まだ見ぬ冬の悲しみも

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山本弘の短編集。冒頭の「奥歯のスイッチを入れろ」はSSS(Sonic Speed Soldier)と呼ばれるニューロドロイド、即ち人間の脳をEPRホロ・スキャナーでスキャンしシムブレインと呼ばれる脳のモデルとして再構成しアンドロイドの電子脳にインストールしたもののうち、音速で動ける戦闘用モデルの物語。研究所に侵入した敵のSSSに対しかつての恋人を守るために死闘を繰り広げる。サイボーグ009を小説でやったらということか。「バイオシップ・ハンター」は生きている宇宙船と共生するイ・ムロッフ星人のしわざと思われる襲撃事件が立て続けに起き、疑いを晴らすための協力を依頼された主人公がバイオシップに同乗して発見したものは野生のバイオシップだった、というもの。「メデューサの呪文」は昨年のSFマガジンに掲載されてたので記憶にあったが、技術文明を超えた言語文明に達したインチワームに言語兵器を学んだ詩人が人類のために言語技術を使おうとするめずらしい言語SF。「まだ見ぬ冬の悲しみも」もSFマガジン掲載時に読んでいたもの。時間的同一性交換により6ヶ月前の世界に向かった主人公が見たのは終末の世界だった、というタイムトラベル実験の顛末を扱ったもの。「シュレーディンガーのチョコパフェ」もSFマガジン掲載時に楽しんだ。先進波によって因果律を壊し世界を破滅しようとするかつての同級生の起こす世界の変貌の中をのりきっていくオタク系の主人公とその彼女を描く。アキバ系のカップルの描写もあざやかな一遍。「闇からの衝動」は、少女が地下の穴で遭遇した怪奇が、成長して作家となった彼女とそのファンの作家の2人の前で甦るのを描く、作者がC.L.ムーアに捧げた短編。どれも面白かったが「シュレーディンガーのチョコパフェ」と「奥歯のスイッチを入れろ」が特に気に入ったかな。

(「まだ見ぬ冬の悲しみも」山本弘著、ハヤカワSFシリーズJコレクション、2006年1月発行、ISBN4-15-208699-8)

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このページは、okが2006年2月11日 01:15に書いたブログ記事です。

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