウィル・マッカーシイ著、嶋田洋一訳、ハヤカワ文庫SF1554、2006年3月発行、ISBN4-15-011554-0)

続けて読んだナノテクSFの2つ目がこれ。21世紀半ば、ナノテクの影響で国家がなくなり、世界は人種・宗教・主義・趣味などを共有する者が<種族>(ファイリー)や<部族>(トライヴ)という組織を作っている。舞台となる上海はかつての中国から分裂した沿岸チャイナ共和国の一部であり、周辺には元の中国である《漢》(ハン)、《ニッポン》、ネオ・ヴィクトリア人が人工島《新舟山》に作った《新アトランティス》という<国家都市>(クレイヴ)が3大種族となっている。ネオ・ヴィクトリアの<株主貴族>フィンクル=マグロウ卿は孫娘の教育用にナノテクの粋を極めたインタラクティヴな初等読本(プリマー)の作成を依頼する。依頼を受けた技術者ハックワースは自分の娘のために不正コピーを作成するが、それは部族に属さない貧しい《シート》の若者ハーヴに奪われ、その妹の少女ネルの手にわたる。以後の物語は、ネルが虐待を逃れて家を出た後、プリマー中の”プリンセス・ネル”の冒険物語を通じて成長していく様と、不正コピーがばれて新アトランティスと対立する《天朝》の二重スパイとなって錬金術師探しの任務につくハックワースの物語が語られていく。最後には両者ともに自分の行くべき道を見つけることになる。ナノテクSFといってもクライトンとは違い、ナノテクの影響で変貌した上海の生活の猥雑さが存分に発揮され、スティーブンスンらしい作品となっている。

(「ダイヤモンド・エイジ(上・下)」ニール・スティーブンスン著、日暮雅道訳、ハヤカワ文庫SF1552,1553、2006年3月発行、ISBN4-15-011552-4,4-15-011553-2)

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