2005年8月アーカイブ

スピードグラファー1

| コメント(0)

アニメのノヴェライズだが、元のアニメは全く見てない。かつての戦場カメラマン雑賀は代議士暗殺事件を追って闇の社交場「六本木クラブ」に潜入するが、そこで行われた儀式で謎の少女、神楽と接触したことから、カメラで見た被写体を爆破する特殊能力を得てしまう。神楽と共に逃げる雑賀を、同じく神楽から個々人の持つ欲望に沿った特殊能力を受けた「ユーフォリア」たちが刺客として追う。彼らの背後には、神楽の母であり、日本有数の財閥にのし上がった天王洲グループ総帥、天王洲神泉と、その配下で、六本木クラブ支配人として国家支配をたくらむ水天宮寵児がいた。自らもユーフォリアの能力を得ている水天宮の執拗な追跡に、雑賀たちの逃避行はどうなるのか、といったあたりで1巻が終了。

(「スピードグラファー1」仁木稔著、ハヤカワ文庫JA804、2005年7月発行、ISBN4-15-030804-7)

老ヴォールの惑星

| コメント(0)

小川一水の短編集。「ギャルナフカの迷宮」は、とある国で政治犯が科される投宮刑により地下迷宮に投げ込まれた男の話。持ち物は1枚の地図のみ。それには餌場と水場のありかが記されていたが、生きた人間を襲って食らう<生肉食い>や他の囚人との生死をかけた争いの中から、いかにして秩序ある社会が築かれるかを描く。「老ヴォールの惑星」はSFマガジン掲載時に読んでいたが、再読しても面白い。ホットジュピターに生活する巨大な生命体(ガス惑星の超臨界水の上をプラズマ噴射で飛行する)が惑星への衝突イベントを前に他の惑星へ必死の通信を試みる姿を描く。いち早くホットジュピターを描いたことでも話題になり読者賞をとった作品。「幸せになる箱庭」は木星の大赤斑に発見された異星人の資源搾取機械を止めるために異星人の母星に送られたコンタクトチームが遭遇するファーストコンタクトの一見理想的な進展の裏に隠された恐るべき事実を描く。いきつくところまでいきついた仮想現実の姿を描く、と書けばイーガンあたりを思い浮かべるが読み味はまったく違う。個人的にはこちらの方が好みである。これもSFマガジン掲載時に呼んでいたがやはり面白い。「漂った男」は偵察任務中に主人公が墜落した惑星は全面が暖かい海で覆われ、食料にもなる有機物が浮かんでいた。漂っているだけで生存に必要なものは満たされ、Uフォンと呼ばれる通信装置で基地との連絡もいつでも取れるが、何ら目印のない惑星上で漂う1人の人間を限られた捜索機だけで探すのは恐ろしく困難であることが判明した。男は時間と孤独との戦いとなった漂流の果てに帰還を果たせるのか。どの作品も今が旬の作家だけのことはあり読み応えがある。

(「老ヴォールの惑星」小川一水著、ハヤカワ文庫JA809、2005年8月発行、ISBN4-15-030809-8)

蛍女

| コメント(0)

少し前に出た本だが、ハイドゥナンを読んで一部の登場人物は先行作品であるこちらにも出てくるとあったので、読んでみた。山中の廃屋の電話器が突然鳴り出して、、、という出だしはホラーっぽいが、中身はちゃんとSFとして読める。電話を受けたIT雑誌編集者の池澤は友人の植物学者、南方と共に事件の調査に乗りだす。山を破壊して進められるリゾート開発。それに対抗し、自分の存在を守るために人間の排除に動き出す「森」の意志。この「森」は変形菌や自然林の根のネットワークが形成する脳にも似た意志を持つネットワークとも考えられるものであった。電話をかけてきた伝説の蛍女は、こうした「森」と人間のインターフェースとも考えられるが、そこには、ある男女の悲劇的な結末と池澤自身の子供時代のできごとがからんでいるのであった。ここで出てくる「森」のからくりはハイドゥナンでもさらに発展して出てくるし、ハイドゥナンでは退官後の学会の重鎮として出てくる南方が、精力的な30代の助教授で登場したり、大学院生時代の橘女子の姿も描かれ面白かった。

