2005年7月アーカイブ

ハイドゥナン

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今期のハヤカワJコレクションで一番期待していたのがこれである。思い起こせば高校に入ったばかりのころ、普段文庫本しか買わないのに、駅のキオスクでつい買ってしまった新書上下が日本沈没だった。日本沈没が当時広まりつつあった地球物理の先端理論のプレートテクトニクスを駆使して日本を沈没させたとすると、30年の時を経て、プレートテクトニクスの進化形であるプルームテクトニクスを駆使し、地球、中でも南西諸島地下の異変を扱ったのがこのハイドゥナン、上下である。西暦2032年、地殻変動による南西諸島の沈没の危機を察知した地球科学者、大森拓哉は、政府機関である先島周辺海域調査推進会議(先調)を設立し、危機に対処しようとする。しかし領土問題にからめて政治に走る組織に愛想をつかし、大森の元、植物生態学者の南方洋司をリーダーとして、南方の弟子・橘香奈恵、地質学者・菅原秀明、認知心理学者・吉田隆昭、量子工学者・脳科学者・只見惇たちは沖縄資源探査研究所(OREI)を設立し、ひそかに惨禍を防ぐためのプロジェクト、オペレーション・ヒヌカンを開始する。ヒヌカンの根拠となるのは南方たちが提唱する圏間基層情報雲理論(ISEIC=アイジック)であった。ISEICは微生物まで含めた生物一般だけでなく、岩石などの無機物なども含めた広い意味での情報蓄積が重要だと考える。そして、ISEICで通常の人間はアクセスできない情報のやり取りを司る<エクセプション>の役をするのが、共感覚を持つ伊波岳志と、与那国島で代々の巫女の家系で、自身もまた巫女の資質が現出し、「神」から与那国を救えと命じられる後間柚であった。ヒヌカンを進めるために必死で南西諸島地下のデータ収集をする南方たちだが、地下の活動は刻々と活発化し、ついには波照間島をはじめ、次々に島が沈みだす。柚は「神」から14番目の御獄(ウンガン)を探して祈るよう言われるが、その14番目の御獄は与那国の新川鼻沖の遺跡ポイントであり、さらにその本殿ともいえる深海遺跡が6000mの海溝に見つかる。この深海遺跡こそがヒヌカンのポイントであると察した南方たちは、新川鼻で祈る柚の祈りを中継すべく、潜水艇<しんかいFD>で深海遺跡に岳志を送り込み、「神」への祈り(=ISEICの利用)を通して地中のマントル菌に働きかけ、暴発しはじめていた地下を鎮めようと奮闘する。これらの話に、初のエウロパ地下海への生命探査機であるエウロパダイバーの話もからみ、上下で2000枚というボリュームも含めて十分に期待にこたえてくれる内容だった。

(「ハイドゥナン」(南与那国)藤崎慎吾著、ハヤカワJコレクション、2005年7月発行、ISBN4-15-208655-6,4-15-208656-4)

4000億の星の群れ

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ポール・マコーリイの処女長編。マコーリイはイギリスの現代SFを代表する作家の1人で、この作品もいわゆる「ニュースペースオペラ」と称される。ストーリイは、相転移と呼ばれる超光速航法を開発した人類は近隣の恒星系に植民していったが、謎の異星人と交戦状態になってしまう。つかまりそうになると自爆するため一向に正体のわからない異星人の謎を解明するため、テレパスである主人公が赤色矮星の周りで人工的に自転するよう改造された惑星に送られる。しかし見つかるのは近隣から集められた絶滅動物を含む様々な動物や、あまり高い知性を持つと思えない「牧夫」と呼ばれる動物だけ。主人公が惑星着陸時に一瞬感じた圧倒的な知性を持つ存在はどこに隠れているのか、謎を解明して戦争を終わらせることはできるのか?ニュースペースオペラというが語り口はむしろ伝統的なイギリスSFのものに近く、あまりアクションものを期待すると読むのに苦労する。同じ背景を持つ作品2作があるそうで、後になるほど派手なスペースオペラだそうだが、ほんとうかなあ。

(「4000億の星の群れ」ポール・J・マコーリイ著、嶋田洋一訳、ハヤカワ文庫SF1522、2005年7月発行、ISBN4-15-011522-2)

