2005年10月アーカイブ

SFマガジン2005年12月号

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ニュースペースオペラ特集。アレスレア・レナルズ「氷河」は「啓示空間」と同じ背景で、氷の辺境惑星で先着の人類の基地が死滅しているのを発見した連接脳派のクラバインたちが氷漬けの死体を復活させて基地の全滅の謎を探ろうとするが、という話。ミステリの小品といった感じ。レナルズはインタヴューも収録。ピーター・F・ハミルトン「エスケイプ・ルート」は塵円盤がある恒星系での希少金属探査に徴発されたマーカス船長の<マクベス夫人>号が発見した金属反応は異星人の宇宙船だったが、宇宙船に内蔵されたワームホールを調べようとした時、雇い主がテロリストと判明し争いになる話。最後に宇宙船を破壊してしまうのはもったいないが、<ナイツドーン3部作>の前日譚とのことなので3部作を読みたくなった。どちらも満足。ヴァーナー・ヴィンジのエッセイ「<特異点>とは何か」は、近いうちに人類が自分たちを超える人工知能を生み出すことを論じて<特異点(singularity)>の発端となった記念すべきもの。1983年のものだが全然古びてないのはさすが。特集解説は加藤逸人。草上仁「文士と弁士」は弁士同士が戦う世界での道場破りの不正を正す旅の弁士たちの話。連載の田中啓文「罪火大戦ジャン・ゴーレ」は主人公たちの船が<アリガバリ跳び>でついに敵地に到着する。山田正紀「イリュミナシオン」は日本のPKO部隊の奇襲の顛末。「ストリンガーの沈黙」の巻頭特集もあるが、本屋で見ないと思ったら発売が11月始めに延びたのか。

ブルースカイ

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表題どおり真っ青な表紙の本。内容は3部構成で、第1部は1627年の中世ヨーロッパ。魔女狩の嵐が吹き荒れる町で10歳の少女マリーは<アンチ・キリスト>に会い魔女狩の手から逃れるが、セーラー服の少女の格好をした<アンチ・キリスト>はアメリカへの船上で謎の老人に攫われそうになり何処かへ消える。第2部は2022年のシンガポール。3Dアーチストの青年ディッキーは中世ヨーロッパのゴシック風の町景色を作成中、3Dシミュレータの中に突然現れた絶滅したはずのセーラー服の少女の形をしたクリーチャーに出会う。ブルースカイと名乗る少女には謎の追っ手があり、一緒に逃げる途中、追っ手の老人から逃れようとした少女は空中に消える。第3部は2007年の日本・鹿児島。高校生の青井ソラは彼氏との普通の青春を送っていたが、4月10日の昼、桜島の突然の大噴火で時空を飛ばされ、中世ヨーロッパ・未来のシンガポールを経て、時空管理官に元の桜島上空に引き戻される。落ちていく彼女が最後に見たのは青い空だった。時間もののSFだが、読みやすい少女についてのライトノベルといった方が現在ではなじみやすい分類だろう。

(「ブルースカイ」桜庭一樹著、ハヤカワ文庫JA820、2005年10月発行、ISBN4-15-030820-9)

前半の「飛行都市」では、脳を飛ばされた先のナウパウム銀河で故郷銀河の手がかりを探すため、滅びた古代種族ユーロクの惑星トレーチャーで探索を続けるローダンが、同じように脳を異種族に移植されたヤアンツトロン人に遭遇するが、その脳の元種族がアッカローリーということが判明しナウパウム銀河が反宇宙にあることを知る。トレーチャーでかつての首都ヌプレルらしき都市を見つけたローダンだが故郷銀河の手がかりはついに見つからない。後半の表題作では、古代種族ユーロクの生き残りのサイナックハンター、トゥールトがトレーチャーからの情報でローダンの所在を知り、ローダンを捕らえるべくトレーチャーに向かう。間一髪で、ローダンの支援者、レイチャト帝国の後継者ヘルタモシュのよこした搭載艇でトレーチャーを脱出したローダンは、再び自分の体に宿るアンドロ・ローダンと対決するため、ヤアンツトロンへ戻り、ドインシュトの協力でゼロ時間ブリッジ技術により、ローダンの体でアンドロ・ローダンと対決するが、短時間で元に戻されてしまい、故郷銀河の危機は続く。

(「無限からの警告(ペリーローダン316)」ハンス・クナイフェル&H.G.フランシス著、五十嵐洋訳、ハヤカワ文庫SF1532、2005年10月発行、ISBN4-15-011532-X)