(「蛍女」藤崎慎吾著、ソノラマ文庫、2004年9月発行、ISBN4-257-77043-0)

竜とイルカたち

| コメント(0)

パーンの竜騎士シリーズの9巻。前巻で大きく物語が動き、失われていた植民当時の人工知能アイヴァスの再発見により、様々な謎が解明されると共に、長らくパーンの人々を苦しめてきた糸胞の元を断つために、衛星軌道に残っていた植民用宇宙船を使った赤の星の軌道変更作戦が実行された。この巻では、こうした変革の時代を別の視点から語りなおすものでもある。主人公のリーディスが溺れかけたところをイルカに助けられたことをきっかけに、イルカが人間の言葉を話すこと、イルカが植民船で人間と一緒にパーンにやってきたこと、植民当時はイルカ師という職業があり、イルカたちは人間と協力関係を築いていたが、南の大陸から人間たちが北に移住していった時代にイルカたちとの協力の知識は失われてしまったことなどが次々に判明してきた。人間たちが忘れていた長の年月の間もイルカたちは人間への義務を忘れず、いつかは人間が再び自分たちとの関係を戻すことを願って待っていたのだ。母親のイルカに対する偏見や不幸な病気などを乗り越えて、最後にはイルカ師になることを認められる少年の成長物語でもある。巻末の解説によると、続巻は本国で物議をかもしているそうだが早く翻訳を出してもらいたいものである。

(「竜とイルカたち」アン・マキャフリイ著、小尾芙佐訳、ハヤカワ文庫SF1523、2005年7月発行、ISBN4-15-011523-0)

ナウパウム銀河最大の星間帝国レイチャトの支配者レイチャの後継者であるヘルタモシュを助けたことにより、レイチャトの中心惑星レイトの首都マクツァドシュに入り込むことができたローダンだが、レイチャの後継者に絡む政争に巻き込まれてしまう。政敵の手を逃れてマクツァドシュを逃げたローダンは何とかヘルタモシュと合流し、レイチャの協力を得ることに成功する。後半では、ローダンの去ったヤアンツァルで政府主席チャトロがサイナック犯罪の捜査のために切り札として、古代種族の生き残りであるサイナックハンターを投入する。特異な能力により、ドインシュト周辺の捜査からローダンにからむサイナック犯罪の真相を突き止めていくサイナックハンターはローダンがいずれヤアンツァルに戻ることを推理して待ち受けるが、これもまた”反それ”の打った手であった。

(「マクツァドシュの地獄(ペリーローダン314)」エルンスト・ヴルチェク&ウィリアム・フォルツ著、渡辺広佐訳、ハヤカワ文庫SF1525、2005年8月発行、ISBN4-15-011525-7)

CB感/005

| コメント(0)

いよいよドリームCBナナハンが走り出した。新しいピストンとインジェクター(ガソリンが手に入らないので水素を直噴している)をつけたCBで、ノブは再びヒデのW2TTに挑む。地下道での競争を経て地上に上がっても競争を続ける2人だが、北京までのレースの途中、雷雲に突っ込み、落雷によってCBは黒こげになってしまう。一方でバイクテロの犯人を追う公安は、ジュンの近辺を見張る。そこに現われたのはいなくなっていた兄のヤスヒロであった。ヤスヒロに連れられて異邦人の集うネットカフェに行くジュンだが、そこの雰囲気に違和感を覚える。ジュンの近辺を探る情報屋のナムラはメッテルニヒ教授の身辺も探ろうと手を伸ばす。パシェカの元を去ったジュンは、デイブに「もっと現実を疑え」「バイクを走らせて現実の揺らぎを見せろ」と言われ、黒焦げになったCBと共に帰ってきたノブを姿に心を動かされる。

(「CB感/005」東本昌平著、小学館ビッグコミックス、2005年8月発行、ISBN4-09-187335-9)

