2005年度英米SF受賞作特集。ケリー・リンク「妖精のハンドバッグ」は主人公の少女が探しているおばあちゃんの形見の妖精のハンドバッグの中には、おばあちゃんの故郷のバルデツィヴレキスタンの村人と恋人が暮らしているのだった、というホラ話風のヒューゴー/ローカス賞ノヴエレット。チャイナ・ミエヴィル「ロンドンにおける”ある出来事”の報告」は作家の元に間違って送られてきた手紙にはロンドンの街で起こった”街路が突然出現する”出来事に関する調査内容が書かれていた、というローカス賞の奇想SF。アイリーン・ガン「遺す言葉」は作家をしていた祖父が死に、遺品の整理に訪れた娘がいたるところに残されたメモを読み込むうちに父の姿を知っていく、というしみじみとしたネヴュラ賞のショートストーリー。ブラッドリー・デントン「チップ軍曹」は意思疎通能力を増進された軍用犬とパートナーである上官が前線で友軍の裏切りにあい、唯一生き残った軍用犬が民間人を守りながら生き延びてかつての友軍司令官に最後通告の手紙を送るというスタージョン記念賞。これが一番面白かった。特集以外では連載が山田正紀「イリュミナシオン」、夢枕獏「小角の城」、田中啓文「罪火大戦ジャン・ゴーレ」といったぐあい。次号は600号記念号だそうだ。このところ2月号が昔のように特大号でなくなったので、分厚い特大号に期待。
2006年1月アーカイブ
前半の「カトロンの異人」では、ヘルタモシュとマイチェタンの間の政争にけりをつけ、ナウパウム銀河の将来展望を開くため、ローダンが隣のカトロン銀河の大執政官を装い、異銀河からの大艦隊を偽装した作戦を発動する。その結果、ヘルタモシュはレイチャの地位につき、トリトレーアによってマイチェタンが葬られる。後半の「対抗策」では地球のアンドロ・ローダンが激しい精神攻撃を受け昏倒する。今までの真のローダンからの介入と違い長時間にわたる悶絶にアトランをはじめ側近たちの不安がつのる。アンドロ・ローダンの容態がいったん落ち着いた後、再び起こった攻撃はパラメカ性の命令インパルスだと判明、調査の結果アンデスに潜むアンティの秘密基地が発見されるが犯人のアンティは生け捕りを嫌い殺されてしまう。一連の事件に”反それ”の影響を見るアトランたちはアンドロ・ローダンの脳周波が変わったことやあっけなく犯人死亡で事件が解決したこともあり不信感がぬぐえない。
(「カトロンの異人(ペリーローダン319)」ハンス・クナイフェル&エルンスト・ヴルチェク著、渡辺広佐訳、ハヤカワ文庫SF1543、2006年1月発行、ISBN4-15-011543-5)
雑賀と神楽が外国への逃亡直前に阻止された船には両国医師がのっており、落合議員のつてをたどってリカドニア大使館に保護される。しかし味方と思った落合もまたユーフォリアであった。自壊した落合の元を逃れた雑賀は、大使館から拉致された神楽の行方を追う。一方、神谷総理は水天宮と袂を分かち、水天宮に対し刺客を放つ。次々に襲い来るユーフォリアたちを撃退し、ついに水天宮は総理官邸で神谷総理と対峙する。そのころ、アメリカを影で支配する権力者たちはユーフォリアウイルスの確保のために東京に爆撃を加えることを決定し、米艦隊が集結、攻撃を開始しようとしていた。米の攻撃をユーフォリアの能力で排除しようとする総理を残し、水天宮と神楽は天王洲ビル屋上へたどりついていた。そこで雑賀と最後の対決をした水天宮は、神楽の父親の腕に宿るウイルスにより神楽の変異遺伝子を修正し、女神としての能力は消えた。脱出する雑賀と神楽の後で、六本木クラブの壊滅で六本木は沈下し、東京は廃墟と化した。天王洲ビルと共に消えた4000兆円により日本は経済的にも壊滅した。3年後復興途上の東京で、ドイツ留学の話をしに来た神楽をの写真を撮る雑賀の姿があった。アニメのノベライズらしく、襲い来るユーフォリアと水天宮の戦いは映像が目に浮かぶようであった。
(「スピードグラファー3」仁木稔著、GONZO原作、ハヤカワ文庫JA829、2005年12月発行、ISBN4-15-030829-2)