ローダンの脳が移植されたボルディンの体が拒絶反応を示しだし、危機がせまる。ローダンが身を寄せている脳移植医ドインシュトは臓器ブローカーのハクチュイテンに脅迫を受け、それを聞いたローダンはドインシュトを救うと共に自らの境遇を改善するためにハクチュイテンに近づく。うまくハクチュイテンをドインシュトのクリニックのおびき寄せたローダンたちは、秘密臓器コマンド(GOK)が踏む込んでくる前に何とかハクチュイテンの体にローダンの脳を移植して窮地を脱出する。後半では、ハクチュイテンとなったローダンが、ハクチュイテンが臓器ブローカーのアナトムらとめぐらせていた陰謀に気づく。陰謀の相手がナウパウム銀河最大の星間帝国レイチャトの次期支配者ヘルタモシュであることに気づいたローダンは、陰謀を挫いてヘルタモシュを助けることにより故郷銀河への帰還の道を探ろうとする。途中アナトムに裏切りを発見されるが搭載艇で脱出し、経験を生かした作戦によりアナトムらの裏をかき、陰謀に関与したメンバーは全滅する。

(「ゼロ時間の橋」フランシス&マール著、林啓子・青山茜訳、ハヤカワ文庫SF1521、2005年7月発行、ISBN4-15-011521-4)

超人ロックのロック&ハントの探偵シリーズ。情報泥棒を営むナオミとアリス。男嫌いでネットとお金にしか興味がないナオミは情報ネットの中では凄腕の電子使い「プリンセスローグ」として鳴らしていた。ネットをさまよううちに軍の極秘ファイルを掘り当てたナオミは、そこに200年を経ても同じ姿を保つ男、リュウ・ハントを見つけ、興味を引かれる。ハントのDNAを手に入れて解析しようとするナオミだが、解析を頼んだ相手から「永遠の真理教会」に情報がもれ、ハントとナオミは教会に拉致される。ナオミがネットにもぐって教会からいったん脱出することに成功するが、その隙にアリスの方が拉致されてしまう。アリスを助けようと、教会にもぐりこむナオミだが、人質をとられていては勝手が悪い。あわやというところに助けに入ったのがネット世界の「伝説の魔道師」=ロックであった。アリスを助けてめでたくハントとくっつくナオミを見て目を疑うアリスであった。ハントが不老不死になったいきさつが語られるのも興味深い。

(「超人ロック ひとりぼっちのプリンセス」聖悠紀著、ビブロス Megu COMICS、2005年7月発行、ISBN4-8352-1772-1)

超人ロック最初期のエピソード「冬の虹」の3巻。ロックと行動を共にするようになった、かつてのC国スパイ、王志明(ワン・スーミン)をねらってC国の湖将軍は特殊部隊員、楊邦雄を送り込む。かろうじて襲撃を撃退したロックだが、楊の心はロックでも読み取ることができなかった。スカイリフト社の軌道エレベータは着々と進行するが、その開発の立役者は副社長のユージンの変わり者の友人オレンジだった。ロックとスーミンによるテレキネシスを見たオレンジは、それにヒントを得、超光速飛行の理論的可能性までも考え始める。一方、楊の再度の襲撃に備えるロックはベルコウの渉外部(実はロックを見張るスキャナー)のタチアナ・クリチコフに訓練につきあってもらい、軍人時代のカンを取り戻そうとする。12.7mmの機関砲を入手して着々と準備を進める楊にロックは対抗できるのか、というところまで。

(「超人ロック 冬の虹3」聖悠紀著、少年画報社ヤングキングコミックス、2005年7月発行、ISBN4-7859-2552-3)

サライ14

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前の巻で出てきた天使たち(生殖能力を持たず空を飛べる)はサライになつくが、メイド協会では、さんざんトラブルの元になることから、十分に離れた孤島に天使たちを隔離することとしサライにその任務をいいつける。目的の島に向かう途中、妊娠していた天使たちがいっせいに産気づいてしまう。サライの必死の努力で何とか空中で生ませることに成功するが、生まれてきた子の中には、最初から人間の形態をとる「真性天使」が5人含まれていた。目的の島に到着し、何とか暮らしていけるかと思った矢先、真性天使たちは逃亡し、一般の天使たちを操ってフリッカを罠に誘い込み毒虫に襲われるようにしむける。さらには補給と救援に向かった飛行船シロナガスにも刃を向ける。果たしてサライやティルガたちは敵意を見せる真性天使たちに対処することができるのか、というところまで。