血液魚雷

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町井登志夫は小松左京賞で名前は知っていたが単行本を読むのは初めてかな。放射線科医・石原祥子の病院に搬送されてきた心筋梗塞患者は、かつての恋人・羽根田医師の妻・緑だった。手術は成功したが、手術中の透視画像に映った影が気になった祥子は、羽根田の強硬な主張により試験稼動中の新しい画像透視システム<アシモフ>による検査を行うことになった。血管内をリアルタイムに撮影する<アシモフ>のゴーグルを装着した祥子が発見したのは、血流に逆行してすさまじい速度で疾駆する流線型の物体であった。プロペラのような鞭毛を持つ物体を捕らえるため、検査を続けるうち自らの体内にも同じ物体が存在することを発見した祥子は、この血管中の寄生物体を捕らえるため、緑の体内にカテーテルを挿入し、<アシモフ>を駆使して攻防戦を繰り広げる。ついに相手を捕らえ、対外に抽出することに成功するが、その時、祥子たちが<アシモフ>の画面に見たのは新たな寄生物体であった。果たしてこの物体との攻防戦の結末は、また、この物体の正体は、と興味はつきないが、結果的には物体が緑と祥子の体内に浸入していた理由が明かされるのみであった。構成としてはSFというよりホラーのものであり、ちょっとすっきりしない。

(「血液魚雷」町井登志夫著、ハヤカワSFシリーズJコレクション、2005年9月発行、ISBN4-15-208672-6)

啓示空間

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1000ページを超える分量に覚悟して読み始めたが、けっこうスラスラ読める。最初は3人の視点人物から始まる。リサーガム星で絶滅した異星人アマランティン族の調査をする考古学者のダニエル(ダン)・シルベステ、イエローストーン星の殺し屋で謎の依頼人からシルベステの殺害を依頼されるアナ・クーリ、宇宙船ノスタルジア・フォー・インフィニティ号の軍事部門担当者イリア・ボリョーワ。宇宙船といっても光速の壁が存在するので近光速船という設定で、上記の3人もはじめはバラバラの場所と年代で物語られるが、次第にリサーガム星に話は収束していく。途中フェルミのパラドックスの回答として明かされるのは、10億年前の黎明期戦争の結果、抑制者(インヒビター)と呼ばれる機械(?)が再度の戦争をふせぐために、銀河全域で知的文明の発生を抑制しようと生命の発生を探知・抑制するデバイスをばらまいたことであった。アマランティン族の滅亡の謎を追う過程でリサーガム星に集合する形になったシルベステ、クーリ、ボリョーワたちは、リサーガム星の主星と連星をなす中性子星ハデスとその衛星ケルベロスに向かい、人工の星と判明したケルベロス内部に突入し、アマランティン族、インヒビターデバイスやハデスに隠された謎に決着がつく。長大な作品だけあって、魅力的なガジェットが詰め込まれている。巨大な近光速船インフィニティ号には、惑星を簡単に吹き飛ばすような隠匿兵器と呼ばれる超兵器群が隠されていたり、1つの星を覆い、接触した生物や非生物の情報を取り込んで記録するパターンジャグラーと呼ばれる生体アーカイヴシステムがあったり、閉じた空間シュラウドに逃げ込んでインヒビターから隠れるシュラウダーの存在や、人類が身体改変を極限まですすめたウルトラ族や連接脳派などのいくつもの派閥に分かれていたり、と枚挙にいとまがない。現代SFで語ったスペースオペラとしてよくできている。しかし何で上下とかの分冊にしなかったんだろう。

(「啓示空間」アレステア・レナルズ著、中原尚哉訳、ハヤカワ文庫SF1533、2005年10月発行、ISBN4-15-011533-8)

鉤爪プレイバック

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「鉤爪の収穫」が出てしまったので、あわてて読んでなかったこちらから先に読んだ。第1作の「さらば愛しき鉤爪」から時間を遡り、相棒のアーニーと2人(?)で探偵事務所をやっているころのお話。アーニーの元妻からカルト集団<祖竜教会>に入った弟の捜索を頼まれ、<祖竜教会>の拠点から連れ戻し社会復帰させて一件落着、と思ったら数日後にその弟の自殺の一報が入った。ひっかかるものを感じたルビオは<祖竜教会>の調査を続けるうちにハワイの拠点で<祖竜への道>という教会のイベントでの殺人(?)や<祖竜>にいたった恐竜たちの姿を見、祖竜教会の陰謀をあばこうと奮闘する。第1作には、この話の後日談的なものも書かれていたが、そのあたりの関係も、そういう事情だったのか的なところがわかる。早めに第3作も読もう。

(「鉤爪プレイバック」エリック・ガルシア著、酒井昭伸訳、ソニーマガジンズ・ヴィレッジブックス、2003年1月発行、ISBN4-7897-1980-4)