「真性天使」たちとの死闘を親玉であるラグ=ルグの脳を衝撃波で焼いて終結させ、協会に帰還したサライtちだが御所代さまは昏睡状態におちいっていた。自らの出生の秘密を探るため、サライは自分が生み出されたとされる旧ソ連の極秘生物科学研究所「ジスクール」を訪れる。後を追ってきたセレンとフリッカたちとの闘争で崩れ落ちる研究所跡からサライの意識は別の場所に移動する。場面は転換し、ジスクールでの1960年の日本人研究者の逃亡劇が語られた後、1976年の日本で高校生活をおくる神薙紗莉の姿を描く。体育の授業中突然倒れた紗莉が保健室で目覚めた時、その姿と意識はサライのものになっていた。
(「サライ15」柴田昌弘著、少年画報社YKコミックス591、2006年1月発行、ISBN4-7859-2591-4)
と学会レポートと銘打たれているとおり、と学会の面々が、2005年度日本トンデモ本大賞を圧倒的な大差で受賞した副島隆彦「人類の月面着陸は無かったろう論」を徹底検証する。第1章は江藤巌氏が宇宙開発の歴史をコンパクトにまとめたもので参考になる。第2章は植木・皆神・志水氏によるムーンホークス説(月に行ったのはでっち上げだと主張する説)一般の歴史の概観、第3章は同じ面々による代表的なムーンホークス説の検証、第4章も同じメンバーでTV番組「これマジ!?」「世界はこうしてダマされた!?」の検証。第5章が本尊とも言える山本弘による「無かったろう論」の検証。最後の第6章は再び3氏による座談会という構成。第5章ではあまりのつっこみどころの多さというか無茶苦茶さを山本弘が切りまくる。残念ながらネタ本自体は読んでいなかったんだけど、こんなにスゴイならどこかで目を通さないといけないかな。
(「人類の月面着陸はあったんだ論」山本弘・植木不等式・江藤巌・志水一夫・皆神龍太郎著、楽工社、2005年12月発行、ISBN4-903063-01-1)
いつのまにやら5巻。今回も変な異星人などが出てくるエピソードの連続。開店したイカ屋を覗いてみるとやはりという「イカ篇」、学校にあやしい面々がうろうろしてると思ったら遺伝子採取の異星人たちだったという「ジーン篇」、マンホールのそばで困っている人に声をかけたら悪魔のかわりに召喚されてという「マンホール篇」、買い物帰りに突然UFOにさらわれ裁判にかけられるはめになる「世界征服篇」、スポーツクラブを覗いてみると魔法使いの修行の男の子たちに遭遇する「スポ根篇」、学校で行われる狐狩りでは変なものがいっぱいでてきてという「狐狩り篇」、魔王を倒しに行く人々とその裏にある世界の正体を描く「魔王篇」、銀河刑事と共にある家のパーティーでの事件を追う「クリスマスパーティー篇」。いつものとおり剣康之氏のかわいいイラストが決まっている。
(「食卓にビールを5」小林めぐみ著、富士見ミステリー文庫、2005年12月発行、ISBN4-8291-6332-1)
地球を目指す美葉は食中毒を治すために途中で見つけたレジャー惑星の医者にかかるが、子宮を人質に料金を吹っかけられ、払うためにカジノの人生ゲームをする羽目になる。ゲームにはなんとか勝って、一転、豪遊していると何故か賞金かせぎに追われるはめになり、そこを助けてくれたのは美女の海賊ブラッドシャドーであった。海賊船シャドーストライカーに乗り込んだ美葉が知ったのは、ブラッドシャドーの正体が自分の未来の姿であることだった。ブラッドシャドーはかつて宇宙放浪の後、地球に帰ったときに受けた扱いに絶望し、地球を滅ぼそうと、アルジバドリス人が隠した最終兵器ヘルレイザーを探していたのだ。月の地下でヘルレイザーを手に入れたブラッドシャドーを何とか止めようとした美葉だが、逆にヘルレイザーのビームを浴び、隠されていた自分の真実の姿をさらけ出してしまう。自身の過去の意外な正体を見たブラッドシャドーは復讐をやめ、美葉はルー君と共に地球に帰っていった。
(「ギャラクシー・トリッパー美葉3」山本弘著、角川スニーカー文庫、1995年11月発行、ISBN4-04-460109-7)