(「サライ14」柴田昌弘著、少年画報社ヤングキングコミックス、2005年7月発行、ISBN4-7859-2550-7)

田中芳樹の「七都市物語」の設定を借りたシェアードワールドの競作短編集。突然地球の自転軸が90度近く移動し(大転倒)、月面にいた人類が「汎人類世界政府」を設立して地球の復興に乗り出す。しかし月面人類は、地表に建設された七都市に支配力を及ぼすための「オリンポスシステム」(500m以上の高度を一定質量・速度以上のものが取るとレーザー砲で破壊する)を稼動させたまま、未知のウイルスにより死滅してしまう。残された人類は地表の七都市にはりつけられ、都市間で様々な確執が起こる。小川一水「ジブラルタル攻防戦」は地峡となったジブラルタルに再び海水を流そうとするジブラルタル運河開発機構(GCDO)の面々と計画に係るニュー・キャメトッロ、タデメッカ両市の戦いを描く。森福都「シーオブクレバネス号遭難秘話」は、大転倒直後に不時着したシャトルに隠されたオリンポスシステムを出し抜く方法をめぐってのアクイロニアとサンダラーの確執を描く。横山信義「オーシャンゴースト」は、六都市連合軍とブエノス・ゾンデの戦争中、連合軍を苦しめるブエノス・ゾンデの潜水艦隊と連合軍の駆け引きを描く。羅門祐人「もしも歴史に…」は、海面飛翔体の開発を目指すプリンス・ハラルドの航空力学研究所と国防軍の秘密計画の顛末を描く。個人的には後味の良さで、「ジブラルタル攻防戦」と「シーオブクレバネス号遭難秘話」が気に入った。

(「『七都市物語』シェアードワールズ」田中芳樹原案/小川一水・森福都・横山信義・羅門祐人著、トクマノベルズ、2005年4月発行、ISBN4-19-850662-0)

電撃!!イージス5

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谷川流の新シリーズ(といってもまだ1巻だけだが)。美少女戦隊ものということになるかな。変人科学者として知られる祖父のところから大学に通うことになった逆瀬川秀明は祖父の家をたずねて行くが、祖父の姿は見当たらず、出くわした美少女に変態呼ばわりされる始末。突然しゃべりだした羊のぬいぐるみ(に見える人工知能)ガニメーデスの説明によると、祖父は実験装置の暴走で別の時空間に移行しており、留守の間、他次元侵略体(Evil Ones Species=EOS)の侵攻に対抗することができるのは、この家に住む美少女たちだけ。彼女たちは次元断層からもれたエネルギー塊がやどったアイテム、Dマニューバを操ってEOSに対抗する。三隅埜々香は<へかて>(リコーダー)で犬の形状をしたしもべを呼び出し、掛川あろえは<あぐらいあ>(スケッチブック)で書いたものを具現化し、佐々巴は<えりす>(竹刀)に闘気をため、雪崎凌央は<でうかりおん>(筆)で書いた機能を発現し、鴻池琴梨は<あたらんて>(スケボー)で疾駆する。しかし、この少女たちがよく言えば個性豊か、実際には日常生活でも多々問題がある性格ぞろいで、秀明の苦悩が続く。この巻には5つの短いエピソードが収録されているが続いてるのかな?

(「電撃!!イージス5」谷川流著、メディアワークス電撃文庫、2004年11月発行、ISBN4-8402-2852-3)

スラムオンライン

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大学生の悦郎はオンラインゲームの世界ではカラテつかいのテツオになる。そこではリアルタイム格闘技の戦いが行われ、四天王と呼ばれる強者の頂点に蛇形拳つかいのパクがいた。一方、現実世界では講義室で偶然遭遇した布美子とのつきあいが始まる。布美子とのつきあいはそこそこ続いていくが、オンラインの世界では、辻斬りジャックと呼ばれる謎のプレイヤーが、強者を次々に倒していく。近づく武闘会でパクへの挑戦を狙うテツオもジャックのうわさをききつけ、戦いを求めてジャックを探し始める。武闘会の決勝戦を控え、布美子とケンカ別れをしてしまった悦郎はオンラインの世界でついにジャックに出会う。最強を求めるテツオは武闘会の出場権を振り切って、ジャックとの戦いに赴いていく。オンライン世界での最強を求めるプレイヤーの姿と、現実世界での彼女との関係をからめた青春小説の傑作である。さわやかな後味もよい。前回のハヤカワの次世代型作家シリーズはマルドゥックをはじめSFだったが、今回のシリーズは普通の現代小説(というかライトノベル)だが、面白い、おすすめ。

