ポール・アンダースンが1950年代から書き続けていた”サー”ドミニック・フランドリーのシリーズの最初の中短編集。遥かな未来、人類は銀河の一画に地球帝国を建設していたが、既に地球文明は爛熟期をむかえ、いずれは衰退へ向かう”長い夜”が来るのは避けられなかった。長い夜の到来を少しでも止めるため、新興の星間帝国、特に好敵手であるマーセイア帝国に対し人類版図を守るために活躍する帝国情報部の諜報員の中でもサーの称号を持つ腕利きがフランドリー大佐であった、というのが基本設定。「虎口を逃れて」はシリーズ第1作で、目覚めたフランドリーが見知らぬ宇宙船にいるところから始まる。宇宙船は未知の異星人スコーサ人のものでフランドリーはスコーサ星に拉致されるが、得意の権謀術策を駆使し、スコーサ人を内部分裂させる。「謎の略奪団」では、後々シリーズの主要キャラクタになる万能従僕チャイヴズが登場する。蛮族の大群に略奪された女たちの中に皇帝の孫娘がいたことからフランドリーが極秘に奪還を命ぜられる。事件の裏を読んで有力な公爵の1人に目をつけたフランドリーが見事に姫を奪還する。「好敵手」ではマーセイア帝国のスパイでテレパシー能力を持ち後のシリーズで好敵手であり続けるアイキャレクが登場する。テレパシー能力により窮地に陥るフランドリーだが、同僚のアリーンの機転で事態を打開する。「<天空洞>の狩人たち」はシリーズ初の長編とのことだが、中篇くらいの長さか。人類とは生活圏が違うことから距離を置いていた水素呼吸生物のイミル族が人類に敵対するそぶりを見せる。折から謎の侵略者に侵攻された辺境の星ヴィクセンに赴いたフランドリーは地元のレジスタンスと協力して、侵略者の母星を見つけ、事件の陰にアイキャレクがおりイミル族の件もアイキャレクが原因だと突き止め、事件を解決する。50年代の作品だなあと思える部分もあるが、今でもちゃんと読めるのはさすが。というか私が基本的にこの手のスペースオペラが好きということもあるのか。好評なら続きが出るそうなので期待したい。
(「地球帝国秘密諜報員」ポール・アンダースン著、浅倉久志訳、ハヤカワ文庫SF1545、2006年1月発行、ISBN4-15-011545-1)

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