1巻を読んだ後、続きを近所のほんだらけで見つけた。この巻では地球を探して宇宙をさすらう美葉たちが、スプレー缶型宇宙船に追われていた異星人マイニを偶然救ったことから冒険が始まる。マイニは究極まで科学の発達したドルジャーラーゲン星の出身で、あらゆることが達成されたが故に余暇を持て余す母星を離れ祖父の日記にある星を探して宇宙に飛び立っていた。最初の目標の究極の平和の星「パクシス」は実は究極の言い訳で成り立っている星にすぎなかった。次の目標の真実の幸福の惑星「リヴァイヒルマン」は実は精神生命体に支配され住民は精神を抜き取られ、いいなりになるが故の幸福の星であった。美葉は精神生命体との戦いに勝つが、現世に戻ってみると巨大宇宙船がリヴァイヒルマンに迫り、美葉の肉体は冷凍されて宇宙船に拉致されてしまう。宇宙船に乗り込んだ美葉たちは、その宇宙船こそが最後の目標である偉大なる愛の星「バスとケープ」であることを知る。数々の星を超新星に変えてきたバストケープ人の主砲サンスマッシャーの発射を何とか逸らせ、月を打ち込むことによりバストケープを破砕した美葉たちはリヴァイヒルマンに残るというマイニを置いて、地球を目指して旅立った。
(「ギャラクシー・トリッパー美葉2」山本弘著、角川スニーカー文庫、1994年7月発行,
ISBN4-04-460107-0)
南極の氷の下に発見されたアトランティスの遺跡をめぐっての冒険小説。登場人物は、異端の宇宙考古学者、環境保護に取り組む元修道女の女性言語学者、米空軍の将軍、国連査察隊などが入り乱れる。アトランティスの遺跡が氷床の下の超巨大なピラミッドだったり、エジプトのピラミッドとの類似から主人公たちがあっさりと制御装置の部屋に行き着いたり、ピラミッドに隠された機能の発現によって、世界に危機がせまったり、といったように、おおむねお約束どおりにストーリーが進展する。これだけの波乱万丈の話を特別長くもない1冊に納めているので、物語の展開はスピーディーで、最近の重厚長大な作品に慣れた目からはスラスラ読めていいのかも。最後に恒星船に乗って行ってしまった空軍の将軍(主人公の宇宙考古学者の父親?)はどうなったんだろう。
(「レイジング・アトランティス」トマス・グレニーアス著、嶋田洋一訳、ハヤカワ文庫NV1101、2005年11月発行、ISBN4-15-041101-8)
日本作家特集。夢枕獏「小角の城」は役の小角を題材にしたスーパー伝奇とのこと。今号では半蔵の手下の伊賀忍者の戦いで幕を開けるがちゃんと連載が続くのだろうか?「黄石公の犬」のように細切れにならなければいいが。小川一水「ハイフライト・マイスター」は22世紀、月・火星・木星圏を勢力範囲とする組織スピナールと、そこからはずれた人々が巣食う小惑星帯を舞台に、1人乗り低推力貨物船乗りがある小惑星で遭遇した事件を描く。はやぶさをエピソードに取り入れるなどは相変わらずすばやい。新城カズマ「月を買った御婦人」はもうひとつの歴史でメキシコ帝国の御令嬢が夜空に輝く月を所望するというかぐや姫譚。藤田雅夫「ダーフの島」はダーフと呼ばれる小人たちの暮らす島でのお話。牧野修「純潔の地に、獣たれ童貞の徒よ」はおたく青年たちをテーマに一種の神話世界を語る。関連記事としてアキバで行われたロボット先進セミナーでの小川×林×藤崎の対談の採録「AIとファーストコンタクト」。他には連載が田中啓文「罪火大戦ジャン・ゴーレ」。読切では、スティーブン・獏スター「痕跡」はジーリーシリーズにも通じるGUT船でのオールト雲へのパイロットと聖職者の探査行で明らかにされた過去の超新星爆発の痕跡に残る異文明の痕の話。ブルース・スターリング「ルシフェラーゼ」はホタルとクモを主人公にした昆虫SF。ジェイン・ヨーレン「マレーシアの人魚」は老婦人が英国の路地裏で訪れた骨董品店での人魚をめぐるエピソード。キース・ロバーツ「アニタ」は見習い魔女のアニタの短編2編。他に、SFマガジン読者賞の発表。国内部門が山本弘「メデューサの呪文」、海外部門がジェフリイ・フォード「アイスクリームの帝国」、イラストレータ部門がタカノ綾。昔の分厚い2月号が懐かしい。