典型的な地方都市、辺里(ほとり)市。語り手の卓人、幼馴染の悠有、同級生の涼とコージンに、<お山>のお嬢様学校の響子の5人の高校生のひと夏の物語。悠有がマラソン大会で3秒だけ未来へ「跳んだ」ことから響子の号令の元、<時空間跳躍少女開発プロジェクト>が始まった。次第に時空間跳躍能力に目覚めていく悠有。一方で辺里の町では続発する放火事件が続き、悠有の元には謎の脅迫状が届くようになった。そして、夏の終りを告げる花火大会の夜、ついに時空間跳躍のコツをつかんだ悠有の能力を利用した計画が持ち上がったが、それは5人の関係に決定的な変化をもたらし、悠有は未来へと旅立っていくことになる。全編にちりばめられるSF作品への言及(当然ながら時間関係のものが主)を読むと、つい元作品を読み返したくなってしまう。ストーリーそのものは「頭のいい」高校生の仲間たちのさまざまな思惑を綴るという、どこかで読んだような設定や、「〇〇を知っていれば、もう少し違った展開になったかもしれない」といった、エピソードが終わった後の時点から振り返って物語るという語り口も含めて、青春小説のものであり、SF味は濃くなくサラリと読める。

(「サマー/タイム/トラベラー 1,2」新城カズマ著、ハヤカワ文庫JA、2005年6,7月発行、ISBN4-15-030745-8,4-15-030803-9)

業界の濃い人

| コメント(0)

いしかわじゅんのエッセイ。いしかわじゅんは本業は漫画家だと思うが、実は絵柄の好みの問題でマンガはあまり読んでいない。かといって小説を読んでいるかというとそうでもないので、結局この手のエッセイを一番読んでるのかもしれない。週間アスキーに連載中の「だサル」も結構読んでるしなあ。この本は作者の関係する業界=マンガ、小説関係の人々の生態をえぐったものである。SF関係者も結構含まれていて、新井素子、夢枕獏、高千穂遙、久美沙織、岡田斗司夫、唐沢俊一、火浦功、といった面々が登場する。中には高千穂遙や山田詠美、岡田斗司夫などのように複数回登場する人物もいて、結構ボロカスに書いてる(事実をそのまま書いてる?)のがその人物の実態をよく表しているようで爆笑である。

(「業界の濃い人」いしかわじゅん著、角川文庫、2005年5月発行、ISBN4-04-179505-2)

SFマガジン2005年9月号

| コメント(0)

ハードSF作家競作特集。日本SF界は長らくハードSF不毛と言われていたが、このような特集が組めるようになったことは喜ばしいことである。特集にかかわる作品は、「壁の中」藤崎慎吾:DNAのバージョンアップが当たり前になった社会で、そのサービスを受けられなくなった人々との分離が進む中、最新のDNAを持つ女性宅の異常の謎を探る先端警備保障の辻とロボット犬カイチを描く。SFアドベンチャーで展開中の憑依都市もこのくらい面白い作品があればなあ、と感じる。是非このコンビで連作して欲しい。「恒星間メテオロイド」野尻抱介:公認研究士惣七と美佳のシリーズ第3弾。食料プラント爆発事件の原因が秒速千km/sに及ぶ恒星間メテオロイドと推定した2人は、百G加速可能な船「鹿島」にて調査に赴くが、という話。これも続けて単行本にして欲しい。「フリーランチの時代」小川一水:火星基地でアンテナ設置作業中の三奈は誤って大怪我をするが、ふと気付くと無傷の自分と内なる声がするのに気付く。火星の氷床には大昔にやってきた高度な無機生命がいて三奈の体を作り直し、不老不死にしたのだった。基地の他のメンバーも同様の改造を経て、地球に帰還した彼らが起こした行動は、という話。JAで出る短編集も合わせてこの作者の活躍が続く。「まだ見ぬ冬の悲しみも」山本弘:CLIDEX(時間的同一性交換)と呼ばれるタイムマシンが実現したことで、一時的に過去から来た自分と向き合っている主人公が、振られた彼女を求めて過去へ旅したとき現われた光景は、という話。タイムマシンの原理に潜む悲惨性が衝撃的。他には連載が「罪火大戦ジャン・ゴーレ」田中啓文、「イリュミナシオン」山田正紀の2本。読みきりで「零式」中川裕之の後編。前編では明らかでなかった零式の真の姿に気付いた朔夜が夏月を救うために公爵のもとへ赴く。今号は十分に小説を堪能させていただいた、感謝。

2010年3月

  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31      

このアーカイブについて

このページには、2005年8月に書かれたブログ記事が新しい順に公開されています。

前のアーカイブは2005年7月です。

次のアーカイブは2005年9月です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。