(「スラムオンライン」桜坂洋著、ハヤカワ文庫JA、2005年6月発行、ISBN4-15-030800-4)

ヒューマン

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ソウヤーのネアンデルタール・パララックス3部作の2巻。1巻で量子コンピュータの事故で並行宇宙に飛ばされて無事帰還したネアンデルタール物理学者のポンターが、今度は正式な両宇宙間の交流を目指して再び並行宇宙の門を開く。1巻では失踪したポンターを殺害した容疑をかけられた同僚のアディカーが容疑を晴らすミステリとも読めたが、今度は人間側の主人公である遺伝学者のメアリのレイプ事件を解決するミステリという側面もある。随所に出てくるネアンデルタール社会と人間社会の違いは、解説にもあるとおり、ネアンデルタール社会が現在の人間社会の各種矛盾を解決するひとつのあり方のようにも読め、カナダ人作家であるソウヤーの現人間社会(特にアメリカの銃社会)への批判的視点も見て取れる。ネアンデルタール側の科学の進歩的な側面(細菌汚染のレーザー除去装置とか、個人用の防御エネルギースクリーンとか)がSF的小道具として好意的に描かれている。一方、この巻での重要な伏線として出てくる地磁気の逆転現象だが、いくらオゾン層が薄くなっているからとはいえ、地磁気逆転期の一時的な磁場消失で、地球の生命圏が致命的な打撃を受けるとはあまり思えないので、そのあたりがどう扱われるかは、ポンターとメアリの種を超えた愛がどうなるかと共に、3巻を待つとしよう。

(「ヒューマン」ロバート・J・ソウヤー著、内田昌之訳、ハヤカワ文庫SF1520、2005年6月発行、ISBN4-15-011520-6)

SFマガジン2005年8月号

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映画公開に合わせて宇宙戦争特集。小説は2本。ケン・マクラウド「人類戦線」はイデオロギーの対立を並行宇宙ものの設定にからめたもの。チャールズ・ストロス「コールダー・ウォー」はこれも一種の改変世界ものと言っていいか?恐ろしい威力を秘めたコシチェイ計画の話ということだが、Kトゥルーなんかの言葉が出てくるとおり、その手もからんだ話。あとはウエルズ関係のエッセイ2本(ウエルズのとウイリアムテンのもの)と、夏のSF映画関係・TVドラマ関係にスターウォーズ座談会(高橋良平・渡辺麻紀・添野知生、大森望司会)、これ以外は連載の「罪火大戦ジャン・ゴーレ」田中啓文と「午前の幽霊」(後編)津原泰三、後編と言われても前のをほとんど覚えてないんだが。連載コラム類はいつものとおりでSFセミナーのレポートといったところ。特集関係の小説は個人的趣味とははずれるが、まあまあ面白かったかな。映画の方はまだみてないんだが、どうなんだろうなあ?子供が見てみたいと言ってるんでそのうち行くか?

妖精国の騎士50

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妖精国の騎士もついに50巻。中山星香はファンタジーだし同郷の出身だしということで結構早いうちから読んでたはずで、結婚当時本棚にある中山星香のコミックス(どうみても少女マンガにしか見えない)を見て、カミさんが「何でこれがあるの」と言ってました。カミさんも中山星香は読むので、現在は2人して買ってますが。この巻では、闇の神王に囚われていたローゼリィが闇の第一神皇子の目論見どおり(?)光の剣を利用して脱出し、エドストレームの歌のおかげもあって地上に戻ることに成功。グラーンの夜の城を攻める西方軍のアーサーたちと合流する。一方、夜の城に潜入したローラントたちはグラーン王の占星術師オルゲニーの罠にはまらんとしている、というところまで。当初は50巻までには決着をつけたかったそうですが、まだもうしばらくは続きそうです。陽の剣(ソレス)の騎士アーサー(実はグラーンの王位継承資格者でローゼリィの恋人)、グラーンによって失われた国アルトディアスの王族の生き残りの双子、兄で銀月の剣(シルヴァン)のローラントと妹で光の剣(ルシリス)のローゼリィの三剣物語の結末を早く見たいものである。

(「妖精国の騎士50」中山星香著、秋田書店プリンセスコミックス、2005年6月発行、ISBN4-253-19350-1)

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