SFマガジン2005年11月号

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地球環境問題SF特集。特集関連は、特集のきっかけになった「恐怖の存在」の作者マイクル・クライトンの講演「人類が直面する最大の課題」が環境問題にからめて疑似科学との戦いを熱弁する。小説ではクジラの保護問題と深海の知性体をからめたG・デイヴィッド・ノードリイ「エリカの海」と、異星人に占領されて環境回復プログラムを強要される人類を描くジュディス・モフィット「ベアーズ・ベイビー」の2本、あと大野万紀の評論という構成。特集以外の読みきりは、日本列島が本当にさまよう町井登志夫「進島日本、民謡歌」、あいかわらず不条理な深堀骨「<乳首の長い女ブーム>に異議あり」、ネットワークがあまりにも日常に溶け込んだ世界での1分間のネットワーク断を描く草上仁「ユビキタス」。連載では田中啓文「罪火大戦ジャン・ゴーレ」は主人公たちがろくに訓練もしないうちに戦場に駆り出されようとする。高野史緒「白鳥の騎士」後編はワグナーに魅せられたルートヴィヒ2世とカールが出会った結末を描く。他に「ブルースカイ」発刊記念、桜庭一樹インタヴュー、ふーん女性作家だったのかあ、知らなかった。中ページではやはり文庫発刊記念で、イーガン「ディアスポラ」とレナルズ「啓示空間」の特集。

スピードグラファー2

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TVアニメのノヴェライズ第2弾。再び囚われの身となった神楽。着々と自らの計画を進める水天宮は、神泉と神楽の秘密の一端を知る関西の千里泰三をユーフォリアの能力を使って殺害したばかりでなく、結婚寸前だった神泉をも殺害し、神楽との姻戚を結ぶことで天王州グループのすべてを掌握しようとする。その結婚式の場に現れて神楽を再び奪い去った雑賀は追っ手の蜘蛛男・百合ヶ丘蘭の追跡をかわし逃避行を続ける。一方、水天宮は雑賀との接点であるオルゴールのメロディに自らの過去を回想する。両親の債務によって売られた上野武は末端の兵士として過酷な戦場を転々とする。数知れない死体、やっと休戦にいたっても戦時中の傷がふいに噴出する復興中の町で繰り返される悲劇などをさんざん経験した武は、最後に派遣された島の研究所で猿の変異した怪物と戦い生き埋めになるが、研究所の研究員により実験目的でつぎはぎの状態で助けられ、ユーフォリアとしての能力に目覚めて日本に復帰する。自分を貶めた足利裕一郎と行方不明の妹の唯を追ううちに天王州グループに食い込んでいった武こそが現在の水天宮であった。ラストでは新たな追っ手の弦巻ミハルを振り切るが熱を出した神楽、雑賀たちと、細胞の活性率の低下で末期を悟る水天宮の姿に結末が近いことが暗示される。

(「スピードグラファー2」仁木稔著(原作GONZO)、ハヤカワ文庫JA816、2005年9月発行、ISBN4-15-030816-0)

ディアスポラ

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イーガンだから、ある程度期待して読んだが、それ以上だった。今までのイーガン作品でも一番面白いし読みやすい。訳者あとがきの引用で「決して万人向けではないが、、、」などとあるが、そんなことはない。冒頭のヤチマの誕生のくだりなんか、それだけで引き込まれると思うんだけどなあ。五次元観境とか六次元宇宙とかがバンバン出てくるが、どうせ五次元や六次元の様相を一般人が簡単に思いうかべるなんてできないんで、気にせず読み飛ばすのが正解。で、2度目に訳者あとがきにあるイーガンの解説サイトなんかを参考にじっくり考えながら読む。最初の舞台はイーガンの作品でよく見られる、人格や記憶をソフトウェア化できる30世紀の世界。人類のほとんどはポリスと呼ばれるコンピュータ内の仮装現実都市で暮らし、一部の人は肉体人として地球で暮らし、一部の人はロボットの体に入ってグレイズナーと呼ばれる。<コニシ>ポリスでソフトウェアから生まれた孤児ヤチマが主人公格。中性子星の連星トカゲ座G?1の周期が突然短くなりはじめ、4日後には合体してガンマ線バーストを起こすことが判明。わずか100光年でのガンマ線バーストで肉体人はほとんど滅んでしまい、地球環境も壊滅的打撃を受ける。予期しないガンマ線バーストの原因をさぐるため、ワームホールを使う超光速航行を開発すべく、この時代の統一理論であるコズチ理論を元に加速器<長炉>の実験が行われるが失敗。<カーター?ツィンマーマンポリス>は自身の一千のクローンを宇宙に飛ばす「ディアスポラ」(離散)を開始する。そのうちの1隻がヴォルテール星系の惑星スウィフトで異常な重い安定同位体の大気を調べるうち、そこの中性子に埋め込まれたデータからトカゲ座G?1のバーストだけでなく、2万年余り前に起こった銀系コアのバーストで近いうちに銀河系全域が壊滅することも判明する。データを残した種族トランスミューターを追って、ヤチマたちは五次元の上位宇宙への探索に出る。いくつもの宇宙を経た探索の果てにヤチマたちはG?1のバーストやコアバーストの原因を含むすべてを突き止める。訳者あとがきでは「果てしない流れの果てに」との類似が指摘されていたが、他に思い浮かんだ作品は「宇宙船オロモルフ号の冒険」、「第二創生紀」、「タウ・ゼロ」などの歴史的名作群だった。文句なくことしのNo.1であろう。

(「ディアスポラ」グレッグ・イーガン著、山岸真訳、ハヤカワ文庫SF1531、2005年9月発行、ISBN4-15-011531-1)

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